kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年11月05日

イギリスがおかしい。

「人民(国民)の敵」――デイリー・メイルの一面にそんな文言がどかーんと出ている。

誰かの発言の引用ではない。ジョークを意図したものでもない。

そして、その文言を添えられて顔写真を「さらされて」いるのは、スパイだとか政府の金を横領した人物だとかではなく、「仕事中」の服装をした判事である。

最初にこの画像を見たときは、「デイリー・メイルのこういう一面はまだですか」という主旨の風刺作品だろうと思った。しかし、ほんの10秒ほどで、風刺作品ではなく本物だということが確認できた。BBCで毎日「今日の新聞一面」を淡々とフィードする記者のアカウント(「事件記者」めいた「電話で真顔」のアバターの由来は、おそらく電話中の首相の真顔である)が、これを淡々とフィードしているのが確認できたからだ。

dailymail-enemiesofthepeople.png


「法の統治」という大原則を、デイリー・メイルのような歴史ある報道機関が知らないはずはない。しかしそれでも、高等法院の判事(裁判官)たちのことを引用符つきで 'out of touch' と断罪してみせているのは、これまでずーっと「負け」続けてきて今年の6月にごく僅差で「勝った」ためにやたらと勝ち誇り、「民主主義」をただの「多数決」にしようとしている「一般大衆 the people (と自認しているであろう人々)」の聞きたいことを言ってあげて売り上げとPVを稼ぎながら、彼らを煽動し、彼らを方向付けるためである。

あの英国で、まさかこんなことが起こるとは、誰が予想していただろう。いくらデイリー・メイルでも、である。

私が東京でこのとんでもないことを知ったのは、TwitterのTrendsに「人民の敵 Enemies of the People」という文言が上がっているのに気づいたときだった。キャプチャをとってツイートしたのは、最初に見てからしばらくしてからだが、下記のようになっていた。





それなりによく訓練されたUKウォッチャーなので、内容は察しがついていた。3日、高等法院がBrexitについて、あのレファレンダムの結果は「人民の意思」であると声高に叫ぶ人々の意に反する判決を示していた(下記)。「人民の敵」というのは、それについて使われているとしか考えられない。

Brexit court defeat for UK government
http://www.bbc.com/news/uk-politics-37857785
Parliament must vote on whether the UK can start the process of leaving the EU, the High Court has ruled.

This means the government cannot trigger Article 50 of the Lisbon Treaty - beginning formal exit negotiations with the EU - on its own.

Theresa May says the referendum - and existing ministerial powers - mean MPs do not need to vote, but campaigners called this unconstitutional.

The government is appealing, with a further hearing expected next month.







しかしそれでも、最初は、「人民の敵」などというのは、誰か過激な発言をする個人(UKIPの政治家や活動家など)の発言(の引用符が取れたもの)だろうと思っていた。イタリア首相在任中のシルヴィオ・ベルルスコーニは、自身の汚職などについてまっとうな判決を下す裁判官のことを「左翼」と呼んで、「一般大衆」にアピールしようとしていた。ベルルスコーニと同じようなポピュリストは、現在の英国には何人もいる。だから、そういう発言をする個人が、公人のなかにいたっておかしくはない。そして、そういうことを言いそうな側というのは、「あちらの側」に決まっている。現在の労働党について「スターニリスト」とあげつらう側だ。その誰かがこんな発言をしていれば、誰だって「すさまじいブーメランだな」ということでツイートしたくなるし、それが原因でTwitterでTrendsに入っていてもおかしくはない。発言があったのはテレビのインタビューか何かだろう、誰の発言だろうか、とクリックした私の目に飛び込んできたのが、上掲のデイリー・メイルの強烈な一面だった。

「個人の発言」ではなかった。「新聞の一面」だった。デイリー・メイルだが。

いや、デイリー・メイルだからこそ、これは深刻なことだ。

事態はとっくに、"beyond parody" と言うべき域に達していたのだ。6月23日のEUレファレンダム前の1ヶ月ほどは、BBCの「今日の新聞一面」担当記者(2人いる)のアカウントでフィードされるタブロイドの一面も、Twitterでの「サイレント(だった)・マジョリティ」たちの発言も、「何の冗談だよ」と反応したくなる様相を呈していた。誤情報・デマ・感情の煽動が、見ているだけでうんざりするほど飛び交っていた。「冗談」と思っていなければ付き合いきれないレベルだった。このときに私はずいぶん多くのプロパガンダ・アカウントの発言をカジュアルな検索結果などで目にしないよう、ミュートしたりブロックしたりした。それまではただスルーしていたのだが、目にするだけで消耗し、吸い取られるくらいにしつこく繰り返され、増幅されていた。Twitterは「エコー・チェンバー」として最大限に機能していた。ジミヘンもびっくりのフィードバックが鳴り響く……と、冗談にして笑っていてもがまんできる範囲を超えていた。

が、それらは「冗談」などではなかった。英国で、つまり「連合*王国*」で、「選挙で選ばれたわけでもないエリートたちによる意思決定」そのものを問題とする(かのような)政治的言説が、完全に日常化していた。それも、古くから馴染みのある王政廃止論者(共和主義者、republican……同じ用語でも、北アイルランドではシニフィエが異なるので注意)の文脈ではない。制度をよりよいものにしようと建設的な議論をするためではなく、「エリート」を攻撃するために「選挙で選ばれたわけでもない」という形容詞句が使われていたのだ。「選挙で選ばれたわけでもない unelected」はもはや「罵倒のための言葉」に成り果てていた。

しかし彼らは、マードックやデズモンドのような「選挙で選ばれたわけでもない」のに人々の思考を形作るプロパガンディスト・メディアのエリートたちを「エリート」として攻撃していたのではなかった。それらには、何の疑問も抱かずに盲従していた。そして、ネット上に散在するそれらプロパガンディストの拡声器たちは、「エリート」に見えない(「ただのブロガー」だったりするわけで)。

何より頭が痛いことに、彼らが「選挙で選ばれたわけでもない」として攻撃している「エリート」は、実際には選挙で選ばれた人々だった。欧州議会の議員たちだ。(この件について、ひとつ実例を調べてブログに書こうとしていたのだが、調べている間にこちらの精神が食われてしまって形にできていない。こんなの、仕事でならやるけれど無料でやれるものではないというレベルのひどさだ。そもそもこのブログは元々「書いたメモを広く共有する」という意図でやっているもので、書くだけで精神的にダメージを受けるようなことを書いたところで、こちらに得になるものは何もない。私がいわゆる「活動家」に拒否反応を示す系の人物だということがわかると誰もハナもひっかけないし、書いたことが広がっていきもせず、ただネタ・着想をパクられるだけ。すべては無駄、虚無でしかない。)

その「選挙で選ばれたわけでもないエリートたちに支配されている欧州連合(EU)」というデマ(これは、政治的意図をもって故意に広められた誤情報である)をきぃきぃと叫んで回っていた人々が、現在、テリーザ・メイ首相に対し、「人民の意思」のとおり、EU離脱を実行することを期待しているし、またそうするよう要求している。メイは保守党の党内での権力抗争と、対立候補者のオウンゴールの結果として保守党党首・首相になっているのであり、彼女が党首として率いた選挙で保守党が勝利したわけでもなく、つまり二重の意味で「選挙で選ばれたわけでもない」と指弾されるならこの人の他に誰がいるのか、というくらいの存在だが、そこは英国流のプラグマティズムで、今は問わないでおくようだ。

2015年の総選挙で勝つために「単純なYes/Noでのレファレンダム実施を公約する」などというおろかな判断を下し、この事態を引き起こしたデイヴィッド・キャメロン前首相は、既に首相を退いたばかりか、議員も辞職して、政界引退してしまっている。その議席も、既に補欠選挙が行なわれて保守党の新人が(キャメロンと比べたらずいぶん支持を減らしながら)とっている

そういう流れがあって、なおかつテリーザ・メイとその奇妙な面々の閣僚たちが「EU離脱」の具体的手続きをどうするかの舵取りをしているし、経済界もいろいろと反応を示しているのだが(先日の日産のサンダーランド工場の件は笑った。ジャーナリストのファイサル・イスラムのツイートを参照。あ、2件連続なのでこちらも)、「離脱」に向けたその進行をただ黙って見ているわけにはいかないという人たちも、できる限りのことはすべてやろうとしている。ただし、新聞などがいくら論説記事を出そうとも討論会を主催しようとも、「これが国民の意思だ、ざまあみろ、エリートめ!」というプロパガンダを信じ切ってその中で旗を振り回して拍手喝采している人々にはまるで届かないし、ロンドンで「親EU」のデモ(2014年のウクライナのキエフかっていう)が行なわれたところで、「投票で出された結果に反対するデモ」など、「デモがどれだけ大人数を集めているように見えても、実際の票数とは関係ない」という当たり前の事実の前には、まるで無力であるばかりか、「まだあきらめないで」というメッセージを発することもできているのかどうか微妙というくらいのものだ。

しかし、中には「法律」を武器として闘おうという人たちもいた。今回、高等法院からの判断を引っ張り出した訴訟の主は、そういう人たちのひとりだ。




このダイナミズム、日本語圏でわかったような顔をした人々によって「老大国」だの「大人の国」だの何だのと呼ばれつづけている英国のこの動的な力(同語反復)が、ウォッチャー的には実におもしろい。「お上」意識が言葉の端々にまで浸透しているこの言語圏(例えば「○○公害訴訟の判決を受けて、国が控訴しました」というマスコミ様のナラティヴを参照。「政府」をなぜ「国」と言うのか?)から見れば、すがすがしく見えるほどだ。が、「おもしろい」などという言葉を使っていると、また「不謹慎だー」と怒鳴り込まれるだろうから、ほどほどにしておく。

でも一番明示的におもしろがってたのはこの人だよね。





ともあれ、高等法院が「EU離脱の手続きを進めるには、国会(下院と上院)での採決が必要」という判決を出したことで、司法に対する反発が起き、それをジョン・プレスコット元副首相やウィル・ブラックさんは「(最高裁の次は)欧州司法裁判所ですか」とまぜっかえし(爆笑)、デイヴィッド・シュナイダーさんはBrexiterの決まり文句、"You lost, get over it!" をそのまま熨斗つけて返し、ジェイミー・ロスさんも同じBrexiterの決まり文句を使って究極の真顔芸を披露し、デイリー・メイルはあのような一面にした。


















このデイリー・メイルの一面が拡散し、法律家のデイヴィッド・アレン・グリーンさんがこれに呆れかえったツイートがRTされまくって、"Enemies of the people" などという不穏当なフレーズがTwitterでTrendsに入ったようだ。





さっそく「トルコか」とか「インドか」といったアレげな比較もなされている。





トルコやインドはまあ「あっはっは、そうですよねー」であるにせよ、バルカンはマジ洒落にならないのでやめてくれと思ったが、そもそも洒落になっていないのはデイリー・メイルだ。







Twitterにはいろいろな人がいる。アバターからしておそらく確実にBrexiterだろうと思われる人(「過激派からユニオン・フラッグを取り戻すためにアバターにしている」とプロフィールで説明しているが)が、極めて冷静に、このデイリー・メイルの一面に警戒心を抱いているということを表明している。(この人のツイートはもう少し下で改めてみる。)





「専門家でない人でも百科事典は作れる」という革命的思想を現実化したウィキペディア、ウィキメディアのジミー・ウェールズは、EUレファレンダム前にBrexiterたちによって繰り返された「専門家への侮蔑」と、裁判官の「人民の敵」呼ばわりをダイレクトに結びつけた(鋭い)スチュワート・ウッドさんのツイートにリプライする形で、「選挙で選ばれていない首相に対し、選挙で選ばれた議会が決定権を持つべきとする司法の判断が、人民の敵呼ばわりされるなんて」と驚いている。





JOE.co.ukというLAD系オンライン媒体のフットボール担当記者、トニー・バレットさんも、このように反応している。










QC(とっても偉い法律家)で、100件以上の殺人事件の裁判にかかわり、戯曲家で舞台俳優でもある(ほんとに!)ナイジェル・パスコーは、次のように非常に強く警戒し、短時間で見解をまとめてYouTubeやブログにアップし、同職者に発言を呼びかけている。(YouTubeの映像はご本人がエンベッドしそこねている。)





















The Judges have spoken and there is absolutely no reason why their reasons cannot be analysed and challenged by lawyers and others, indeed by anyone. Provided only that we accept that they were just doing their job according to their consciences.

Sadly the appalling reaction from some of the media and very particularly the Daily Mail, threatens Democracy itself. It is dangerous nonsense to describe serving Judges as enemies of the people. That way lies anarchy and they should hang their heads in shame. The Law Officers should condemn it and so should the Bar Council and every other responsible legal institution. It is absolutely contemptible and I fear for reasoned public debate if it is not opposed in the strongest terms.

Just one note of hope. There are highly intelligent and reasonable Brexiteers out there who do see the point and want no part of this mass hysteria. I want to hear more from them. They have the power to calm these troubled waters. They will earn respect by speaking out unequivocally.









パスコー弁護士が「手に負えない状態になっている」と述べているのは、彼1人の感覚ではない。








そして、「人民の敵」という不穏当なフレーズからは、当然、こういう連想がなされる。これ、冗談や偶然の一致ではなく、実際、そっちが入ってきてると思うんっすよね。あんまりその話をすると日本語圏で私が攻撃されるから公開の場ではあまり書いてないけど、米国のドナルド・トランプの背後にごにょごにょの存在があることは確実だし、トランプ支持者の中にはもろにそれという人々もいる。そして、トランプ周辺とBrexiter、特にナイジェル・ファラージ周辺は、密接なつながりがある。






このTrendsの波は、現地で人々が寝静まり、朝を迎えてもまだ続いていた。





実際、高等法院の判事に対して「ヒステリックな反応」を示したのは、デイリー・メイルだけではなかった。




私が「パロディ・アカウント」だと思ったこのキャプチャのツイートの主は、Brexit陣営のTwitterで大変に目立っているデイヴィッド・ジョーンズ氏。UKIP支持の活動家で、慣れていないと「ネタ」や「ジョーク」のアカウントにしか見えないと思うが、そうではない(「ネタ」や「ジョーク」のアカウントではない)。よく訓練された北アイルランド・ウォッチャーのみなさんには、「デイヴィッド・ヴァンスのダチ」という説明をするとすぐに通じるだろう。
https://twitter.com/DavidJo52951945




私がフォローしている数多くのUKのアカウントの中で、このアカウントをフォローしているのは、下図の通りたったひとつ(BBC記者)で、このアカウントがどのくらい偏っているかはだいたいわかると思うが(「右翼も左翼も、両方の有名アカウントはフォローして、ウォッチしている」というアカウントも、ジョーンズ氏のアカウントはフォローしていないというくらい偏っている)、Following: 55.7K, Followers: 57.9Kと、「平凡なツイッタラー」ではありえない数字を持つユーザーだ。この数字の内訳が、仮に「自動相互フォロー」のようなbot的なかさ上げを含んでいるとしても、「影響力」という点ではそれはあまり問題にならない。Brexitに関して何かの語句をTwitterで検索すると、非常に高い確率で、このアカウントのツイートが検索結果に出てきていたからだ(私がログアウトした状態で検索しても、このアカウントのツイートはしょっちゅう表示されていたので、私のフィルターバブルの中だけで目立っていたわけではないと判断できる)。

djnstwttr.png


ジョーンズ氏は、上掲のデイリー・メイルの一面について、下記のようなツイートを(批判的にではなく「拡散」する目的で)RTしている。そういうアカウントだ。





そして本人の言葉で、Remainersのことを「売国奴」と呼んでいる。今回の訴訟を起こしたシティの人についても。







私がキャプチャしたツイートでそのジョーンズ氏が貼り合せていたのは、デイリー・エクスプレス、デイリー・メイルの2タブロイドと、デイリー・テレグラフの1面である(テレグラフは完全に「ポピュリスト」のメディアになっているので、こういうことをやっても驚きには値しないと思うが、それでもやはり、ショックである。もはや「信頼できるメディア」ではなくなってしまった)。





ここまであからさまな「法の支配 rule of law」への無知(多くのケースでは「法の支配」の原則を知っていてやっていると思われるので、「無知」という扱い方をするのでは軽すぎるのだが)が、いかにタブロイドやポピュリストのメディアであっても、英国で「新聞の一面」として横行するということは、今年6月のEUレファレンダムまでは考えられないことだった。英メディアはいろいろとひどいが、そのくらいの分別は常につけていた。そういうことを言いそうな(書きそうな)「ものごとを単純化し尽くさないと消化できない層」に向けたメディアでは、こういう話題は扱わないのが常だった。それが、UKIPが「まともな政党」として扱われた2015年総選挙以降、完全に変わった。

先に引用した@AdderCowley氏は、この日のデイリー・エクスプレスやデイリー・メイルについて、次のように概括している。











一方、報道機関での「今日の注目報道」のような分析。ガーディアンは真正面からこのデイリー・メイルの煽動を「問題」として取り上げている。




しかるにBBCは……これが恐ろしいんだけどね、BBCは一般の人々のライセンス・フィー(受信料)で運営されているということをネタに脅しをかけられていて、ずいぶん編集方針が変わっている……、デイリー・メイルには「注目しない」という方法で、スルーしながら「問題」にもしないという英国式の「ゆるい肯定」ともとれる方針だ。




何度も同じことを書いているかもしれないが、いったい、誰が、こんなふうになることを予想しただろうか。これはどこぞの独裁国で起きていることではない。(特に旧植民地についての欺瞞などめちゃくちゃな問題をたくさん抱えつつも)「法の支配」、「寛容」、「言論の自由」といった価値観をしょってきた英国で、現在、リアルタイムで起きていることだ。

ジェフリー・ロバートソンQCによる解説を、アルスター大学のロリー・オコネルさんがフィードしている:



【追記】





最近、ブログに書くのを面倒がっているのは、ひとつには、タイトルを考えるのがおっくうだからなのだが、当エントリに限っては考えるまでもなく思いついた。

当初は、当ブログの普段の用語法の通り、「英国がおかしい」と書いていたのだが、書きながらお茶でもいれるかと立ち上がったときに、それまでの「英国のイメージ」をがらりと変えた90年代のベストセラー、『イギリスはおいしい』を思い出し、「英国」を「イギリス」に変えた。お湯が沸くのを待ちながら、「『イギリスはおいしい』と『イギリスがおかしい』で、日本語の『は』と『が』の違いが説明できるな」などと考えていた。(私はこの本の内容をすべて支持しているわけではないが、この本が「英国のイメージ」を変えたことは事実だし、それ自体が持っていたダイナミズムは正当に評価されるべきだと思っている。)

4582452086イギリスはおいしい
林 望
平凡社 1991-03

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しかしこの「イギリス」という言葉も、厄介である。日本語の「イギリス(英吉利)」はオランダ語のInglêzが語源だと辞書にあるが、そのオランダ語は要するに「イングランド」を指すもので、現在のthe United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandとは一致しない。けれどそういう「イングランド」を指す言葉が「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(イギリス、英国)」を指すものとして現在も使われているという例は、特に欧州大陸の諸言語に見られる。日本でも、私が中学生のころはEnglishという語に「イギリスの」、Englishmanという語に「イギリス人」という語義が与えられていた(90年代以降、ほとんどの教科書ではEnglishは「英語」という語義でしか言及されなくなったが)。アメリカ(米国)では今なおEnglishはBritishと置換可能であることが多い。政府の公式な文書ではありえないことだが、報道機関の記者ブログなどではエリザベス女王のことを「Englandのクイーン」と呼んでいたりする。北アイルランドでそんな用語法がとられたら即座に「炎上」するというくらい微妙な用語法なのだが(デリーのカトリック・コミュニティ出身の芸能人がそう発言して炎上したことがある)。

おりしも今日は11月5日、Remember, remember, the 5th of Novemberの日である。






















※「ちょっと寝かした」結果が、当エントリである。

ちなみに、間髪いれずに件のデイリー・メイル一面のパロディ(本当の「パロディ」)が出ていたりもするので、英国はまだまだ死んではいないと思う。問題は、こういった声が、ほんの3〜4年前までのEU離脱論と同じく、「耳を傾ける価値のないマージナルな声」という立場に追いやられていく可能性が否定できないということだ。今のこの異常な状況は、無視され周縁に置かれていた声の持ち主たちのリベンジでもあるからね。








当エントリ、はてブのトップページに出ていた。当ブログは、はてブでカテゴリーが「テクノロジー」で判定されるのがデフォだが、その点については、もう放置することにした。はてなの技術力で、英語と日本語が混ざったテクストについて自動でまともに「カテゴリ判定」ができるようになる日がいつかきっと来るはずだから、それまで待つ。(でも、気になるなあという方が気がついた部分だけでも直してくださる場合は、ありがたいです。)







ですよねー。



さらに追記:
本エントリ、はてブのトップページに表示されていたことから、非常に広く読まれたようです。はてブの数も280、これは当ブログ開始以来最高値じゃないかと思います。読んでくださっているみなさまにお礼申し上げます。

また、はてブのカテゴリも、親切なはてなユーザーさんが「テクノロジー」から「政治と経済」に修正してくださっていました。ありがとうございます。



で、はてブで3桁以上に広がりだしたあとで少しTwitterに連投したのがあるので、貼り付けておきます。これ、11月7日に貼り付けるつもりだったんですが、そのタイミングでTwitterが落ちていたので、そのままやる気くんが行方不明になってしまってました。すみません。
















あと、これだけブクマ数が増えて「ブクマ一覧非表示」だと、また「都合の悪いことを隠しているのだろう」的な言いがかりを一方的につけてくる人々が出る可能性があるので、キャプチャ画面をアップしておきます。(非表示の開示は、やっぱりしないことにしました。「本文を読まずに自分がそのときに言いたくなったことだけを言う」的な現象が生じ、そこからpost-truth的なことになるのがいやなので。)キャプチャ画像では各ユーザーさんのIDはマスクしてありますが、ここにキャプチャされているのはすべて公開情報で、IDもタグもコメントも、そのユーザーさんのはてブのページでは普通に表示されています。また、ページトップにある数値(280)とキャプチャしたブクマの数が合わないのは、280という数値には非公開ではてブを使っているユーザーさんも含まれるためで、私がキャプチャ時にカットしたものはありません(ただし、私が普段から非表示に指定してある方のブクマは、ここでも表示されていないかもしれません)。画像は分割してあり、全7点。それぞれクリックで原寸表示されます。















「ブリティッシュな日本語」…… (・_・)

(気分はもう吉田健一)

※この記事は

2016年11月05日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼