以下の「続きを読む」では英国の2つの諜報機関(MI5とMI6)の紋章の意味について書くが、その前に、「スパイ博物館」について。
この博物館ができたときに「君もジェームズ・ボンドになれる」(という感じの体験ゾーンがあるらしい)みたいな紹介のされ方をしていて、かなりお子様向けのエンタメ系施設なのだろうなあと思っていたのだが、かなり真面目に「インテリジェンス」というものを考えるイベントもやっているということを、今、同博物館のサイトを見てはじめて知った。今月22日に「サダム・フセインは大量破壊兵器を持っている」というガセネタを米当局に流した男(コードネーム「カーブボール」)についての講演会があるそうだ。
話をするのは、『カーブボール――スパイと嘘と、戦争を引き起こした詐欺師 (Curveball: Spies, Lies, and the Con Man Who Caused a War)』という本をものしたロサンゼルス・タイムズのBob Drogin記者と、CIAの欧州秘密作戦部のトップをしていたことがあり、『瀬戸際で――内部にいた者が語る、「いかにしてホワイトハウスは米国の情報をダメにしたのか」 (On the Brink: An Insider's Account of How the White House Compromised American Intelligence)』をものしたTyler Drumhellerのふたりの専門家。分析のぐだぐだ具合から政治的情報操作まで、あらいざらい話します、という内容らしい。入場料は20ドル。
http://www.spymuseum.org/programs/calendar_pages/2008_01_22_prog.php
Curveball: Inside the WMD Debacle
Tuesday, 22 January; 6:30 pm
"The biggest fiasco in the history of secret intelligence." - Frederick Forsyth
「(こんなガセネタをつかまされたとは、)諜報機関の歴史始まって以来の大惨事である」――フレデリック・フォーサイス
In 1999, a mysterious Iraqi applied for political asylum in Germany. The young engineer offered compelling details about Saddam Hussein's secret effort to build weapons of mass destruction. German spymasters shared this information with U.S. intelligence but denied the Americans access to their star informant - who the Americans codenamed "Curveball." The case lay dormant until after 9/11, when the Bush administration embraced Curveball's unconfirmed account. Although relied upon by President Bush and Colin Powell, Curveball was a fraud whose intelligence was discredited before the war. ...
1999年、ドイツ。謎のイラク人が政治亡命を申請した。この若い技術者は、サダム・フセインがひそかに大量破壊兵器を作ろうとしているということを委細にわたって説明した。それには説得力があった。この情報はドイツ当局から米当局に流されたが、ドイツ側は米国側にこのイラク人との接触をさせなかった。米国側は彼に「カーブボール」というコードネームをつけた。そしてこの件は9.11事件が起きるまで寝かされていたのだが、ブッシュ政権はカーブボールの裏の取れていない説明に飛びついた。だが、ブッシュ大統領もパウエル国務長官も信頼していたカーブボールは、ペテン師だったのだ。彼の述べたことは、(イラク戦争の)開戦前には信用できるものではないとされた。……
というわけで、MI5とMI6の紋章の意味について。
MI5の紋章の意味は、MI5のサイトによると:
・てっぺんに王冠
→ 説明不要だろうけれども、「王室の僕」であることを示す
・最下部にあるのはMI5のモットー
→ ラテン語で、"Regnum Defende"(英語にすると、"Defend the Realm")
・中央にsea lion(金色、有翼) ※sea lionは、体の前半分がライオンで後半分が魚という架空の生き物
→ 陸軍、海軍、空軍とMI5との歴史的つながりを示す
・中央の背景部分は青
→ 海外(overseas: 旧英領のことだろう)とのつながりを示す
・周囲をぐるっと囲むのは、赤いバラと緑の五葉と落とし格子
・緑の五葉
→ "MI5" の「5」を表し、緑色は第一次大戦以来、諜報の色とされている
・落とし格子(「議会」を表すもので、1ペニー硬貨にも見られる)
→ MI5が議会民主制を支えるものであるということを示す
・赤いバラ
→ バラは、エリザベス1世の時代に「諜報部」のトップであったSir Francis Walsinghamがsealにバラを使っていたことから、国家の諜報機関を意味する。さらに、MI5のサイトではスルーしているのだけれども、赤いバラは「殉教」の意味。
# MI5の紋章のバラは、「ばら戦争」のときのランカスター家の赤いバラ、および「ばら戦争」終結後のテューダー・ローズ(20ペンス硬貨にある)のdouble roseとは異なり、一重であるように見える……だけじゃなくて、MI5のはrose barbedか。その「意味」まではわからない(調べてない)のだけど。
一方でいつ見てもグロいMI6 (SIS) の「脳みそ紋章」は(もうちょっと枯れたデザインにすればよかったのに)、検索して出てきたページによると:
・最下部にMI6 (SIS) のモットー
→ ラテン語で、"Semper Occultus" (英語にすれば "Always secret")
・中央の妙に写実的な脳みそ ※紋章には「脳みそ」などというものはないようだが
→ 頭の力(知的能力、情報収集能力、知識の運用能力)を表す
・脳みそを取り囲む緑色の「C」の文字
→ これも説明不要かもしれませんが、「C」(MI6長官)のこと。その由来はSIS創設者で初代トップのSir Mansfield Cummingの頭文字。
※緑色はMI5と同様に「諜報機関の色」ではないかと思います。
それから、てっぺんの王冠は、これまた説明不要だろうけれども、「王室の僕」であることを示すお約束。
で、モットーのOccultus(ラテン語でhiddenの意味)と、「脳みそ」を両方あわせると、Secret Intelligenceとなり、この紋章はSecret Intelliegnce Service(MI6の正式な名称)を表すということがはっきりわかる……ってぜんぜんsecretじゃないじゃん。
なお、枯れていないことではロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の紋章も相当なものがあるが、やはり「脳みそ」にはかなわないと個人的には思う。
















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内容は,……まあ,初心者向けとしてはあんなもんでしょう.
諜報のキモは,情報の集合分類と分析にこそあるのですが.
そこを博物館や書籍で開示してしまうともれなく
Semper Occultusが根本からガラガラと……