kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2015年11月19日

「なぜパリのことは大ニュースになるのか」論 (1): 今のTwitterは情報戦がすごいということと、プロパガンダについて。

これはTwitterでのことで、TwitterでのことはTwitterに書くべきというのが自分の中では原則としてあるのだが、これはこちらで。

sdshsml.png話は長くなるが、この図(←)のようなアカウントに遭遇した、という件について。

パリの同時多発テロのあと、Twitterは非常に大変な混乱の場となっている。

いや、攻撃進行中の不確実情報や流言飛語(「レアールで発砲があった」など)の《拡散》の舞台となったこととか、ドイツでのサッカーの試合が中止になった際の当局側のぐだぐだに翻弄された大手報道機関のフィードが《拡散》を重ねつつますます曖昧化していく場となったというようなことを言っているのではない。

「情報戦」としか言いようのないことが進行中だ、ということである。

例えば、フランスがラッカに対して激しい空爆を加えたとき(日本時間では月曜日の朝)、RaqqaというワードがTrendしていた。そこを(私がログインした状態で、つまり私の「フィルター・バブル」内で確認できる範囲で)閲覧したときに画面を埋めていたのが、「民間人被害」の写真だった。すでに日が落ちた街路で、瓦礫の山となった建物のところでオレンジ色の炎が燃えていて、平服の男の人たちが駆け出していく、というような連続写真だ。ツイート本文として「一般市民の家に対する誤爆」であることを示す情報が英語で書きそえられ、「戦争反対」系の人たちというか、英国のStop the War Coalition系の人たち(つまり、アサド政権の自国民の殺戮については何も問わない「反戦」活動家たち。日本にもいっぱいいますね。2012年の段階でFSAのことを「アルカイダの味方」と呼んでいたような人たち)の間でもかなり拡散されていたようだった(あの人たちの《拡散》の威力はやはりすごい)。

そして、検索結果での画面には、その「誤爆」の光景の写真とは別に、非常に厳しい写真がどかどかと流されていた。個人的に、そういう写真の許容量を超えているので、視界に入っただけでブラウザのタブを閉じたのだが、瓦礫の中の死体の写真だった。それも、正視にたえないような。「血を流して倒れている大人の男性」と即座にわかるような写真もあった。「坊主でヒゲ」という風貌だったが年齢などはわからない。ヒゲが黒かったから高齢者ではないだろう。

それらの写真は昼間、明るいところで撮影されたものだった。ひょっとしたら明るい時間帯に行なわれた攻撃が民家を直撃した例があったのかもしれない。そもそも今回のフランスの攻撃だとは言っていなかった写真が、回覧されているうちに「今回のフランスの攻撃で」ということになっていたのかもしれない。しかし、この状況は……




人々が感情が揺れているとき、ショック状態にあるときに、悲惨な写真を流すということは、最大限に増幅された感情的な反応を引き起こす目的でよく行なわれる。

このひどい写真を目にしたとき、私はいろいろ確認しようという気持ちの余裕もなく、すぐにタブを閉じた。

タブを閉じた数時間後に再度Raqqaでの検索画面を見たときには、当該の写真は見当たらなくなっていた。投稿主がツイートを削除したか、アカウントを削除したか、あるいはTwitterのほうで「残酷な写真」を非表示にしたか……。それとも、アカウントがサスペンド(凍結)されたのかもしれない。何があったのか、私には知るすべはない。

けれど、Twitterがまたもや「ISISの情報戦の場」になっていたことは確実だと思った。

ISISは既に、Twitterなどソーシャル・メディアのアカウントを使えなくされていて、個々の通信は暗号化されたチャット・アプリを使っているという。掲示板の類はかなり地下にもぐっている(ダークウェブに移行している)ともいう。

11ヶ月前にはすでにこんな一覧を作っていたそうだ。「推奨されるアプリ、推奨されないアプリ」を構成員に徹底していたのだろう。(これらのテクノロジーは、うちら一般人が友人とおしゃべりをしたり、家族に「帰りにお豆腐買ってきて」と連絡したりするのにも用いられているが、ISISのリクルーターが獲得しようと狙いを定めたターゲットを「洗脳」するときのツールとしても用いられている。)




そんな中で、パリの事件後には一気に「ISISのツイートが増えた」ようだ。SITEのリタさんのツイートはこう。(ほんとはISIS Media Blackoutのため画像非表示にしたいのですが、そうすると意味がわからなくなってしまうので、ここはリタさんのツイートをそのまま、画像を非表示にしないで貼り付けます。)




その後、TwitterがISISのプロパガンダをばらまくアカウントを停止するよう対応したかもしれないし、アノニマスがそれらのアカウントを閉じさせるようアクションをとったのかもしれない。それでも、ISISのTwitterでのプロパガンダは止まっていない。そもそも完全に止めることなど不可能だが。

サンドニでの警察の作戦が行なわれているときにハッシュタグの画面を見ていたら、カラシニコフがフィーチャーされたアバターが表示された。「なんとかかんとかアル=中東の国名」という名前だ(その名前自体は、ISISの文脈がなければ何でもない名前である)。すぐ閉じたので何も控えていないが、英語で、サンドニでのフランス警察の作戦を冷笑し(「そんなことをしても、それで終わりにはならない」といったように)、何か物騒なことを言っていた。

18日に出たイスイス団機関誌が最新号でパリの同時多発テロを表紙にし、シナイ半島でのロシア機の爆破に用いたボムの写真を公開して攻撃の経緯を説明しているとか、拘束していたノルウェー人と中国人を「処刑」したと述べているとかいった話題もサンドニの作戦と同時にあり、機関誌名での検索結果の画面には、普通の、「男の子の顔写真」に過ぎないようなアバターで、ISIS支援の言葉が書かれていた。そのユーザーのツイートを個別に見てみると、星条旗をあしらったアバターの人や、キリスト教徒であることを強調するユーザーネームの人などが挑発的に絡んでいた。「ジハーディ・ジョン」の殺人ビデオが出始めたころにこういう光景を見たことがある。

そして……(ここからがメインディッシュ)。

サンドニのハッシュタグにこんなのがあったんですよ。サンドニでの警察の突入でメスの警察犬ディーゼルが殉職したことが大きなニュースになっているのを受けて(わたしも犬大好きだけど、個人のツイートが山盛りになるのならわかるが、UKのタブロイドの大騒ぎはちょっとどうなのかと思う)「メス犬の息子たちは、国際的連合軍の攻撃で死んだ子どものことは気にしない」と。いや、言ってることはある種「テンプレ」的なことで特に目立ちはしない(「犬の息子」ってのがアレだなあと思う程度で)。



問題は、このアバター。そしてバナーで使っている画像。



アバター。誰かわかりますよね。



「(がっさり)10年前に過去の人になった人」なので、知らない方も多いかもしれないので……。



……という次第。

どういうつもりでこんなアバターを使っているのかはわからないが、こんなアバターの、パロディ・アカウントではないアカウントが、「プロパガンダ目的のアカウントではない」と考えることはできない。BioのところにF4F (Follow for follow: 自動フォロー返し)とか、TeamFollowBackとかいうハッシュタグがあるのが、悪い冗談みたいだ。アカウントの開設は 2015/06/30 という(Twitterで表示されていないので、Twilogに投げて調べた)。ずーっと前のまでさかのぼると、シーア派への憎悪・嫌悪が明白なものがぞろぞろ出てくる。

で、このアカウント、私が最初に見たときにはこんな感じで(画像はクリックで原寸):



このキャプチャ部分の最後で「元大統領のアバター」のアカウントが絡んでいってるのが、下記。リアルで、「子どもたちが殺されていることに怒りを抱えている17歳男子」。イエメン人。Twitterとブログで端正な英語を使い、子どもたちの権利のことを考えている。



彼の世界では、子どもたちはフーシの反乱勢力(シーア派)に殺され、サウジアラビアの空からの攻撃に殺されている。あまりに典型的に、「イスイス団のターゲットとして狙われる若者」だ。

誰か、彼がダークサイドに引きずり込まれないようにしてほしい。つまり、「希望」を与えてほしい。「ニセの希望」ではなく、「気休め」ではない「希望」を。彼が自爆ベルトを巻いて満面の笑みをたたえて指を1本立てているという未来へとつながらないように。

※彼のアカウントはイエメンのメディアやジャーナリストがフォローしてはいる。

さて、「なぜパリのことは大騒ぎするのか」という意見がある。変な言いがかりもあるが(「芸能人だからって、パリは庭みたいなものだと自慢している」のような)、まともに取り合うべき意見は「報道が多すぎるのではないか」というものだ。多くは正当なものだ。パリは世界中に名の知れた特別な都市だが、報道の過熱っぷりは常軌を逸している(特にタブロイド)。

しかし、その一見正当な発言は、本当に真摯なものなのかどうか。

上で見た「元大統領の写真をアバターにしたアカウント」は、「イヌの息子」発言のあと、「ナイジェリアのことはスルーですか」というキャンペーンをやっている。



今朝、はてなブックマークのトップページを見たら下記のようなことになっていたが(アニメがどうたらいう話と並んで、こんなに話題になるようなことなのか? 人々がそんなに関心を寄せていたのなら、なぜシリアはあんな事態になっている? 本当に真剣に人々がこれを考えているのなら、こんな「文句」の記事ではなく、イエメンやナイジェリアのことが見えるところに出てこないのはなぜ?)、今のこの「なぜパリのことは大騒ぎするのか」論のブームには、何か言葉にならないものを感じる。



「なぜパリのことは騒ぐのか」と発言している時間があるのなら、ベイルートの爆弾なりアンカラの爆弾なり、ロシア機なりのことを発言すればいい。

(グチを言うことは必要だけれども)「民間人を殺しているのはISISだけじゃないのに、ISISが西洋を攻撃したことしか注目しないのか」と言う時間があれば、ラッカの活動家のツイートの1つでも訳すなり、ISISについてのがっつりした報道について書くなりしてネットに放流したほうが生産的である。私はそう思っているし、そうしている。そうすることで心のバランスを保っている。それ以上に、そうすることで、知らなかったことを知り、見えてなかったものが見えるようになる。

2012年に「政府側対反政府側なんていう単純な話じゃないんですよー」という単純な話に感心して、FSAを「アルカイダの味方」呼ばわりしていた人たちは、きっとそういう作業を自分でしていなかったのだろうと思う。自分の中にあるストーリーに合う解説を求めていたのであって。人間、「ええっ、そうなんですか」と言うことになるより、「やっぱりそうですよね」と言うことになったほうが気分がよいものだ。

イスイス団のマインド・コントロールもそこをついてくる。「わかる〜」っていう話ができる友人として、彼らは現れる。

「なぜパリのことだけこんなに報じられるんですかね」

「わかる〜。そういう違和感あるよね〜。……」

その先に、「元大統領」の顔写真を掲げた殺人カルト集団がいないとも限らない……それは警戒のしすぎかもしれないが、現実だ。

かといって、「なぜパリのことだけがこんなに」という疑問を持つこと自体が、あの殺人カルト集団と関係しているかのように短絡するようなことがあってもいけない。

あなたの話に「わかる〜」と言い、あなたの気持ちを共有してくれる人は、多くの場合は友人だ。ただし、そうでない場合もある。今はそういうときにつけこむ活動をしている人がとても活動しやすい状況である。それだけのことだ。

アメリカ人女性アレックスのケースは非常に多くを示している。不条理で理不尽なことが起きた。そのときに自分が何を感じたかを話せる相手がいない。疑問をぶつけられる相手もいない。そこでネットに書き込んでみたらいろいろ話ができた。しかしその先に……というケースだ。




カルトがやっかいなのは、ターゲットを「友人」として扱うところだ。ISISもそこは、日本でそこらじゅうにあふれているカルトのやり方と同じ。孤独な人との「つながり」を作り、そこに強固な「友人関係」を築く。まめな電話やメールを出し(「元気? 気になってたんだ」)、求めていても得られずにいる評価を与える(「がんばってるもんねー」)。

パリの同時多発テロをめぐって、多くの人々の感情が大揺れに揺れて、疑問も噴出しているときだからこそ、心配に思う。

とりあえず、アンナ・エレルの本は読んでおくと、一種の「ワクチン」になるのではないかと。あと、アレックスのケースの5ページ目

ジハーディストのベールをかぶった私 -
ジハーディストのベールをかぶった私 -

あと、書くまでもないと思ったんですが、ISISは、半分はサダム・フセイン支持者の残党でできています。つまりイラクのバアス党です。

The hidden hand behind the Islamic State militants? Saddam Hussein’s.
By Liz Sly April 4
https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/the-hidden-hand-behind-the-islamic-state-militants-saddam-husseins/2015/04/04/aa97676c-cc32-11e4-8730-4f473416e759_story.html

ISIS FORCES THAT NOW CONTROL RAMADI ARE EX-BAATHIST SADDAM LOYALISTS
Malcolm W. Nance
June 3 2015, 11:35 p.m.
https://theintercept.com/2015/06/03/isis-forces-exbaathist-saddam-loyalists/

※この記事は

2015年11月19日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 10:34 | TrackBack(4) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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「なぜパリのことは大ニュースになるのか」論 (2): では、シリアの人たちの声を、聞こうとした人は、いるのだろうか。
Excerpt: いや、シリアに限らず、イエメンの人たちの声も、トルコでイスイス団の爆弾の標的とされた人々の声も、エジプトの、イスイス団の「集団処刑の映像」の素材にされてしまったコプト教徒の人々の声も、リビアで「革命」..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2015-11-19 12:57

今行なわれている「サイバー戦」は、「アノニマス対ISIS」とかいう単純なものではない。
Excerpt: 表題の通り。単純な検索、Twitterの閲覧で調べられるギリギリのところまで行ってきたので。 【アノニマスを名乗る勢力だけじゃない】対ISISサイバー戦で、どんなことが行なわれているのか。 http..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2015-11-23 20:02

「We are one. わたしたちは、ひとつである」
Excerpt: 本稿は、元々、10日ほど前にアップしようとしていたのだが、肝心の絵が見つからず、またほかにいろいろ起きたので、後回しになってしまった。これを今更アップすることで、ネット上で赤の他人が「今更」などと書き..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2015-11-27 16:01

【パナマ文書】マネー・ロンダリングに関する話をするときに、ソース・ロンダリングしてませんか? ということにも留意。
Excerpt: 近頃パナマで流行るもの、脱税目的、不正蓄財……というわけで、租税回避地 (タックス・ヘイヴン: tax haven) として知られるパナマにきっとたくさんあるであろう法律事務所のひとつ、モサック・フォ..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2016-04-05 01:17





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼