kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年04月26日

今年の聖ジョージ・デイ

何日か前になるが、4月23日はイングランドの守護聖人「聖ジョージ」の日だった。私は気づかずにスルーしていて、25日に気づいた。特にニュースサイトで取り上げられていなかったからだ。アイルランドの「聖パトリック・デイ」が海をまたいで米国でも大騒ぎになっているのとは大違いで、イングランドの守護聖人記念日はひっそりしたものだ。

だが、ガーディアンのCiF記事とコメントのいくつかをざーっと見ながら、この静かさ加減が「イングランド人」の神経を逆撫でしている面があるということを思う。

Unbeloved country
The celebration of England's national day inspires as much loathing as joy.
David Cox
April 23, 2007 9:00 AM
http://commentisfree.guardian.co.uk/david_cox/2007/04/unbeloved_country.html

ロンドン市長のケン・リヴィングストンはいわゆる「リベラル派」の人で、「マルチ・カルチュラリズム(多文化主義)」を推進してきた人だが、イングランドの首都の市長であるにもかかわらず、イングランドの祭日はスルーしてきた。が、今年はトラファルガー・スクエアで「イングリッシュ・ユーモア賞讃」みたいなイベントを行なった。
http://www.london.gov.uk/mayor/culture/stgeorge.jsp
Classic English Comedy on Screen, Trafalgar Square
Monday 23 April 2007, 12.30pm – 9pm

English humour is recognised and enjoyed throughout the world and what better way to celebrate St George's Day than with a dose of collective laughter. See a selection of classic English comedy on film; take part in the Coconut Orchestra, led by the cast of Monty Python's Spamalot; and at 7.30pm there's a special showing of Monty Python and the Holy Grail (15) on a big screen in Trafalgar Square. As Spamalot delights audiences at the Palace Theatre, come to the Square and see the classic film from 1974 that inspired it ! Arranged in association with Monty (Python) Pictures Ltd.

12.30pm
Classic television comedy clips representing the best of English humour. Selected by the BFI

1pm-2pm
Futtock's End (1969) written by and starring Ronnie Barker. With permission from Digital Classics

2pm - 5pm
Historic silent films from BFI National Archive revealing London across the 20th century

5pm - 6.30pm
Selection of comedy clips (see 12.30pm) and BFI archive programme

6.45pm -7.15pm - register by 6.30pm
Coconut Orchestra world record attempt: Monty Python's Spamalot, the London stage production inspired by' Monty Python and the Holy Grail', will lead on an attempt to break the world record for number of people playing in a coconut orchestra, currently held by New York with 1785 people. Registration from 5pm onwards. Coconut Orchestra rehearsal at 6.30pm. World record attempt at 7pm. Be there to guarantee your place in history. Coconuts will be provided!

7.30pm – 9pm
Screening of Monty Python and the Holy Grail (15). With its byline 'Makes Ben Hur look like an epic', this classic Python film tells the tale of King Arthur and the Knights of the Round Table and their search for the Holy Grail and stars Graham Chapman, John Cleese, Terry Gilliam, Eric Idle, Terry Jones and Michael Palin.

実は「ココナツ・オーケストラ」だけはBBC記事で見た。ギネスブック認定、世界最多の人数によるココナツ・オーケストラっつって、テリー・ギリアムの写真つきで記事になってた。でもそれが聖ジョージの日のイベントだとは気づかなかった。最初のパラをちょっと見ただけで、別に読まなくてもいいやと思ったのだが、以降に何か書かれていたのかもしれない。

イベント自体は、もしも自分がロンドンにいたら多分足を運んでいたであろう内容だ。サイレント映画や『ホーリー・グレイル』もだが、20世紀のロンドンの映像をまとめて、とか絶対におもしろいじゃん。

そんなことはどうでもいい。

ガーディアンCiF記事は、『ホーリー・グレイル』だの何だのばかばかしいもの満載の市主催のイベントは「侮辱的」と怒っている人たちがいる、ということで、ロンドン市内の地方メディア、イーリング・タイムズの記事をリンクで紹介している。

Anger at St George's Day celebrations
By Rachel Sharp
http://www.ealingtimes.co.uk/news/localnews/display.var.1334943.0.anger_at_st_georges_day_celebrations.php
※コメント欄、ツッコミ率が非常に高い。

One London Partyという政党(?)の人が、"Will he be screening episodes of Father Ted' at the annual St Patrick's Day festival, or showing Bruce Lee films during the Chinese New Year celebrations?"(聖パトリック・デイに『ファーザー・テッド』の上映会をするか? 中国の旧正月のお祝いでブルース・リーの映画の上映会をするか?)と述べ、かなり熱くお怒りだ。(Father Tedの上映会はウケるだろうし、中国すなわちブルース・リーというのは微妙なところだと思うのだが。)

この人は次のようにも言っている。
"Now that he has been reluctantly forced to acknowledge the presence of the English, he has done it in the most bland, insulting way possible - by ignoring the rich indigenous traditions of London and England and instead focussing on the vague, generic notion of English humour'.

「イングリッシュ・ユーモア」というのは漠然としたもので、イングランドの豊かな伝統を物語るものではない、との主張だ。

そんなにおっしゃるならお紅茶でもお飲みあそばしていればよろしくってよ、と反射的に軽口をたたきたく。Let them drink tea. そしてモリス・ダンスでもお踊りあそばしてシェイクスピアを朗読してればよろしくなくって?(すごい暴言)

夏目漱石であれ吉田健一であれ、「ユーモア」というもので「イングランド/英国」を語った先達からいろいろ教わった身としては、「イングランドの豊かな伝統」とやらのほうがよほど漠然としているのではないか、と思ってしまうのだが、当事者にしてみれば「アホなこと抜かすな」ということかもしれない。

部外者である私には、モンティ・パイソンの中に「イングランドらしさ」(それは「UKらしさ」とあまりに一体になっていて境界線は非常にわかりづらいが)ははっきり見える。私でも、英国で大受けしていた「風雲たけし城」は「日本らしい」と言われたら、頭の上に「?」の3つや4つは浮かべるだろう。(実際、どこがvery Japaneseだと思えるのかを説明してもらってもわかりづらかった。)それでも、例えば日本の伝統を紹介、ってなときに、落語とか漫才の軽妙なやり取りとかで「らしさ」が語られることに違和感はないけどなー。

なんでこの人は「コメディ」でイングランドを代表されることをこんなに嫌がってるのだろう、ということを、この人の言葉を読みながらちょこっと思ってみたのだが、たぶんそれは、「イングランド」なるものの実体のなさからくる不安が影響しているんじゃなかろうか。「これがイングランドだ!」というものが欲しいときに、モンティ・パイソンだのスキンヘッドだのパンクだの、全部違う! ビートルズ?ありゃ実質的にアイリッシュだ! という感じで何が何なのかわからない不安。原則、何を差し出しても「違う!」と思うんじゃなかろうか。(女王とか古典とか伝統芸が出てくるなら別かもしれないけど。)

UK、すなわちグレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国は、イングランドとウェールズとスコットランドと北アイルランドから成る。このうちウェールズとスコットランドはブレア政権下での地方自治推進政策で自治議会を得た。北アイルランドはややこしいので説明は省略するが、自治議会はずっと持っていた(ただし自治停止になっていたりする)。イングランドだけ、地方自治議会がなく、中央政府の議会(英国会)がその仕事をやっている。ウルトラナショナリストの極右政党ですら「イングリッシュ」ではなく「ブリティッシュ」や「UK」を掲げている(BNPしかり、UKIPしかり)。

「文化」の話でも、ウェールズは何百年も前にイングランドに飲み込まれてしまった「元国家」としてのナショナリズムを持ち、「ウェールズ語」がその象徴としてけっこう元気がよい。スコットランドは「うちら元々別の王国だったんだし、こっちがその気になればいつでも連合解消できるわけだし」という態度だし、ナショナリズムも相当強烈だ。北アイルランドは・・・長くなる。書いてる暇がない。

つまり、UKを構成する4つのネイションのうち、イングランドだけがネイションとして存在感がない。スコットランド人は「俺らスコットランド人」を誇り、ウェールズ人もイングランド人にはわからない言語を持っている。北アイルランド人は(略)。なのにイングランド人にはすべてがあるが何もない。

しかも、「多文化主義」でカリビアンやチャイニーズの「文化」はヨイショヨイショされ、ムスリムは「私はムスリムです」ということを日常生活の中で主張しつつ生活し、ヒンズー教徒もシーク教徒もそんな感じ。要するに「彼らの『文化』は目に見える」のに、自分たちの「文化」は見えない。市長も自分たちの「文化」のことはかまわず、彼らの「文化」にばかり関心をはらっている。

そして、ガーディアンCiFでは「イングランド」がいかにタブーになっているかが箇条書きのように書かれている。例えばサッカーのワールドカップ期間中にイングランドの旗(聖ジョージ・クロス)を掲げることは学校や職場では禁止されている、といったことだ。(そういう場であの旗が禁止されてるのは80年代にあの旗を掲げてあまりに暴れすぎた連中がいたからだと私は思うが。あの旗は暴力と恐怖を連想させるものでもあった、それは事実。表面的にはちょっと「日の丸」をめぐる問題に似てるかな。)

つまり、なんで俺らのネイションは祝えなくって、他人のネイションのことばっかり祝ってるんだよ、ばかやろー、ということだろうか。

そこらへん、ケン・リヴィングストンが一発ぶちかましてくださると「論点」がはっきりするだろう。市長、CiFに出てこないかなあ。

ところで聖ジョージの日関連では、右翼のテレグラフ紙が左翼のビリー・ブラッグを招いて読者との一問一答、という企画をやっていた。これがけっこうおもしろい(興味深い)。関心のある方、ぜひ。ただ、最もスリリングになりそうな「愛国心(パトリオティズム)」の話に関しては、どうにも話が噛み合ってないように思われたけれども。(また、これはそもそも「雑談」とでもいうべき類なので、ちゃんとした分析とかは別の筋で探さないと無理です。)
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?view=BLOGDETAIL&grid=F11&blog=yourview&xml=/news/2007/04/19/ublview19b.xml

で、聖ジョージの日のあれこれをは、結局、政治家はスコットランド人ばっかり、イングランドには自治議会もない、国民食はカレー、ムスリムは元気よくデモ、みたいな中で、俺らのイングランドはどうなるんだ、そもそもイングランドって何なんだ、何でイングランドのものは極右に独占されてて俺たちがおおっぴらに使えないんだ、というのが根本にあるんじゃなかろうか。で、そういうときにモンティ・パイソンを差し出されて「これがイングランドでしょう」と言われたら腹立つ、「あのクソ左翼市長め」と罵りたくなる、そういうことだろう。(それ自体がモンティ・パイソンの台本にありそうなのだが。)

むろん、ケン・リヴィングストンはそういうのをわかってあえてやっているに違いない。

最後に、聖ジョージについて。正式にイングランドのパトロン・セイントになったのって意外と最近なんですね、1893年(この時代は、日常の言語では、イングランドにおいてEnglandと言えばGreat Britainのことだったと思うのだけど):
http://en.wikipedia.org/wiki/Saint_George
※画像がギュスターヴ・モロー。前に見たときは中世のイコンだったような気がするんだけど。

CiFのコメントでおもしろいの。聖ジョージ=クリスチアーノ・ロナウド説:
http://commentisfree.guardian.co.uk/david_cox/2007/04/unbeloved_country.html#comment-543814
Maybe it's a feeling that St George isn't "ours". At least with St Patrick he has a link to the country, even is it is chasing out all the Snakes with a tarred brush or whatnot. St George is a Turk, who helped out a bit in the Crusades. He's also the Patron saint of about five or six other countries, as well as same sex marriages, the Scouts, and syphilis... He's obviously the coolest of saints, so maybe it's seen as a sense of very much like Cristiano Ronaldo playing for Man U, as a supporter he's wonderful, unless he's playing for Portugal against England (St George is patron saint of that wonderful country too).

A national holiday would go some way to remedying that lack of knowledge about him. And possibly re-installing a sense of national pride. He may be a crap saint, but he's OUR crap saint... Except he isn't.

※この記事は

2007年04月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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