kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2010年04月29日

マンチェスターのその女性は「あれらの東欧人はどこから来るんですか」と言った。首相はbigotだと思った。

ゴードン・ブラウンが有権者のことを bigoted woman と描写したことは、日本の新聞でも伝えられている。

英首相マイク外し忘れ失言 有権者に「偏見だらけの女」
2010年4月29日3時 56分
http://www.asahi.com/international/update/0428/TKY201004280474.html

この朝日新聞の記事は、どんなことがあって英国ではメディアが大騒ぎになっているのかの経緯をコンパクトに説明してくれている。ただ、「偏見だらけの bigoted」という表現がいかにきつい表現であるかということは補う必要がある(「失言」ではなく「暴言」の扱いが必要なレベル)。それに、bigot呼ばわりされた有権者の女性が実際にどんなことを言ったのかについては、「移民問題や犯罪対策で議論を挑まれた」とあるだけで、そこから察する必要がある。あるいはネット上の英語圏で情報を拾いに行くか。

しかしその「ネット上の英語圏での情報」がおもちゃ箱をひっくり返したような状態。

まず、「ブラウンが有権者のことをbigotと述べた」というセンセーショナルな話題がうわーっと取り上げられている段階では「その前に何があったのか」は語られず、あるいは語られていてもまるで注目されなかった。小学校で先生が言い間違えをし、児童が一斉にはやし立てるようなもの。私自身、大手メディアのある程度まとまった文章でもTwitterのような個人による短い文章でも、「ブラウンが何についてbigotと述べたのか」を把握することはすぐにはできなかった。「bigotと発言した」という事実についての/事実をめぐる情報の量が多すぎ、内容も細かすぎて、ほとんどすべてがノイズという状態で、本当に重要な情報にたどり着くまでにくたびれてしまう感じだった。

少し時間が経過してようやく私にも、「何があったのか」、「どうしてブラウンはbigotと述べたのか」がわかってきた。そして、(言葉は悪いけど)「ブラウンはbigotのことをbigotと言っただけだ」ということが把握できた。

Profile of Gillian Duffy, the voter PM called 'bigoted'
Page last updated at 16:02 GMT, Wednesday, 28 April 2010 17:02 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/election_2010/8649476.stm

BBCがbigotgateが発生してから数時間後にまとめたこの記事には、ゴードン・ブラウンと問題の女性(ギリアン・ダフィさん)の会話がたっぷり収録された映像がエンベッドされている。4分くらいある。そんなに長く聞いていられない人はChannel 4が映像を1分でまとめてくれているのでそれを参照。

ブラウンとこの女性の会話が行なわれたのは、グレーター・マンチェスターのRochdaleという町でのことだ。この選挙区は20世紀になってからはほぼずっとLabour対Liberal (OR LibDems) の対決の選挙区で、前回2005年はLibDemsの候補が16,787票、Labourの候補が16,345票というきわどい勝負だった。つまり今回は労働党は力を入れてLibDemsから奪いにいく選挙区だ。それゆえに党首が出向いて一般の人々と対話するという企画が行なわれたのだが、そこでとんでもない相手と向かい合うことになったゴードン・ブラウンは、とりあえず仕事として乗り切ったあと、車の中で「誰だ、あんなのを対話の相手にセッティングしたのは」と憤る。その中でのbigoted womanという発言だった。(むろん、何があろうとも、そんな言葉を有権者に対して使うなどということは、政治家として脇が甘すぎる。)

では、ブラウンはこの女性とどんな話をしたのか。それがBBC記事にエンベッドされている映像に記録されている。ただマイクが遠かったり風の音が入ったりして、しかもこの女性がマンチェスター訛りで、非常に聞き取りづらい。(しかも、話があちこちに蛇行しているので推測も難しい。)

女性は「ずっと労働党に投票してきたんですけどね、今ではそれを恥ずかしいことだと思ってますよ」といきなりつっかかる。ブラウンは余裕の態度で「どういう理由でしょう。わが党はこんな改革を実践してきました」とあれこれ手際よく列挙する。これは「よくある光景、よくあるやり取り」だ。

このあと映像がぶちっと切れて(編集)、ブラウンが「犯罪対策」の話をしている場面になる。ブラウンは労働党政権下で進められてきた「ネイバーフッド・ポリシング neighbourhood policing」がどうのこうのと語る。にっこり微笑みをうかべて相手の女性(今は定年退職しているが、何十年も役場の職員として働いてきたとのこと)に「あなたは長年このコミュニティに尽くしてこられた」云々と語りかける。が、相手の女性はまた別な不満を言いたくなったようで「夫を亡くして」とか「年金生活で」という方面に話が行く。ブラウンの顔にはもう微笑みはなく、女性は「(社会的)弱者のための政治を信じて労働党に投票してきたのに、今では弱者とはいえない人たちがおおぜい、ソーシャル・ベネフィットの恩恵にあずかっている。本当の弱者は何もできない they can't get the claim」と言う。ここでブラウンが「もう失業保険をもらって適当にダラダラ過ごすなどということはありえないはずですよ」と説明する(80年代、90年代はあまりの不況で失業がほんとにすごい状態となっていて、毎週月曜日に職安の行列に並んで書類にサインするだけで失業保険の給付を受けることができるという状態だった)。そこまではまあ、見当はずれだけどよくありがちな不満で、特にbigotと言えることはない。

問題はその先だ。ブラウンが「失業保険でダラダラ過ごすことはできなくなっている(から、あなたが主張するような、弱者とはいえない、働けるのに働く気がないだけの人たちが社会保険に頼って暮らすなどということはなくなっているんですよ)」と説明した直後、BBCの映像の2:34に、女性が But you can't say that about the immigrants. と言う。「でも移民は別でしょ」と。そして続けざまに、All these Eastern Europeans are coming in, where are they flocking from? 「東欧人が次々とやってくる、どこから大挙してやってくるのか」と。

Eastern EuropeansなんだからEastern Europeからでしょ……とボケてないとやっていられない。

Bigotじゃん、この人。それも立派なbigot。

でも、右派陣営の右のほう(保守党右派、UKIP、BNPなど)なら、こういう展開を見てもbigotとは思わないだろう。彼らはこれが「普通の感覚」だと思っているから。そして、右派陣営なら左のほうでも(保守党改革派=キャメロンとか)bigotという言葉は使わないだろう。

でも労働党は、いかに中身が右傾化し、"I'm not racist, but ..." とか "One of my best friends is black, but I think ..." とか言いながら「移民」を入れないようにしていようとも、こういうあからさまな、「イミグラント」を下に見た無知な偏見については、ためらいなくbigotという言葉を使うだろう。

ゴードン・ブラウンはここで女性に対し、「欧州連合の域内の労働力の移動の自由」について非常にわかりやすく説明するのだが、女性は聞いていない。Butと言って、また次の不満をだらだらと漏らす。「大学が……、私の孫は大学に行くのが大変になって……」と言っているのはわかるが、残念なことに私はこの人の聞き取りづらいマンチェスター訛りに耳を傾ける気がなくなっている。ブラウンは大学の門戸は以前と比べて広くなっていると述べ、大学の有償化のこと(いわゆるtop-up fee)について淡々と説明している。このあたりは落ち着いていて、「頼れる専門家」然としている。

ここで時間となったようで、スタッフが声をかけるとブラウンはにこやかに女性と握手をし、女性も笑顔と笑い声で答えている。

その数十秒後、地域の人たちににこやかに手を振って車に乗り込んだゴードン・ブラウンは、スタッフを相手に「誰だあんなの連れてきたの」と毒づく。「何も知らず、偏見だらけのおばはん」との対話について「ばかばかしい ridiculous」と吐き捨てる。すっかり消耗したようだ。

そりゃそうだろう、「東ヨーロッパから出稼ぎに来る人たち」を「移民/外国人 immigrant」と呼び、「英国人が受けるべきわが国の社会保障を外国人が食いつぶしている」と堂々と言っちゃうような人に、「ずっと労働党に投票してきた」と言われても、ねえ。単にEUに関心がなくて、単に投票するなら労働党ということになってただけじゃないのか、と。

全然よそ者の私ではあるが、なぜこの女性がUKIPではなく労働党を支持しているのかが、まったくわからない(単にUKIPが候補者を擁立していない選挙区なのかもしれないが)。「東欧人」に文句を言うのなら、EUとのつながりを強化しようという方針の労働党(とLibDems)は支持できないはずだ。「東欧人が大挙して来ている」のは、ここ6年間で現実になったEUの東方拡大のせいなのだから。

このEUの東方拡大は、20年前には未来予想図には入っていなかっただろうけれども、10年前には入っていたはずだ。(実際に、ポーランド、チェコ、スロバキアなどは2004年にEUに加盟した。2007年にはルーマニアとブルガリアも加わった。女性がぐちゃぐちゃ言ってた「東欧の人たち」は、おそらくポーランドやルーマニアから集団で出稼ぎに来ている人たちだろう。)そういう展望が描かれるようになったそのときには説明はなかったかもしれないが、前回の総選挙があった2005年には既にポーランド人の労働者は「EUの市民」のステータスで(とはいえ、ほかの例えばフランスやドイツの人たちとはルールが異なっていたが)英国に来るようになっていた。そんなことも把握せず、「労働党に投票してきたのに、外人ばっかり増えてる」と文句を言う。EUとの関係強化(を進める労働党)はあなたの選択でしょ、という。意味不明。

こういう「意味がわからない」現象は、英国のように地域で政党がはっきり決まっている場合はわりと起きるものだ。特にイングランドの北の方では、今はもうすっかり過去のものとなっている何十年か前の産業(炭鉱とか)の名残で「労働者階級」→「労組」→「労働党」の三点セットで投票行動が決まっていることが多い。有権者個人が現在考えていることは、UKIP(欧州連合に対する懐疑主義)や、ひどい場合にはBNP(排外主義、国粋主義)に極めて近いのに、「昔からそうだから」という理由、いわば惰性で労働党を支持していて――この女性も「親の代から労働党」みたいなことを言っている――、さらに(地方議会などでは話は別だが)国政では英国は「労働党か、保守党か」の二大政党制のなかで選択肢は「労働党」しかない。少なくとも、今のところは。(今後はどうなるかわからないけれども。)

そういうふうに、いわば惰性で「労働党支持/反保守党」が約束事になっている地域では、草の根レベルや地方議会では極右がかなり強いということも多いと思う。(「と思う」というのは、私がこれを書くときに細かくは確認していないことを意味する。)「どっからくるのかわかんないような東欧からの出稼ぎさんたちは社会保障制度にたかっている」(←デイリー・メイルみたい)と、EU加盟国の人たちを誹謗したこの女性が住んでいるグレーター・マンチェスターは、昨年の欧州議会議員選挙で、BNPのニック・グリフィンに議席を与えた(→当ブログ過去記事)。(むろん、MEP選挙のときに、今回の女性が住んでいる地域のBNP票が大きかったとはいえないのだが。調べてみる必要はあるかもしれない。)

(UKの極右について、ほんの少し調べればそういう背景がはっきり見えてくるはずなのに、「極右だから右翼、つまり保守党側」と決めてかかって、「労働党の支持者が多いところでは極右は伸びない」みたいにあぐらかいてる人がけっこう多い。アホなんですか? いわゆる「ナチス」の国家社会主義の「社会主義」はソーシャリズムとは別なものとか思ってるんですか? って私は思うけど。労働党周囲の言論でも「BNPはbigotでracistだから誰も投票したがらない」と決めてかかってるケースはけっこうあったし……昨年のMEP選までしか見てないのだけど。)

で、不幸にも、愚痴がマイクに拾われてしまっていたブラウンは、bigotという発言はすまなかったと女性に謝罪した。(それで終わりというわけではないだろうと思いつつ、都知事をやってる人が都知事としての仕事をしているときにマイクに向かって堂々と「ばばあ」云々と言ったことについて、発言者本人は「他人の言葉を引用しただけだ」と主張し、法廷も名目上の罰金を科すということさえしなかった、という社会システムと、それを正当化する言説が「中立」であるかのように大手を振って歩いている中にいると、夢の国での出来事を聞いているようだ。)

その後の「有権者からの反応」として、冗談半分というか諧謔ではあるのだろうが、こんなのがある。(内容的に同じでも記述にはいくつかのバリエーションがあるが、見た中で一番綺麗にまとまっている記述を引用する。)


※Never Voted Toryというのは今回の選挙での保守党のポスター用スローガン(←リンク先はspoofです)から取った名前で、サイトではこのスローガンを使ったポスターのパロディをいろいろやっている。

「ゴードン・ブラウンはギリアン・ダフィさんに不快な思いをさせたことを謝罪しました。ところでダフィさんから東欧の人たちへ、不快な思いをさせたという謝罪はまだですか?」

同じNever Voted Toryがこんなツッコミもしている。
BREAKING: Just heard Boris Johnson has slammed Gordon Brown - this from the man who had to apologise to WHOLE of Liverpool! #bigotgate

http://twitter.com/NeverVotedTory/status/13057831489

現在はロンドン市長のボリス・ジョンソンは、国会議員をしていたときにリヴァプールについて暴言を吐いた。調べてみたら5年以上前になるのでびっくりしているのだが、イラクで拉致され殺害されたケン・ビグリーさん(リヴァプール出身)のご家族がイラク戦争というものを引き起こしたブレア政権と当時の国会を批判し、リヴァプールという町全体がビグリーさんが殺されたことを悼んでいたことを受けて、サッカー場で96人もの観客が圧死した「ヒルズバラの悲劇」(リヴァプールFCの試合)を引き合いに出しつつ、「あの町ときたら、被害者ぶることにかけては一流だからな」と自分が編集長をしていた言論誌に書いた。まったく最低としか言いようのない品性だ。(ちなみに、ジョンソンは学生時代「ええとこのぼんぼんの飲んだくれサークル」の一員で、そこにはデイヴィッド・キャメロンもいた。)

要するに「お前に言われたくない」ってことなんだけど、ボリス・ジョンソンは確認すべきことも確認せず、関係のないことを無理やりつなげてリヴァプールを罵倒していたわけで(「ジャーナリスト」としてコラムなり何なりを書くのなら、ヒルズバラの死者数くらい把握しておけという批判はものすごく当然のものだ)、それよりはゴードン・ブラウンのほうが妥当だ。だからといって、選挙運動中に劣勢にある党の党首が特定の有権者について「偏見のかたまり bigot」という言葉を使うとは、いかに感情的になっていたとしても、愚かなことだが。

まあ、ジョンソンなどはどうでもいい。

上に書いたように、件の女性が誹謗した「東ヨーロッパ人」は、多くの場合、EU加盟国から来ている人たちだ(ごく少数だが、EU外のセルビアやクロアチアなどから来ている人々もいる)。

かなり単純化して書くが(→詳細は、EU法の専門家である入稲福智さんによる非常にわかりやすく詳しい説明を参照)、基本的に、EUの中では、EU加盟国の国籍を持っている人はどこに行って仕事をしてもいい。2011年までは新規加盟国についての特別措置が認められているので、受入国によるある程度のコントロールは可能だが、原則として、ポーランドなど東欧諸国がEU加盟国である以上、そこから労働力が流入することについては、英国は何もできない。たとえ次の政権トップが「移民対策」を今以上に強化するとしても、対象となるのはアジアやアフリカ、米州の人たちだ。つまり、極端な話、EUの人たちを英国から締め出したいのなら、英国がEUから脱退する方向に進んでいくしかない。そういう方向性なら、投票すべき政党はUKIP、メジャーな政党なら保守党であって、労働党ではない。

そんな基本的なこと(ブラウンはその点は丁寧に説明していた)も把握せず、話題をコロコロと変えながら不満をぶちまけて、その中で「東ヨーロッパ人」を誹謗したこの女性こそ、「東ヨーロッパ人」に一言「ごめんなさい、私が無知でした」と言うべきだ、というtweetが、#bigotgateのハッシュタグに目立つようになってきている。

そういうtweetのひとつ経由で、Live Journalのポストを読んだ。Miliさんというユーザーさんの投稿だ。彼女は東欧から英国に来て仕事をしている人たちのひとりだ。(ただし「英語を使う」という点で、ダフィさんのような人たちが忌み嫌っている「外国人」とは違うかもしれない。)

I am an Eastern European
@ 2010-04-28 21:17:00
http://elmyra.livejournal.com/498792.html

非常にしっかりした英語で綴られたこの文章は、ゴードン・ブラウンがbigotと呼んだその女性の発言内容を知って完全にupsetの状態にあるときに書かれている。

Miliさんもまた、昼ごろまでは断片的な情報の中で何が起きたのかを把握できずにいた。単に、誰かがついに失言して、メディアが格好の材料を得たのだろう程度に思っていた。それから、多分お昼の時間にネットで問題の発言の映像を見た。そこに、bigotと呼ばれた女性が「大挙して押し寄せる東欧人」と発言している場面が含まれていた。

MiliさんはTwitterで、タイムラインに出てくるほかの人たちの発言を読んだが、その女性の発言について「なんかとんでもない発言が」と書いている人はおらず、いやいや自分は東欧人だから過剰反応しているのかもしれないと考えた。(「差別されていると思う自分は過敏なのかも」というのは、母語ではない言語での誰かの反応を見たときにはありがちな反応だ。)

それでも黙っていられなかったのだろう、勇気を出して「大挙して押し寄せた東欧人ですが何か」と投稿した。それに対する反応はなかった。やっぱり自分の過剰反応なのだろうと考えた。(こういう場合、「英語を母語としない自分が知らないだけで、ああいう表現はあのコンテクストではたいしたものではないのだろう。自分は知らないから、過剰に反応してしまうのだ」とかいうふうに合理化することが非常によくある。)

Miliさんは自分がTwitterでフォローしている人たちのうち、50人程度はあの女性の発言を受けて「大挙してやってくる東欧人」を弁護する側に回りそうな人たちだと考えた(彼女がフォローしている人の多くは、左派、リベラルである)。しかし実際には、6時間も経ったころにようやく1件、「ブラウンの発言は内容は妥当」という内容の投稿があっただけだった。それも非公開設定をしている人によるもの。

Miliさんにとってはショッキングなことだった。あのギリアン・ダフィという女性に対する怒り、ああいう発言を黙って見ている人たちへの怒りを感じ、また英国人の投稿を見るまで自分は間違っているのではないかと思っていたことへの情けなさを感じた。

そして彼女はこう書いている。
A desperate need to justify myself. I pay higher-rate income tax. I contribute to the UK economy, I contribute to UK society. I probably pay into the tax system more than I get back out of it. Extending that justification to other immigrants - parts of the UK economy probably would collapse without immigrant labour; I wonder how much immigrants contribute in total to the economy; we all come here to work, and we work damn hard. A range of other economic arguments, all around contribution, all around this incredibly Tory notion of my money being the only thing that entitles me to anything like decent treatment from this society.

「移民」というか「仕事するために英国に住んでいる外国人」のひとりとして、彼女が書いているこのくだりを見ながら「orz」となりながら思い出すのだが、先週の党首討論でこの視点を語ったのは、左派・リベラルのゴードン・ブラウンやニック・クレッグではなく(着地点は異なっていたが、2人とも、「EU圏外からのイミグレーションの厳格化」の話で熱弁をふるっていた)、保守党のデイヴィッド・キャメロンだった。それも、「外国人労働者のわが国経済への貢献は大きなものですが、しかし、わが国には全てを受け入れることはできません」という流れでほんの少し言及されただけだった。

そして、bigotな見解を披露してbigotと呼ばれたことで謝罪を受けられるギリアン・ダフィさんや彼女のような600万人には選挙権もあるが、彼女に中傷された自分のような立場の数十万人には選挙権もなく、声もない、とMiliさんは書く。ダフィさんが市民権取得試験を受けたらどうなるだろうか、と。(この「市民権取得試験」というのが何とも英国的偽善というか、「英国という価値観=寛容」の押し売りなのだが、当の英国人は英語しかできず、外国人は嫌いで、だから外国人にcan you behave like us? と問うているのだから、まったくばかばかしくもなるだろう。)

そして、あのようなbigotに対し、政治家が何も言えないようになってきているという現実について、彼女はこう書いている。
The slow, sad realisation that the political culture in the UK is such that no politician has any choice but to grovel to the bigots. Because standing up and explaining to them instead that immigrants make a massive contribution to the economy, let alone that all people deserve to be treated with dignity and respect regardless of nationality, citizenship or contribution, would be political suicide.

And finally a profound sense of isolation, hurt, and being alone. Tears and huge heaving sobs. I've not cried like that in about five years.

That's how Gillian Duffy has made me feel today. What did I ever do to her?

I am writing this because realistically it's the only way that I can get any leverage on the situation without landing myself in jail. I'm also writing this because you need to know. Yes, you. All of you with the British passports and the huge sense of entitlement. ...




※この記事は

2010年04月29日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼