kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年02月23日

Wikileaksに関するガーディアン本は、とてもおもしろい読み物である。 #wl_jp

そのベテラン・ジャーナリストは、「25万件分の外交公電」を入手したが、まずは圧縮を解凍する方法がわからなかった。何とかそれを教えてもらって解凍したはいいが、それは「継ぎ目のない一塊のファイルのまま」で、「ラップトップ上で検索も出来ず」という鬼仕様だった――この本にはそんな話が出てくる。お茶飲みながらは読めない。

この男、頭はよいのかもしれないが、とにかく性格が悪すぎる。しかもその性格の悪さは「どうよ、俺ってすごいっしょ」の肥大したエゴによるものでしかなく、単に苛立たしいだけで全然魅力的ではない(「ニヒルなヒーローの魅力」みたいなものは、まったくない)。こんなのに黙って付き合っていけるのは、よほどのマゾだけだろう。(よほどのマゾでも、関係が断絶したあと「あの人は僕の猫をいじめた。買いだめしといた麦芽飲料も知らない間に全部飲まれてた」とか言い出すわけだが。)

そんな人物が中心となって進めてきたプロジェクト、「ウィキリークス Wikileaks」から情報を受け取って調査し、記事にしてきた英国の新聞ガーディアンによる『ウィキリークス アサンジの戦争』(原題: Wikileaks: Inside Julian Assange's War on Secrecy; 以下「ガーディアン本」)は、ジュリアン・アサンジという1人の人物のそういう面を、遠回しにねちねちと描くことを背景に、ガーディアンという「筋の通った」新聞のすごさを、「どうよ、俺らってすごいっしょ」と自慢した、ジャーナリスティックで楽しい読みものである。

0852652399WikiLeaks: Inside Julian Assange's War on Secrecy
The "Guardian" David Leigh Luke Harding
Guardian Books 2011-02-01

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4062168502ウィキリークス WikiLeaks  アサンジの戦争
『ガーディアン』特命取材チーム デヴィッド・リー ルーク・ハーディング 月沢 李歌子
講談社 2011-02-15

by G-Tools


私は原書(英語)と日本語版の双方をざっと読んだ段階だが、各章が数ページ(新聞記事1本分くらい)で、興味のあるところだけ読むということが的確に、気軽にできる作り。なので、「延々と19ページも」割かれているというアレの章は私は読んでない。アレはね、どーーーでもいいというか、ガーディアンの記事になったときに読んで書いたけど、あまりにつまらなくて疲れたよ、ママン。

2010年12月19日
ジュリアン・アサンジは男として最低である(たぶん)。その場合も、ウィキリークスの仕事の意味は変わらない。そして、WLを守ろうとして「セカンドレイプ」を発生させてはならない。
http://nofrills.seesaa.net/article/174138118.html

それの続き:
http://nofrills.seesaa.net/article/174140724.html
それにしても、自分が寝た女について「匿名化されちゃうと誰かわかりません」と述べる冷静さを持っている人が、それと抱き合わせるように「米国の手先にやられた」という陰謀論を展開しているあたり、胃もたれしますね。寝た相手のことはある程度は把握しているだろうし(仲間内で食事行ったりしてるんだから)、そんなところにまで「敵のスパイに入り込まれている」とか本気で思ってるとしたら、WLなどという大きな仕事の指揮を取らせておくのはどうかという……。


検索もできない巨大なファイルを、新聞社のシステム担当者の力を借りて何とかしたあと、ベテラン・ジャーナリストのデイヴィッド・リーは中を見始める。
 小さなメモリ・スティックに収まってはいたが、印刷すればそらく大型本で2000冊以上にはなっただろう。デジタル時代が到来する前、外交官はかくも多くの文書を書き留めようとはしなかったはずだ。万一書き残したとしても、スパイはその文書を盗むためには大型トラックが必要になるし、のちにそれを分析、解読しようとしても人生の半分を捧げることになる。
 ……
 さっそくリーは実験的に「メグラヒ」という言葉を打ち込んでみた。……

――『ガーディアン』特命取材チーム、『ウィキリークス アサンジの戦争』、2011年、講談社、p. 189

マジかよ。

……いや。リーがこの巨大ファイルと格闘していたのは2010年8月だというから、これは非常にタイムリーな検索ワード(結果が多くなりすぎないよう、「凡庸すぎない」ワードを考えて入力したそうだ)だったはずだ。

「メグラヒ」は、ロッカビー事件の犯人として唯一有罪判決を受け、事件のあったスコットランドで終身刑で服役していやリビア人。前年、「末期がんのため、余命いくばくもないので」という理由で温情による仮釈放を受けたのだが、1年経過しても死亡したという話は聞こえてこない。相手が「鉄のカーテン」の向こうとでもいうのならまだしも、リビアと英国とは主にビジネス面で既に緊密な関係を構築していて、リビアには大勢の英国人が仕事のために赴任している。(大半は石油企業の人たちだが。)ムアンマル・カダフィ政権は依然としてアレだが、メグラヒのような重要人物の訃報が伏せられるような関係ではない。つまり、単にメグラヒは死んでない。そのことがニュースになっていた時期だ。

私は「人が死んでないっていってニュースになるとは、これまた珍妙な」と苦笑していたのだが、そのころまさか、スコットランドの山奥で、「策士新聞」たるガーディアンの主力のジャーナリストがそんなキーワードで巨大なファイルと格闘しているとはまったく思ってもいなかったし、そのファイルが11月末に、#Cablegate としてガーディアンで連日トップで報じられるとも思っていなかった。

もっと言えば、リビアが2011年2月にこんなふうな血の海になるとは思っていなかった(←リンク先、うっかり踏むと後悔するかも。葬列への狙撃の場面)。もう、メグラヒどころではない。それに、もう、ウィキリークスどころではない。

2010年に「コラテラル・マーダー」(米軍によるイラクでの民間人殺害の軍の記録映像)、「アフガン戦争ログ」(アフガニスタンでの軍の記録簿)、「イラク戦争ログ」(同じくイラク戦争)と大型リークを次々と送り出したウィキリークスは、11月、このガーディアン本でメインのトピックとなっている「米外交公電のリーク」を、ガーディアン(英)、NYT(米)、シュピーゲル(独)、ルモンド(仏)、エル・ペイス(スペイン)の、世界各国の大メディア5紙と組んで行なった。ガーディアン、NYT、シュピーゲルの3媒体は、2010年のウィキリークスの活動においては「いつものメンツ」だ。(それ以前から付き合いがあるのはガーディアン。また、ここまで付き合いがあったが「外交公電」では出てこなかった媒体にアルジャジーラなどがある。)(なぜアルジャジーラが「外交公電」に出てこなかったかもガーディアン本には書かれている。あまり直接的にではないけれども。)

そして、2007年からずっと各種「リーク」でプレゼンスを高めてきていたウィキリークスが、「うちのお母さんでも知ってるような名詞」(household name)となったのがこの2010年だが、11月の「米外交公電 Cablegate」が火をつけ、それに対する米国企業の反応(PaypalやMasterCardの騒動はご記憶だろうか。あとドメイン名でもいろいろあったね)、さらに米国政府の反応(米司法省は、ジュリアン・アサンジと、ウィキリークスのボランティア数名の通信記録の開示を、Twitterを含むサービス提供者に求めるなどしている)が油を注ぐようなかたちになっている中、「ウィキリークス的、ウィキリークス流 Wikileaks-like」という「ミーム」は発生し、瞬く間に完全に定着した。「歩くウィキリークス」といった俗語表現も通じる感じだし(英語でも)、バルカン・リークス、ブリュッセル・リークスなど「ウィキリークスと同様の」リークサイトは何件もサービスインしている。(本書p. 332にも言及あり。)
http://en.wikipedia.org/wiki/WikiLeaks#Spin-offs

つい先日、「30年の独裁政権を倒した民衆パワー」で沸いたエジプトでも、その「民衆パワー」の中にいた英語話者のブロガー、Sandmonkeyさんらによる「ウィキリークス型のリークサイト」(エジプト国内の行政について、ムバラク政権下の不正を記録した文書を対象とする)が立ち上げられている。(これらのサイトは、実際にどのくらいのことができるとかいうことではなくむしろ、その「思想」をあまねく存在させ認知させるという点で機能するだろう。)



というか「すべての始まり」だったチュニジアで(密かに)かなりの規模で組織化されていた「オンライン活動家 online activists」が最初にBBCなど国際メディアに出てきたのは、ウィキリークスのサイトへのアクセスを禁止・遮断したいくつかの政府の中にチュニジア政府が含まれていたことがきっかけだった。つまり、「政府が禁止するんならチュニジアについての文書だけまとめてサイト作ろうぜ」→TuniLeaks誕生、という一件だ。(本書、pp. 332-334に関連記述あり。)

実際、Wikileaks.orgがサーバによって使えない状態にされた直後に、「1つ潰したら4つに増えた」のを見て世界中で爆笑していた中に、TuniLeaksの人たちも含まれていたのかもしれない。

そういう点では、ウィキリークスは非常にインスパイアリングな存在だったんだと思う。

残念なことに、「だった」と過去形で書かなければならない感じだが。

あれほどまでにかっこよかったウィキリークスは、ジュリアン・アサンジという人物のあまりに肥大しすぎたエゴに食われた。

アサンジは、2010年4月に「コラテラル・マーダー」を公開した直後に、「俺はアメリカ政府に狙われている(かもしれない)」ということを公の場で言い出した。

その考えというか、警戒は妥当なものだった。誰かが米軍内部からあの映像を持ち出していても、アサンジのように米国にまったく遠慮しないハッカーさえいなければ、あのような「恥」が全世界にさらされることはなかった、と米国(特に国防総省)が考えたとしても不思議ではないし、その報復が「ウィキリークスの顔」に個人的に向けられることは十分に想定しうる範囲内だ。

なので、2010年8月、「ジュリアン・アサンジがスウェーデンでレイプ・性暴力に問われた」という話が入ってきたとき、「米国政府に狙われているかもしれない」と言ってた人がハニートラップにひっかかったか、と人々が思ったとしても無理はない。私も最初はその方向の話なのかなと思った(モルデハイ・ヴァヌヌさんの件などがあるので)。しかし報じられる内容がどうもおかしい。どう見ても裏などない、いわば「痴話げんか」のようだ。そんなことをTwitter上でも語り合ってるうちに、スウェーデンで逮捕状が取り下げられた。

このときのtweetsのまとめ:
2010年8月22日
「スウェーデン当局が Wikileaks の創設者に逮捕状→スウェーデン当局が撤回」の混沌 http://togetter.com/li/43791

その逮捕状がゾンビのごとく生き返った(検察トップのマリアンヌ・ナイという人が生き返らせた)ことで、その後のドタバタがあるのだが、その後のドタバタにおいてジュリアン・アサンジなるナルシシストの本性が次々と露呈した。

周知のとおり、アサンジは英国でいったん身柄を拘束され、拘置施設に入れられた。英国で起訴前の保釈が認められないのは異例のことで(殺人など凶悪犯罪や、組織犯罪で国外逃亡の可能性が高い場合を除いては、原則、保釈される)、だからこそアサンジが刑務所に送られたことはニュースになったのだが、昨年12月、クリスマスの直前に二度目の審理で保釈が認められたあと、人々の関心が最大だったときに出演したBBCのラジオ・インタビュー(本書p. 327に少し言及がある)で、アサンジはこう言った。
Q: You do see yourself as a martyr here.

JA: Well, you know, in a very beneficial position, if you can be martyred without dying. And we've had a little bit of that over the past ten days. And if this case goes on, we will have more.

http://news.bbc.co.uk/today/hi/today/newsid_9309000/9309320.stm

この発言には、私のTweetDeckの画面内では、それまでウィキリークスに直接関わってはいないもののsupportiveな態度を示していた人々(例えばベン・ゴールドエイカーのような)も、"St Julian of Assange" と引き笑いしていた。Twitterではタイムズ、ガーディアン、スカイ・ニュース、インディペンデントなどの英国の記者や英国の法律専門家、著述家(表現の自由、言論の自由の堅持を、という人たち)を何人もフォローしているし、その人たちの多くは当初「アサンジを守れ」の立場を明確に示していたのだが、もはや誰も彼のことを本気で相手にしなくなった。なお、私自身は「お塩先生」と書いた。(これがウケてしまった。^^;)
正直、ジュリアン・アサンジってお塩先生級。「刑務所の看守が『尊敬するのはマーティン・ルーサー・キングとあなたです』みたいなことをこの俺に」とか「WL関係者は暗殺されてる」とか、ブラッドレー・マニングが正気を保てないかもという状況に置かれている時に何をぶっこいている。 #WL_JP
http://twitter.com/nofrills/status/17347885532188672


12月に最初に英国で法廷に立った時に保釈金を提供し、「アサンジを守れ」の応援団にいた人たちの中の、まともな知性の持ち主ということに存在意義のある人たちは、上記発言のあとに出てこなくなった。残ったのは文化人系ではなくセレブ系応援団(ビアンカ・ジャガーやジェマイマ・カーンのような)。(セレブ系の人たちに知性がないということではなく、「知性」を売りにしなくてよい、という意味なので誤解なきよう。)

現在、ウィキリークス&ジュリアン・アサンジについてはTwitterで書いてるジャーナリストは「仕事だからやってる」感満載だし、アサンジが何か「ネタになりそうなこと」を言っても「また何か言ってますね」程度だ。カダフィ大佐の演説より長たらしい法廷での審理など、法廷からの実況ツイートが許可されているものの、実況するのもタルいと記者がぼやくほどだ(実際に、あれはタルいと思う)。

現在もウィキリークスが暴露した米公電の内容は、ぽつりぽつりとシリアスなニュースのねたになっているが、何を勘違いしたか、ジュリアン・アサンジのバカが、ずっと味方だったガーディアン(損得勘定あってのことだろうが)にまで喧嘩を売って、一貫した発表の場を自分で潰してしまったので、まともに価値のあるニュースとして見ることのできる場が、事実上、なくなってしまった。
http://chirpstory.com/li/613
http://chirpstory.com/li/645





あのような性質の資料は、一部・断片だけでは「ニュース」にはならないのだが、ジュリアン・アサンジは文脈を説明することのできないただの煽り屋である上に(それ自体はCablegateの前からかなり明白だったが)、「米国に訴えられないため」として半ば方便のようにオーストラリアのジャーナリスト協会のようなところに登録して「ジャーナリスト」という身分を得て、さらに信頼されているメディアでもそのような扱いを受けたことで舞い上がってしまい、「独裁者」化して、身の回りの気に入らない人々を公然とdisるようになった。その極北がガーディアンに対する上記のdisだ。

(ガーディアンのデイヴィッド・リーがそれをスルーできなかったのはわかるが、煽られすぎだ……。この喧嘩、最終的にはアメリカに飛び火して、マニングの友人のデイヴィッド・ハウス、マニングに対する拷問についての調査を続けているグレン・グリーンウォルド、ウィキリークスについて80日以上も日報ライヴブログを続けているThe Nationのグレッグ・ミッチェルらも巻き添えを食った。特にハウスはかわいそうだが、そこらへんからボストン人脈に飛び火しているはずなので、ガーディアンもダメージでかかったと思う。)

ただの個人が「ガーディアン、嘘書くんじゃねー」と言うのと、アサンジのような「スター」がそう言うのとは違う。そしてその言い争いが相当醜い様相を呈して、私はモニタのこちら側で心底「オワットル」と思った。それが先月のことだったはずだ。(そのあとチュニジアがありエジプトがあり、今またリビアがありで、心底「オワットル」は本当に「ドーデモイイ」に格下げされたが。)

ジュリアン・アサンジ自体が、本当の所で、ダニエル・エルスバーグの活動も、あるいは米外交文書を情報公開請求で丹念に集めて分析してきたウィリアム・ブルムのような人や、調査報道の分野でものすごい仕事をしているジョン・ピルジャーのような人の仕事も、そのほかの何についてもそれがなぜ「重要」で「価値のある」ものなのかを理解していないわけで、ガーディアン本にもそのことはかなり色濃く描かれている。

そしてニュースを「重要」で「価値のある」ものにするのは、ジャーナリストの仕事なんだよ、というガーディアンのドヤ顔も。

そして、それがたまらなくおもしろい読み物になっている。

性格の悪い人々による、性格の悪い私のための一冊。

似てるものといえば、2時間ドラマの『家政婦は見た』だな。。。

しかし一番の食わせものは、この本に書かれているようなことをしていながら実際に米外交公電公開時には、「えー、そんなショッキングなものはないですぅ、アメリカはそんなところまで見られたらはずかしいって思うかもしれませんけどぉ、内容はたいしたことないですぅ」的なことをTwitterやガーディアンの紙面で書いてたへんしゅーちょーである。この人、絶対敵に回したくないタイプだと思う。アサンジに「俺は米国に逮捕される」と騒がせておいて、実は一番やばかったのは編集長だったというオチとか、悪夢のようだ。(笑)

あ、それと、Cablegate公開日の「シュピーゲルのフライング」の件もこの本で説明されています。偶然が重なった事故。ああいうことがあったので最初からどこか「不信」があったのだけど……。



さて、原書と日本語版との異同。

原書で巻頭にある編集長の文章は、日本語版では「エピローグ」に来ている。これはどちらでもさほど違和感はない。

原書で後半に収録されている「リークされた米外交公電」の採録は、日本語版にはない(ウェブサイトでDLできるようになっている)。索引も日本語版にはついていない。公電は別によいのだが、索引がないのは少し残念だ。あればもっと楽しいので。「バットマン」とか。(笑)

翻訳はしっかりしていてすいすい読める。しかし女性の言葉の翻訳はどうにかならんものかと思う……翻訳書を読んでいるとしょっちゅう思うことだが。個人的には、この本で最大の脱力箇所はここ(p. 275)。
……サラ・ペイリンもこれに加わった。……「アルカーイダやタリバンのリーダーと同じように、アサンジのことも早急に追跡すべきだと思う……彼は、手を血に染めた反米スパイよ」。

「女性性」を強調すべき文脈ならまだしも、政治家が政治家として公開の場で述べた言葉という文脈で、「スパイよ」はない。野田聖子とか小渕優子とかれんほうのような人が「A議員は説明責任を負うべきよ」と述べたりしないだろう。(ペイリンのこの発言はむしろ、「〜スパイです(キリッ」とでも書くべきなのだが。)

本書の場合、「女性性」を強調できる場面で出てくる女性たち(スウェーデンの2人)もそれぞれ、キャラ的には「〜だわ、〜わよ」語尾の人ではないので、「おんなことば」が浮いていて非常に気持ちが悪い。特にガーディアン編集部での「平文(おとこことば)」と並ぶと、英語版にはない奇妙な雰囲気が漂う。

でも、日本語圏ではなぜか、「翻訳された女」は必ず「〜だわ、〜わよ」語尾でしゃべるという約束事があるので(来日した女性芸能人はほぼ必ず「東京は初めてなの、素敵なところだわ」口調でしゃべってる。同じ年齢層の日本人の女性芸能人が、実際に、「ベルリンは初めてですが、いいところですね」と述べている場合であっても!)、固有の問題ではないことは確かだ。この点については先は長いような気がする。

あと、すっごい細かいことだけど、「アルカーイダ」とするなら「タリバーン」。「アルカイダ」なら「タリバン」。これは読んでるときは気にならなかったけど、入力して違和感があったので、たぶん「表記基準 vs 言語的な基準」の問題。



【下記終了】→@mutevoxさんによるまとめを参照。

唐突にお知らせ。これ、今日です。23時から。→20分くらいで「満席」とかで放り出されました。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv41263802
ウィキリークス アサンジの戦争とは何か? (番組ID:lv41263802)
アサンジが仕掛けた「戦争」の意味とは?

新刊『ウィキリークス アサンジの戦争』(講談社刊)の刊行記念トーク番組。自由な言論・報道を続ける気鋭のジャーナリスト4人が徹底討論します。

昔気質のユニークな新聞記者軍団と、ジュリアン・アサンジ率いるミステリアスな組織「ウィキリークス」は、ときには激しく対立し、ときには真摯に協力しながら、多くのスクープ報道を繰り出しました。

その壮大なドラマを描いた新刊 『ウィキリークス アサンジの戦争』を手がかりに、アサンジとは何者なのか、また、中東で広がる民衆デモへの影響など、ウィキリークスがもたらしたインパクトや意義を考えます。

出演は、ジュリアン・アサンジのインタビューをおこなった野口修司、フリージャーナリストの上杉隆、昨年、誘拐されたアフガニスタンから生還を果たした常岡浩介、司会は、ニコニコニュース編集長の亀松太郎がつとめます。

あと、モーリー・ロバートソンさんも出演されるそうです。

※この記事は

2011年02月23日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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