kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2013年07月26日

バーミンガム、連続テロ事件(逮捕・起訴されたのは25歳のウクライナ人)

今年4月末、イングランドのバーミンガムで、高齢の男性が刺殺されるという事件があった。被害者はMohammed Saleem Chaudhryさん。(年齢は事件当時「75歳」と伝えられていたが、法廷では「82歳」となっているので、情報が取り違えられたか、記録がどこか間違っていたかだろう。)




モハメド・サリーム・チョードリーさんは、名前からわかるようにムスリムだ。その晩、地域のモスクで夜の礼拝を終えて帰宅する途中、家のすぐ近くで襲われた。

数日後には、地元警察は目撃者に呼びかけるビラ/ポスターを配布し、現場を撮影していたCCTV(防犯カメラ)の映像に、男が走って逃げていくのがとらえられていたことを公表していた。

そのころには、既に「(個人の怨恨などが動機の殺人事件ではなく)ヘイト・クライムであるとの可能性」という報道があったと思うが、当時私の見ていた画面には、「ボストン・マラソン事件はテロだと言うくせに、バーミンガムの老人刺殺はそう言わないんですね」というアメリカやアラブ地域の人たちの根拠などない感情的なボヤキが、私がうんざりする程度に大量に流れてきていて、辟易したものだった。

ロンドンのウリッチで英兵が刺殺された(そしてすぐに「テロだ」と大騒ぎになった)翌日の5月23日には、ご家族(娘さんたち)が会見で犯人逮捕を訴え、警察は「人種的な動機」による事件であるかもしれないとの見解を示し、また殺害されたモハメドさんの息子にはEDLからの脅迫があったことも伝えられた。

この時点で、「極右テロ」(その多くは、1999年のアドミラル・ダンカン爆弾事件のような、「思想」は抱いているが「組織」という背景のない「一匹狼」の犯行である)という可能性は十分に考えられていたと思う。

けれども、この殺人事件で逮捕・起訴されたのが、ほかの「テロ事件」(モスクに対する爆弾攻撃、3件)の容疑で逮捕された外国人だったということは、不意打ち感のある報だったのではないか。(「だったのではないか」というのは、このニュースがあった日は英メディアは「出産を控えた女の人が入院した」ニュースばかりが目立ち、メディアがペンキが渇くのを眺めている状態を見て呆れていてよく見てなかったので。)







自分のログをたどると、6月19日にこんなのがある。




この6月21日の記事(ガーディアン掲載、PA記事)では、"two men in Birmingham", "the men, aged 25 and 22, in the Small Heath area of Birmingham" と書かれているが、逮捕された容疑者の国籍は書いていない(BBCでは "Two Ukrainian men" と書いている)。なお、Small Heathという地域は、4月にモハメドさん刺殺事件が起きた地域であるが、それ以前にバーミンガムのムスリム集住地域であり、この記事の記述からはこの2人の逮捕容疑とモハメドさん刺殺の容疑との関連はうかがえない。

(なお、後日わかったのだが、22歳の人は釈放されて検察側の「証人」になることになっている。北アイルランドでおなじみの例のあのプログラムですかね……)

この「25歳の男」(容疑者)が「外国人」であることがはっきりわかったのは、彼がモハメドさん刺殺事件の容疑者として逮捕・起訴されたあとのことだと思う。

Man charged with further terror offences after Black Country explosions
23 July 2013
http://www.west-midlands.police.uk/latest-news/press-release.asp?ID=4970
A UKRAINIAN student appeared in court this morning accused of murdering a Birmingham pensioner and offences relating to explosions at three Black Country mosques.

Pavlo Lapshyn spoke only to confirm his name and date of birth during the short hearing at Westminster Magistrates Court after being charged yesterday with the terrorist related killing of 82-year-old grandfather Mohammed Saleem.

Additional terrorism charges relating to the Aisha Mosque, Walsall, Kanz Ul Iman Masjid Mosque, Tipton and Wolverhampton Central Mosque were confirmed today in court.

上記警察発表に詳しいが、ウクライナ人のPavlo Lapshynはモハメドさん殺害で起訴される前に、3件の違法行為で起訴されていた。1件はsection 5 of the Terrorism Act 2006での起訴(2013年4月24日から7月18日の期間において、ボムの材料調達、ボムる標的のリサーチなどを行なった)、2件目はsection 2 of the Explosive Substances Act 1883での起訴(6月21日のモスクに対するボム攻撃)、3件目もsection 2 of the Explosive Substances Act 1883での起訴(7月12日のモスクに対するボム攻撃)。詳細は原文参照。

ガーディアン記事:
Ukrainian man charged with 'terrorist-related murder' of Mohammed Saleem
Vikram Dodd
guardian.co.uk, Monday 22 July 2013 18.39 BST
http://www.guardian.co.uk/uk-news/2013/jul/22/ukranian-man-charged-murder-mohammed-saleem
The man charged is Pavlo Lapshyn, a postgraduate student from Dnipropetrovsk. Police said he had been charged "with the terrorist-related murder of Birmingham pensioner Mohammed Saleem".

The 25-year-old – who had been in the UK on a sponsored work placement – was arrested over the murder on Saturday.

He was first arrested last week after home-made bombs exploded outside three mosques in the West Midlands; the first on 21 June in Walsall, the next, a week later in Wolverhampton and the third, on 12 July, involving a nail bomb in Tipton.


ケイト・ミドルトンの出産と重なっていなければどのメディアも一面で大騒ぎしていただろうが、ガーディアン記事にあるように、Pavlo Lapshynは公的な(=政府がついている)プログラムで英国にやってきた。そして、英国に入って数日後に、モハメドさんを殺した。

デイリーメイルなんだけど……(あーあ、ボイコット記録樹立ならず)
Posing with our man in Kiev, the Ukrainian held over killing of Muslim grandfather
By Paul Bentley In Dnipropetrovsk, Ukraine
PUBLISHED: 17:09 GMT, 22 July 2013 | UPDATED: 11:06 GMT, 23 July 2013
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2373914/Pavlo-Lapshyn-Ukrainian-held-killing-Mohammed-Saleem.html

Pavlo Lapshynはウクライナの国立冶金学アカデミーのPhDの学生(博士課程)で、研究が評価され(バーミンガムメイルの報道によると、エンジニアリングと3Dモデリングの研究だそうだ)、英国のバーミンガムにあるDelcamという会社で(おそらく「研修生」的な意味合いで)働く機会を得た。メイルの記事には、彼がそのポストを得たときの贈呈式のような場のスナップショットが掲載されている。英国大使と、アカデミーの代表者や担当教官、Delcamの重役と肩を並べて立つ彼は……たぶんこの写真は瞬間的に変な顔をしているもので部屋の全景から切り抜かれているのだと思うが、記念撮影用の笑顔を見せるでもなくただ立っている。(なお、この写真を元に英国大使を非難するような論調も見られるが、そりゃ言いがかりってもんでしょ……)

そして今年4月にこの会社で働くようになった彼は、そこで同じくウクライナの Denis Negrebaという学生(22歳)と知り合う。このNegrebaが後日、Lapshynと一緒に爆弾事件の容疑で逮捕されたが釈放され、検察側の証人となることになったという人物だ。

メイルの記者は、首都キエフから250マイル南にあるLapshynの出身地、ドニプロペトロウシク/ドニプロペトロフスク (Dnipropetrovsk) に行き、両親らに話を聞いている。父親(大学の先生)は、プログラマーの仕事のインターンシップで渡英した息子がこんな容疑で逮捕されたことについて「ショックを受けています。何かの間違いだと思いたい」と語り、母親は……何だろう、これは。「うちの子に限って」的なことか。指導教官は「内気で物静かな青年で、争い事は一度もしたことがないのに、こんなバカな」とかなり怒っている様子。お父さんのインタビューの様子はBBCが映像をアップしている。(あまり息子のことをよく知らないようにも見受けられる。)

そして23日、Pavlo Lapshynは(バーミンガムの法廷ではなく)ロンドンのウエストミンスター治安判事裁判所(下級裁判所)で起訴された。直接出廷はせず、ビデオリンクで判事の前に立った彼は、この日は本人確認(名前と生年月日)だけで終わった。
http://www.birminghammail.co.uk/news/local-news/ukrainian-student-court-charged-murder-5263527

翌24日にオールドベイリーで、同じくビデオリンクで判事の前に立った彼は、保釈されず(remanded in custody)、次の法廷は8月2日に予定されている。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-birmingham-23447180

かつて、ロンドン発の航空機で「液体爆弾」が見つかったとき(乗客が飲み物に見せかけて爆薬を持ち込んでいた。これのせいで機内持ち込み荷物が厳しく制限されるようになった)は、英メディアはそりゃもう大騒ぎで、英国に化学を学びに来ている外国人留学生はとりあえず全部テロリスト予備軍といわんばかりの扱いをしていたメディアもあったくらいだ。今回は、おそらくほかのネタ(女の人が赤ちゃんを産んだニュース、ツールドフランスでの英国人の優勝)があったせいもあるだろうが、タブロイドの大騒ぎがない。バーミンガム警察のある警官は、「モスクへの爆弾攻撃が3件も起きたのが別の地域だったら、メディアはもっと騒いでいたのでは」と問題を提起しているが、確かにバーミンガム(を含むブラックカントリーのエリア)はスルーされがちかもしれない(昔から)。

被告はバーミンガムの会社の敷地内の寮に住んでいたようで、23日には警察が立ち入り、捜索を行なっている。その結果、爆弾の部品と思われるものが発見されたという。また、捜査当局はウクライナに飛んで調査を行なっているとも。
http://www.birminghammail.co.uk/news/local-news/suspected-bomb-parts-found-during-5300912

……という感じだが、とにかく報道が少ないというか、薄い。既に起訴されているのでこれは仕方のないことだ(英国は、裁判が始まった後は陪審員に予断を与えるような報道をすると法廷侮辱罪に問われるので、法廷で何かが明らかにされるまでは、報道機関は仮に独自の調査をしていてもまず報じない。報道機関に限らず、ネットでの発言にも慎重にならざるをえない)。

そんな中、Anton Shekhovtsovさんという研究者さん(ロシア語と英語で書かれた論文がいろいろ閲覧できる)が、ロシア語圏で調べものをして、英語でブログに書いてくれているのだが、これがもう何というか……。まあ、読んでください。すごいっすわ。ガチ極右。
http://anton-shekhovtsov.blogspot.co.uk/2013/07/ukrainian-25-year-old-postgraduate.html




タイムライン(英メディアより全然詳しい):
http://anton-shekhovtsov.blogspot.jp/2013/07/pavlo-lapshyn-case-brief-chronology.html

バーミンガム・メイルの記事などにある、警察サイドからの「爆弾の部品と思われるものが発見された」という情報は、鵜呑みにしないように気をつけて見ておいた方がよい。起訴状に基づいた警察のリリースによると、このケースでは「爆弾の部品と思われるもの」は弁当箱や携帯電話(起爆装置として使う)といった日常で使うものや、コード類を指すようだが、それらはそれだけでは「爆弾の部品である」と断定はできないようなものだ。そのようなケースで裁判に結局「テロ計画などなかった」(rather than「テロ計画があったとは立証できない」)という結論に至る事例も、過去にあった(特に注目すべきは、ウッドグリーンの「リシン」の事例)。

それでも、現にウォルヴァーハンプトン、ティプトンなどで3件のボム攻撃が確認されていること、これらのボムがいわゆる「手作り爆弾 homemade bomb」であること、警察が3件を関連付けているということは客観的に何らかの共通点があるということ(製造方法とか使われている薬品や部品とか)などは確かであるし、起訴された25歳のウクライナ人(裁判で通訳を要求していない=英語が使える)が、米国の極右についてよく知っていたことも、それが(言語障壁のない)極右研究者の報告ということを考えれば、事実であろう(当該のリンクが示されていないので確認はできないが)。

しかも、口だけの極右活動家ではなく、ティモシー・マクヴェイ(オクラホマ連邦ビル爆破事件)への言及があるということは、大きな意味を持つと考えるのが妥当ではないかと思う。

※この記事は

2013年07月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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