http://nofrills.seesaa.net/article/75428924.html
選挙を延期するのかどうか、最終判断は1日先延ばしにされました。今の時点で1日先延ばしにしているということは、「延期」ということで決まりではないかと思われますが、まだわかりません。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7165448.stm
それと、英国の名門でブラッドフォード大との「トルストイ・カップ」でも知られるキングズ・コレッジ・ロンドンの国際関係・テロリズム研究のチェアで、米国のthe New America Foundationのフェローで、元FT記者でもあるアナトール・リーベンの論説、「ブット後」が、アメリカのNational Interestのサイトに掲載されています。
Apres Bhutto: Part 3
by Anatol Lieven
12.28.2007
http://www.nationalinterest.org/Article.aspx?id=16562
「ベナジール・ブットの暗殺により、米国の対パキスタン政策はめちゃくちゃになってしまった。とはいえ、そもそも最初からかなりめちゃくちゃなものであったのだが」という書き出しの、非常によく整理された論説です。
リーベンは米国の対パキスタン政策について、次のように指摘しています。
Too much of the U.S. approach -- by the Democrats, the media and the think-tank community, to an even greater degree than the administration -- has been based on three interlocking illusions: that Pakistan can be turned into a fully co-operative and obedient ally in the "war on terror" and the war in Afghanistan, when the overwhelming majority of Pakistanis oppose this and see it as contrary to Pakistan's own interests; that the return of "democracy" in Pakistan, embodied in Ms Bhutto, would help to make Pakistan such an ally; that Pakistani society at present is capable of generating and supporting democracy in the Western sense; and that in overall U.S. strategy, it makes sense to subordinate Pakistan to the needs of the war in Afghanistan, rather than the other way round.
米国のアプローチのあまりに多くの部分が――現政権のアプローチもだが、それ以上に民主党も、メディアも、シンクタンクも――、相互に絡み合った3つの幻想に基づいている。ひとつは、パキスタンはいわゆる「テロとの戦い」とアフガニスタンにおける戦争において、アメリカに全面的に協力してくれるノーといわない同盟国になりうるのだ、という幻想。実際にはパキスタンの圧倒的多数がこれに反対し、パキスタンの国益にはまったくかなわないと見ているにも関わらず。ふたつには、ベナジール・ブットという形でパキスタンにいわゆる「民主主義」を回復することができれば、パキスタンは米国の望むとおりの同盟国となっていくだろう、という幻想。そして、米国の戦略は全体的に、アフガニスタンにおける戦争にパキスタンを従属させることは理にかなっている、という幻想。
続いてリーベンは、「アフガニスタンにおける米国の戦略がいかなるものであるかをはっきり把握している者は、もはや誰もいない。したがって3点目の混乱はよけいにひどくなっている」と述べています。つまり、米国は従来どおりのタリバンとの全面対決を望んでいるのか、英国などが主張するように、必要とあらばカルザイ政権を犠牲にしてでも地域のタリバン司令官と新たに関係を構築しようとしているのか、どっちなんだかさっぱりわからない、ということです。実際、最近のイラクで米国はスンニ派の部族長らを取り込んで「平和」を維持しており(→最近のファルージャについてのNYT記事などを参照)、そういう方向性と全面対決路線との間で揺れているのではないか、と。
そしてリーベンは次のように指摘しています。
全面対決を望んでいるのなら、米国とパキスタンの衝突は避けられない。地域の軍閥との関係構築を望んでいるのであれば、それはパキスタン政府がアフガン国境の部族地域においてずっととってきたアプローチに近いことを米国もしようとしている、ということになる。とはいえ、パキスタンのこの「対話路線」は、今のところ、成功しているとは言いがたい。
こういった混乱と、パキスタン情勢の不安定ぶりを考えれば、当座の米国の政策は、まさに、何もしないことであるべきだ。ワシントンは事態を見守るべきである――暴力と騒乱がいかに悪化していくのか、ベナジール・ブットにかわるリーダーがPPPに現れるか。現状、米国が「選挙は予定通り1月に行なわれるべきだ」と要求し続けることにはまったく意味がない。実際、そのように行なわれた選挙は事態をさらに悪化させるだけ、ということにもなりうるし、そのような選挙は確実に暴力を悪化させることになる。特にPPP支持者(シンディ Sindhi)と軍事政権支持者(ムハジール Muhajir)との衝突は大きなものになるだろう。
リーベンのこの指摘は極めて理にかなったもののように思われます。しかし実際には、英国のブラウン首相がムシャラフ大統領への電話で「大幅な延期」は避けていただきたいと述べるなど、「とにかく選挙ありき」で米英がパキスタン情勢を扱おうとしていることは明白です。自分たちの足元を見直すのではなく、パキスタンに選挙をやってもらって、それで「民主主義」という形式を整えようとしている。(もちろん、「とにかく選挙ありき」でゴリ押しされた例は、アフガニスタンにもイラクにもある。米英の言う「デモクラシー」――リーベンは二重引用符つきで "democracy" と書いているが――は、「選挙」という形式を整えることなのだろう。そんなんでロシアを非難できるのかなあ。)
リーベンは続けます。
ベナジール・ブットの殺害は悲劇である。それもパキスタンの将来的安定と統一にとって非常に危険なことを示す悲劇だ。しかし、これによってよりクリアになるものもあるだろう。そして、クリアになったことから、現実に即し、真に米国の本当に重要な国益のためになる米国の対パキスタン政策をつくることができるようになるだろう。
これは、ブットの死が、政治評論家や英国のタブロイド、The Sunの言うように、「デモクラシーの死」を表しているからではない。ブットには美点もたくさんあったが、結局は改革改革と叫ぶだけの現代的民主主義者でしかなかったのだ。
以上で全体の3分の1くらい。読む価値は十二分にある論説記事です。ぜひどうぞ。
リーベンの著書:
![]() | Ethical Realism: A Vision for America's Role in the World Anatol Lieven John Hulsman Pantheon Books 2006-09-26 by G-Tools |
![]() | America Right Or Wrong: An Anatomy Of American Nationalism Anatol Lieven Oxford Univ Pr (T) 2004-09-30 by G-Tools |
![]() | An Endless War: The Russian-Chechen Conflict in Perspective Emil Souleimanov Anatol Lieven Peter Lang Pub Inc 2006-12-05 by G-Tools |
![]() | Russia's Restless Frontier: The Chechnya Factor in Post-Soviet Russia Dmitri V. Trenin A. V. Malashenko Anatol Lieven Carnegie Endowment for Intl Peace 2004-03 by G-Tools |
![]() | Chechnya: Tombstone of Russian Power Anatol Lieven Yale Univ Pr 1999-05 by G-Tools |





















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ブットの名前が有名だからといって,そりゃねえべよ.
小渕優子かよ!と,思わずツッコミを入れたくなりましたね.
でもって,まとめ項目は作らないと言っておきながら,結局作る羽目になりましたよ.
とりあえず事実関係を中心に.
http://mltr.free100.tv/faq10e03.html#Benazir-Bhutto
ブットもあまりクリーンな政治家じゃないということが分かって意外.
こういう人物でも民主化運動の闘士として担ぎ出さなきゃならないところに,パキスタンの本当の意味での貧しさを感じます.
識字率も驚異的に低いそうですし.
どうもです。所沢さんのところの報道まとめは前の記事にリンクさせていただきました。
ブット家は "dynasty" と形容されるような家柄であるにしても、参政権もない19歳で、パキスタンにいるわけでもない息子が後継者、というのは、小渕優子議員の斜め上を音速で飛んでってる感じがしました。
でもクランの長老からは「息子を後継者になどすべきではなかった」という意見も出てきているそうです。
http://www.guardian.co.uk/pakistan/Story/0,,2233955,00.html
ところでFacebookで「ビラワル・ブット君」が人気だったそうですが:
http://tighturl.com/6vn
(AFP BBの記事のキャッシュ。元記事は削除されているので)
この「ビラワル・ブット君」は偽者で(しかも2人)、Facebookは「ブット君(偽)」のプロフィールを削除したそうです。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2332318/2497630
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7170329.stm
でもこの↑BBC記事にコピペされている「プロフィール」、すごくもっともらしいんですよね。ちょっと笑いました。
> ブットもあまりクリーンな政治家じゃないということが分かって意外.
結局、「汚職疑惑」はよくわかんない状態のままなのですよね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Benazir_Bhutto#Charges_of_corruption
パキスタンでムシャラフのクーデターがあったときに、「上流階級の名門の政治家は私利私欲で動く。軍政のほうがまだましだ」という現地の人の意見をどこかで見かけたことを思い出します。
というわけで、パキスタンについて追加すべきことは、新規エントリにて。