イラク戦争が――というか、米軍の無定見、「歴史」への敬意の欠落が、バビロンの遺跡にもたらしたひどい影響について、大英博物館が今年の11月に予定されている「バビロン展」で大々的に取り上げるらしい。ガーディアンのレポート。
Exhibition exposes modern tragedy of Babylon
Robert Booth
Monday April 14, 2008
http://arts.guardian.co.uk/art/news/story/0,,2273427,00.html
「バビロンがひどいことになっている」というのは、たぶん独立系メディアやイラク人、イラク関係者のブログで英語の記事では何度も目にしているが、大手メディアではあまり大々的には取り上げられない。(「あまり〜ない」というのは、タリバンによる仏教遺跡の破壊、アルカイダ系組織によるサマラのモスクの破壊などの事例について、自分が特に意識していなくても入ってきた情報の量と感覚的に比較してのことで、具体的数値を示せるわけではないのだが。)
バビロンは、旧約聖書に登場する都市である――つまり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3宗教に共通して、「いにしえの都市」、「人間の思い上がり、傲慢と堕落の象徴」として認識されているはずの都市だ。バベルの塔にバビロンの空中庭園。
そのバビロンの遺跡、まだ調査も完全には行なわれていないのに、サダム・フセイン政権時代にばかばかしいばかりの「再建」プロジェクトが行なわれ――サダムは自身を「ネブカドネザル王の息子」と位置づけていたし、湾岸戦争後にはバビロンの地で自身の宮殿の建設に着手した。遺跡の上にコンクリートのジグラットを作ってみたり――、2003年以後は戦略上の必要とやらで米軍が拠点にしている。
http://en.wikipedia.org/wiki/Babylon#Reconstruction
(また、今の「イラク政府」はバビロンを「新生イラク」の文化的中心地として開発し、ショッピング・モールやらホテルやらテーマパークやらを作るつもりだと2006年に報道されている。)
上記ガーディアンの記事によると、ブリティッシュ・ミュージアムの展示は、ネブカドネザル王の時代(BC6世紀)から現在までのバビロンを一望するもので、幅広い範囲を扱うものだが、最後の部分がイラク戦争で「連合軍」が未発掘の遺跡をどのように害したかについて、写真や映像で説明するパートである、とのこと。
11月の展覧会のことを今から取り上げているということは、この展覧会がなかったことにされないようにとの意図もあるのではないかと、私は深読みしています。(いつものクセでね。)
イラク戦争後、現在のバビロンは、イシュタル門のドラゴンのレリーフは盗掘の被害にあい、ネブカドネザル王の宮殿へと続く大通り(Processional Way)のあちこちが軍用車両の走行によって痛めつけられ、こぼれた油が地面、つまり未発掘の遺跡に染み込んで、無惨な状態にあるとのこと。
大英博物館では、「イラクの文化遺産を保全することが何としても必要である」と訴えることを主眼としてこの展覧会を企画したという。
同博物館の中東部門責任者は、ハンムラビ法典(世界最初の成文法)、辞書の使用、天文学、度量衡などのバビロンは「世界で最も重要な考古学的な場所のひとつである」としている。イラク戦争でのダメージの調査は、この中東部門責任者が行なっている。
建築考古学者のDan Cruickshankは、サダムが再建したコンクリートの宮殿を訪れたときに「あまりにひどくて驚愕した」といい、また、「バビロンに軍用機地など作られるべきではなかった。ストーンヘンジやエジプトの大ピラミッドの隣に基地を作るようなものだ」と先週末の雑誌記事で述べている。
彼の調査によると、考古学的に貴重な地点の砂がサンドバッグに詰められたり(おいおいおいおいおい)、燃料(油)が一帯に巻き散らかされたりしている。「これほどまでにひどいことになっているのに、誰も注意を払わない」と彼は言い、「大英博物館がこの問題を取り上げることは絶対的に正しい。この地に、そしてイラク全域の10000の考古学的に重要な地点に、何が起きているかを話し合う必要がある。それらは十分には記録されていないのだ」と語る。
大英博物館のこの企画は、ベルリンの国立博物館(イシュタル門を持っている)とパリのルーヴル美術館との共催。
ブリティッシュ・ミュージアムには、ギリシャから持ってきたエルギン・マーブルの返還問題があるので、けっこうフクザツな気分ではあるのだけれども、「連合軍」の当事国の国立博物館がこういう面を真正面から取り上げる企画をするということには、心底敬意を払いたいと思う次第。
2008年04月14日
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以前ほどではないすが、この手のニュース(バビロンに限らずイラク内の遺跡が「連合」軍によってダメージを受けている)は、いまでも時々新聞に出ます。去年、10月か11月ごろ、インディペンデント(だったと思う)のトップ記事になって詳しく報じられたことがあり、知人のイラク人アーティストが泣きそうになりながら読んでいた。読んだ直後に話したら、怒りで英語がむちゃくちゃになってました。
April 13, 2008
Who stole Iraq's priceless treasures?
Five years ago, as the tanks rolled in, history's most priceless treasures vanished from Iraq. What really happened still confounds world experts. Now, for the first time, Britain's leading authority on Iraq archeology and a witness to the devastation, delivers his verdict
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/iraq/article3721584.ece
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/iraq/article3721584.ece?token=null&offset=12
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/iraq/article3721584.ece?token=null&offset=24
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/iraq/article3721584.ece?token=null&offset=36