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2007年06月25日

「ブレア」と「ブラウン」を語る一般人、そして子供。

予定通り、24日の臨時党大会@マンチェスターでゴードン・ブラウンが労働党党首となり、予想外なことに、「反イラク戦争派」のハリエット・ハーマンが僅差で本命のアラン・ジョンソンを破って副党首となった。6月27日にはトニー・ブレアが女王に辞表を提出し、同時に副首相のジョン・プレスコット(労働党副党首)やゴールドスミス司法長官、ジョン・リード内務大臣といった人たちが政権を去り、「ブレアの10年間」が終わる。

「ブレアの10年間」を見るには、とっくに政権を去っているピーター・マンデルソン、デイヴィッド・ブランケット、アレスター・キャンベルといった人たちや、政権どころかこの世を去ってしまったモー・モーラムロビン・クックを含めた「過去の人たち」がとても重要なのだけれど(あるいはクレア・ショートという内部の批判者の存在も)、そういった政治の表舞台の人たちとは別に、「一般の人たち」にももちろん、「ブレアの10年間」は「自分たちの現実」として存在してきた。

そのことを雄弁に語る2分半くらいの動画ニュースが、AFPさんにある。2:08からのパートが抜群におもしろい。取材されている家の子供たち(小学生)が「ブレアの時代」と「これからの英国首相」を語っているのだが、巷でよく言われる「英国では小学生でも自分の意見を語る」ということの見本のようだ。"I never met him in person, but... he's a good writer!"(会ったことはないけれど、文章はうまいよね)ってチョコレート・ビスケットか何かを食べながら10歳にもなってない子が言うんだよ。



AFPではサイモン・フレームさんの家族を取材している。ロンドンに自宅を持つサイモンさん一家は、AFP記事では「中流階級」と紹介されているが(厳密にはロウアー・ミドルかアッパー・ロウアーではないかと思うのだが)、これはいわゆる「ミドル・イングランド middle England」のことだろう――白人で、イングランドに住み、誰にでもできるような単純労働ではない仕事をしており(専門職)、家族ともども安定した暮らしを送っている。一家の人たちの英語は「労働者階級」のアクセントではない、上品なアクセントだ。

サイモンさんは映像の特殊効果の会社を経営している。4人で始めたサイモンさんの会社は、今は51人になり、つまり順調に業績を伸ばし成長してきた。

97年、サイモンさんはbeliever(ブレアの信奉者)で、その前のサッチャーとメイジャーの保守党政権下では「国がばらばらになった」と語る。元々「階級社会」だった英国では、90年代半ばまで、社会的格差は拡大したばかりでなく固定化し、景気は停滞しており、失業者はずっと失業者のままで、大学を出たような人でも(当時の英国の「大学」は本当に「ちょっと違う人たち」の行くようなところだった)小売業者の倉庫とかレジ打ち程度しかすぐに就ける仕事がない、という状況だった。(私はある程度ファーストハンドでそのころのことを知っている。知り合いの名門大学卒の同世代の人が間に合わせの仕事をしていたり、広告代理店で写真の仕事をしていた友人が部署がいきなり閉鎖されてレイオフを食らったりしていた。)

妻のアラセリさんはNHS(国民健康保険)に勤務するパブリック・ヘルスの専門家で、「ブレアの改革」の混乱を現場で体験してきた。ポリシー(方向性)もストラテジー(具体的なやり方)も何もかも変わって大変だった、と語っている。

そのあとカメラはフレーム一家の子供たちの通う小学校に移る。

ナレーションでは、初等教育はブレア政権下で前よりよくなったにせよ、中等教育から高等教育(ナレーションのhigher educationと字幕の「高等教育」は、文脈から、「中等」を含めていると思われる)では、(ステイト・スクールはがたがたで、)パブリック・スクールはかつてのように階級固定ではなくなって誰にでも門戸が開かれているにせよ、学費はとんでもなく高い(7000ポンド)、ということが説明される。

続いて、「そのような状況ではやっていられないので、多くの家庭がロンドンを離れつつある。フレーム家もそのひとつだ」(字幕の字数が足らなかったのか、その説明が薄くなってしまっている)。

台所でサイモンさんが「ロンドンで子供をいい学校に入れることができるのは、年収が30万とか40万(ポンド)の、医者や弁護士やシティの銀行家だ」(字幕の「都市銀行」は誤訳。「City bankers」は投資銀行の人とかを言う)と語り、さらに「ああいう人たちが自分のことは裕福 (rich) だとは思っていないのだから」と言う。

続いて、ナレーションで「大企業と政権の関係はブレア政権の汚点」とフレームさんたちが考えていることが短く説明される。先日、労働党の副党首選挙でピーター・ヘインが「労組との信頼関係を取り戻すべきだ」と語り、"fat cats in the City"(シティの裕福な連中)を攻撃していたそうだが(だからHain the Painは見ていておもしろい)、大企業と政府の線はブレアからブラウンに政権トップが交代しても変わらないだろう。

AFPのレポートは間髪いれずに「イラク戦争」についてのフレームさんの考えへと進む。フレームさんたちはイラク戦争を「ブレア首相の最大の過ち (the prime minister's gravest error)」だと考えている。「英軍をイラクに駐留させておくべきと考えている人は、周りには誰一人としていない (anyone, any walk of life)」

そのあとはナレーションが「ひとりの人間がひとつの国を変える能力には落胆しても、プロセスには」というふうに進んで、アラセリさんが「2度目まで(つまり01年まで)は労働党に投票したが、前回(05年)は労働党には入れなかった。自分の投票で何か意見を言いたかったのだと思う」と語る。(ナレーションとイマイチつながってないような?)

このあと、2:08からのパート(子供たちの意見)が抜群におもしろい。「議論」の形式がしっかり整っている(大人が意見を述べる場合の形式と同じ)。"I never met him in person, but..." とか、「意見を訊かれたときの答えの切り出し方」(そう言っている間に次に言うべきことを頭の中でまとめる)の見本のようだ。というわけで、"I never met him in person, but... he's a good writer!"(会ったことはないけれど、文章はうまいよね)。大人がこう言えば「財務大臣を10年もやってきたような政治家のことを『文章がうまい』とか言う」ということになり、必然的にそこは軽く笑うところなのだけど、10歳にもなってない子がそう発言するときにはどう受け取るべきか。私にはよくわかりませんけど、実際に会話してれば「ブラウンの書いたものを読んだことがあるのか」と訊くだろうな、ちょっと笑いながら。
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労働党政権 英国 子供 言語 ブレア ゴードン・ブラウン
posted by nofrills at 15:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk
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