kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年06月14日

「ダマスカスのゲイ・ガール」は、40歳のおっさん(白人、米国人)でした。

とりあえず、chirpstoryでまとめてあるんで、それを読んでほしいんだけど:
  All about #Amina, the "Gay girl in Damascus"...?
  http://chirpstory.com/li/1694

  Update on #Amina, the "Gay girl in Damascus"
  http://chirpstory.com/li/1726

  It was a hoax. There's no #Amina, the gay girl in Damascus in #Syria
  http://chirpstory.com/li/1735

  After #Amina blog turned out to be a hoax
  http://chirpstory.com/li/1739

9日に《シリアの彼女は、「非実在ブロガー」?》のエントリに書いた通り、「よかった、当局に無理やり連れ去られた女性はいなかったんだ」という結末になった。その点はめでたしめでたしである。

「ダマスカスのゲイ・ガール A Gay Girl in Damascus」というブログはhoax(なりすまし、偽物)で、当該の女性は実在せず、「中の人」は40歳のヒゲヅラのおっさんだった。Electronic Intifadaでの調査報道(アリ・アブニマらによる)などを受け、最初は否認していた本人が日曜日(←米国時間で)ブログに「読者のみなさんへのお詫び」という記事を投稿してすべてが嘘であったことを認め、またBBCやNYTなどを含む大手メディアのインタビューに応じた。

おっさんの名前はトム・マックマスター Tom MacMaster といい、国籍はアメリカ人。今はスコットランドのエディンバラの大学院に籍をおいているので住所はエディンバラだが、アメリカではジョージアに家を持っていた。その不動産登記の書類(誰でも調べられる)などからアシがついた形だ(詳細はEIの記事を参照)。おっさんは既婚者で、本人はスコットランドのエディンバラ大の大学院で修士取得中(分野がわかんない)、妻はシリアの専門家で、同じくスコットランドのセント・アンドルーズ大(ここはシリア研究で有名で、シリア大使からのお金が入ってるらしいけど)の大学院でPhD取得中。

「ダマスカスのゲイ・ガール」のブログは、私は前に書いたとおり、個人的に好みではなく、読んでみたところでどうせ本当のことはほとんど書いてない(身を守る必要があるので)と前提していて、一度見てみたっきり忘れていたのだが、高く評価していた人たちがポイントとしてあげているのは、「ダマスカスの町の様子を的確に描写している」という点だった。そのことが信憑性を高めたことは間違いない。(現地を知るアラブ人からは、例えば「裕福な家庭の子が貧民街の旧市街で育ったっていうことはありえない」といったツッコミも入っていたが、そういったことですら「身元をごまかすための嘘」の可能性は前提されていた。つまり「本当は旧市街ではなく別の街区なのだが、旧市街だと言っている」という解釈。)

で、「ゲイ・ガール」のブログの記事は全部自分が書いた、妻は書いていない、とおっさんはインタビューで説明しているが、書いてなくても口頭で説明はしているだろう。それ以前に、おっさんの妻がダマスカスで撮影した町の様子の写真(とほぼ同じ写真)が、「ゲイ・ガール」のブログに投稿されているなど、何らかの協力関係があったことは明白である(Electronic Intifadaの調査を参照)。

だからあの偽ブログは夫婦のコラボなのだろうが、主犯はおっさんの方で、内実は、どこにでもごろごろ転がっていそうな、「妄想を抱いた中年男のなりすまし」の事例だろう。しかしおっさんは「国際派の社会派」だったのであ〜る。

「ゲイ・ガール」にかつがれた大手メディア(NYT、CNNなど)のひとつ、ガーディアンがおっさんにインタビューしている。(NYTなどでもインタビューしている。このおっさんのやらかしたことについての情報密度という点では、ガーディアンよりNYTのほうが読む価値はあると思う。ガーディアンのこの記事はおっさんの頭の中を説明することが目的のようだ。)


おっさんは今、休暇中で、イスタンブール(トルコ)にいるということで、イスタンブールで撮影されたSkypeでのインタビューの映像が記事に埋め込まれているが、映像は私は見ていない。文字で読んだだけで気持ち悪くなってきたので(映像&音声で「人格」の与えられた形で確認する勇気はない。マジで吐きそう。気色の悪い……というか「おっさんキモい」という言葉がぴったりだ)。

このおっさん、自分は“物書き”になれる、“物書き”にならねばならないと信じている精神異常者だ。

「精神異常者」というのはきつすぎるかもしれないが、少なくとも「人格障害者」ではあるだろう。(あるかないかもはっきりしない)「自分の才能」だけが大事で、ほかのことはどうでもいい。現に人々が弾圧されていることは、どうでもいい。というか、そのことに関心を示している形跡がない。

Gay Girl in Damascus hoaxer acted out of 'vanity'
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jun/13/gay-girl-damascus-tom-macmaster
He said: "I regret that a lot of people feel that I led them on. I regret that ... a number of people are seeing my hoax as distracting from real news, real stories about Syria and real concerns of real, actual, on-the-ground bloggers, where people will doubt their veracity."

Informed that Syria's official news agency, Sana, has leapt on the controversy, claiming the fictional blog had perpetuated "continuous fabrications and lies against Syria in term of kidnapping bloggers and activists", MacMaster said: "Yep. I regret that."

おっさん、12日にアップした「読者のみなさんへのお詫び」でこんなことを言ってた。
I do not believe that I have harmed anyone -- I feel that I have created an important voice for issues that I feel strongly about.
私が誰かに害をなしたことはないと確信しています。むしろ、私は自分が強い感情をもっていることについて重要な声を創造したと思っています。

ここまでarrogantな奴はなかなかいないよ。(というか、私は何となく、本心からこう思っているというより「口から先に生まれた奴」の独特の臭みを感じているのだけど。)

これに対して、シリアを含む中東の反圧制の活動をしている人々などから、「まじでいってんのかよ!」という声が上がって、おっさんはすぐにもうちょっとましな言いぐさをしている「お詫び」を投稿した。(これが、わざとらしくトルコ文字のiを入れたりしてて、臭い臭い。)

けれども事実、「ダマスカスのゲイ・ガール」がおっさんのなりすましだったことが判明してすぐ、シリア国営は「街角で強制連行されるなどという話は、西側のでっちあげだ」と言い放ち、「強制連行などない!」と言いつつ何千人単位で人々を拘束していることは認めていない。なお、ガーディアン記事で言及されているSanaの記事は下記。(ほかのメディアも書いているネタなのに、特にガーディアンを特定してプレッシャーかけてきている。ガーディアンは現地の記者も名前を出さず、イングランドっぽい仮名で記事を書いてるのだが。)



さらにガーディアン記事から:
He had made her a lesbian, he said, in an attempt "to develop my writing conversation skills ... It's a challenge. I liked the challenge.

私が「キモッ」となったのはこの部分。聞きたいのはてめーの話じゃねーよ。おっさん、さらにどんどんキモくなる。
"I also had the thing that I like to write, and my own vanity is ... if you want to compliment me, tell you like my writing ... That's how to make me happy."

But why had he exchanged many hundreds of emails with a woman in Canada, Sandra Bagaria, who believed herself to be having a romantic relationship with the blogger?

"I feel really guilty about that ... I got caught up in the moment and it seemed ... fun. And I feel a little like shit about that." He denied having been sexually excited by the interaction: "I don't want to go into that aspect particularly of it."

...

Gay activists in Syria have reacted with fury to the revelation of the blogger's true identity and to the suggestion that MacMaster had written it in an attempt to help their cause.

...

MacMaster told the Guardian: "I am not happy about that. And I understand their concern ... I don't want to put anybody at risk, or increased risk. And in actual fact, some of my self-justification was that in having a completely fictional character being bold and forward, then it makes it easier for real people. Which is probably just a self-justification, but it was something that crossed my mind."

...

他人のことなどどうでもいい、自分が楽しいかどうかだ、と。実害があったわけじゃないし、いいだろう、と。気づかせてやったんだからカタいこと言うな、と。

まるで痴漢常習犯や露出狂のメンタリティだ。キモい。

なお、「アミナは無理やり連れ去られた」ことにしたのは、「そろそろこのブログを終わりにしようかって思っていて、終わりにするにはそうするしか思いつかなかった」のだそうだ。

アホか。

可能な限り心の奥深くから、私はこのおっさんを軽蔑する。

小説で、主人公に何かを気づかせるためだけに別の登場人物を殺してしまう作家がいるが(特に多いのが難病にかかって死んでしまい、主人公が友情のかけがえのなさや命の大切さに気づくという設定)、このおっさんの想像力はよくてその程度だ。

現実にことが起きているときに、そのトピックを扱っておいて、手に負えなくなってきたからって「すいません、このブログはフィクションだったんです」じゃなくて「アミナは無理やり連れ去られた」ことにすればみんなが納得するし、強制連行という問題に気づくとか、本気で思ってたんだろうか。40歳にもなって。

で、私がファーストハンドで知っているある事例に非常に似ている部分があるので、このおっさんの「なぜシリア人になりすましたのか」の説明には私は納得している。怒りと吐き気を覚えつつ。

Chirpstoryにまとめたものに書かれているのだが、おっさんがでっちあげた「シリア人女性」は、何年にもわたってずっとオンラインで、具体的にはメーリングリストの主催者や参加者として、またソーシャル・ネットワーキングのサイトのプロフィール(FacebookやMySpace)、出会い系サイトのプロフィールとして、存在してきた。(だからこれは「典型的な情報戦」などではありえない。そのことは、ニュース系のTweepsの発言を見ていれば、あるいは私がまとめたchirpstoryを見れば一目瞭然である。このユーザーさんの、事実を確認しない無責任な発言にはタイミング的にかなりウンザリしているので個別にレスはしないが。てか、情報戦なめてんのかと思うんだが。)

つまり、シリアの情勢がああなってから出てきた俄仕立てのオンラインにだけ存在する非実在の人物ではない。(参考までに書き添えておくと、09年イランはそういう人がTwitterに大量にわいて出た。11年のバーレーンでもけっこう出てたが、バーレーンはもっとあからさまな工作員のほうが多かった印象がある。フォトショップで加工された「連中はヒズボラだ。証拠はこれだ」という画像を「ちょっと、これを見て!」みたいに拡散する人たちがいったい何人いたことやら。)

本当のところ、何のためにそんなに長い間「架空の人物」をオンラインで維持してきたのかについては、おっさん本人が語る「ライティングの技術を磨くため」、「ついノリでだらだらと」という言い訳以外には何もわかっていないが(アリ・アブニマはこのおっさんとその配偶者がパレスチナ支援の分野で活動していたという事実から、パレスチナ支援のネットワークに浸透し、支援活動をしている人たちの連絡先などを集めていくのが目的だったのではないかと疑っているようだ。その心配は、して当然だと思う)、シリアで動乱が起きて一番びびったのはおっさん本人だろうと思う。

おっさんが「アミナ・アル・アラフ」として「ダマスカスのゲイ・ガール」のブログを始めたのは今年の2月19日なのだが、確かに3月15日までは、シリアがあのようなことになるとは考えられていなかった。12月のチュニジア、1月のエジプトとバーレーンとイエメン、2月のリビアなど(モロッコ、サウジなどほかにもいくつも)……と続いて、「3月15日はパレスチナがUnityのデモをする、ラマラではファタハによる弾圧の可能性がある」ということは前もって言われていたし、レバノンやヨルダンでも改革要求運動が起きていたけれども、シリアで何かが起きるとは、私の見ている範囲でまったく言われていなかった。(だから私もその日は「えっ」としか反応できなかった。むろん、震災後のあれこれの中でのことだったのでいろいろ見落としている可能性もあるが。)

(しかしこのおっさん、中東関係の流れ読んでたらこの時期になりすましの中東ブログなんか新たに始めないよね……2月19日って、リビアでごりごりとした流血になって数日目で、何がどこに飛び火するかわからないという緊張にMENA全域が包まれていたころだと思うんだけど、そんなときに新たになりすましブログを立ち上げるなんて、やっぱり誇大妄想狂とか、精神的な露出狂のような人じゃないだろうか。どこまでいけるか、スリルがたまらない、というタイプじゃないんだろうか、とか……。)

ところで、おっさんは長い間、パレスチナ支援活動をしてきた人だそうだ。で、アメリカでは何か発言すると「おまえはどうしてそんなに反米なんだ」とか「アンティ・セミティズムだ」と非難されるようなことが続き(ジョージアだからね、大変だったんだろうとは思う)、「アメリカ人」が発言しても無駄だということで、「現地の人」をでっち上げたという。「現地の人」のプロフィールでコメントなどを投稿すると説得力が増すのだ、と。

そこまでは、まあ、わかる。正しいことだとは思わないが(「現地の人」のなりすましは、あからさまな、「語る権利の収奪」である)、わかることはわかる。

しかしそこでどうして「レズビアンの女性」になる必要が? しかも出会い系に登録したりとか?

ぶっちゃけ、ただのスケベ心だろ。

あまりにキモくてあったまきていて、10秒ごとに書こうとしていることがわからなくなるので、うまく書けるかどうかわからないのだが、理屈以前に、とにかくキモいんである。こんな表現しかできなくて申し訳ないが。

キモいのは、「ヘテロセクシャルのアメリカ人のおっさん(40歳)が、ダマスカスのレズビアンの女性になりすましていた」ことではない。それもキモいっちゃーキモいんだが、私が吐き気を覚えているのはそういう次元のキモさではない。

このおっさん(40歳)は、ネットで見つけた美人(事態にまったく関係のない人で、おっさんともその配偶者とも面識のない人)の写真をかっぱらってきて、それを「ダマスカスのレズビアン」の写真だと偽っていた。それは問題の「ダマスカスのレズビアン」のブログや“彼女”のFacebookのページに限らず、出会い系のサイトにまで及んでいる。

そして、おっさんは何年もかけて、「ダマスカスのレズビアン」のオンライン・プロフィールを構築してきた。なのでそれ系のコミュニティではそれなりの知り合いの輪があって、だから彼女のブログが今年2月に開始されたときも、実在を疑うなどということはなかったのだろう。

そして、今年4月末にアンドルー・サリヴァンが注目したことがきっかけとなって(←そういうことらしいのだが詳細は調べていない)CNNやNYTやガーディアンがこのブログについて取り上げたときも、「世間にあまり知られていないブロガー」など星の数ほどいるのだし、身元バレしないように変名を使ったりしていても不思議ではない、という正常化のバイアスが働いたと考えて無理はない。

実際、ガーディアンのシリアの記者(シリアは「外国」のメディアは活動できる状況になく、変名を使っている)はダマスカスのカフェで待ち合わせをしたが彼女は現れなかった、というときに、「カフェの前に秘密警察が張り込んでいたので立ち寄らなかった」と彼女からメールで説明されて、納得している。それは、独裁国家で人権についての活動をしている人との待ち合わせなどでは、実際にそういうことがありうるからだ。

ただ、この待ち合わせのときに記者に送られた写真が、別人(例のクロアチア人女性)のものだったという段階で、もうおかしいんだが。 

いったんここまで。

※この記事は

2011年06月14日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 10:00 | TrackBack(1) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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今更何ゆえに、このような「やらせ」が「アート」という口実で行われるのか、まったく理解できない。
Excerpt: 「実際の映像」のように見え、そのように扱われてバイラルした映像が、実は完全な「作り物」…つい人に伝えたくなる「美談」には要注意。
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2014-11-19 23:00





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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