kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年02月09日

アイルランドがギャングランドで、その「IRA」はあの「IRA」とは違うという件。

2015年、ベルファストの住宅街で5月と8月に相次いで「IRA」のメンバーが撃ち殺され、ユニオニストの政党が「IRAがまだ存続してるなんて、恐ろしい」的なことを(今さら)言い出したことで、ストーモントの自治議会が機能を停止するということがあった。

その「IRA」は、Provisional IRA (PIRA)、つまり「IRA暫定派」である。北アイルランド紛争(1969〜1998)において「IRA」と言う場合は、紛争のごく初期(OIRAとPIRAの分裂前)は別として、「PIRA」のことを指す(「暫定」というのは、OIRAとPIRAの分裂時の呼び方がそのまま残ったもので、《意味》はないも同然である)。1970年代から90年代初めにかけて北アイルランドで英軍や警察を標的に攻撃を展開し、イングランドでハロッズ、ブライトンでの保守党党大会会場のホテル、ロンドンの地下鉄駅などをボムるなどし、1991年2月7日にはダウニング・ストリート10番地(首相官邸)を迫撃砲で攻撃し、1994年8月に停戦し、1996年2月9日にドックランズ爆弾事件でその停戦を破棄した後に、1997年7月に再度停戦して、以降は軍事的手段(「政治的暴力」)を停止して、政治的手段(選挙)で目的を達成する「和平路線」に切り替えたのは、この「IRA」である。そしてこの「IRA」が、ジェリー・アダムズとマーティン・マクギネスが主導する「メインストリームのリパブリカン」である。

2015年5月から8月の事態は、「暴力はやめた」はずの彼らが、(何らかの原因による)内輪もめに際し、銃を使って人を殺しているということだった。何が原因なのかははっきりしないが、「IRA」は軍事組織としてはもはや機能しえないものの、組織の構造は存続しており、武装闘争以外の何らかの活動をしている。それを手っ取り早く言えば「ギャング」ということになるが、あまり気軽に「ギャング」呼ばわりすると、あら、ノックの音だわ、こんな時間にだれかしら……ということにもなるかもしれない。

一方で所かわってアイルランド共和国のダブリン。何しろ、「コカイン使用の実態」に関し、大学の研究チームが行なった調査で、サンプルのすべて(100%)が「クロ」の結果になった(2007年)のがアイルランドである。(この映画の予告編の冒頭、10秒くらいのところにあるような用途で使われる。)そこまでくまなく行き渡っているのは、流通システムがあるからで、その流通システムを運営しているのが「ギャング」である。こちらは何の留保もなく「ギャング」だ。

20年前の1996年6月、ギャングについての調査報道を行なっていたジャーナリスト、ヴェロニカ・ゲリンが、街中を車で移動中に撃ち殺された。彼女の活動と死は2度にわたって映画化されているが、日本語環境でも難なく見られるのは2003年のジョエル・シュマッカー監督、ケイト・ブランシェット主演の『ヴェロニカ・ゲリン』だ。オンラインでも配信されているが(→楽天SHOWTIME)、DVDも出ている。

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この映画にも実名で出てきたGerry Hutchというギャングがいる。他のアイリッシュ・ギャングの親分たちのように贅沢な暮らしをするのではなく、ダブリンのインナーシティで質素な暮らしをしていることで「僧侶 (The Monk)」と呼ばれている(そのあだ名をつけたのは、ゲリンだという)。かつては銀行強盗として悪名を馳せていたこの人物は……うーん、ウィキペディアを読んでも、ちょっと何を言っているのかよくわからない

ともあれ、そんなギャングの名前が、ニュースに出てくるようなことが、ダブリンで起きている。同時に「コンティニュイティIRA (Continuity IRA)」(「プロヴィジョナルIRA」、つまり「IRA」ではない)の名前も出てきている。

Twitterで見たりRTしたりしていたら情報が断片化してしまったので、まとめておこうと思う。断片化していてよいことはないので。

2016年2月6日(土)、ダブリンでボクシングのミドル級のタイトルマッチが予定されていた。(私はボクシングに興味があるわけではないし、調べるほどのことではないのでうろ覚えで書くが、)空位となっている王者の座を争い、アイルランドのボクサーと、中南米のどこかの国(忘れた)のボクサーが対決するタイトルマッチをメイン・イベントとして、数試合が行なわれることになっていて、試合前日の5日(金)の午後、ダブリン市内の(大規模チェーンではない)ホテルで計量が行なわれた。

その最中に、そのホテルを、ガンマンたちが襲った。

襲撃の瞬間の映像(流血はないけど、生々しいので注意してください)。計量台に上がったボクサーを撮影する手持ちのカメラの映像だ。ボクサーが計量を終えて台から降り、係の人たちが書類に記入しているところに、銃撃が始まる(映像のフレームの外)。パンツ一丁で体重を量ったばかりのボクサーが、上着を着ようと袖を通す前に脱兎のごとくカメラの前を横切る。室内にいた人たちが逃げ惑う。カメラを持った人も、その部屋から逃げ出す。すぐそこに裏口があり、カメラは外に出る。「パパ、助けて!」という子供の叫び声がする。そこにひときわ大きな銃声が響く。






「警官の服装をした男たちがAK47でホテルを襲撃」などと聞くと、アフガニスタンでのタリバンの組織的攻撃かと思うが、ダブリンでの襲撃は「無差別テロ」ではない。彼らには狙った標的がいた。(といっても、現場はもちろん非常に混乱していた。ボクシングの取材に行っていた北アイルランドのBBC Radio Foyleの記者の生々しい証言を参照。)

襲撃犯は6人組で、中にはブロンドのかつらを着用して女装して会場に入った男もいたという。(写真を見たが、「背の高い、骨太の女の人」のようだった。特に違和感ないと思う。)

撃たれた何人かの人たちは、スペイン南部(コスタ・デル・ソル)を拠点とするアイリッシュ・ギャングの関係者で、死亡したのはデイヴィッド・バーンという(アメリカを拠点とする有名なミュージシャンと同姓同名の)32歳の男(34歳という報道もある)。アイルランドのギャングがアイルランド国外に拠点を持っているのは、国内だと当局が資産を押さえてしまうからだ(ヴェロニカ・ゲリンが殺されたあとにその仕組みが作られた)。殺されたバーンが属していたのは、アイルランド最大のドラッグ密売組織であるクリスティ・キナハンのギャングで、バーンは組織の上層部の人がいないダブリンでの組織の活動を仕切っていたという。そして、彼らギャングのメンバーたちが通っているジムを、プロボクサーたちも愛用している。ボクサーたちはギャングとは関わりがないというが、ギャングのほうではボクシングという機会を利用してギャングの仲間内の交流をするなどしている。
http://www.irishtimes.com/news/crime-and-law/david-byrne-profile-victim-one-of-a-new-breed-of-criminal-1.2525565

He regularly organised parties in Dublin for members of the Kinahan gang, including when they had travelled from their base in Spain for boxing matches in Dublin.

Members of the gang frequent a gym in Marbella where many Irish and British boxers train.

When some of those boxers compete in Ireland or the UK, members of the Kinahan gang follow to watch the fights and socialise.


こういった「ギャングランドとしてのアイルランド」のことが説明された記事も、今回の事件で何点も出た。ガーディアンの下記記事(ヘンリー・マクドナルドによる)はとても読みやすく、情報がよく整理されている(アイリッシュ・タイムズなどでははっきり書いていないこともはっきり書いている)。




The boxing match, which was to have taken place at the National Stadium in west Dublin, was billed as a “Clash of the Clans” – an apposite title given the clan-like warfare that has re-erupted in the city.

In one corner of this bloodstained contest stands the man thought to be behind Friday’s attack, who was first named by the murdered investigative journalist Veronica Guerin as the Monk. Garda sources suspect the man who controls most of the drug dealing in Dublin’s Northside acted for revenge and self-preservation.

In the other corner is a figure from the Southside of the Irish capital who now lives in southern Spain, and who is believed to have ordered the assassination of the Monk’s nephew, Gary Hutch, in an Andalucian apartment complex last September. This gangland boss has been trying to muscle in on his rival’s Northside turf over for the past 18 months.

And in the middle are legions of the two men’s followers who have killed and have been killed in this, one of the longest-running feuds in Dublin’s vicious gangland war.

http://www.theguardian.com/world/2016/feb/07/dublin-drugs-shooting-spain-gang-warfare


つまり、「赤コーナー、ダブリンのノースサイド代表、ヴェロニカ・ゲリンに『僧侶』と呼ばれた男、ジェリー・ハッチ! 対する青コーナーは、ダブリンのサウスサイド代表、スペイン南部、コスタ・デル・ソルを拠点に部下を動かす男、クリスティ・キナハン!」ということで、その2人の間で両派の殺し合いが起きている、と。

その中に、「僧侶」のジェリー・ハッチの甥であるギャリーの殺害(2015年9月、アンダルシア)という事件があった。原因は縄張り争いだという。

こういう話ならどこでもあるようなことだし、『週刊実話』のようなノリで書かれたタブロイドの記事を読むことはあっても、それについてわざわざ書くなどということはしていない。

ただし、今回は使われた武器が拳銃ではなくAK47というのが引っかかっていた。しかもこれ。




(((( ;゚Д゚))) 隠す気、ゼロ

こういう展開でも、これだけならブログには書いていない。「またReal IRA(旧名)か」というだけの話だ。(かつて「リアルIRA」として知られたリパブリカンの分派組織は、現在は再編して「自称IRA」とか「ニューIRA」など、メディアによって別々の呼ばれ方をしている。ちなみに彼ら自身の名乗る組織名は、英語では常に「IRA」である。アイルランド語では「ONH」だが、ONHと呼ばれる武装組織は別にある。それも複数あるらしい。どうだ、ややこしいだろう。)

「Real IRA」がまだそう呼ばれていたころ、2012年9月に、アラン・ライアンという男がギャングに撃ち殺された。ディシデント・リパブリカン(「IRA」を名乗っているが、「IRA」つまりProvisonal IRAの方針に反対して離反した分派の諸勢力)とダブリンのドラッグ・ギャングとがまずい関係になると大々的に報じられたのは、これが最初だったのではないか。
The RTE correspondent said that after Ryan left prison, he became "involved in extortion, extorting money from businesses and from publicans" and "threats on drug dealers".

He said Ryan's faction within the Real IRA in Dublin had been feuding with major gangland criminals for some time.

He added that at the time of his death, Ryan was facing a charge of "demanding money with menaces from a Dublin publican in the north inner city" and had also served time for possession of a firearm in a separate case.

Mr Reynolds said: "Gardai are worried about the fact the republican groups don't tend to forget when members of their organisation have been shot and killed particularly by drug gangs or violent gangland criminals."


それから3年数ヶ月の間に、何件か、RIRA(と呼ばれた組織)とドラッグ・ギャングに関する暴力的な事件の発生が報じられてきた。

が、RIRA(と呼ばれた組織)以外に、リパブリカン諸組織の名前が出たことは、これまではなかった。

それが、今回のボクシング計量会場襲撃事件で出てきたのだ。本稿の上のほうで述べた「コンティニュイティIRA」(CIRA) である。CIRAは1980年代にPIRAから分派した組織である。IRAの分派の歴史については、以前書いているのでそちらを参照









(「紛争」でもないときに、あんなかさばる武器で街中で攻撃をするなんて、ちょっとおかしいと思う)






しかしこの「CIRAの犯行声明」は、報道が行き渡ったころにはCIRAから否定の声明が出ていたようだ。

わけがわからないが、たぶん、「何者かがCIRAを名乗って犯行声明を出したが、それを知った本物のCIRAがそれを否定する声明を出した」という経緯だ。

否定声明のほうは、いつもの人(リパブリカン・シン・フェインの代表)の名前で裏書されているので、確実に当てになる。

そして息をつくヒマもなく……










というわけで、今のところここまで。



おまけ。






このアイリッシュ・インディの記事は、ウォッチャー必読。久々に「きたわぁ 」という感じ。

さらに、アイス食べたら当たりが出た感じで:





※この記事は

2016年02月09日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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