kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2014年01月28日

英国製インチキ「爆発物検知器」を、英国政府がいかに国外にのみ売り込んだか(ガーディアン報道)

記事には関係者の言葉として、"embarrassment" というのが出てくるのだが、その域ではないと思う。実際に、このインチキな「検知器」が信じられた結果「OK」と判断された上で、検知されなかったもの(そもそもそのインチキマシーンには検知しようのないもの)によって死者が出ているのだから……。

数日前、かなり笑える「英国らしさ」について書いたところだが、「英国らしさ」にはあのようなお茶目さ(?)が伴わない、単なる「無能」や「官僚主義」だけということも多くある。悪い場合には、そこに「欲 greed」が加わり、「体裁・体面だけは保つこと」とか、「冷笑(シニシズム)」がかぶせられる。もっと悪い場合には「体面を保つための虚偽」が出てくる(例えば、北アイルランド紛争における数々の英軍による人権蹂躙事件を参照せよ)。

同時にまた、それを暴く(いわゆる)「反骨のジャーナリズム」というものも、また、「英国らしさ」ではある。

……などとのんびり構えていられるようなトピックではない。

27日のがーでぃあんさん一面:



泥まみれの人の写真に目が行くと思うが、それは関係ない(別トピック)。一面トップの記事は本文欄の左上である。「偽物の爆発物検知器という詐欺における、外交官の役割」。(この「外交官」が具体的にどういう人なのかは記事の中で明らかになる。)

記事は:
Fraudster paid government to help promote fake bomb detectors
Robert Booth
The Guardian, Sunday 26 January 2014 19.00 GMT
http://www.theguardian.com/politics/2014/jan/26/fraudster-paid-government-promote-fake-bomb-detectors

「詐欺師が政府に金を支払い、偽物の爆発物検知器の販促を手伝ってもらっていた」と(ぶかっこうに)直訳される見出し。



※ツイートしたときに失敗したのだが、正確には「買収」とは言えないかもしれない。信じがたいことだが、「買収」よりもっとシステマティックだ。

「だうじんぐましーん」と書いているのは、実体のない「爆発物(など)検知器」のことである。「ダウジング dowsing」とは、「地下水や貴金属の鉱脈など隠れた物を、棒や振り子などの装置の動きによって見つける手法」のことで、探している物質の出している《波動》だのなんだので理屈づけられているが、つまり「オカルト」、「疑似科学」の分野の話だ。(実際にはそういう器具を手に持つことで集中力が高まり、感覚が鋭敏になるのではないかという説明を、私は聞いたことがある。)

「実体のない」というのは文字通り、まともに機能する中身がない、という意味だ。問題の「爆発物(など)検知器」には、尤もらしく見える筐体にアンテナなんぞついているが、何かを「検知」する機能はない。詳細はウィキペディア参照。
http://en.wikipedia.org/wiki/GT200

こんなものを英国は自国では使っていない。しかし、外国には売っている。それも政府機関と現役の軍人が一枚噛んで。つまり「民間企業が」とか「退役軍人が」というレベルではない。そのとんでもない腐敗の証拠が、今回出てきたのである。突き止めたのはガーディアン(敬意をこめて「がーでぃあんさん」と呼ぶ)。

以下、順を追ってこの件を詳しく見てみよう。

この手の、英国製の「実体のない検知器」は、イラク戦争後、武装勢力のIED(路肩爆弾などの爆発物)が「脅威」となっているときに、イラクで使われていることが発覚して問題になった。今回問題となっている「GT200」という機種ではなく、メーカーも別の会社だが、「ADE651」という機械(もどき)だ。

2009.09.08 Life is beautiful: イラク軍はダウジングと同じ原理の携帯型爆弾探知機を使っているという話
http://satoshi.blogs.com/life/2009/09/dowsing.html

NPR(米国の公共ラジオ)によると……イラク軍がこれ(注:ダウジング)と同じ原理の「携帯型爆弾探知機」に何百万ドル(日本円で数億円)を費やしており、これが米軍とイラク軍との間で問題になっているという。

 この「探知機」を作った会社、最初はイラクに駐留する米軍に売りつけようとしたらしいが、「科学的根拠がない」と門前払いを食らったという。そこでイラク軍に矛先を変えて成功したという話だ。


2009/11/06 イラクにいんちきマシン: 忘却からの帰還
http://transact.seesaa.net/article/132151239.html

ADE651の約束は魅力的だ。爆弾や銃やドラッグや人体を、最大1km離れた所から探知できる携帯探知機だ。イラク軍はそれを信じ切っている。ただし、ここで問題がひとつある。それは機能しない。

*via http://gizmodo.com/5396888/the-bomb+sniffing-gadget-thats-definitely-not-saving-iraq


ADE651であれ、GT200であれ、「ハコに何かを入れて、アンテナをつけて、いかにもそれっぽく見えるようになっているが、何の機能もないもの」であることに変わりはなく、使い方も「精神を集中させる」云々と、まさに「ダウジング」そのもののようだ。(問題発覚直後から継続的にこの問題をウォッチしておられる@kumicitさんのブログ、「忘却からの帰還」ではこの機械を「だうじんぐマシン」と呼び、私もそれにならっている。)

ADE651も、GT200も、製造主(メーカーの社長。前者はJim McCormick, 後者はGary Boltonという英国人)は「詐欺 fraud」で起訴されて有罪となり、2013年に相次いで実刑判決を受けている。
http://transact.seesaa.net/article/370445445.html

ADE651の「開発者」が有罪となったときの私のメモ:







GT200でも、これと同じようなことが起きていたわけだ。となれば英国の「構造的」、「体質的」な問題であろう。

というわけで、26日付けのガーディアン記事を読んでいこう。

Fraudster paid government to help promote fake bomb detectors
Robert Booth
The Guardian, Sunday 26 January 2014 19.00 GMT
http://www.theguardian.com/politics/2014/jan/26/fraudster-paid-government-promote-fake-bomb-detectors

【要旨】 (※以下、太字強調はnofrillsによる。)
英国政府は、詐欺師から数千ポンドを受け取って、実体のない爆発物検知器を全世界的に売り込むのを支援していた。

ホワイトホール(英国の官庁街)には、このような装置は「人間の勘とほとんど変わらない」ようなもので、場合によっては人命の損失につながりかねないとの警告が出されていたにも関わらず、このようなことが起きた。

問題の装置は、ケント州のビジネスマン、ガリー・ボルトン(48歳)が開発したもの。ゴルフボール探しに役立つという触れ込みのグッズにすぎないようなものを「爆発物検知器」として全世界規模でプロモートするために、ボルトンは政府に金を払い、現役の軍人たちと英国大使を使っていた。ボルトンは昨年、詐欺で有罪となり禁固7年の判決を受けている。

英企業は、1案件につきわずか£250で外交官を雇って自社製品導入の手筈を整えたり、現役の軍人に日給£109(+付加価値税)でセールスマンとして動いてもらうことができる。その際、その製品の正統性のチェックはないということが、ガーディアンがボルトンと政府のやり取りに関して「情報公開法(情報の自由法)」で公開請求した英国政府の文書(注:本エントリ末尾にリンク)で明らかになった。

文書によると、英国政府はボルトンから£5,000以上を受け取り、中東や欧州での国際トレードフェアの現場に軍服を着た(=現役の)工兵隊を派遣して、当該の機器の販売促進に当たらせた。

また、ボルトンの会社は、BBCのNewsnightのプレゼンター、ジェレミー・パックスマンの兄で、当時メキシコ大使だったジャイルズ・パックスマンの後援を得て、ドラッグ戦争の当事者であるメキシコ政府高官との面会を取り付けていた。

マニラの英国大使館も手を貸し、ホワイトホールの貿易担当当局がこの機器の製造元であるグローバル・テクニカル社を支援するために金銭を受け取った回数は、2003年から09年にかけて、少なくとも13回にのぼる。

はい、ちょっと休憩。

「工兵隊がセールスマンだった」ことを暴いたのが、BBCのNewsnightだったんですよ……。これもKumicitさんのブログに詳しい。

2011/02/17 まだまだ販売が続く"だうじんぐマシン" それを支援する英国工兵隊
http://transact.seesaa.net/article/186304277.html

[Meirion Jones and Caroline Hawley, BBC Newsnight: "UK government promoted useless 'bomb detectors'" (2011/01/27) on BBC]

The government has admitted that the Army and UK civil servants helped market so-called "bomb detectors", which did not work, around the world.
英国政府は陸軍および英国公務員が、機能しない、いわゆる「爆発物検出器」を世界中に販売するのを支援していることを認めた。


BBCのNewsnightは月〜金曜日の夜の報道番組。プレゼンターは3人いるから、この放送がジェレミー・パックスマンの担当の日だったのかどうかはわからないが(よく調べればわかると思うが)、ここで言っていた「公務員」がパックスマンの兄とは、何とも皮肉なことだ。

ガーディアン記事に戻る。

【要旨】
ボルトンはこの機器の製造販売で、多くて年に300万ポンドを稼いでいた。

英国政府が加担していたことは、外交上のembarrassmentを引き起こしている。つい最近、昨年には英大使館はそれぞれの駐在国に対し、「これらの機器には効果はありません」などという警告を出すよう指示されている。

当該の機器は既にタイ、メキシコ、レバノン、フィリピンとアフリカの数か国で販売されていることがわかっている。労働党所属の下院議員で、国防委員会のメンバーであるトマス・ドハーティ議員は、政府のかかわりについて「国辱」と述べ、二度とこのようなことがないよう各省から確約をとろうとしている。

「政府は、ホワイトホールの統治機構の中が非常にひどいことになっていたということを認識していないようです」とドハーティ議員は語る。「輸出促進のためのコストはかかるものであっても、最終判断を下す人々の判断力が財政的数値目標達成のために曇らされることがあってはなりません」

……と労働党議員が警告しているのだが、このインチキ「だうじんぐましーん」が(英国の軍隊では採用されなかったにも関わらず)外国に販売されていた時期は、労働党政権だったじゃありませんか。。。1997年にトニー・ブレアがバカ勝ちして労働党政権誕生、以後2010年の総選挙まで(2007年にブレアからブラウンに党首が変わったけれども)労働党の政権だったわけですよ。。。といっても、このドハーティ議員、初当選が2010年なんですね。ちなみに防衛が専門分野。

【ガーディアン記事要旨】
2001年、内務省所管の研究施設の科学者が、ボルトンが開発した「爆発物検知器」を試験したが、このときに既に政府全体の1000人ほどの官僚に、この機器に関する警告が出されていた。この警告は、当該の機器をメッタ切りにし、「テロリストの爆弾を検知するのにこのような機器に頼っているとしたら、とんでもなく重大な結果が予想される」と結論するものだった。

英国政府は現在まで、この機器が役立たずだと知っていたということは一切否定してきている。政府が詐欺の片棒を担いでいるなどということは知る由もなかったとの主張だ。


この「政府の言い訳」がすごい。建前の羅列だ。「You, うっかりコンクリ流し込んじゃいなYO!」と言ってあげたい。

【原文のままで】
"It is right that in some circumstances UK Trade & Investment will seek reimbursement for promotional and advisory services," a government spokesman said. "When UKTI becomes aware that a company has acted fraudulently it will withdraw its support and refer matters to the appropriate authorities.

"UKTI has an important job to do in supporting British business across the world and is aiming to help 50,000 businesses next year. UKTI cannot undertake a test or assessment of all products and services for every business it supports."

なるほど。でも英軍がこの「爆発物探知機(中身はゴルフボール発見グッズ)」を採用してない時点で、この会社の製品がgenuineだったかどうかの判断はついてるわけっすよね。そこではfraudという法的裏付けの必要な言葉での認識はされていなかったかもしれないにせよ。軍に限らず、英国の空港の預け荷物のチェックなど、本当に使えるものならば実用に供されていて当然の器械であるにも関わらず(英国内には、イラクなどで用いられているIEDとおそらく同タイプの爆発物が「テロ組織」によって作られて使われている北アイルランドもあるけど、こういう「グッズ」が使われているという話は聞いたことがない)。

一方、詐欺師の後援をした(させられた)「外交官」、ジャイルズ・パックスマン(既に引退している)は次のように述べている。(むろん、こういうことに噛んでいた外交官は、パックスマンだけではないのだろう。)
【要旨】
「(ボルトンの)行動に問題があるとは、一切、疑う理由はありませんでした」が、疑わしい製品について大使館に警告するプロシージャ―を政府が有していたかどうかという質問には「ボルトン氏の製品を特に勧めるといったことのないようにしていたつもりです」とパックスマン元大使は回答した。

「疑惑の人」ですな。さあ、この疑惑に、BBC Newsnightが切り込めるかどうか。Paxoに期待だ。

ガーディアン記事はこのあと、ようやく「常識」の通じる人たちのコメントになる。
【要旨】
この取引に反対する運動をしてきた人々は、ボルトンの機器を支持した責任のある当局者に法的責任を問うべきとしている。「Mole/GT200が政府のお墨付きを得て販促されていたなどということが既に噴飯ものですが、ボルトンが政府省庁に金を支払って支援を得ていたということがわかったわけで、さらに輪をかけてショッキングです。当事者となった英国政府省庁で事態に関係した人々の責任者は、このスキャンダルの過失を問われるべきです」とあるキャンペイナーは言う。

タイの人権活動家は、この機器を使って不審車両をチェックしたものの爆発物が検知されなかった爆弾事件を2件、特定している。これらの事件で4人が死亡している。

また、この機器が1,000点も販売されたメキシコでは、このデタラメ検知器のせいで無実なのに投獄された人々が複数いるという。

2009年、ボルトンはドラッグ・カルテルとの戦いにあたっているメキシコ政府当局者に対し、パックスマン大使からの紹介状を書いてもらうため、UKTI(英国貿易投資総省)のメキシコ支局に金銭を支払った。外交官(=大使館員)が販売のための会合をセッティングし、メキシコの当局者をランチに招き、ボルトンの機器の販促活動のため大使館のお墨付きを使うことを示唆した。

欧州での防衛・兵器ショーやクウェートとバーレーンでの武器見本市では、英軍工兵隊の伍長らがボルトンによって雇われ、GT200の売り込みを行なった。工兵隊の輸出支援チーム(the Royal Engineers Export Support Team)とUKTIにボルトンが支払った金額は£5,631.93になると、グリーン閣外大臣は認めている。

※最後の「グリーン閣外大臣」はこの人。いわゆる「民間からの登用」ですね(選挙された議員ではない):
http://en.wikipedia.org/wiki/Stephen_Green,_Baron_Green_of_Hurstpierpoint

以上。

カネの流れについての詳しい記事は:
How UK soldiers and ambassador were enlisted to help sell fake bomb detectors
http://www.theguardian.com/uk-news/2014/jan/26/government-soldiers-ambassador-fake-bomb-detector

ガーディアンが開示させた文書そのものは:
http://www.theguardian.com/uk-news/interactive/2014/jan/26/ukti-gary-bolton-documents

※この記事は

2014年01月28日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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