kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年11月27日

「ロンドン地下鉄の声」がロンドン地下鉄を怒らせクビ!

ロンドンに行けばほとんどの人が地下鉄を使うだろう。そして地下鉄を使えば必ず、駅構内と車内のアナウンスを耳にする。よって、ロンドンに行った人のほとんどが、エマ・クラークさんの声を知っているということになる。

エマ・クラークさんは36歳。ロンドン地下鉄のアナウンスを吹き込んでいる声優さんのひとりで、1999年から吹き込みを担当している。担当している線は、Central, District, Circle, Victoria, Piccadilly, Metropolitan, Hammersmith & City, Bakerloo の8路線だそうだが、en.wikipediaで調べると、アナウンスを吹き込んでいる人として名前が挙がっている人の中で女性はクラークさんだけだから、1999年以降にロンドン地下鉄で女性のアナウンスを聞いたことがある人は、例外なく、クラークさんの声を聞いている、ということになるかもしれない。

というわけで、まあ、要するにエマ・クラークさんの声は、「ロンドン地下鉄の声」だ。
そのクラークさんが突然「クビ」になってしまった。つまり、今後の契約はナシ、ということだ。

Tube announcer sacked over spoofs
http://uk.reuters.com/article/domesticNews/idUKL2663927720071126

Voice of the Tube silenced by LU
Last Updated: Monday, 26 November 2007, 16:18 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/london/7113545.stm

Tube tells voiceover woman to mind the sack
By Felix Lowe
Last Updated: 4:14pm GMT 26/11/2007
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/11/26/ntube126.xml

クラークさんが突然クビになったのには、24日付けのロンドンの地域新聞、イヴニング・スタンダードの記事(に書かれていること)が関係している。

What Emma, outspoken 'Voice of the Underground', really thinks of Tube travellers
24.11.07
http://www.thisislondon.co.uk/news/article-23422910-details/What+Emma,+outspoken+%C2%91Voice+of+the+Underground%C2%92,+really+thinks+of+Tube+travellers/article.do

24日のESの記事は、基本的に、クラークさんが自分のサイトにパロディのアナウンスをアップしているということをことを報じるものだ。つまり、「あの『ロンドン地下鉄の声』でこんなことを! ぎゃははは」という記事である。

実際に「ぎゃははは」であることは、クラークさんのサイトで確認できる。聞き取りの練習にも使えるので1つ1つ紹介しておこう。(ニヤニヤ。)
http://www.emmaclarke.com/fun/mind-the-gap/spoof-london-underground-announcements

※以下、聞き取り練習用にご利用になる場合に不都合がないよう、ダブルクオート(書き起こし)とカギカッコ内(意味の説明)は背景色と同じ白で塗ってあります。

※26日夜の時点では大丈夫だったのですが、27日朝、クラークさんのサイトはアクセスが多すぎて一時的に閉鎖されています。「1日かそこらで復旧します」との説明なので、以下のmp3のURLには、28日になってからアクセスしてみてください。

"Do not drop litter on the train. Please use the tramps provided."
http://www.emmaclarke.com/media/7128/do-not-drop-litter-on-the-train.mp3
意味は、「列車内でゴミを捨てないでください。備え付けの浮浪者をご利用ください


"Warning. This is an emergency. I chipped a nail."
http://www.emmaclarke.com/media/7132/warning-i-have-chipped-a-nail.mp3
意味は、「緊急事態発生。わたしの爪が取れてしまいました」(だから足で踏まないように気をつけてね)

"Would the passenger in the red shirt pretending to read the paper but who is actually staring at that woman's chest please stop. You are not fooling anyone, you filthy pervert."
http://www.emmaclarke.com/media/7136/would-the-passenger.mp3
あの声でこれやられると最高。意味は、「赤いシャツをお召しのお客さまに申し上げます。新聞を読んでいるふりをされていますが、女性の胸をなめまわすように見ていることはするっとまるっとお見通しです。誰もだまされませんので、即座におやめください、このむっつりドスケベ

"We would like to remind our American tourist friends that you are almost certainly talking too loud."
http://www.emmaclarke.com/media/7142/a-reminder-for-american-tourists.mp3
ははは、「言いたいこと」の前でだらだらと引き延ばしているのがいいね。意味は、「親愛なるアメリカ人観光客の皆さまにお願い申し上げます。大変に申し上げにくいことではございますが、お話しになるときの声の大きさにもう少しご注意いただければと思います

"Passengers should note that the bearded gentleman's rucksack contains the following items only: some sandwiches, a library card, and a picture of a bare ancle [OR a bearded uncle], and is a no cause for concern."
http://www.emmaclarke.com/media/7146/passengers-should-note.mp3
黒くなってきた! 意味は「お客さまにご案内申し上げます。髭を生やした男性のリュックサックの中に入っているのは、サンドイッチと図書館の利用者カードと、むき出しのくるぶし [OR 髭を生やしたおじさん] の写真です。心配になるようなものは何も入っておりませんので、ご安心ください

"Would the gentleman in the pin-stripe suit and a thousand pound glasses, who obviously works in the media, please take one step forward on to the track, as the train arrives. Thank you."
http://www.emmaclarke.com/media/7152/would-the-gentleman-in-the-suit.mp3
うぎゃー、真っ黒だ! 意味は、「ピンストライプの背広を着て、1000ポンドもする眼鏡をかけておられるお客さまにお願い申し上げます。明らかにメディア業界の方ですが、まもなく列車が到着いたしますので、もう1歩前にでて線路へどうぞ。ありがとうございます

"Residents of London are reminded there are other places in Britain outside your stinking shit-hole of a city, and if you move your heads from your arses just a couple of minutes, you may realise that the M25 is not the edge of the Earth."
http://www.emmaclarke.com/media/7156/residents-of-london.mp3
イヴニング・スタンダードの記事に掲載されている書き起こしではことばの面で多少変更されているのも「ぎゃはは」。意味は、「ロンドンにお住まいのお客さまに申し上げます。ブリテン島には、皆さまがお住まいの悪臭に満ちたゴミ溜めの外側にも、いろいろな場所がございます。また、ほんの数分でよろしいので頭を起こしてみれば、M25外環道が地球の果てでないことにお気づきになられるかもしれません


"Passengers are reminded that a smile is actually a friendship signal, not a sign of weakness."
http://www.emmaclarke.com/media/7160/a-reminder-for-passengers.mp3
ははは。意味は、「お客さまにご案内申し上げます。笑うことは弱さを示すものではなく、友愛を示すものです

"Passengers are reminded that, like all voiceover artists, I probably look nothing like you imagine and may turn out to be somewhat of a disappointment."
http://www.emmaclarke.com/media/7164/i-may-look-nothing-like-you-imagine.mp3
伝統芸、「自分を笑うネタ」がきた。意味は、「お客さまにご案内申し上げます。声優は誰でもそうかと思いますが、わたしも皆さまがご想像されるようなルックスではありません。実際にわたしにお会いになればがっかりなさるのではと思います

"Would passengers filling in answers on their Sudokus, please accept that they are just crosswords for the unimaginative and are not in any way more impressive just because they contain numbers."
http://www.emmaclarke.com/media/7168/passengers-filling-in-sudokus.mp3
意味は、「スウドクに熱中しておられるお客さま、スウドクは結局のところ、想像力のない人のためのクロスワード・パズルでしかないということをそろそろご理解いただきたくお願い申し上げます。数字を使っているからといって、それだけで頭がよいと思われると思ったら大間違いです

"Here we are again! Crammed into a sweaty Tube carriage. And today's Wednesday. Only two days before you can binge-drink yourself into a state of denial about mediocrity of your life. Oh, for goodness sake! If you're female smile at the bloke next to you and make his day. He's probably not had sex for months."
http://www.emmaclarke.com/media/7352/here-we-are-again.mp3
これが最後の大作、モンティ・パイソン調の伝統芸。意味は、「ああ、また地下鉄ですし詰めで汗だくですね! でも今日は水曜じゃないですか。あと2日ですよ、自分の人生がものすごくつまらないものだということに気付かないふりのできるほど酔っ払えるまでは。あと2日我慢すればいいだけです! 女性のお客さま、お隣の男性に向かって少しにっこりしてあげてください。それだけで今日一日がよい日になるんですから。何ヶ月もご無沙汰してるでしょうし

これだけなら「わははは」で済むよなあ、という話だ。むしろ、「ユーモアのセンス」で賞讃されるだろう。実際、そうだったようである。

ロイター記事などでは、この「ユーモアのセンス」がTfL当局には通じなかった、という説明になっているが、BBC記事によると、実はイヴニング・スタンダードの24日記事に掲載されたインタビューがダメだったらしい。

ES記事から引用:
Emma, 36, a married mother of two, of Altrincham, Cheshire, who is a professional voiceover artist and writer, scripted the lampoons herself. She said: 'They echo my true feelings about the Tube.

'I go to London a lot but I never use the Underground. I take taxis and buses whenever I can.

'The thought of being stuck in the Tube with strangers for minutes on end and having to listen to endless repeated messages of my own voice fills me with horror.

'I used to live in Highgate, North London, and take the Northern line every day. It's dreadful.'

【要旨】
エマ・クラークさんはAltrincham在住(わかりやすく言えば「マンチェスター在住」)。パロディ・アナウンスの台詞は自分で考えたという。「ロンドン地下鉄のことをわたしが本心でどう思っているか、ということですね」と彼女は言う。

「ロンドンにはよく行きますが、地下鉄は絶対に使いません。タクシーやバスがあればそれを使います」

「地下鉄で、まったくの他人とずっと顔をつき合わせて、自分の声で録音されたアナウンスが何度も何度も繰り返されるのを聞くなんて、考えただけでぞっとします」

「ロンドン北部のハイゲートに住んでいたころはノーザン・ラインを毎日使っていましたが、ほんとにひどかった」

ノーザン・ラインが「ひどい」なんて、「風が吹くと寒い」とか「炊き立てのごはんはおいしい」とかいう程度のことでしかないし(ずいぶん改善されてきてはいるようだがそれでもあの線はmisery lineと呼ばれるほどだ)、わたしの経験上、実際に「ノーザン・ライン沿線に住んでいます」という人には「気の毒に」と同情を示すのが大人のマナーと言えるほどの状況があったのだが(わたしがノーザン沿線にいたときは他人に同情された)、BBC記事によると、そういうところが切り出されて一人歩きしてしまい、結果、クラークさんが「ロンドン地下鉄はひどいものだから、わたしは使いません」と述べている、という話になってしまったようだ。

実際にはクラークさんは「ノーザン・ラインはひどい(ひどかった)」という誰も何もとがめだてしないようなことを言い、さらに、「自分の声でああしろこうしろと指示するアナウンスを聞かされるのはたまらないから、地下鉄は使えない」と言っているのであって、「ロンドン地下鉄はひどいから、わたしには使えない」と言っているのではない。

BBC記事から:
An LU spokesman said: "It's not because of the spoof announcements. It's because she has criticised the Underground system."

"Some of the spoof announcements are very funny. But Emma is a bit silly to go round slagging off her client's services."

ロンドン地下鉄のスポークスマンは次のように述べた。「パロディ・アナウンスそのものが原因ではありません。地下鉄システムを悪しざまに言ったからです。パロディ・アナウンスのいくつかは非常におもしろいものです。しかしクラークさんは愚かなことに、自分のクライアントのサーヴィスを罵ったわけですから」

うーん。こうなるとダメだよね。亀裂は決定的。でも24日のESのインタビューを見ても、「ロンドン地下鉄はダメだからわたしは使わない」とクラークさんが言っていると受け取るのは短絡的だと思うんだけど、まあそういう風に読む人もいるかなとは思うし、ES以外の記事がそういう方向でまとめていたりもするし、話が完全にこじれちゃったんだろう。

さらに、ロンドン地下鉄がクラークさんに直接連絡するのではなく、メディアを通じて「次の契約更新はナシ」を伝えたから、クラークさんとしてももうダメだろう。クラークさんにしてみれば、自分が言ってもいないことを言ったことにされてしまい、仕事を失ってしまったわけで、気の毒である。

しかし、「言ったこと」がどのように切り刻まれて引用され解釈されるのか、という点について、もうちょっと慎重でもよかったのかも、とも思う。でも、政治家でも経営者でもないクラークさんのような立場の人にそんなところまで「慎重さ」が要求されるのも変なことかもしれない。

っていうか、最初のES記事を書いた記者さんが、「誤読」の余地のないぎっちぎちのライティングをしていてくれたら、どうだっただろう。つまり:
'The thought of being stuck in the Tube with strangers for minutes on end and having to listen to endless repeated messages of my own voice fills me with horror.

'I used to live in Highgate, North London, and take the Northern line every day. It's dreadful.'

ではなくて、
'The thought of being stuck in the Tube with strangers for minutes on end and having to listen to endless repeated messages of my own voice fills me with horror. It's dreadful.'

と書かれていたとしたら。



ちなみに、BBC記事によると、クラークさんは企業の電話の案内メッセージの吹き込みの仕事もされていて、自分が担当した企業に用があって電話をかけるたびに「○○のご用件の方は○番を、△△のご用件の方は△番を押してください」というのを自分の声で聞かされて、なんだかなーという気分になっておられるとのこと。苦情の電話とか問い合わせの電話とかいろいろかけないと日常のことが滞りなく進むかどうかわからないのが英国だというのに、かけづらそうですね。

※この記事は

2007年11月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 10:02 | Comment(2) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昨晩のBBC Radio 5に彼女がゲストで出演され、古典的な「Mind the gap.」から「American tourist friends...」まで披露してくれました。最後は司会者の「番組の次の話題を私の代わりにしゃべってみて下さい」というリクエストに応えて「Listeners are reminded that the next topic is manufactured pop musics.」可笑しかったです。
Posted by Kay at 2007年11月28日 01:08
>Kayさん
> Listeners are reminded that the next topic is manufactured pop musics.

ははは、おもしろいことを教えてくださってありがとうございます。(^^)
聞きたかった!

Posted by nofrills at 2007年11月28日 09:36

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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