kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2006年09月25日

英国の「伝統食」と「肥満に対する戦争」、そして「食育」。

英国の「伝統食」のひとつが「肥満に対する戦争」において「攻撃対象」となっている----といっても「クロテッドクリームたっぷりのスコーン」とかではない(これはそもそも食ってる人の数が絶対的に少ない)。クリスプス(crisps)、つまりポテトチップスだ。特に子供たちに食わせる(子供たちが食う)のがよくないとして、本格的な心理戦の局面に突入した模様である。

British Heart Foundation(心臓疾患予防のための研究をしているチャリティ団体)の調査によると、クリスプスの35グラムの小袋に含まれる油脂の量はティースプーン2杯半、50グラムの袋となると3杯半で、1年間で5リットルになるという。そして、学童・生徒の多くが1日に1袋のクリスプスを食べる。

A daily bag of crisps is 'like five litres of oil'
September 22 2006
http://www.theherald.co.uk/news/70560.html
In fact, 60% of Scotland's children eat a packet of crisps every single day, according to British Heart Foundation research.

That is the equivalent of each child drinking nearly five litres of cooking oil every year, according to the charity, which unveiled a new advert yesterday to draw attention to the habit.

ポテチ業界団体は「この計算は大きいほうの袋を基にしている」と文句を言っているらしいが、そもそもポテチが油ばかりなのは事実だし、「5リットル」ってのはショックを与えるための数字なのだから、業界団体の文句は反論にも何にもなってないし、対抗する役割も果たさない。

さて、BHFはこの油の量に注目した「食生活改善キャンペーン」を展開し始めた、というのが上記のthe Herald(スコットランドの新聞)の記事の中心的内容なのだが、このキャンペーンの広告がけっこう強烈だ。ある程度センセーショナルであることは意識喚起のためには必要とはいえ、これは意識喚起というより、単に胃に来る。

でもこういうのが必要ってことなんだよね。メッセージとしてここまで言わないと、という。

http://www.bhf.org.uk/food4thought/

※特にローディング中の画像は見ると胃がもたれますので注意。

んー、確かに「食用油5リットル」といっても、自分でスーパーで食用油を買ったりするわけじゃない学童や生徒にはなかなか実感できないかもしれない。だから「巨大なペットボトルから油を飲む少女」というあまりに直接的な画像なのかもしれない。(私は、うちの台所にある食用油のボトルの何本分よ、と、文字情報を見て想像するだけで胃がむかむかしてくるんだが。)

ともあれ。

学校に持っていくランチはジャムサンドとポテチ(野菜なし、果物なし、蛋白質の多い食品なし)とかいう子供もふつうにいるということで、ポテチは英国の子供たちにとっては「お菓子」じゃなくて常食、まさにstaple foodと言えるんではと思うくらいだ。遠足といえば「バナナはおやつですか」な質疑応答があった日本の学校しか知らない者としては、ポテチはお菓子だということはあまりに明白だと思うが、「ジャガイモが主食」みたいな環境だから、お菓子扱いされてないのかもしれない。(んー、でも日本でもおせんべいやあられは「お菓子」扱いするよね。。。)少なくとも、「ポテチを食うことはジャガイモを食うことではなく、油を食うことだ」って感覚がないんだろう。だからこそBHFのショック広告が出てくるわけで。

ちょっと確認してみたら、この9月からイングランドの学校では揚げイモがほとんどなくなったようですが(政府によるその宣言は5月に出されている)、例えば「旬のイギリス」さんの23日の記事では、イモがなかったことで「ランチタイムが大混乱で午後が授業にならなかった」というご子息の実例やら、ヨークシャーの学校でバランスの取れた食事を出す(揚げイモは出さない)ようにしたら親が子供たちの欲しいものを柵ごしに与えているというBBC記事やら・・・。うはー。

ともあれ。

「肥満」が社会問題となっている米国や英国では、War on Obesity、すなわち「肥満に対する戦争」が宣言されている。(ふつうに検索すると検索結果がUSばかりなので、Britain OR UKで絞込みをしてみました。)

「テロ組織といえばアルカイダ」のような安易な連想として、「肥満といえば米国」というイメージ(失礼!)が何となくあるかもしれないけれども、英国でも「肥満」は社会問題化している。UK Obesity Statisticsによると、イングランドの男性の46%、女性の32%が体重が多すぎ(overweight: BMIが25-30 kg/m2)、またその数値に含まれない男性17%と女性21%が肥満(obese: BMIが30 kg/m2)。つまり、男性の6割、女性の5割が「太りすぎ」の状態にある。また、子供の肥満はここ数年で30%も増加している。(理由は、記事には書かれていないからわからない。)

今年の8月には、政府に「フィットネス担当大臣」というポスト(cabinet ministerではない)が新設された。(「2012年のオリンピックまでにもっと健康に」というのは、かなり強引だと思うが。)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/5277350.stm

肥満による国家財政の医療費負担がシャレになってないという説明もある。ブレア首相は「国家財政が大変なのでライフスタイルを変えよう」というようなことを言っている。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/5215548.stm

むろんこれは「NHS(国民健康保険)の失敗」についての責任逃れの弁解@ブレア流(ニューレイバー流)、という解釈もできるし、「NHSが機能していない理由はNHSの欠陥にあるのではなく、個々の人々の生活習慣にある」などという言説は「健康に気を使っていても病気になるときはなるんだ」という反発を呼ぶ。(英国の政治の言葉も最近ほんとにピリっとしないなあ。)

程度の差こそあれ、人が健康に気を使うのは、国家財政を心配してのことじゃないしね。そういうところで「NHSへの負担」を持ち出してくるなんて、ブレアもヤキが回ったもんだ。

が、政治家たちの言葉や行動がいかにばかばかしいものであれ、「肥満が原因の病気などない」などということにはならない。だからエネルギー関連のあれこれと違って「サヨクのインボーだ」とかいう話にはなってはいない。ただし「個人の好きにすればいい話じゃないか」という反発はある。その点、タバコに似ているかもね。実際、タバコの税金をやたら高くして喫煙を抑えるように、食べ物の脂肪に税金をかける、というプラン(fat tax)もあったくらいだ。

ともあれ。

英国の学校は(イングランドとスコットランドとウェールズと北アイルランドとではそれぞれ違いはあるにせよ)、まず、学校で提供される食事が栄養が偏った(脂肪分と糖分がやたらと多い)ものであり、自宅から「お弁当」を持っていくにしても、ジャムサンドとポテチ、というのが当たり前。さらに学校内にスナック菓子や炭酸飲料の自販機(イングランドではこの9月にそれらの商品は撤去:代わりにQuornが入ったらしい)という状況で、学童・生徒の食生活はお寒いものだ。

そういうなか、とにかく必要なのは「食育」、というわけで、「カリスマシェフ」のジェイミー・オリヴァーらがいろいろがんばっているし、学校で調理実習をするなど新たな取り組みも開始されつつある。
http://www.bbc.co.uk/food/food_matters/schoolmeals.shtml

特にこの9月(新学年のスタート)からは、イングランドでは食堂からスナック菓子やチョコレート、炭酸飲料などが姿を消し、揚げ物は週に2回までに制限され、野菜か果物あわせて2種類を提供することが義務化された。それゆえ、上のほうにリンクした「旬のイギリス」さんの23日の記事に書かれているようなことが起きている。

このへんについての記事は:
Pupils' verdict on healthy meals
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/education/5339392.stm

※このBBC記事では、生徒たちはずいぶんおとなしい。というか記事の書き方がユーフェミズム全開のような気がする。

スコットランドでも動きは具体化している(スコットランドはプライマリーからセカンダリーに上がる子供の3人に1人が体重超過だそうです):
Bid to ban junk food from schools
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/5333030.stm

※記事では「ジャンクフードの代わりにヨーグルト」というのがさもヘルシーであるかのように扱われているけれど、英国のヨーグルト(プレーンのじゃなくて、そのまますぐに食べられるもの)って、どう考えてもベタベタに甘すぎるけどね。「チョコレート」と称するあの茶色いべたべたした物体よりはいいのか。(英国のmilk chocolateのチョコバーの類がいかに「チョコレート」とかけ離れているかは、拙著にもちょこっと書いたが、食べたことのある人ならおわかりだろう。虫歯でもないのに歯が痛くなる甘さだったりね。)

5月の記事だけど、
The junk food smugglers
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/4987966.stm

コメント欄も含めて、おもしろく読めます。いかにしてジャンクフードを校内に持ち込むか。持ち込んで商売してたという人がいたり、挙句、校長にジャンクフード販売業の許可を求めたという人がいたり。ソールズベリのIsobelさんのコメント、The kids aren't just choosing to eat junk food - they are choosing to avoid or add to a diet which they feel is boring and/or restrictive. っていうの、いいところを突いていると思います。

で、こういうふうに「ブレアの改革」が進められていく一方で、「もっと食べよう、おいしい揚げイモ」みたいなキャンペーンもある。「油とイモ」が「コメに海苔」くらいに舌になじんだものであることは疑いようのないことで、揚げイモはほんとに「英国の伝統」とかって方向に行きかねない位置にあるけれども(「日本人はコメだ」というような)、ま、「ナショナリスティックな揚げイモ運動」というのは私の脳内のくだらない冗談に終わるでしょう。

あー、あと「痩せすぎのモデル」論争も、つい最近あった。ガーディアンのトップページに富永愛の写真が出ててちょっとびっくりしたけど。(確かにあの人は痩せすぎと言えるかもしれないが、ファッション・モデルじゃないけどヴィクトリア・ベッカムの痩せ具合のほうが・・・。)

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以下は蛇足。

ちなみに学校での食生活をブっ壊した主要人物のひとりに、自民党の安倍新総裁が心酔しているマーガレット・サッチャー(首相になる前は教育大臣)がいる。サッチャーの「小さな政府(コストカット)」主義は、学校給食の調理室にまで及んだ。(since school catering was swept up in Margaret Thatcher's vision of a contracted-out, low-cost public sector, working in school kitchens can be a very low-paid, very part-time job in which staff lack skills and motivation.)また、セカンダリースクールなど高学年の生徒への牛乳の提供をやめたばかりでなく、利益目的の清涼飲料水メーカーを呼び込んだりした。(子供には牛乳よりジュースの方が売れるから、業者はジュースを提供する。)

牛乳の提供をストップしたことから、サッチャーは労働党などから「ミルク・スナッチャー」と呼ばれている(Thatcher milk snatcher:押韻)。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/in_depth/uk/2000/uk_confidential/1095121.stm

先日、「20世紀の首相で満点で評価されるのはサッチャーとアトリーだけ」という記事がガーディアンに出ていたが(ジャーニーさんでも紹介されているが、コンテクストの説明を省いて結果だけ伝えているので、恐ろしいものになっている)、サッチャーに満点をつけた歴史家は、満点の理由を「やり遂げようとすることが明確で、実際にそれをやり遂げたこと」と説明している。つまり、「聖域なき改革」ってやつを言うだけでなくやったということであり、それは学童・生徒の給食の現場にまで及んだ、ということだ。

その結果として(それだけが原因とは言えないかもしれないが)、学食にジャンクフードやら、コーラの自販機やらがある、という状況が生じた。学校の前に駄菓子屋、というレベルではない。学校を抜け出すまでもなく、それは学食にある。

「そんなものを食べる方が悪い、食べた奴の責任」という言いぬけはできるかもしれないが、学校で「ジャンクフードばかり食べるのは健康に有害」と言葉で言ったとしても、実際に目の前の自販機が消えないんでは、どうしようもなかろう。第一、校内に自販機があれば教師だって買って食うだろうし。(^^;)

むろん、何でもかんでもサッチャーが悪いということではないけれど、サッチャー改革が「若者の精神を鍛えなおした」とかいうのは、「目の前においしそうなものがあるのにぐっと我慢するような状況を作った」とかいうことをパロディ的に言うんでないのなら、端的にいえば「ハァ?」じゃないかっていうね。

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追記:
過去記事を転記してたらこんなのが出てきた。2003年9月のもの。
http://nofrills.seesaa.net/article/24523942.html
ヨークシャーのある学校で,「近隣住民が子供たちの集団をおそれるため」,生徒が昼休みに外出することを禁止することにした。が,そうなると打撃を受けるのは,この学校の生徒がお得意様である近隣のフィッシュ&チップス屋。そこで校長,「フィッシュ&チップス屋に来てもらえば生徒が外出しなくても大丈夫♪」

※この記事は

2006年09月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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