そこに何が植えてある/生えているのかなんて、気に留めたこともなかったのだろう。歩いていたら、白いチラチラしたものが大量に目に入ったので、「花かな?」と興味を持って近づいてみて初めて、そこに植物が植えてある/生えていることに気づいた。それは大きな建物の裏手、常に日陰になっているような場所で、きちんと間隔を保って立っている大きな木の足元だ。

近づいて見てみると、花であることは間違いないのだが、タネツケバナやハコベやミミナグサのようにわかりやすくかわいいわけでなく、何とも奇妙な花だ。遠目で白くチラチラしていたのは、花弁や花弁のように見えるガクではなく、おしべそのもののようだ(この花には、花弁や花弁のように見えるガク――アジサイの「花弁的なもの」のような――がない)。







あとでネットで調べよう、と思って写真を撮っていると、「何かある?」と通りすがりの人に声をかけられた。「花だと思うんですけど、何でしょう、これ……」と指さすも、その人も「なんだこれ」と首をかしげるばかり。「花は花だろうねぇ。興味あんなら、むしって持ってっちゃいなよ」と言うその人は、植物と庭いじりが好きだという口ぶりだった(「ガーデニング」というカタカナっぽい雰囲気ではなかったが)。「柵の外に出てるの、いっぱいあるよ。地下茎だろうね。地下茎だからさ、どこまでも増えてっちゃうのよ。引っこ抜いてって植えればこんなん、どんどん増えるよ、あっちにも、ほら!」というその言葉に従っていたら、将来的に私はキュー・ガーデン的なものでも始めることになってしまいかねないので、「いやいや……今から買い物に出かけるところなので」と丁寧にご辞退申し上げた。実際、引っこ抜いた植物を手に持ってスーパーのお豆腐コーナーで厚揚げを選ぶなどするわけにもいかない。



さらに建物の入り口の方に行くと、柵のないところにも同じ植物が植えられていて、真上からの写真を撮ることもできた。大きく伸びた花穂もあった。





その大きく伸びた花穂から、「そういえば、『なんとかトラノオ』と呼ぶ植物があったな」とウェブ検索してイブキトラノオという植物についてのウィキペディアの項目を見つけたが、花は似ていてもが全然違うし、それにあちらは高山植物だ。では……とイブキトラノオが属しているタデ科のイブキトラノオ属の一覧を見てみるも、みな花は似ているが植物としては違う。