kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2016年10月25日

ホメオパシーがまた話題になったので、「英国でのホメオパシー」について約6年前のことを振り返り、最新状況も見てみよう。

「ホメオパシー」がまた「ネットで話題」になっている。というか、「はてブを使っている人と、それを見ている人の間で話題になり、機動力に優れたBuzzFeed Japanが記事にしたことで、さらに話題になっている」。ただしここで「話題」にしている人々は、かなりの程度まで、同じ人々だろう。ホメオパシー(およびそれを含む「ニセ科学」)については、「新しくネタが出ると話題にする界隈」があり、基本、その界隈の外では話はほとんど広がらないか、一過性で終わってしまう。ざっくり言えば、ホメオパシーについて頻繁に話題にしているのは、信奉者か批判者のいずれかということになるだろう。

ホメオパシーについては、大手一般紙が記事にし、広く人々の目にその「話題」が触れることもときどきある。前回ホメオパシーが広範囲で「話題になった」のは、記録を見返すと2010年のことだ。前年の2009年に、ある助産師が乳児に必要なビタミンKの代わりにホメオパシーの「レメディ」を与え、乳児が死んでしまうというあまりにひどいことが起こっており、その件での裁判について大手新聞が報道を行なったときである。(その後、同年8月には「日本学術会議の金沢一郎会長が『ホメオパシー』と呼ばれる代替医療の効果を否定する談話を発表」し、「代替医療推進」の立場だった当時の鈴木寛副文部科学相もその談話を受け入れるという形で、ホメオパシーの効果は公的に否定されている。このときの顛末は、「碧猫」さん [RIP] の当時のブクマに詳しい)。

報道がなされた場合、この問題にある程度の関心を払ってきた人は注目し、話題にもするだろうが、そうではない多くの人々、とりわけそれまで「ホメオパシー」なるものを知らなかった人は、ニュースを見て、「ホメオパシーっていうのがあるらしいけど、何か怪しいっぽい」という漠然とした印象を抱いて、次の話題に関心を移してしまうだろう。その「何か怪しいっぽい」という印象が残っていれば、誰かから薦められることがあってもその人は手を出さずにいるだろうということを期待したいし、それが期待されて然るべきだが、もしも私がホメオパシー商材の販売を仕事にしていたら(&売れればいいというスタンスだったら)確実に、その「何か怪しいっぽい」という漠然とした印象を利用するだろう。「何か怪しいっぽいっていう印象があるじゃないですかー。私もそう思っていたんですよ。でも……」という話法でターゲットを説き伏せるのだ。

この話法は、「ニセ科学」に限らず詐欺商法でもカルトでもよく使われる。「怪しいという印象がありますよね」と語りかけられたターゲットが「そうですね」と反応すると、薦める人は言葉巧みに(というか、「人と人の会話として極めて自然な流れを作って」)ターゲットが何をどの程度知っていて、どう考えているのかを探る。そして、「私がこれからあなたに紹介する "これ" は、あなたがネガティヴな印象を抱いている "それ" とは同じでありながら別のものだ」という誘導を行なう。例えば、「○○商法って、昔ニュースになって、逮捕者が出たじゃないですか。今はその時代とは違って、あのときのことを十分に反省して、システムを変えたので……」云々というふうに話を進めるわけだ(←今書いているこの例は架空のもの。私がこれを書きながら適当にでっちあげたものであり、万が一現実と呼応したりしていても、それはただの偶然である)。あるいは、「私も怪しいと思ってたんですよ。でも怪しいと言い切るのもおかしいかなと思って、いろいろ勉強して、自分なりに納得できたんです。そして、やってみたらとてもよいものだったので、多くの人にそのよさを知ってもらいたくて……」云々。

「私も、かつてはあなたと同じように、『それ』についてこういう態度だった(が、今はそうではない)」というのは、英語圏で「ex-なんとか」を冠した運動(という日本語は変かも。movement)などで使われる定番の話法である。根本的には「同性愛は治療できるので治療すべき」という主張である「ex-gay」ムーヴメント(2013年に中心的団体が欺瞞を謝罪し、崩壊)はかなり組織的にそういう話法を使っていた。そこまで組織的でなくより個人的な語りとしても、「ex-信仰者」(信仰にはイスラム教、キリスト教などがあり、「無神論者」になった人もいれば「改宗者」となった人もいる)などは、そういう語りを完全に組み込んでいる(興味のある方はアヤーン・ヒルシ・アリなどを見てみるとよい)。

そういう語りが広く採用されるのは、それが効果的だからだ。うちらの日常にも(無害な)例はたくさんある。「銀杏は食わず嫌いだったが、食べてみたらおいしかった」とかいう類のものだ。また、そういうのが、物を売ろうとするときの広告に使われることもある。「クセの強さに苦手意識を抱いている人が多いパクチー。実はこんなうまみ成分があって、それを適切に引き出す調理法が……」(←適当に考えた架空の例です。パクチーにうまみ成分があるのかどうか、私は知りません)とか、「ばい菌に雑菌……『菌』にはネガティヴなイメージがありますね。しかし古来日本人は……」(←同上)とかいった語り口は、いかにも広告くさく聞こえるだろう。

話が広がってしまったが、今回、2016年10月に、またぞろホメオパシーが「ネットで話題」になったのは、ある有名ブロガーが、上記のような「○○には、ネガティブなイメージがあるが……」の系統の語り口を使って、ホメオパシーについてブログに書いたことが発端だった。(ただしその「有名ブロガー」が話題になっているのは、私は全く関心を持っていない界隈で、私はその人の名前と漠然とした風貌と、東京からどこかに移住したという程度のことしか知らない。彼の書いたものを読んだこともほとんどなく、何を書いてるのかも知らないし、どのくらい「ビッグな」存在なのかもわからない。)

【魚拓】【ホメオパシー】ムカデや蜂に刺されたときは「エイピス」を飲むと治るらしい。 : まだ東京で消耗してるの?
http://b.hatena.ne.jp/entry/megalodon.jp/2016-1011-1430-25/www.ikedahayato.com/20161011/66275429.html

これは、2016年10月11日にはてなのid:NATROMさんがはてなブックマークにブクマしたことから「ネットで話題」と言えるレベルにまで広まったものだ。最初から「魚拓」にリンクしていることについては、NATROMさんが「元記事にはブクマしたくないので」と説明している(元記事にリンクすると、ブログ主、つまりイケダハヤト氏のPVに貢献することにつながる)。
イケダハヤトさんがホメオパシーを勧める記事。元記事にはブクマしたくないので魚拓のほうで。

http://b.hatena.ne.jp/NATROM/20161011#bookmark-303926727


なお、NATROMさんは、「進化論と創造論」というサイトを2000年から運営し、また、主にはてなダイアリはてなブックマークでホメオパシーを含む「ニセ科学」についての指摘と批判を行なって10年以上になる方で、職業は内科医。詳細はご本人のプロフィールを参照。私も、ダイアリとブクマをときどき拝見するようになってずいぶん長くなる。

そのNATROMさんが俎上に載せたイケダハヤト氏のブログについて、何となくはてブを眺めて気づいたときには、「なんだ、またホメオパシーか」と思っただけだった。それをスルーせずに読んでみたのは、駅前の大通りから路地に入って10分ほど歩いたところにある住宅街の中の「隠れ家レストラン」の看板に書いてある「シェフの気まぐれサラダ」並みの気まぐれであったに違いない。ブクマされているブログを読むより先に、そのとき既に多数集まっていたはてブのコメント(ブコメ)をざーっと眺めているうちに、「ああ、これは、10年以上もNATROMさんの発言を知ってる古参が『なんだ、また〜か』と言ってスルーしてちゃダメな案件なのかもな」という気がしてきたのだ。ブログ主について私は特に思うところもないのだが、ブコメを見る限り「ついにあのイケダハヤト氏がホメオパシーに手を出した」という事態であるということも見て取れた。

というわけで当該のブログのページを(魚拓で)開いてみたのだが、いきなり、あまりに典型的に「ホメオパシーっていうのがあるらしいけど、何か怪しいっぽいっていう印象があるじゃないですかー。私もそう思っていたんですよ。でも……」という話法であることに驚いた。こんなの、雑誌や通販カタログのどうでもいいキャッチコピー(「晴れやかな風の吹く日には、ヌケ感たっぷりのリラックゼーションで旬顔しつつ、いつもと違う表情」みたいなの)同様にスルーせずにいることは、私には難しい、というほどベタ。信号待ちしてるともれなく声をかけてきた、いにしえの新宿伊勢丹前交差点のキャッチセールス並み、ど直球のセールストークである。

その書き出しの部分はこうだ。(「レメディ」のことをのっけから「薬」と言い切ってるのは、スルーする。)



このような、「何か怪しいっていうイメージがあるじゃないですかー」というツカミに続けて、ソース(ツイート)を示しながら「あの高城剛さん」も持っている、という形で《権威付け》を行なっている。ここまで見た段階で、私が自分でたまたま遭遇したページだったら、スルーするところだ。だが、今回は最後まで読む。

これに続くのは、完全に「お約束」。うさんくさい商法やカルトのセミナーのやり口だ。



上記引用部分の「ぼくが超信頼している方」2人が、「ホメオパシー自体には懐疑的」なのに、虫刺されでヤバイというときになんちゃらいうホメのレメディを服用したら、あら不思議……ということがあった、とブログ主のイケダハヤト氏は、この直後の段落で書き、「うーん、あの2人がいうから、やっぱり効くんだろうなぁ」とおっしゃっているのだが、その裏に「ホメオパシーに認められるのはせいぜいがプラセボ効果だといわれている」ということを同氏は認識しているということがくっきり透けて見えるだろう(プラセボ、つまり偽薬は、「今から効くお薬を飲むから、この症状は消える」と思っているからこそ効くという。一方、氏の伝聞のケースでは「効くかどうかわかんないよね」と思ってる人にも効果があったということが、ことさらに強調されている)。

ここまで読んだだけでもうオナカイッパイになったのだが、その先も見てみると、ブログの最後のレメディの販売リンクまでのスペースがずっと「体験談」の羅列と来たもんだ。雑誌などによく載っている広告の手法と同じである(見た人が「ほんとかなー」、「どうせ効かないよねー」と思いながら、ついついサンプルを申し込んでしまうように作られたダイエット食品や化粧品の広告で、最も重要なパートを占めるのが「体験談」だ)。

しかも、引用されているそれらの「体験談」の日付を見ると「必死に集めた」感がある。2016年10月のブログで、2011年10月、2016年5月、2016年2月、2013年2月、2013年6月と広範囲のツイートを、「(実際に効果があったという個人の)体験談」として埋め込んで紹介している。おそらくTwiterで、その「レメディ」の商品名で検索をかけて、これはと思ったものをピックアップして貼りこんだのだろう。

taikendan.png


ここまで眺めて、ぐったりと疲れた状態で、私がはてブの100字上限いっぱい使って書いたのが下記。イケダハヤト氏のこのブログ記事は明らかに、「マス」を相手にして書かれたものではなく、「固定客」を相手にしたものだ。既にイケダハヤト氏のことを信頼し、愛読者・ファンとなっている人だけに向けて書かれた狭い範囲向けのテクスト。私が「Twitterで検索して必死にかき集めたんだろうな」と思った「体験談」について、そういうネガティヴな言葉では語らない/語ろうとしない小さな「ファン」の輪の中で広まればよい、と想定されて構成・執筆された記事だろう。

「僕は懐疑的」は定番セールストークでは。あと「効いた」系体験談をわざわざ探したという痕跡を隠してもいない(2011年など古いものを普通に貼ってる)のは「疑似科学批判」は受け流す界隈だけ相手にしてるからでは

http://b.hatena.ne.jp/nofrills/20161011#bookmark-303926727


ひょっとしたら「ニセ科学・疑似科学批判」(あのような「体験談」の羅列は「ニセ科学批判」を引き起こす)の立場で発言している人々を「釣る」こと、そして「炎上」によってネット上で話題になることも当て込んで書かれたものだったかもしれない。

と考えると、これが「はいはい、広告広告」とスルーされずに、「あのイケダハヤト氏がついに……」的に話題になってしまったことは、よかったのかどうか、と思う。むろん、おかしな話(「トンデモ」)は「おかしい」と批判されるべきであるというのが原則であるにしても、このようなあからさまな「炎上」狙いの前には……と思わざるを得ない。

まあ、そんなことは、既に話題になってしまった後で言っても仕方がない。今後は、このブロガーは「こういう人」だという前提で……、という以上にできることはない。(とっくにそうしている人も多そうだが、このブロガーについて別に関心を払ってこず、今回の「騒動」で初めて知ったという人もまた、それなりに多いと思う。)

さて、このイケダハヤト氏のブログ記事がはてブで話題になったあとで、ホメオパシーについて改めて、何がどうおかしいのかを説明するブログ記事が書かれた。

id:ublftboさんのブログ: とても丁寧で親切な解説。ご一読を。
イケダハヤトさんのホメオパシー紹介記事について
http://interdisciplinary.hateblo.jp/entry/2016/10/11/222325
http://b.hatena.ne.jp/entry/interdisciplinary.hateblo.jp/entry/2016/10/11/222325
そもそも、虫刺されや蕁麻疹は、軽症であれば、数時間から数日で治るものなのです。ですから、イケダハヤトさんが紹介しておられるようなtwitter上の事例は、単に時間が経って治ったものの可能性があります。言い方を換えれば、何もしなくても治ったかも知れない、という訳です。そこに、レメディを与えたという行為を加えたために、レメディを与えたら治ったと考えてしまった、のかも知れません。

http://interdisciplinary.hateblo.jp/entry/2016/10/11/222325


こういうことは日常生活の中でよくある。「私が遠出するときは必ず雨が降る」から「雨男(雨女)」だという類の話は、誰も本気にはしないだろうが、おそらくはそれゆえに軽い話題としてよく口にされる。もう少し「科学的」なものとしては、例えば、洗濯洗剤をA社のものからB社のものに変えたら、靴下のゴムが伸びてゆるゆるになってしまった、といったものがある。これは洗剤のせいだろうか。実際にはその靴下のゴムの耐久年数とたまたまタイミングが重なったのかもしれないが、それを知る術などないわけで、B社には「おたくの洗剤のせいで……」というクレームが入り、B社の研究開発部門では、その点について詳しく調べることになるかもしれない。そのように「まず指摘されたことの事実確認を取る」というのが「科学的手続き」であり、その確認もせずに「靴下のゴムが伸びたのはB社の洗剤が原因だ」と判断・断定することは「科学的」ではない(そのように仮定することは、科学的手続きの一部ではあるが、「仮定」のあとは「証明」がなければならない)。

id:NATROMさんのブログ(ダイアリー):
ミツバチのレメディ「エイピス」は何に効く?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20161012
ホメオパシーの理論では、ミツバチを希釈して作られたレメディはミツバチ刺傷に効くと考えられている。これはいい。しかし、虫刺され全般、たとえばムカデやスズメバチによる虫刺されにも効くとされている。ムカデに刺されたんなら、ムカデを希釈したレメディを使えよ。

百歩譲って、虫刺され全般に効くのもいいとしよう。だが、エイピスは虫刺されだけでなく、じんま疹にも効くとされている。なんでだよ。ミツバチ関係なくね?『ホメオパシー大百科事典』(産調出版)によれば、「皮膚が腫れてかゆく、接触に過敏になり、刺すような痛みがある」という症状のため、じんま疹にも虫刺されにも対応すると書かれている。いやいや、ミツバチ刺傷とじんま疹の症状はだいぶ違うぞ。

それどころか、なんと膀胱炎にも効くとされる。「排尿時に、尿道と膀胱が灼けるように、刺すように痛む」という症状があるからである。なんでもありじゃないか、と読者は思われるだろう。その通り。エイピスのレメディは「目、唇、口腔、のどの炎症」や「発熱」にも役立つとされている。

エイピス以外にも多数のレメディがあり、それぞれ多数の症状に効くとされている。同じ膀胱炎でも「灼けるように切られるように痛む」場合には別のレメディが使われる。……


もう、何が何やら……。

ここまでは10月11日、12日の動きだが、2日もすれば完全に「古い話題」となるのが常のネットには珍しく、その後もじわじわと「ホメオパシー」についての記事が書かれたようだ。何よりまず、14日に、イケダハヤト氏本人が「煽り」の手法でレスを返している。私は、申し訳ないが、このタイトルだけでオナカイッパイになったので読んでいない。読む必要性を認め得ない。

【魚拓】ネット民はホメオパシーに親でも殺されたの?イケダハヤトの代替医療に対するスタンス。 : まだ東京で消耗してるの?
http://b.hatena.ne.jp/entry/megalodon.jp/2016-1014-0811-47/www.ikedahayato.com/20161014/66439649.html

一方、いつもながらすばらしい10月16日のComplex_Catさんのブログ(写真が見事ですが、虫や爬虫類が苦手な方はご注意を):
トンデモで消耗しないために
http://complexcat.exblog.jp/26280722/
http://b.hatena.ne.jp/entry/complexcat.exblog.jp/26280722/

有毒な生き物に咬まれたり刺されたりする可能性と常に隣り合わせの研究者やダイバーが、いかにその可能性に備えているかということをわかりやすく説明してくれている。そこには「ホメオパシー」みたいなものには居場所はない。

……思い込みの民間・代替療法でドヤ顔するのは、よほどの経験値が有っても、むしろそれをドヤ顔の根拠にするならより罪が重い。まあ、自分の指から出血した僅かな血の玉を見て倒れる人が居たりするから、過剰な心配を取り除きつつというのは前提なのだけれど、適当なことをやっていながらなんでも「大丈夫、大丈夫」という人や、「やーこれは大変だ、でも安心して下さい、このレメディが」みたいなのが一番危ない。

スネークバイトキットなどのリムーバーで吸引するのは無論出来たほうが良い。……リムーバーによる傷口からの吸い出しも、思った以上に体外に毒を排出できなかったりするから、あくまで、余計なことをするよりも病院に急ぐ方が良いという頭で動いた方が、大体の場合正解である。結論としてそのように誘導しないとあんまり細かいことを言っても意味がなくなってしまう。でも、そう書けばなんでも医者に連れていけばいいという思考停止みたいに感じる人も多いだろうけど、この手の動物とのトラブルも含め、救急医療的な局面の場合、大抵、それであってる。胸骨圧迫にしてもAEDにしても、医療のプロにつなげられることが前提の作業だ。医者気取りで治療っぽいことをやることに憑かれてしまった人に関わらないほうが良い。

マムシやハチ刺されぐらい結果的にアナフィラキシーショックもなく、平気なのであれば、消毒処置後、放置で構わないが、間違ってもあっち系の「特に体の中に何かを入れる」治療を試すみたいなのは避けた方が無難だ。民間療法は数多く、自己責任で試せばいいと思うが、理屈が破綻していながら科学的な、或いは超科学に見せかけた偽装(「わかってないなあ、その科学の先を行っているのが・・・」っていうのがまさにその典型)をしているものについては遠ざけた方が安全だ。そのもの単体ですまない。それを呼び寄せるということはそれに係るソサイエティに係るということで、そちらの方のリスクも考えた方がいい場合がある。……

http://complexcat.exblog.jp/26280722/


そしてBuzzFeed Japan(石戸諭記者)、10月22日付:
ホメオパシーとニセ科学 繰り返される騒動のゆくえ
https://www.buzzfeed.com/satoruishido/homeopathy-mondai
http://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.buzzfeed.com/satoruishido/homeopathy-mondai

「虫刺されであれ、風邪であれ、もっと重度の病気であれホメオパシーに効果はありません。これまでホメオパシーの科学的根拠を調べようと、多くの研究がでています。実際に患者を二群に分けた研究もあります。一方の群にレメディを与え、もう一方の群に偽薬を与えた臨床試験においても差はでませんでした」

BuzzFeed Newsの取材にこう断言するのは、代替医療やニセ科学問題に詳しい、内科医のNATROMさんだ。

……

「……(プラセボ効果で症状が和らぐなどの)こうした効果について、科学的な根拠がないことを理由に頭ごなしに否定する気持ちはありません。この程度なら個人の自由で、と済むことでしょう」

……

しかし、と続ける。

「問題はプラセボ効果を超えた効果がある、と喧伝している人たちがいて、それを信じてしまう医療関係者もいるという事実です」


ここで、2010年にホメオパシーが大きな話題となった「ビタミンKシロップを投与せず、レメディを与えた助産師」の「医療ネグレクト」の一件が参照されている。

「ホメオパシーは特に、過去の歴史からいっても反標準医療的な主張と結びつきやすいものです。体験談を紹介するにしても、極めて慎重であるべきでしょう」


この記事では、イケダハヤト氏へのメールでの取材の回答も掲載している。そして、私がはてブだけで済ませず、時間をかなりたくさん使ってブログの記事を書いているのも、その氏の回答の一節に反応せざるを得なかったからだ。

特に日本のネット界隈において、ホメオパシー=絶対悪となっているのは、純粋に興味深いですよね。海外では割りと一般的だと言いますし。

https://www.buzzfeed.com/satoruishido/homeopathy-mondai


※ちなみに「わりと」は通例ヒラいて表記するし、トジる場合は「割と」。メールの文面を書いたイケダハヤト氏が日本語を書くことを仕事とする人なら、知っておかないと恥ずかしいレベルの表記基準だ。

ホメオパシーについて「海外では割りと〔原文ママ〕一般的」と言う場合、その「海外」には100%確実に英国が含まれる。そして「英国でのホメオパシー」というものについての日本における喧伝に関しては、当ブログでは2009年から10年にかけて、何度か書いてきた。一応「ホメオパシー」というタグをつけて管理してきたので(タグのつけ忘れはあるかもしれない)、関心のある方はご参照いただきたい。

日本では「英国」は、それだけでひとつのブランドとなっている。英国以外に「おフランス」のような類例もないわけではないが、「英国式○○」というと、何か特別な感じ、「英国は本物(オーセンティック)」といった印象を人々に与えることができる。ホメオパシーに関しても、英国をめぐるその「イメージ」が利用されてきた。実際、ホメオパシーはNHS(国民健康保険)でカバーされる部分もあり(近年、見直しが行なわれている)、「英国ではホメオパシーは一般的」という説明が、日本では広く行なわれてきた(本当に現場で「一般的」なのかどうかはまた別の話だが)。さらにホメオパシーの場合は、「英国王室」というブランドの中のブランドも利用できる。王室の主要メンバーがホメオパシーを使っているからだ(現在はどうかは調べていないが2010年の時点では「王室御用達」だったことは確認している)。

そして、その「英国」ブランドの利用で最もアグレッシヴだった日本のホメオパシーの団体・組織が、「ホメオパシージャパン」(略して「ホメジャ」)創業者の由井寅子氏の団体、「日本ホメオパシー医学協会 (JPHMA)」である(日本には、ホメオパシー推進団体というか、レメディを販売し、ホメオパスの認定書を発行するなどしている団体は複数ある)。ホメジャが運営する「学校」(ホメオパス養成機関)は日本国内に5つの拠点を展開しているが、その「学校」のオーセンティシティを保証していたのが同協会が英国の首都ロンドンで運営していた、「ロイヤル・アカデミー・オブ・なんとか」と誤認させる気満々としか思えないネーミングをした「学校」だった。

そしてその「ホメジャ」の名前は、今回「ネットで話題」になったイケダハヤト氏のブログにも登場している。氏がamazon.co.jpのリンクをはっていたレメディが、ホメジャのものだ(ちなみにこのレメディはホメオパシーでは定番だそうで、ホメジャが独自に作っているというわけではない)。amazon.co.jpで検索すると(←アフィリエイト・コードなしのただのリンクなので安心して踏んでください)、この定番レメディを紹介しようとすると販売元がホメジャともう1軒の2軒しか出てこないということが確認できるので、単なるamazonのアフィリエイターであるイケダハヤト氏が、いろいろと問題含みであるホメジャと直接つながっているわけではないだろうと、今のところは結論できる。今のところは。大事なことなので二度言いました。(氏は「ホメオパシーを使うことを否定しないからといって、通常医療を否定するわけではない」とBuzzFeed Japanの取材に応じて主張しているが、もしもホメジャと直接つながっているとしたら、その点、ちょっとわかんなくなってくるかな。)

なお、ホメジャがロンドンに設立・運営していた「ロイヤル・アカデミー・オブ・なんとか」と誤認させる気満々としか思えないネーミングをした「学校」だが、現在では活動が確認できない。「学校」のサイトは2014年で時間が止まっているし、英国の教育機関(各種学校を含む)についての情報サイトでは下記のように「もうアクティヴではない」とある。



英国は、キャメロン政権下でどんどん「ヴィザ発給要件」が厳しくなっていたのだが、この「学校」は「学生ヴィザ」を発給できる教育機関とはみなされなくなったのかもしれない。あるいは、単に学生が少なすぎて学校の運営が成立しなくなったのかもしれない。そこまではちょっと調べきれないのだが、とにかく現状、学校の実態は消えている(サイトだけは残っているが)。

それでも、ホメジャが運営する日本国内の「学校」網を紹介するマップでは、既に実態がなくなっている英国の「学校」の存在が、ユニオン・フラッグつきで強調された状態のままになっている。単にウェブサイトの更新漏れかもしれないが、ほんの少し画像を修正すれば済むのに、なぜやらないのだろう。いずれにせよ、この「英国旗」がこのページに残っているだけでも、ホメジャについての「英国ブランド」の印象付けという効果は十分にあるだろう。




あと、BuzzFeed Japanの記事を受けて、id:ublftboさんもエントリを立てておられる(10月22日付)。

ホメオパシーの問題とイケダハヤトさんの問題
http://interdisciplinary.hateblo.jp/entry/2016/10/22/211543

ここでは当該のブロガー氏の言動の何がどうおかしいのかが明確に、なおかつ丁寧に指摘されているが、そのほかに重要なのは、「ただの砂糖玉なので無害」と認識されているレメディが、製造過程が雑だったりして有害物質に汚染され、死亡事故を引き起こしてもいるという事実の指摘である。ここではインドで発生した死亡事故についてのtransactさんのブログがリンクされているが、それとは別につい最近、米国での事例についての報道があったばかりだ。

日本でも販売「ホメオパシー」幼児薬 米で10人死亡?調査へ
2016年10月15日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201610/CK2016101502000247.html
【ニューヨーク=共同】「ホメオパシー」と呼ばれる代替医療で販売されている幼児向けの薬で、過去六年間に十人が死亡し、約四百人が健康被害を受けた可能性があるとして、米食品医薬品局(FDA)が十四日までに調査に乗り出した。

調査対象となっているのは、ホメオパシー薬を手掛ける米ハイランド社が製造、販売する幼児用の製品。歯の生え始めの痛みを和らげるとしているが、FDAは死亡のほかに昏睡(こんすい)状態、嘔吐(おうと)などの報告があると指摘している。

……健康被害の理由は調査中だが、FDAが二〇一〇年に同社の製品に出した警告では、ナス科植物で強い毒性を持つ「ベラドンナ」の成分を含んでいると指摘した。

ハイランド社は「現時点で商品と健康被害を関連付ける医学的、統計的な証拠は示されていない」と反論する声明を出した。


この「ハイランド社」の言い分は、例えば1980年代のインドにおけるユニオンカーバイド社のそれを思い出させるのだが、ホメオパシーのような「代替医療」が20世紀の終わりから21世紀のはじめに流行っていたのはそもそも、そのような無責任な大企業が引き起こした環境汚染・健康被害による漠然とした不信というものが重要な背景になっていたのではないか。「責任逃れ」というものにつける薬もないし、それに効くレメディもありはしないということか。

あと、イケダハヤト氏がBuzzFeed Japanの取材に答えて「海外では割りと一般的」などと言っていた(22日付記事)のは、上記の共同通信の報道があって1週間後だ。

ホメオパシーについての自身の発言が大いに話題になり、自身も「煽る」という手法で乗っかってきておいて、ホメオパシーについての共同通信のような大手の報道(上では東京新聞を引用したが、ほかにも同じ記事は産経、毎日などに配信されている)を見ていないということは、ちょっと考えづらい。米国での死亡事故について、氏は発言をしていないのだろうか(メールの文面が編集され、その部分がカットされたという可能性も否定はできない)。いや、発言の有無が重要なのではなく、米国での死亡事故を聞いて、どのように考えているかが重要なのだが。

……と、長くなったが、「ホメオパシーなんて今さら……」と言っていられる状況でもないのかもしれない(前回おおいに話題になったのはもう6年以上も前で、最もターゲットにされやすい若い年代の人たちは「ホメオパシー」なんて聞いたこともないかもしれない)とふと思ったので、ざっと書いてみた。

今後も、何か書くべきことがあればブログで書くだろうし、記事のメモなどははてブで、「ホメオパシー」のタグをつけて(下記リンク)更新・追加していく。はてブでは現状、2009年以降、50件くらいのリンクがあるので、関心のある方は参照されたい。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/homeopathy/

世界的動向については、英語版のウィキペディアが頻繁にアップデートされているので、それを参照するのが手っ取り早いだろう。今見たところ、2015年の下記のアップデートが大きい。米国とオーストラリアの例。
https://en.wikipedia.org/wiki/Homeopathy#United_States_Food_and_Drug_Administration_.28FDA.29_2015_hearing
On April 20–21, 2015, the FDA held a hearing on homeopathic product regulation... Michael de Dora, a representative from the Center for Inquiry (CFI), on behalf of the organization and dozens of doctors and scientists associated with CFI and the Committee for Skeptical Inquiry (CSI) gave a testimonial which summarized the basis of the organization's objection to homeopathic products, the harm done to the general public and proposed regulatory actions:

The CFI testimonial stated that the principle of homeopathy is at complete odds with the basic principle of modern biology, chemistry and physics and that decades of scientific examination of homeopathic products shows that there is no evidence that it is effective in treating illnesses other than acting as a placebo. Further, it noted a 2012 report by the American Association of Poison Control Centers which listed 10,311 reported cases of poison exposure related to homeopathic agents, among which 8,788 cases were attributed to young children five years of age or younger, as well as examples of harm – including deaths – caused to patients who relied on homeopathics instead of proven medical treatment.

The CFI urged the FDA to announce and implement strict guidelines that "require all homeopathic products meet the same standards as non-homeopathic drugs", arguing that the consumers can only have true freedom of choice (an often used argument from the homeopathy proponents) if they are fully informed on the choices. ...


https://en.wikipedia.org/wiki/Homeopathy#Official_conclusions_and_recommendations
In March 2015, the National Health and Medical Research Council of Australia issued the following conclusions and recommendations:

- There is no reliable evidence that homeopathy is effective for treating health conditions.

- Homeopathy should not be used to treat health conditions that are chronic, serious, or could become serious.

- People who choose homeopathy may put their health at risk if they reject or delay treatments for which there is good evidence for safety and effectiveness.

- People who are considering whether to use homeopathy should first get advice from a registered health practitioner. Those who use homeopathy should tell their health practitioner, and should keep taking any prescribed treatments.


世界各国でのホメオパシーに関する規制や普及の状況については:
https://en.wikipedia.org/wiki/Regulation_and_prevalence_of_homeopathy

英国は、NHS適用だとか王室との関係だとかで書くことがいっぱいあるので、ウィキペディアでも別ページになっているが、上記ページだけでも相当の情報量がある。下記引用部分なんかは、英国を持ち出す「海外では一般的」論者をぶっ飛ばすのに使うと有効だ。
In Britain, homeopathy has been in a state of steady decline over recent years. The number of National Health Service (NHS) prescriptions for homeopathic remedies dropped by over 85% between 2000 and 2010 (from 134,000 to 16,359), with homeopathy accounting for only 0.001% of the total 2010 prescribing budget. The Tunbridge Wells Homeopathic Hospital, formerly one of four homeopathic hospitals operated by the NHS, was closed in 2009 following a drop in referrals and a review by the West Kent Primary Care Trust of funding of homeopathy. In September 2010, one of the three remaining NHS-funded homeopathic hospitals, the Royal London Homeopathic Hospital, was renamed as the Royal London Hospital for Integrated Medicine to more accurately reflect the nature of its work. A fifth homeopathic hospital run by the NHS, the Hahnemann Hospital in Liverpool, had been closed in 1976.

...

In 2009 there were approximately 2,000 homeopaths, who are not GPs, registered with various organisations. A systematic review of surveys, published in April 2013, concluded that homeopathy is used by UK medical professionals to a minor degree, and that on average referral rates are low.

Around 2009, a few UK universities started closing or reviewing their courses on homeopathy and alternative medicine, after accusations that they were teaching pseudoscience. These courses had been attracting bad publicity and criticism for the universities teaching them. In May 2010 the NHS announced that junior doctors' training would no longer include placements at the Glasgow Homeopathic Hospital. In 2012 and 2013 there were only two universities left in the United Kingdom offering homeopathy degrees.

In February 2010 the Science and Technology Select Committee concluded that: "the NHS should cease funding homeopathy. It also concludes that the Medicines and Healthcare products Regulatory Agency (MHRA) should not allow homeopathic product labels to make medical claims without evidence of efficacy. As they are not medicines, homeopathic products should no longer be licensed by the MHRA." ...

In June 2010, the British Medical Association voted three to one in favour of a motion that homeopathy should be banned from the NHS, and kept from being sold as medicine in pharmacies. In February 2011, out of 104 PCTs who responded to queries, 72 said they did not fund homeopathy, with 10 of these having stopped funding homeopathy in the last four years. By the 2011-2012 financial year the percentage of PCTs funding homeopathy had fallen to 15%.

※この記事は

2016年10月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 11:00 | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼