kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2007年01月15日

アイルランド語でアイルランドを旅してみたら……

映画『麦の穂をゆらす風』(東京では今月最終週までらしい)のはじめの方で、主人公たちの集落をブラック・アンド・タンズが強制捜査にきたときに、ひとりの少年が自分の名前をアイルランド語(ゲール語)でしか答えず、「反抗的」な態度をとったために凶暴なタンズの隊長の怒りを買い、納屋でなぶり殺しにされるというエピソードが出てくる。(ちなみに、このようなことはフィクションではなく実際にあった。また、英国による――というかイングランドによる言語の弾圧は、海を渡らずとも、ウェールズとかコーンウォールの例がある。)

『麦の穂をゆらす風』の時代から80年余りが経過して、アイルランド語はEUの公用語となった。2002年の国勢調査では、人口400万人のうち157万人がアイルランド語を話すことができ、アイルランドの学校(義務教育)ではアイルランド語は必修であるという。

では、アイルランド語は実際に街で通じるのだろうか?

・・・ということを実証してみたアイルランド人がいる。彼の実証の場はアイルランド共和国だけではない。北、それもアイルランド語が敵視されてて当然のエリアでもやってみたそうだ。

No English? No Irish more like
Last Updated: Friday, 12 January 2007, 09:52 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/6254947.stm

記事によると:
アイルランドのアイルランド語専門チャンネルTG4のNo Bearla(No Englishという意味)という番組の企画で、プレゼンターのManchan Maganさんが、アイルランド共和国と北アイルランドを、英語を一切使わずアイルランド語だけで旅行した。

統計では約160万人がアイルランド語を話すことができ、うち165,000人は北部(北アイルランド)に住んでいる。ならば、アイルランド語だけでアイルランド島を旅して回れるのではないか、とMaganさんは考えたようだ。

しかし実際には、バーからは放り出され、料理のオーダーは間違えられ、間違った方角を教えられ、欲しいのとは違う服を渡され、変な髪型にされてしまった。

つまり、南北合わせて約600万人(南だけで約413万人)のうちの160万人が話せるはずの「アイルランド語」は、ほとんど通じなかった、というのが彼の体験である。

ただ、通じないアイルランド語というものを使うことで強い感情を引き起こしたのだそうだ。

ダブリンでは、店の人が耳を押さえて「英語を話さないんなら出て行ってくれ」と言った。Manchanさんはこれを、アイルランド語が学校で必修となって10年たつが、一向に喋れるようにならないので逆に忌避する人が多いのではないか、と分析する。「アイルランド語を喋っていると、どうも、どうだ俺はアイルランド語ができるんだ、すごいだろうとひけらかしているように受け取る人もいますね」とも述べている。

確かに、「この言語が私たちの民族の独自の言語です」と言われて習うはいいが、習う場所の外で使われていなければ身にはつきづらい。

また、Maganさんは、アイルランド語は「戦争の兵器」だと受け取られることもある、という。実際、独立運動、独立戦争においてそういう役割を果たした歴史もあるのだが、特に北アイルランドについてはそれよりもIRAの囚人たちが使っても看守には内容がわからなかった言語ということかな。

ベルファストのナショナリスト地域、Falls Roadでは、アイルランド語しか使わないMaganさんは人々の好意に迎えられた。

一方でユニオニストの地域であるShankill Roadでは、「最初はおもしろがられました――何人かが、英語で、無理に話せと言われたらやだけど、そうじゃなければ素敵な言語だ、と言っていました。しかし、シャンキルでアイルランド語を使い続けたら、近いうちに病院に担ぎ込まれることになるぞと警告を受けまして」。

うはははは。やっぱり。(^^;)

「というわけで早いとこおさらばして、Letterkennyに移動しました。非常によい反応を得ました。」

たぶんここは笑うとこだ・・・Letterkennyはドニゴール州で最大の街。というか、1980年にhigh-level IRA finance meetingが行なわれていた場所だったり。
http://en.wikipedia.org/wiki/Letterkenny

というわけで、場所によっていろいろあったようだけど、それだけでなく、世代によってアイルランド語についての態度に違いがある、とMaganさんは述べている。「若い人のほうが積極的で、こっちが何を言っているのかを理解しようとしていました。ダブリンの場合は、あそこはせわしない大都会なので、別の言語で喋っている人に注意を払う余裕がない、ということかもしれませんが。」

取材活動中、最も熱心に何を言っているのか聞き取ろうとしてくれたのは、エスニック・マイノリティの人たちだったそうだ。「特に中国からの人やポーランドからの人たち、彼らがこちらが言っていることを理解しようと努力してくれました。」

Maganさん自身はアイルランド語のネイティヴ・スピーカーだそうだ。英語はあとから習って身に着けた。

だが、BBCの記事に、Maganさんの夢には英語が出てくることが多いとある。「16歳くらいまではアイルランド語で夢を見ていたと思う。でも周りが英語だから」と彼は語る。

彼の結論としては、アイルランド語は危機にあるということだ。アイルランド語が死んでゆくのを見るのは悲しい、と彼は言う。だが、とBBC記事は続ける。「それは彼だけではない。彼の話では、シャンキルで出会った3人もアイルランド語が消えていくのは見たくない、ただ『自分が無理やり喋らされるのは反吐が出る(didn't want it shoved down their throats)』だけだ、と言っていた。」

まあ、最後のはBBC流のちょっと小粋なエスプリ(なのか?)ということで、実際に番組を見てみたいので探してみた。

そしたら、ご本人がクリップをYouTubeにアップしている。

番組の放送はSundays, from January 7th, 9.30pm TG4, repeated Wednesdays 7.30pm. とのこと。まだ始まったばかりのシリーズなのね。(TG4はアイルランドのアイルランド語チャンネル。http://www1.tg4.ie/Bearla/ 参照。←英語版サイト。)1回30分の番組で、ベルファストに行くのは14日放送分(サイトの番組表より)。

Part 1がno longer availableになっているのだけど、別にアップロードされてるのを発見。
http://www.youtube.com/watch?v=YTbl-_xq6n8
※8分30秒くらい

英語字幕がないから内容がわからないのだけど、ダブリンの観光案内所かな、そこで窓口の人がEnglish onlyって。(笑) 別の窓口で通じたとしても、「ゲール語を使う男」に対する「空気」や「視線」の冷たいこと。観光案内所でみやげ物の「アイルランド」満開の売り場に残してくるPOG MO THOINはこういう意味で、pogue mahoneと読む(これは有名だよね)。ゲール語を自在に操る観光バスの運転手さんとか、刑務所博物館(Kilmainham Gaol Museum)の人たちとかは、ある意味で別世界に属している人たちだね。刑務所博物館は特に、この建物でイースター蜂起の指導者たちが処刑されているなどの歴史を考えればここでの「ゲール語」の意味はわかる。(刑務所のことを知っていれば、映像の内容も最低限でも2割くらいはわかる。)

No Béarla 2 - Singing Filthy Songs in Irish
http://www.youtube.com/watch?v=TK-4DoUZdnk
※2分ちょっと

前半は「街角アイルランド語テスト」。パブの前の3人組、視線泳ぎまくりなのだが。(笑) 後半が「街角で変な歌を大声で歌ってみる」。このお歌、ここに英訳されているようなひどい歌詞なのだが、行き交う人はほとんど無反応というか、何となく変な間(空間)があいているような。ゲール語云々というより「変な人には近寄りたくない」という感じにも見えるが。

No Béarla 3 - Chatting up girls in Irish
http://www.youtube.com/watch?v=6Rw87jR7zk4
※3分半くらい

いい感じで会話が弾んでいるなと思ったらドニゴールで撮影したパートだそうです。



YouTubeで映像を探したときのメモ。

http://www.youtube.com/watch?v=YTbl-_xq6n8 のタイトルが、No Béarla, Clár a hAon, Cuid a hAon。No Bearlaが "No English" なのはBBC記事で確認できるのでOK。残りが私にはわからない。

これをYouTubeにアップしたのと同じ人が、これのほかに、
No Béarla, Clár a hAon, Cuid a Dó
http://www.youtube.com/watch?v=0HIj3rylH1o
No Béarla, Clár a hAon, Cuid a Trí
http://www.youtube.com/watch?v=ib_cWlElMFc
というのをあげている。

それぞれの末尾の、hAon, Do, Triというのが数字の「1、2、3」だろうという見当はつく。(Do, Triはラテン語系の数字の数え方から何となく援用。)

それが正しいのかどうか確認するために、Googleに"gaelic number"(「ゲール語 数字」の意味)と打ち込んで検索。で、下記ページを得て確認。OK。「第1章第1節」、「第1章第2節」、「第1章第3節」ということだろう。
Irish Gaelic: Numbers and Counting
http://www.phouka.com/irish/ir_numbers.html

No Béarla, Clár a hAon, Cuid a Dó(第2節)
http://www.youtube.com/watch?v=0HIj3rylH1o
前半はグラフトン・ストリートとかでアイルランド語であれこれやってみようとするシーンのコラージュ。後半でラジオのスタジオで電話を受け付けるが、ここでやっと英語が登場する。(アイルランド語では判断基準がなくてよくわからなかったが、やっぱりMaganさんは相当早口だ。)「アイルランド語が使われていない」ことについてのMaganさんのフラストレーション。もうひとりのパーソナリティが「学校で教える科目にしてしまったことで、自分たちの言語を自分たちで破壊してしまったと思いますか?」と言う。そういうのについての電話での意見など。

No Béarla, Clár a hAon, Cuid a Trí
http://www.youtube.com/watch?v=ib_cWlElMFc
ゲールな書店に中央郵便局(イースター蜂起と共和国宣言のあのGPO)、HMVとめぐり、こじゃれたカフェでダブリン編のまとめをして、車に乗って北へ。この先が見てみたいのだが。(書店は完璧な応対に見えるし、HMVもちゃんと応対している。郵便局がちょっと大変そうだが。)



何となく「アイルランド語」関連でYouTubeを見てみることにして、次のビデオに飛びついた。だって英語字幕つきなんだもん。

As Gaeilge (In Irish) with English subtitles
http://www.youtube.com/watch?v=LVYrOn7j7eo

これがまた考えさせられる。彼はアイルランド人で、学校でアイルランド語を習った。でも「学校の外に出たらアイルランド語は使わない」し、最近は使わないので忘れかけている。で、彼は「久しぶりに喋るから、文法めちゃくちゃだと思うけどゴメンね」と言いつつ、「アイルランド語で喋るビデオをもっと投稿してほしい」と呼びかける(そしてレスがたくさんついている)。

考えさせられるのはそのことじゃない。ここでアイルランド語で喋っている人は、見た目はまったく「アイルランド人」的ではない。アジア系だ。でも彼はアイルランド人なのだ。学校に通っていたとき、バスの中で、近くにいた人たちがアイルランド語で喋っていた。でもそれは、アイルランド語なら彼にはわからないと思ってのことだろう、と。

となれば、話の内容はたぶん悪口だ。

コメント欄に、アメリカ人で親がアイリッシュとプエルトリカンで、外見はラテン系だという子が、「アイルランド語を習いたいとは思うが、私のような外見の人間が、白人のアイルランド語を使うのって変かなと思ったりして」と投稿している。でもその子は、Por lo menos hablo español y ahora estoy en Japón aprendiendo japonés(機械翻訳の結果= At least I speak Spanish and now I am in Japan learning Japanese)とも書いている。(日本語の勉強、がんばってほしい。)

ネイティヴ英語スピーカーで、外見はヨーロピアン(つまり白人)で、日本語ぺらぺらという友人がいる。その人は、東京で日本語を使うと、珍しい動物のように見られることにフラストレーションを感じると言う。

東アジア出身で、日本語は簡単なやりとりならできるという人が、東京で日本語を使わないとワンランク下に見られ、その日本語に「変なアクセント」があるとさらに下に見られるように感じると言っていたこともある。

いろいろと考えてしまうな。

あと、アメリカでのアイルランド語事情を説明しているビデオ。いろんなところで学べるようです。
http://www.youtube.com/watch?v=dc1xlK9H0WU

アイリッシュ・ナショナリズムって、多くの部分がmade in the USAなんだよね。セント・パトリックス・デイのパレードとかも。あと、アイルランドにいたアングロ・アイリッシュが中心になってきたという経緯もあるけど。

YouTubeでのアイルランド語関連のビデオは下記からどうぞ。音の数が多く、口の中のあちこちにぶつかって出される音が多く、抑揚がリズミカルで、古い響きのする歌のような言語かもしれない。
http://www.youtube.com/results?search_query=GAEILGE

なお、アイルランド語は正書法ひとつとっても大変な言語だ。(いや、Brit英語だって「gaolと書いてjailと読む」みたいなのがありますけど。なのでアメリカ人は時々読めなくなるらしい。)

"http://www.eigo21.com/etc/kimagure/070.htm から引用:
「だから」は amhlaidh と書いて[aulig' アウリギュ]と読ませ「鍛冶屋」は gabha と書いて [gou ゴウ] と読ませる。 「語り部」は seanchaí と書いて[shanaxi: シャナヒー]と読み「動物」は ainmhí で[anivi: アニヴィー] 。 これらはまだいい方で, 1948年の綴り字の改定前は「危険」は baoghal (今は baol )と書いて[be:l ベール], 「住む」の動名詞は comhnaidhe (今は  cónaí)と書いて[ko:ni: コーニー]と読ませていたらしい。




Maganさんのページで紹介されていた記事:
http://irishmedia.blogspot.com/2006/11/sound-within-by-kate-fennell.html
The language police would circulate in the clós during break-times noting down the names of people who were singing the skipping rhyme "Vote, vote, vote for De Valera" in English. I couldn't win. I was proud now to be beginning to converse in this new language but already it was a crime. While, at the same time, my Irish was the cause of much mirth since I pronounced guttural 'ch' with much more of an 'ach' sound than they. While their 'chs' were rendered as 'ks', mine were softer and more like the 'ch' in the Scottish 'Loch Ness'.


http://en.wikipedia.org/wiki/Irish_language



■追記:
MaganさんのNo Bearlaの第2章、「北へ」編についても書きました。
http://nofrills.seesaa.net/article/31738583.html

あと、関連する短編映画2本についても。コメント欄参照。

※この記事は

2007年01月15日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:45 | Comment(3) | TrackBack(0) | 言語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
nofrillsさん、こんばんは

去年のクリスマスイヴにTG4で放送されていた「Fluent Dysphasia」というドラマが
こんな感じでしたよ!
Neil Jordan監督の映画でお馴染みStephen Rea扮する主人公が、ある朝目覚めるとゲール語しか理解できなくなっていた…というものです。彼の友人(ゲール語が話せない)の反応が全てを物語ってます(笑)
オチがあまりにもヘコーな感じなのですが、20分と短いしwebTVで観られるので
是非。
Posted by TR at 2007年01月19日 01:47
TRさん、こんばんはー。

Fluent Dysphasia(流暢な失語症)・・・
http://www.atomfilms.com/film/fluent_dysphasia.jsp
ですね。見ました見ました。友人の反応。(笑)

あとで別にエントリ立てたいと思います。おもしろいフィルムを教えていただいてありがとうございます!
Posted by nofrills at 2007年01月20日 00:36
Fluent Dysphasiaについて書きました。
http://nofrills.seesaa.net/article/31730824.html

同じ監督の別の短編、My Name Is Yu Ming (Yu Ming is Ainm Dom)というのもatomfilms.comにあったので、それについても。
http://nofrills.seesaa.net/article/31735632.html

あと、Manchan Maganさんの珍道中の第2章についても。
http://nofrills.seesaa.net/article/31738583.html
Posted by nofrills at 2007年01月20日 08:48

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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