kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年06月09日

シリアの彼女は、「非実在ブロガー」?

私はこの件、「よかった、当局に無理やり連れ去られた女性はいなかったんだ」という結論になることを心から願っている。

でも実際には、「連れ去られた女性はいない」可能性よりも、彼女ひとりの行動によって無理やり連れ去られた女性が10人、20人と出た可能性のほうが高かろう。彼女の書いたことによって。

8日夜、こんなのが流れてきた。ツイート主はガーディアンのエスター・アドレー記者。



アドレー記者のツイート内でリンクされているのは、米NPRのシニア・ストラテジストであり、「報道におけるTwitter活用」(ファクトチェックはクラウド・ソースで、的な)で著名なアンディ・カーヴィンの長文ポストだ。
http://www.tweetdeck.com/twitter/acarvin/~zMjfv

この一連の経緯は、下記URLで、一覧できるようにまとめてある。(状況が落ち着くまで適宜アップデートを加える予定。)
http://chirpstory.com/li/1694

ここで話題になっているのは、数日前に治安当局に強制的に連行されたと伝えられているアミナ・アラフさん。彼女はシリアの「著名ブロガー」だ(→連行の様子についての伝聞情報を読みやすくまとめたGlobal Voicesの記事を参照)。

英語で書かれた "Gay Girl in Damascus"(ダマスカスの同性愛者の女性)という彼女のブログ【注:タイミングによっては異様に重いので、閲覧時スクリプト切った方がいいかも】は、1ヶ月ほど前からネット上の英語圏でそこそこ注目されている(大手メディアが取り上げるなどしている。例としてTIME)。

アミナさん自身については、5月6日のガーディアン記事(ダマスカス拠点で、身の安全を守るために偽名を使っているジャーナリストが書いている)がコンパクトにまとまっていると思う。(といっても、アミナさん自身の言葉にのみ基づいた「伝言」みたいな記事で、事実としての客観的な検証はなされていない。)

彼女はお父さんがシリア人、お母さんが米南部の人で、米ヴァージニア州に生まれ、シリアと米国を行き来して育った、という。宗教的にはイスラム教徒(スンニ派)。お父さんの親戚筋にはムスリム同胞団の人もいれば政府の人もいる。アミナさん本人は、数年前からダマスカスで英語を教える仕事をしているが、今は反政権デモとそれに対する武力鎮圧の影響で学校は休みになっている。彼女自身、米国では「ムスリムで女性でレズビアン」というマイノリティの立場を経験し政治的な意識も高かったが、シリアで政治的な行動をとるようになったのは今回の蜂起がきっかけだった、という。

ガーディアン記事にもあるが、シリアでは同性愛(行為)は非合法であり、同性愛者であるとカミングアウトすることは、基本的に、極めて危険だ。(こういう話をすると「日本だって差別されるし、暴力をふるわれることもあります」的に反駁してくる人もいるのだが、そういう問題ではない。シリアのような国の場合、あなたに暴力を行使するのは一般人ではない。法執行機関、国家の暴力装置だ。あなたがゲイだというだけの理由で――つまり「ゲイはこういう社会的つながりを有することが多いので、○○にも関係しているだろう」という見込み捜査や別件逮捕のようなことではなく、単にゲイであるだけで――、警察や公安があなたを逮捕することは、日本では合法ではないが、シリアではそれが合法なのだ。)(←この話題、個人的にはもううんざりしているのだけど、いちいち書いておかないと言ってることが通じない場合があるので、書いとく。)

ましてやこの3月15日以降の反アサド政権のデモと、それに対するものすごく苛烈な武力弾圧の中で、反政権デモへの支持を明言しつつ、「私はレズビアンですが何か」的なブログを、ダマスカスに暮らしつつ書くということは、よほど肝が据わっている人にしかできないことだ。むろん、特定を避けるために名前は偽名にしているだろうし、フィクションも入れてあるだろう。ブログでは顔写真をさらしているが――これがおっとびっくりの展開を見せるので、このエントリの下の方も読んでね――、素顔は家の外では見せていないのかもしれない(ニカブを着用していたり、スカーフにめがねだったり……)。そういう、身を守るための「ごまかし」があるとしても、彼女の勇気には敬服だ――彼女のブログを読めば誰もがそう思うだろう。

敬服しつつも、しかし、上記のガーディアン記事など英語圏の大手メディアで話題となった4月下旬のエントリ、"My Father the Hero" にあるような、《「国家転覆罪」の疑いで彼女を連行しようと夜中に自宅にやってきた屈強な男2人が、お父さんが「うちの娘はあんたらが言っているような危険分子ではない」と大演説をぶちかましたら、そのまま何もせず帰っていった》、などという話は、到底信じられるものではない。

(エントリ丸ごとがでっちあげというのではなく、エントリにはっきり書かれていない何かがあるのではないか、と私は思った。つまり、例えば、実はお父さんには上層部とのコネがあると彼らが悟ったとか、逮捕されないようしかるべき策を講じたとか、そういうことだ。そして、「そういうこと」ならば大っぴらに書けるはずがない。しかしその場合、そもそも当局が逮捕しにきたことをブログに書くかどうか……改めて考えると、それが非常に大きな疑問である。)

そんなわけで、最初に「こんなブロガーがいる」と聞いたときはイラクのRiverbendやStar from Mosulのような感じかもと思ったのだが、少し読んでみて、ちょっと違う感じだなあということでほとんど読まずに流した。(上記の「お父さん」のかっこよさについてのエントリの前の日付でアップされていた文章も見てみたのだが、うーん……好みの問題だけど。)

そして今週月曜日、彼女がダマスカスの街頭で銃を持った男たちに無理やり連れ去られたということを知った。5月に複数のメディアが口をそろえるように "My father, the hero" の(ぶっちゃけ、あまりにも作り話くさい)エントリを取り上げ「すばらしいブログだ」と賞賛した一方で、彼女を守る仕組みも用意されていなかったのかという憤りを禁じえない……「運動」としてある程度組織だった背景があるはずなのに(=あんなにみんな揃って同時期に同じエントリを取り上げたということは、大手メディアにブログのことを紹介するなどしたパブリシティ担当か誰かがいるはず)。

アミナさんへの注目は、リビアでカダフィ側の連中にレイプされたと西洋のメディアの前で大騒ぎをして目立つことに成功したエマン・アル=オベイディさんのように、「目立って有名になれば逆に安心(有名な人が殺されればそれだけ非難は激しくなるので)」というほどでもなかった。あれだけたくさんの「外国のメディア」が盛り立てておいて、フォロー何もなしというのはどういうことよ、と思わざるをえなかった。

(なお、エマンさんはリビアからチュニジアに出て、そのとき国境でフランスの外交官の出迎えを受け、そこからカタールに「亡命」……したはずが、なぜかカタールからリビアに強制送還され――ただしトリポリではなくベンガジに――そこから、今度は米国国務省の手配で脱リビア、などなどジェットコースター的展開のあと、なぜかルーマニアにいるというのが8日時点の最新情報)。

でも、シリアで当局に連行されたのは彼女ひとりではない。ああ、彼女までも連行されてしまったか、ということだ。「彼女が」ではなく「彼女も」だ。

という感じで、またシリアから流れてくる非常に血なまぐさい、暴力的な情報の断片を眺めつつ、自分には眺めているほかは何もできないという無力感にさいなまれつつ……していたときに流れてきたのが、このエントリ冒頭のアドレー記者のツイートだった。

以降の展開は、上述のchirpstoryの「まとめ」をご参照いただきたいのだが:
http://chirpstory.com/li/1694

大手メディアで最初に「アミナ・アラフなるブロガーは実在しない可能性があるのではないか」と書いたのは、NYTのLedaブログやWSJのブログのようだ。(完全な追跡はしていないが。)
http://thelede.blogs.nytimes.com/2011/06/07/syrian-american-blogger-detained/
http://blogs.wsj.com/dispatch/2011/06/08/photos-of-syrian-american-blogger-called-into-question/

NYTは文字情報に注目し、WSJは写真に注目している。「ゲイ・ガール・イン・ダマスカス」のブログに「自分の写真」としてアップされていた写真などがネット上に出回っているが、それは、ロンドン在住の女性の写真だ、という。この女性と別れた元夫がネットで自分の元妻の写真が「シリアのレズビアン・ブロガー」として出回っているのに気づいたのだと。
A London publicist said Wednesday that the photos circulating on the Web and in the media show someone else entirely. The photos are of Jelena Lecic, who lives in London, according to publicist, Julius Just. A press release he distributed includes a photo of a woman who he says is Ms. Lecic, who appears to be the same woman in the photos accompanying stories about Ms. Araf. Mr. Just said Ms. Lecic's ex-husband contacted him when he saw that the photos circulating of Ms. Araf were in fact of his ex-wife.

http://blogs.wsj.com/dispatch/2011/06/08/photos-of-syrian-american-blogger-called-into-question/

えー、と思って別のニュース記事を探してみたら、MSNBCのがあった。
http://www.msnbc.msn.com/id/43326770/ns/world_news-mideast_n_africa/
On Wednesday, a London publicist said photos circulating are actually of Jelena Lecic, a Croatian woman who works as an administrator at the Royal College of Physicians in London. Lecic believes her identity has been used before by Arraf.
ロンドンのパブリシストが水曜日、ネット上に出回っている写真は実はロンドンのRCPでアドミニストレーターとして働いているクロアチア人女性、イェレナ・レシッチさんの写真であると述べた。レシッチさんは自分の顔が(アミナ・)アラフさんに使われたのはこれが最初ではないと考えている。

"Just over a year ago, a friend called Jelena up and said, 'Do you have another identity up on Facebook? Because there's someone else who has your pictures up but not your name," publicist Julius Just told msnbc.com. "She and her friend complained, and Facebook removed it, and she believed it was the end of the matter."
パブリシストのジュリアス・ジャスト氏は、MSNBCの取材に「わずか1年少し前ですが、ある友人がレシッチさんに電話をしてきて、『Facebookに別名で登録してる? あなたの写真をアップしてるユーザーがいるんだけど、名前が違ってて』と。そこでレシッチさんとその友人が苦情を申し立て、FBは問題の写真(ユーザーのIDかも)を削除した。レシッチさんはそれで終わったと思っていたんですね」と答えた。

But when news of Arraf's disappearance broke, Just said Lecic saw her photo alongside the story in London's Guardian newspaper. It was one of the same photos her friend had spotted on Facebook a year ago under a different profile name: Amina Abdalla Arraf.
しかし、アミナ・アラフさんが姿を消したというニュースが伝わると、ガーディアンの記事にまたレシッチさんの写真が添えられているのをレシッチさん本人が見たのだとジャスト氏は説明する。1年前にレシッチさんの友人がFBに別名でアップされているのを発見したのと同じ写真だった。FBの名義はアミナ・アブダラ・アラフ。

Lecic called The Guardian to request the photo be taken down, only to find it replaced with another photo of her.
レシッチさんはガーディアンに電話でコンタクトを取り、写真を削除してほしいと要請した。その結果、レシッチさんの別の写真がアップされた。

"I pray that Amina is safely returned to her family but I want to make it quite clear that I am not her despite my photographs being attached to this story," Lecic said in a press release.
「アミナさんが無事にご家族の元に戻られるようお祈りしていますが、この記事に添えられた写真は私の写真で、私は彼女ではない、ということははっきりさせておきたいと思います」とレシッチさんはプレスリリースで述べている。

…… (^^;)

なんともトホホな展開だが、現在はガーディアンの記事からは写真は消えている(写真がついていない文字だけの記事になっている)。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jun/07/damascus-blogger-syria-detained

ガーディアンの記事だけではない。MSNBCの上記記事内にキャプチャ画像が貼り付けられているが、Facebookに支援者が開設したFree Syrian Blogger Amina Abdallah a.k.a Gay Girl in Damascusのページからも、そしてこのページとは別の人が開設したFree Amina Abdalla | Syrian Bloggerのページからも、「アミナ・アラフ」の写真は消えている。

で、FBの支援者のページで使われていた写真は、私も覚えている。最初に話題になったときに、彼女のブログで見たので。

現在、彼女のブログには「彼女」の顔写真はないが、Googleの画像検索には残っていた。下記キャプチャ画像参照。(関係のない画像は白黒に変換してモザイク処理をほどこした。また彼女の写真も、「アミナ」ではないことが確定しているので、顔の一部を見えなくし、画像全体をソフト・フォーカスにしたうえで、減色処理をほどこした。)


彼女のブログのコメント欄に表示されるアバターとしても残っていた。これを見ると、4月26日から27日の間にアバター(Bloggerのプロフィール写真)を変更したのだろうか。なお、現在このBlogger.comのprofileのページには、「変更後」の写真(何かのレリーフ)が表示されている。


いずれにせよ、まったくの他人の写真を自分の顔として盗用するなんて、いくら身元を隠したい場合でもやっちゃいけないことだ。自分の顔を出せないのなら、顔写真でないものをアバターとして使えばいい。

さらにまだ、「アミナ」の実在を疑わせる新事実がある。これまで、彼女の存在を保証してきたのは、「いとこが(米国に)いる」、「カナダにガールフレンドがいる」という事実だった。しかし:
And a Canadian woman living in Monreal who identified herself as Arraf's girlfriend in interviews with The New York Times, The Global Winnipeg, and Al Jazeera later clarified that she has only communicated with Arraf via email, not face-to-face.

...

Messages from msnbc.com left for Arraf's cousin and girlfriend were not returned.

http://www.msnbc.msn.com/id/43326770/ns/world_news-mideast_n_africa/

つまり、「カナダのガールフレンド」は、NYTなどのメディアで「ガールフレンドだ」と名乗ってはいたのだが、アミナ・アラフさんとは電子メールでしかやり取りしたことがない、と。そしてMSNBCは「ガールフレンド」と「いとこ」に問い合わせしているが、返事がない、と。(連絡が取れずにいるのはMSNBCだけではない。)

うーーーむ。

かつてアミナ・アラフに「インタビュー」したワシントン・ポストのブログも非常によくまとまっている。一部だけ:
http://www.washingtonpost.com/blogs/blogpost/post/a-gay-girl-in-damascus-called-into-question--missing-or-not/2011/06/08/AGT7svLH_blog.html
... Her interview with BlogPost in April was conducted via e-mail.
4月の当ブログとのインタビューは、電子メールで行われた。

...

In April, during her interview with BlogPost, Arraf said, "I've been trying to write a slightly fictionalized autobiography for some time (fictionalized as in other people have their name's changed) and when the Arab revolutions began, I realized I wanted to get my voice out there. The force of events has meant that my blog is more about events than anything else right now."
4月の当ブログとのインタビューで、アラフさんは次のように発言している。「ほんの少しだけフィクション化した自伝を書こうとがんばってるんですが(フィクション化というのは、人名を変更するなど)、アラブの革命が始まって、自分も声を上げたいと思いました。事態が事態なので、現在のところ、ブログでは(反政権デモの)出来事を書くのが中心になっています」

...

S**** B**** had told the New York Times, the BBC and al-Jazeera that she was a personal friend of the blogger, but has since admitted she has never met Arraf in person, but rather has conducted an online-only relationship with her since January over e-mail.
S**** B****さんはNYTやBBC、アルジャジーラに対し、アラフさんとは個人的な/直接の友人であると述べていたが、その後、直接顔を合わせたことはなく、1月からメールで、オンラインだけの関係にあったのだと認めた。

※****の伏せ字は、原文では伏せ字になっていない。


ガーディアンも4月か5月にアミナ・アラフさんとインタビューをしている。上述したダマスカスのキャサリン・マーシュ(仮名)記者の署名の5月6日付け記事に、わずかだが、インタビューが含まれているのだ。これが、直接対面してのインタビューではなく電話でもなく、メールでのインタビューだったことが、アドレー記者らによる6月8日付記事(エントリ冒頭のツイートのあとのもの)に説明されている。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jun/08/syria-gay-girl-damascus-abduction
The Guardian last month published an interview with the blog's author, conducted by a Damascus journalist who wrote under the pseudonym Katherine Marsh. Marsh was given an email for the blogger by a trusted Syrian contact, and suggested in extensive email correspondence that they meet in person or talk by Skype. The contact had never met Araf.

Araf, who according to blogposts was living on the run, agreed to meet Marsh in person but did not turn up for the rendezvous. In later emails she said she had been followed, and so aborted the meeting.

Araf told Marsh that Skype had been blocked, which was why she was unable to communicate by that means. The site is not blocked in Syria but was blocked from download, according to Marsh.

つまり、信頼されているシリア人(その人はアラフさんに会ったことがない)を介してアラフさんのメールアドレスを知らされたマーシュ記者は、ダマスカスでアラフさんと直接会う約束をしたが、彼女は待ち合わせに現れなかった。後からメールで、尾行されていたので待ち合わせ場所に行くのをやめたのだと説明があった。同時に、記者はSkypeで話をしてもいいと言っていたのだが、アラフさんはSkypeは(シリアでは)ブロックされているから無理だと答えた。記者は、Skypeのサイトはブロックされていないが、ダウンロードはブロックされている、と記事で述べている。

それから、アラフさんは米国のヴァージニアで生まれ、米国とシリアの二重国籍だということになっているが、NPRが調べたところ、米国には彼女の主張を裏付ける書類がない。米国務省も、おそらく二重国籍者がシリア当局に強制的に連行されたとのことで事態を調べているのだろうが、今のところ該当者なしだという。また、米国内にも彼女の親戚や友人は見つからないそうだ。(ひょっとしたら米国以外の国の生まれで国籍を持っているのを、当局に身元バレしないよう「米国」、「ヴァージニア州」と公表していたのかもしれないが……。)

で、上のほうで述べた通り、アミナ・アラフさんがダマスカスの街頭で当局者に連れ去られた直後、Facebookには支援者のページが開設されたのだが(→その素早さを伝える手際のよい記事)、これが2ページある。

私が誰かのツイート経由でアクセスしたのは、Free Syrian Blogger Amina Abdallah a.k.a Gay Girl in Damascusというページだ。「いいね」の人数が現時点で859人、ウォール(掲示板)の投稿内容もよくある感じで、グループのオーガナイザーからのニュースや告知系のポストと、グループ参加者の「連帯」や「支援」のメッセージが並んでいる。

もうひとつが、Free Amina Abdalla | Syrian Bloggerというページで、こちらは「いいね」が12,800人を超えている。そして、アンディ・カーヴィンの長文ポストを読んだ人が、このページのウォールについて「少しでも疑問を呈するような投稿があれば削除され、それを書き込んだ人はブロックされる (any post mildly inquisitive is deleted and the author banned)」とコメントしていたので観察してみたのだが、本当にごそっと消されていた。ただし消されていたのはアミナさんについての疑問を呈するような投稿だけではなく、グループの運営者以外のアカウントからの投稿すべて。

この「いいね」が11,765人の段階でのキャプチャと、その数時間後、「いいね」が12,825人の段階のキャプチャを比べてみてほしい。後者の2件目の投稿(写真に旗の緑色の部分が大きく入っているもの)は、前者で2ページ目に回ってしまっていた(キャプチャはできなかった)。前者のようなウォールなら単に「よくある支援グループ」なのだが、後者のようになっていて、さらにノートも使っているとなると、ちょっと意味がよくわからない。しかもTwitterなどでアグレッシブに宣伝されているのはこのグループなのだ。

運営者がFBの使い方をあまり把握してないとか、パニクっているだけだとかいう可能性もあるのだけれども、何だかなあ、というか。。。

一方、顔写真を盗まれた在英クロアチア人のイェレナ・レシッチさんは8日夜のBBC Newsnightでスタジオに招かれ(←写真)、「わたしはアミナには会ったこともないし、友人でもない」と述べたとのこと。

あとはまとめたのにいろいろ置いてあるが、Global Voicesのジリアンさんが、「アミナ」のアカウントに大量のレシッチさんの写真がアップされていたことを事実として確定させるなど(キャプチャ画像つきで)、アンディ・カーヴィンの「思いついたことは何でも言ってみて誰かに調べてもらう」というクラウド・ソーシングの方法論(一種ブレスト的)とは異なった、いわば「能力のある人によるDIY」の方法論なども実行されている。

また、アンディ・カーヴィンがTweetDeckで投稿する前に、Liz Henryさんがアップしていたブログ記事、「つらいけど疑わざるを得ない」では、以前「ジューイッシュの恋人がいるムスリムのレズビアン」や、「トラウマを抱えたバイセクシュアルの女性」になりきってブログを書いていた(日本語でいうと「釣り師」の)中年男性ブロガーについての説明がある。



やや時間経過して、NPRの記事がアップされている。カナダ人の「ガールフレンド」にインタビューした記事だ。(音声埋め込みあり)

'Gay Girl In Damascus:' A Personal Friend Sifts Through What's Real
http://www.npr.org/blogs/thetwo-way/2011/06/09/137071842/gay-girl-in-damascus-a-personal-friend-sifts-through-whats-real

BBCに顔写真のレシッチさんが出演して「顔写真を盗用された。アミナ・アラフという人は知らない」と述べたこと、アミナ・アラフさん自身が述べていた通りの人物は、米国の記録には見当たらないことなど、厳しい現実を前に、「ガールフレンド」は困惑している。

確かに偽名は偽名だろう。顔写真も、おそらくFacebookで見かけたもの(元々FBにアップされていた)を勝手に使ったのだろう。家族についての話も、虚偽が多く混ざっていただろう。それでも、本当に「彼女」は存在している。でなければ、あのメールのやり取りをした相手は誰なのか――。

そして「彼女」が存在しているとすれば、現にその「彼女」はシリアの治安当局に拘束されているのではないか――。

酷だ。

一方でこんな話もある。フランスのニュース専門局、France 24で、「駐仏シリア大使」を名乗る女性が、火曜日、生放送中に電話で「アサド政権による暴力的なデモ鎮圧に抗議して辞任する。大統領側にもそう伝えた」とアナウンスしたという。

しかしその直後、シリア国営テレビとアラブの放送局2局(アルアラビヤとアルジャジーラ)で、「自分が駐仏シリア大使」と名乗る女性が、「何ですか、そんなでたらめを」と激怒。

France 24は生放送での電話インタビューの際、シリア大使館から渡された電話番号にかけたと説明している。

Latest update: 08/06/2011
Confusion reigns over Syrian envoy’s apparent resignation
http://www.france24.com/en/20110607-syria-ambassador-france-resigns-live-france-24-lamia-chakkour-al-assad%20?quicktabs_1=0

※この記事は

2011年06月09日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 18:00 | TrackBack(1) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック

「ダマスカスのゲイ・ガール」は、40歳のおっさん(白人、米国人)でした。
Excerpt: Gay girl in Damauscusのブログは、9日にアップした《シリアの彼女は、「非実在ブロガー」?》のエントリに書いた通り、「よかった、当局に無理やり連れ去られた女性はいなかったんだ」という..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2011-06-14 12:15





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼