kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2015年09月08日

彼らは勧誘対象に「戦闘員のヘッド・カメラからの生中継映像」を見せ、「きれいな言葉で書かれた本」を読ませる。

「こちらに来て、僕らの夢の国に参加しないか?」と呼びかける「イスラム国」を自称する勢力(ネットスラングで「イスイス団」、本稿では「ISIS」と表記)のメンバーは、組織に取り込みたい標的に、インターネットを利用して、「こちら」の様子をたっぷり見せるということは、既に広く知られている。

例えばフランスの「ISISに興味のある改宗者、20歳女子」(になりきった女性ジャーナリスト)は、単にYouTubeにアップされていたビデオをSNSでシェアしただけで、猛烈なアタック(としか呼びようのないもの)を受け、Skypeで現地と生でやり取りするはめになった。

その晩、私はカウチに座って、アカウントからアカウントへとフィードを見て回っていた。ふと、フランス人ジハディのビデオに目が留まった。35歳くらいだろうか。軍服を着て、「アブー・ビレル」と名乗っていた。シリアにいるのだという。……ビデオの中の男は、SUVのグローブボックスの中身を見せて自慢げに説明している。シリア・ポンドの分厚い札束、お菓子、ナイフ。……

画面のこちら側を見つめてにっこりと微笑んで、彼は「ヒジュラ」(移住)を呼びかける。さあ、君も不信心者の地など後にして、イスラム主義者の国に加わるのだ、と。

……2014年の春、金曜の夜10時だった。パリの1DKのアパルトマンでソファに座っていた私のところに、シリアにいるフランス人テロリストからメッセージが届いた。「はじめまして。ぼくのビデオを見てくださったようですね。あのビデオ、ものすごく拡散されてて、本人もびっくりです。あなたはイスラム教徒ですか? ムジャヒディーンについて、どう思われます?」

「さっきのビデオについて質問があったらどうぞ。シリアで何が起きているか、何でも説明してあげますよ。唯一の本当の真実、つまり神様の真実を。Skypeで話しませんか。ぼくのユーザーネームをお伝えしますね」

……Skypeなんて問題外だった。「またの機会にしませんか」と言うと、アブー・ビレルは納得した。「じゃあ、明日、時間作っておきますね」

http://matome.naver.jp/odai/2143282813064729201


これは、下記の書籍を書いたアンナ・エレル(仮名)の体験談(ガーディアン記事)の要旨である。

4822250911ジハーディストのベールをかぶった私
アンナ・エレル 本田 沙世
日経BP社 2015-05-20

by G-Tools


ジャーナリストのアンナ・エレルは、ジハディズムに共感する人々についての調査のため、ネットで「メロディ」というハンドルを使い、「ISISに興味がある20歳の改宗者」の人格になっていた。その、いわば「花嫁候補」に声をかけてきた戦闘員のアブー・ビレルは、Skypeなどを使って「こちらの様子」を生で見せていた。

女子だけでなく、男性の戦闘員候補にも、ISISは「こちらの様子」を生で見せる。

They discovered Adam had a complex background. He had become estranged from his family and ended up in France, where he says he was told about the war in Syria by a group of Muslims with extreme views. They showed him live headcam footage from other fighters there.

http://www.bbc.com/news/uk-34073367
and http://matome.naver.jp/odai/2144163309639405301


つまり、「アダムには複雑な事情があった。家族とは絶縁状態になり、フランスに流れ着き、そこでシリアの戦争についての話を、過激主義を奉じるイスラム教徒の集団から聞かされた。彼らは現地で戦っている人々のヘッド・カメラから生で送られてくる映像を、アダムに見せた」。

この過程は、おそらく、「(YouTubeにアップされた録画映像ではなく)今ここで見ている僕たちだけしか知らない映像」として、一緒に見ている者たちの間に(擬似的な)絆めいたものをもたらしたことだろう。

戦闘の映像なんかを見せられたときに、「暴力はよくない」とか「戦争反対」とか言い出すような相手には、彼らはそういう映像は見せないだろう。

元々は「暴力はよくない」、「戦争反対」というタイプであったとしても、その映像を見せるまでにはいろいろと準備がなされていることだろう。つまり、「相手の話を聞き、相手のことを理解する」(「これまで苦労してきたんだね」)、「信頼関係を築く」(「他の人に言えないことでも、僕なら大丈夫、愚痴を聞かせてよ」)といったことで人間関係が築かれているだろう。そして、「本を読ませる」ということが行なわれる――「この本、読んでみてよ」。

イスラム過激派とは関係なく、日本でもリアルにそういうことを体験している人は、きっと少なくなかろう。必ずしも「相談する、される」という関係ではなく、まったくの通りすがりかもしれないし、普通に「趣味の合う友達」だったりするかもしれない。ある程度仲良くなって、お互いの家に遊びに行ったりして、安心できる人だと思っていたところで、「本」が出てくるという体験……あるいは「映画」に誘われるということもあるかもしれない。日本の「カルト」、「新興宗教」の布教ではよくあることだし、「マルチ商法」などでも見られることだ。

最初っから「本」だけ置いてく宗教もあるけど……
私たち宗教の勧誘とかではないんですけどー、無料の雑誌配ってましてー、
生活の役に立つ料理のレシピとかー載っててー

とか言ってるけどよく見たら
前にあまりにもしつこくてブチキレた宗教のオバサン達が持ってきた本と一緒!!

http://girlschannel.net/topics/48553/


そして、そういう「本」に書いてあるのは、至極真っ当なことなのだ。道徳的で、「善良」をそのまま形にしたような……「きもちよく挨拶をしましょう」とか、「他人にされていやなことは、自分は他人にしないようにしましょう」とか、「旬の食べ物は栄養も味もよい」とか。(※これらの例はただの思いつきで、何か特定の根拠があるわけではありません。)

そのはずが、いつしか「専門用語」を使われたり、特別のしぐさをされたりする。友達からいきなり「御除霊と言って手をかざされたことがあります」という体験談などもあるように。

そこで距離を取れればよいのだろうが、それができない場合、あるいは距離を取らねばと思うこともない場合には、彼らに巻き込まれてしまう。いつの間にか、「特別の効能のある水」を買っていたりするかもしれない。

そういう場合、(あやしげな)物を買うことそのものが問題というより、そういうものをホイホイと買ってしまうほどに思考を支配されていることが問題である。

そういう「思考の支配」は、日本での事例について指摘されていたが、ISISの人集めにおいても、さぞや積極的に行なわれていることだろう。

Inside the Mind-Control Methods the Islamic State Uses to Recruit Teenagers
May 12, 2015
By Sam Clements
http://www.vice.com/read/isis-mind-control-young-british-muslims-857
From us looking in from the outside, it looks like people are making really bad decisions, or that there is something wrong with them to get involved with something so obviously weird. But stepping inside the mind of a person who is being recruited, it's typically this science of social psychology−what buttons to push to activate people's motivation, curiosity, and interest. And what these groups want are essentially people who want to improve themselves, or want to make the world a better place, in one way or another.







「アダム」はポーランド人。仕事を求めてロンドンに来た(EU圏内なので移動は自由)が、どうも問題を抱えていそうだということで、英国政府の「脱・過激化」プログラムでメンターを務めているカディールさんという人の運営するセンターに連れてこられた。そしてゆっくりと時間をかけて、「脱」のプロセスを進めている。

英国政府のこのプログラムは、具体的なことが明らかにされる機会がほとんどないのだが、今回、BBCの時事番組が初めて当事者のインタビュー取材を行なった。そのことに関する記事の要旨を、下記に「まとめ」てある。(番組そのものの映像も、BBCがYTにアップしているのを埋め込んである。)

イスラム過激派に取り込まれかけた青年の話。「渡された本を読んだ後、そういう気持ちが生じるのです」
http://matome.naver.jp/odai/2144163309639405301


「チュニジアに訓練に行くことを考えていた」、「最終的にはシリアに行こうと思っていた」という改宗者の青年が、徐々に、「客観的に自分を見ること」を取り戻しつつある。もう少ししたらきっとこの人は、自分と同じように「過激化」した/させられた人の話を聞く側に回っていることだろう。

なお、記事では、アダムが取り込まれそうになっていた「過激派」について、特定の組織名は出ていない。おそらくはISISだろうと思うが、ほかのサラフィスト、ジハディストの組織かもしれない。



アダムのような「改宗者」の「過激化」の話を見聞する機会がけっこう多いのだが、そもそもどうやって「改宗」するのか、という点について。

7月、NYTの記者が密着取材した米国人女性(シリアに行きそうになっていた)の体験談を見る限り、非常にお手軽で、非常にシステマティックにできるようになっている。下記、引用文中の「ファイサル」が組織のリクルーターである。ターゲットの女性(アレックス)よりずっと年上で、恋愛感情的なことはなく、彼女にとっては「何でも話せる人生の先輩」のような存在だったようだ。

アレックスは大学を中退後ケアホームで働いていたが、上司とうまくいかず1年でやめてしまった。その後コールセンターで働こうとしたが、苦情の電話のトーンに耐えられず、研修が終わるまでもたなかった。不安定なときに話し相手になったのがファイサルだった。

……アレックスは「ファイサルは私にとってメンターのような存在」と言っている。彼との会話はたわいもないものが殆どだったが、2014年のクリスマスのころにはアレックスは一線を越えたと感じていた。改宗について彼女はファイサルに尋ねた。

ファイサルは彼女に改宗の段取りを伝えた。心からの「信仰告白」をイスラム教徒2人に聞いてもらえばよい。アレックスにはイスラム教徒の知り合いはいないが、Twitterに信仰告白を投稿して、最初に読んだ2人が証人になれば問題ないとファイサルは言った。こうして彼女は改宗した。

2014年12月28日の夜、家族がテレビを見ているときに、自室でのことだった。

http://matome.naver.jp/odai/2143282813064729201?&page=4


「心からの『信仰告白』をイスラム教徒2人に聞いてもらえばよい」というのは、対面を前提としているのだと思うが……。形式化している手続きなのかもしれないが、それでも「信仰」にかかわることだ。偽りの言葉でないかどうか、声や表情から判断する必要があるだろう。

それを、Twitterの投稿で?

(・_・)

また、(北)アイルランドのデリーのクレガンでぐだぐだの生活を送っていたが、宗教に目覚めて、イスラム教に改宗して、シリアのイスラミスト武装組織(ISISではない)に加わってしまったエイモン・某という男(帰国し、逮捕・起訴され、現在、裁判を受けている最中)の体験談も、「改宗」のくだりは「そんなんでいいのか」というくらいに雑だ。

そんな日々の中で、エイモンは宗教的に目覚める。それをこの手記では「神(アッラー)のお導きがあった」と表現しているが、最初に彼が手にしたのは、中学校(カトリックの学校)で支給された聖書だった。中学生のとき、くだらねぇと思ってそこらへんにうっちゃっておいたものが部屋から出てきたという。

毎日30分間読んでいるうちに、彼は聖書を信じるようになった。(蛇足ながら、イスラム教も旧約聖書の宗教である。また、イエス・キリストはイスラム教においては「預言者のひとり」とみなされているそうだ。)

このころ、彼はYouTubeで、「ツインタワーを見ていた」という。つまり、2001年9月11日のニューヨークでの出来事だ。もっと正確にいえば、あのテロ攻撃を「検証」したものだろう。「あの出来事は、見かけとは違っていた」と確信するに至ったと述べているので、つまり、彼が見ていたのはTrutherの陰謀論ビデオだ……。(このころに彼が薬物と切れていたのかどうか、記述がないのでわからないが、完全に切れていたとは考えづらい。トリップした状態で9-11の映像を見るなど、想像するだに恐ろしい。ましてやTrutherの「検証」ビデオ……シラフで見てても頭がおかしくなるっつーの。弱ってるときにそんなの見ちゃだめだよ)

そして、詳しいきっかけなどは書いていないが、彼は毎晩、ネットでクルアーンを読むようになった(Trutherの陰謀論から、「やったのはムスリムではない」ということでイスラームに興味を抱く人の存在はこれまでにも聞いたことはある)。

それから――ここがすごいのだが――YouTubeでビデオを見ただけで、信仰告白をするに至り、改宗を決意したというのだ。つまり、よく聞く「モスクに通って宗教指導者の説法を聞いたことで過激化した」というパターンですらない。ネットだけ。

ネットだけで、「神様なんているわけないじゃん」と言っていた彼は、神を発見した/信仰に目覚めた。あとは何を見ても「神様のお導き」。

2013年5月の手記で、彼は「ムスリムになって3年になる」と書いているが、この時点で実際に町で話をしたことのあるムスリムは1人だけだったという。それもモスクなどではない。ケバブ屋だ。

http://nofrills.seesaa.net/article/408815856.html


つまり、「改宗」はそんなに困難なことではない。

そして、ISISなど過激派の影響下にある人が「改宗」することは、「確実に一歩、シリア行きに向けて進むこと」だ。Point of no return的な。



「改宗」したり、「現地入り」したりしなくても、シリアの人々のためになることをすることはできます。シリア内戦では(かつてのビアフラなどと同じく)「飢餓」が戦争の兵器として(アサド政権によって)用いられています。

世界食糧計画(WFP)が、シリア緊急支援の寄付を受け付けています。






ほか、日本では:
http://www.japanforunhcr.org/activities/theme_em-syria/
https://www.refugee.or.jp/jar/report/2015/09/01-0000.shtml
https://www.msf.or.jp/donate_bin/onetime.php (国境なき医師団。「シリア緊急援助」があります)
……sskjzさん作成の「まとめ」も参照。

※この記事は

2015年09月08日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 07:00 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼