kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2006年12月12日

「クリスマス・プレゼント」の恐怖。

※表題の意味については、記事の最下部(<「続きを読む」)参照。

日曜日、ジョン・リード内務大臣が朝のテレビ番組に出演し、「クリスマスの時期のテロ攻撃計画の可能性はかなり高い(highly likely)」という内容のことを述べた。

↓はたった4センテンスという短い記事だが、概要をつかむにはこれでよい。
UK Christmas terror attack likely says Reid
10/12/2006 - 10:13:08 AM
http://www.irishexaminer.com/breaking/story.asp?j=87193742&p=87y94x44&n=87194122&x=
He told the GMTV Sunday Programme the chances of an attempted attack over the Christmas period were "highly likely".


※「GMTV」は朝6時から9時25分までのITV(3チャンネル:英国では1はBBC 1で2がBBC 2、3と4と5が民放で、ITVは民放のひとつ)。
http://en.wikipedia.org/wiki/GMTV

内務大臣の発言内容を知るには上記のIrish Examinerの記事では全然不足。

テレグラフ:
Christmas terror strike 'highly likely'
By John Steele, Crime Correspondent
Last Updated: 3:10pm GMT 11/12/2006
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2006/12/11/nterr11.xml

BBC:
Christmas attack 'highly likely'
Last Updated: Sunday, 10 December 2006, 10:57 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/6166195.stm

ガーディアン:
Reid: Christmas terror attempt highly likely
Will Woodward, chief political correspondent
Monday December 11, 2006
http://www.guardian.co.uk/terrorism/story/0,,1969158,00.html

テレグラフが"terror strike"、BBCが"attack"、ガーディアンが"terror attempt" という用語を見出しに使っているが、大臣の発言を読む限り、ガーディアンが最も正確だ。つまり「可能性が高い」と大臣が述べているのは「攻撃」ではなく「攻撃のattempt(計画、企て)」である。当たり前の話だが(内務大臣が「攻撃の可能性が高いです」と言うだけは言って、攻撃の準備を進めさせているわけではない。でもこういうところから、何かあったあとに「政府は実は・・・」とかいう話が出てきたりするかもしれない。報道機関が勝手に「strikeやattackの可能性が高い」と見出しを打っているだけだが)。

GMTVのサイトを見ても内務大臣の発言についてのページは見つからないので(ITVでも見つからない)、発言の全文はわからないが、各メディア報道を総合すると、次のようなものだ。

"The threat in this country is very high indeed. It is at the second highest level and people now know that publicly, because we publish it on the web. And that means that it is highly likely that there'll be a terrorist attempt."

「この国における脅威は非常に高い。(警戒の)レベルは高いほうから数えて2番目で、そのことはウェブに出してあるので、一般の人々も知っている。このこと(=警戒レベルが2であること)は、つまり、この先、テロの計画があるという可能性が強いという意味である」(ガーディアンから)

「ウェブに出してある」というのは内務省のサイトのこと。レベルはSevere。
http://www.homeoffice.gov.uk/security/current-threat-level/

ちなみに、日本の外務省では特に何も警告してない。12月12日時点で最新の「スポット情報」は、2006年8月のもの。
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/info4.asp?id=154

"We know that the number of conspiracies of a major type are in the tens - 30 or round about that."

「重大なタイプの謀議(conspiracies of a major type)は10単位で存在している――30かそのくらいだ」(ガーディアンから)

ガーディアンによれば、リード大臣は「謀議」の詳細(つまりどのような「謀議」か)は述べなかった。

ここでいう「謀議(conspiracy)」は(「陰謀」という訳語を当てるのは変なので「謀議」とする)、犯罪としてのconspiracyと解釈して間違いないと思う。行動の段階としては、attemptの手前なのかなあ。。。

「犯罪としてのconspiracy」は、日本でも「共謀罪」についての話で出てくるのだが、英国の法では「詐欺の共謀(conspiracy to defraud)」のほか、「爆発を起こす共謀(conspiracy to cause explosions)」がある。ここ数年の「イスラム教過激派」のほか、IRAメンバーがこの「共謀」で逮捕・起訴されている事例が多いが、イスラム過激派でもIRAでもない事例もある。

リード大臣は明言していないが、おそらく現段階で「存在している」という30のconspiracyは、具体的には、おそらく「爆発を起こす共謀(conspiracy to cause explosions)」(日本での言い方に則るなら「爆弾テロの共謀」)などだろう。「30の」というのは、今年11月にMI5が明らかにした数字と一致する。(MI5のトップの Dame Eliza Manningham-Bullerは、「アルカーイダに関連しているグループが自爆者として10代の若者をリクルートし、生物化学兵器もしくは核兵器で攻撃しようとしている。MI5が監視しているグループやネットワークは200あり、1600人が積極的な立場で関係している」ということを発表した。)

"But I think we just ought to be very grateful for the people in the security services and the police and other areas, who work night and day to try and protect us. We can never guarantee that we'll have a 100% success, but we do get a 100% effort from the security services."

「治安機関や警察などのみなさんが、私たちを守るために昼も夜もなく尽力しておられる。このことに深く感謝しなければならない。100パーセントの成功を確信することはできないが、治安機関は100パーセントの尽力をしている」(ガーディアンから)


"The terrorists only have to get through once as they did on July 7 for us to see the terrible, terrible carnage that it causes. Our security services and the police and those who are fighting against the terrorists have to be successful on every occasion in order to prevent that from happening."

「テロリストは、(2005年)7月7日のようなことを起こすには、1度だけ成功すればよい。しかし治安機関や警察などテロリストを相手に戦っている人々は、惨事が起きないように、毎回毎回成功していなければならない」(ガーディアンから)


The battle against terror would continue for "longer than a generation", Mr Reid warned. "When it came to the struggle against republican terrorism in Ireland and in the mainland here, that lasted 30 years, and there is no indication to me that this is going to be resolved any quicker than that."

テロに対する戦いは「30年以上」続くだろう、とリード大臣は述べた。「アイルランドおよびここ本島におけるリパブリカンのテロとの戦いは、30年続いた。現在のテロがリパブリカンのテロよりも早く解決されると考えさせる材料は何もない」(ガーディアンから)

※「リパブリカンのテロ」とはIRAやINLAのテロのこと。アイルランド島での「テロ」はリパブリカンによるものだけではなかったのだが(例えば1974年のダブリン・モナハン爆弾はロイヤリストのテロである)、ここではリード大臣はメインランド(ブリテン島)の話をしているので、リパブリカン限定でよいのだろう。(ただし、例えばケン・リヴィングストン暗殺計画が実行されていたら、こういう語りは不可能になっていただろうが。)

"I try to walk the tightrope between being truthful and honest about the threat to the public but, on the other hand, to say we are doing everything possible to combat it and to try to keep our lifestyle as near as possible to the British way of life."

「脅威について、一般国民のみなさんに対して、真実を包み隠さず明らかにしたいが、一方で脅威に対してできる限りのことをしており、英国の生活様式にできる限り近い形での生活様式を続けていこうとしている」(テレグラフから:元が会話の文で、ニュアンスがわかりません。よって日本語は不正確である可能性がけっこう高いです)

the British way of lifeというのは、「クリスマスの時期の一般の人々の行動」ということだろう。プレゼントを買って、家族が集まって、とかそういうの。つまり「テロがあるテロがある」と騒ぎ立てて人々がパニックにならないようにしている、ということか?とも思うのだが、どうだろう。

He suggested that it was important to resolve the issue of Israel and Palestine because it fuelled "international terrorism".

リード大臣は、イスラエルとパレスチナの問題が「国際テロ」を激化させているので、それを解決することが重要だ、と述べた。(テレグラフより)

この部分、発言をもっと詳しく読みたいのですが、見つかりません。これは現在の労働党政権のテーマみたいなものですが。(アメリカ案がコケたあと、ブレアはほんとはこれをやりたかった。でもジェリー・アダムズという「英国」の「テロ」をよく知っている隠し玉も、イスラエルとは話はできなかったし、アダムズがフレンドリーなムードで話をしたパレスチナでは、その後、ファタハとハマスは内戦状態になった。)

"If terrorism is to be defeated here in this country, the whole community has to be united against them.

"The aim of the terrorists is to divide the community, to pretend that this is a war between Muslims and everyone else, when it isn't. In a funny way they reflect the views of the extreme Right of politics who argue the same thing - that the big division is between Islam and everyone else.

"It isn't - it's between the terrorists and everyone else and only with that unity can we ultimately defeat them."

「この国でテロを根絶したいのなら、社会全体が一丸となってテロに反対しなければならない。テロリストの目的は社会を分断し、これはイスラム教徒とそうでない者との戦争なのだと見せかけることだ。実際にはそうではない。奇妙な感じがするが、彼らの言い分は極右主義者のものと似ている。彼らの思考ではイスラムか、そうでないか、なのだ。実際にはそうではない。実際には、テロリストかそうでないかである。その点で団結することによってのみ、テロを敗北させることができる」(テレグラフより)

最後のこれは労働党が何度も繰り返し言っていることだけど、特につい先日のブレアの「寛容」をめぐる発言の言い換えですね。

「寛容(tolerance)」の概念はあまりに難しいのですが(背景はキリスト教で、英国の場合は特に「カトリック教会はカトリックでないものを認めるべき」というのがバックボーンにありつつ、自身はカトリックを法的に差別してきたという歴史もあるし、アングリカン以外の新教徒も冷遇されてきた――ピューリタン革命の時期もあったけど、あれだってピューリタン独裁だからなあ)、ブレアのこの発言は「みなさんの耳にたこができているでしょうから、今度はニュー・レイバー語で語ってみました」というコンテクストで「寛容」を持ち出してきたようなものなので、どうでもいいか、と。ただ「トレランス」という宗教的なニュアンスを持つ言葉を持ち出したのは、明らかに失敗だと思うけれども。

それから、テレグラフの記事からちょっと興味深いところをメモ:
The Foreign Office has advised Government ministers, ambassadors and officials to avoid the phrase "war on terror", and similar belligerent terms, as they risk angering British Muslims and generating tensions in the wider Islamic world.

It said it wanted to avoid re-inforcing the terrorists' world view of conflict between the West and the Muslim world "by using language that, taken out of context, could be counter-productive".

つまり英国政府は「テロとの戦い war on terror」というブッシュ政権の用語と概念を公式に否定した、ということです。遅すぎたと思うけれども、やらないよりはましなのかな。

なお、ジョン・リードのこの発言には「具体性がなく、恐怖を煽るだけ」という非難が出ている・・・保守党から。

Terror attack over Christmas 'highly likely', warns Reid
10.12.06
http://www.thisislondon.co.uk/news/article-23377731-details/Reid+accused+of+'scaremongering'/article.do
But Dr Reid faced immediate criticism from opposition figures who accused him of giving out just enough information to cause widespread fear, without any meaningful attempt to involve or educate the public in helping to prevent or cope with terror attacks.

...

Conservative homeland security spokesman Patrick Mercer said: "If the Government wants to make things more difficult for the terrorists, they have to involve the public in a constructive way. Otherwise warnings like this are nothing but hollow rhetoric.

"Where are the efforts to advise people on what to do in the event of an attack, or what to look out for to help prevent one?

"Where are the instruction posters on the Tube in London? Where are the new radios to allow the emergency services to communicate underground?

"Knowledge dispels fear, but John Reid is giving us fear with no knowledge."


※なお、ジョン・リードは博士号を持っているのでMr ReidではなくDr Reidのはずだけど、新聞記事ではMrになってることが多いです。



「クリスマスのテロ攻撃」ということでロンドンという街が記憶していることには、1983年12月の出来事がある。

1983: Harrods bomb blast kills six
http://news.bbc.co.uk/onthisday/hi/dates/stories/december/17/newsid_2538000/2538147.stm

1983年12月17日(土曜日)午後1時半、クリスマス直前で買い物客でにぎわうロンドンのハイソ地帯のハイソな百貨店、「ハロッズ」脇で自動車爆弾が爆発した。6人が死亡、90人が負傷。爆発の45分前に「暗号での予告電話(coded warning)」があった。BBCの記事には「暗号」の中身は書かれていないが、これは確か「クリスマス・プレゼントがある」というものだった。爆発の翌日、Provisional IRAが「事前に予告した(から避難の時間は十分にあっただろう)」と述べたうえで犯行を認めた。

ハロッズといえばエジプトの大富豪、モハメド・アルファイドが社主だが、IRAの爆弾テロのときはまだアルファイドに買収されていない(買収は1985年)。それより「王室御用達」として有名で、エリザベス2世、エジンバラ公、皇太子、皇太后のロイヤル・ウォラントが正面玄関の上に貼り付けられていた店だ。(ハロッズのロイヤル・ウォラントは2000年代に消えた。いろいろあって、王室がここでお買い物をしなくなったからだが。)

ただ、ハロッズがターゲットとなったのには別の背景もあるようだ。Tim Pat Coogan, "The IRA" によると、1983年12月17日に爆弾が置かれたのはHans Crescentで、ハロッズの建物の北側に沿う通りだが、このすぐ近く(ハロッズの建物の裏手)のHans Placeは、「アイルランド問題」にとって象徴的な場所だそうだ――つまり、1921年にアングロ・アイリッシュ条約の交渉がロンドンで行なわれた際、アイルランド側の代表団(マイケル・コリンズら)が宿泊していたのがHans Placeであった。そのような場所で、よりによってこの時期に爆弾テロを行なったことについて、Tim Pat CooganはIRA幹部にインタビューしているが、幹部は単に「意図的なものだ」と答えたそうだ。

当時のIRAの目的は、ブリテン島を北アイルランドと同様の紛争地帯にすることだった。自分たちが置かれているひどい状況を、イングランドに「輸出」することで、何かを変えようとしていたらしい。(この辺の理屈、資料を読んでもよく理解できないので、「らしい」としか言いようがないのですが。)

翌1984年10月には、IRAは周到な準備の末、当時の与党、保守党の党大会で要人が宿泊しているホテルに爆弾を仕掛けた(Brighton hotel bombing)。メインの標的はマーガレット・サッチャー首相と閣僚だったが、この爆弾で殺されたのは閣僚ではなく、議員1人と、政治家の家族ら計5人。

翌日のIRAの犯行声明で、IRAは次のように言っていた。
Today we were unlucky, but remember we only have to be lucky once. You will have to be lucky always.

今回は我々にはつきがなかった。しかし覚えておいていただきたい。我々は1度だけ幸運に恵まれればよい。しかるにあなたがたは常に幸運に恵まれていなければならないのだ。

「失敗」を「負け」にせず、逆に相手より優位に立つためのレトリックだが、we only have to be lucky onceの部分はfamous quoteみたいになっている。

※この記事は

2006年12月12日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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