kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2009年11月08日

IMCの第22次報告書 (the 22nd Report)

11月4日、北アイルランドの武装組織の活動を監視しているThe Independent Monitoring Commission (IMC) の第22次報告書が出た。対象期間は主に2009年3月1日から8月31日。報告書はPDFで公開されており、下記URLで誰でもダウンロードできる。
http://www.independentmonitoringcommission.org/publications.cfm?id=72

前回(第21次)が半年前、今年5月に出ているが(→過去記事、IMCの第21次報告書 (the 21st Report)、「非主流派リパブリカン」という観点から)、この第21次での対象期間は2008年9月1日から2009年2月28日で、今年3月の英軍基地襲撃と警官射殺事件、そして3月以降の大規模なカーボムなどなどは、今回第22次報告書で初めて報告対象となる。左で「などなど」と書いたものには、リパブリカン側ではパニッシュメント・シューティングなどのパラミリタリー活動が含まれる。ロイヤリスト側ではコールレーンでの集団暴行事件(レンジャーズのサポの集団=プロテスタントが、カトリックの男性を集団で暴行し死なせた事件。後述)があり、またそれとは別に、UDAおよびUVFの武装解除への動きがこの期間に確認されている。また、IMCの監視対象からは外れているはずだが、Combat 18がベルファストで少し動いている(東欧からの出稼ぎ労働者への脅迫・追い出し、西ベルファストのアイリッシュ・ナショナリストの墓地でのヴァンダリズムなど)。

なお、Provisional IRA(いわゆる「IRA」)については、第19次報告書(2008年9月)で、機能停止の状態にある(実質的に武装組織としては死んでいる)ということが報告されている。つまり、いわゆる「IRA」はもう「終わった」組織で、ここ数回の報告書では、彼らが「終わっている」ことが報告され続けているだけだ。ただし、いわゆる「IRA」から分かれた強硬派の組織が活動を続けており、今年はこれが活発化している。IMC(や警察、マスコミなど)はこれら強硬派を「dissident republicans (非主流派リパブリカン) 」と呼び、Provisional IRAが終わったあと(2007年夏に宣言が出た)は「非主流派」にIMCとしての監視の力点を置いている。

さて、第22次報告書の内容だ。まず気づくのは、いつもよりボリュームが少し多いということ。表紙や目次、付録を除いて30ページ以上。量もだけど中身もアレで、ざっと目を通すにもけっこうしんどい。

目次:
CONTENTS
1. Introduction
2. Paramilitary Groups: Assessment of Current Activities
3. Paramilitary Groups: The Incidence of Violence
4. Leadership
5. The Devolution of Policing and Justice to the Northern Ireland Assembly and Executive
6. Other Issues


2. Paramilitary Groups: Assessment of Current Activities
2.1は前置き。2.2から2.35までがリパブリカン、2.36から2.54がロイヤリストに宛てられている。

リパブリカンのパートでは、「非主流派総論 Dissident Republicans Generally」が2.2から2.12まで。そのあとContinuity IRA, INLA, Provisional IRA, Real IRAについて各論。

「非主流派総論」では、まず、2008年初夏からの彼らの活動(2009年3月の英軍基地襲撃、警官射殺を含む)は、2004年4月にIMCが報告を開始して以降、最も深刻な状態にある (2.3) ことを述べ、彼らの活動の深刻さ、範囲、テンポのすべてが今回の報告書の対象期間(2009年3月から8月)においては悪い方向に変化している (2.5) と述べている。

そして注目されるのが:
2.7
There are two aspects bearing on the capability of dissident republicans to which we must refer. First, in previous reports we have often mentioned attempts by dissident republican groups to recruit new members. In our detailed analysis below we comment on the apparent growth of RIRA and CIRA as a result of recruitment. But, as we also say there, what really matters is not so much the number of members as the experience and skills of those available to an organisation, whether formally members or not. The majority of new recruits are inexperienced young males. There are however now indications that former republican terrorists have as individuals provided services in some instances to dissident republican groups, which even if occasional can significantly add to the threat. There have also been clear attempts on the part of dissidents to extend their influence in some areas, whether on the basis of support or through fear and intimidation. We shall continue to monitor such trends very closely.

2.8
Second, it remains our view that there has not been effective strategic collaboration between the main dissident groups, though all direct their attention to attempts to kill members of the security forces and their families as well as attempts to intimidate and control communities. There also continues to be ad hoc tactical co-operation between individuals from different groups and backgrounds. This form of tactical co-operation involves personal and social networks rather than the organisations themselves and has been significant in the period under review. The picture is not altogether clear at present, but there are emerging signs that phenomenon of fluidity is more significant than before.

つまり、2.7においては、「RIRAおよびCIRAは人員補給をして規模を拡大させている。ただし新たに入ってくるのは経験のない若い男性が大半であるためあまり意味はない。問題は、元リパブリカン・テロリスト former republican terrorists が個人として(=組織の後ろ盾や支持、指示などない状態で)、非主流派の集団に手を貸しているケースがあると思われることだ」という指摘と、「非主流派が影響力を伸長させようとしている地域がある。(積極的)支持を拡大させようという場合もあれば、恐怖と脅迫を用いている場合もある」という報告。2.8においては、「非主流派の主な集団(RIRAとCIRA)の間での戦略面での協力はないと見られるが、その時その場によって個人の立場での戦術的協力という事象はある」との報告。

で、2.7の「元リパブリカン・テロリストが非主流派に手を貸している」というIMCの指摘はBBCのIMC第22次報告書についての記事のメインのポイントとなった。(ほかのメディアはそれぞれ別のところに注目しているが。)

ちょっと茶々を入れるみたいなことを書くと、一定の年齢以上の非主流派リパブリカン組織のメンバーは、INLAでなければ(INLAだけは70年代の分裂で、しかもProvisonalからではなくOfficialからの分派なのでちょっと話が違う)、全員が元Provisional IRAである(Slugger O'Tooleのコメント欄も、最初のいくつかはその話)。ただ、ProvisionalsからCIRAなりRIRAなりが分派したときからのメンバーとか、あるいはその後であってもいずれの時点にProvisionalsを抜けてRIRAなりCIRAなりに加わったメンバーは、今回のこの報告書の2.7で「元リパブリカン・テロリスト」と呼ばれる人々ではない。ここでまた例の北アイルランドの用語の問題が出てくるのだが、普通に考えればこの「リパブリカン republican」は「Provisional IRAのメンバー」ということだ。

で、4日にこの報告書が出たあと数日様子を見ているのだが、シン・フェイン(PIRAの政治部門)から特に反応があるふうでもない。この場合、これは「否定のコメントが出ない」ということで解釈してよかろう。つまり(以下略)。

振り返ってみると、「IRAの事実上の解体」は、かなりの時間をかけて行なわれている。北アイルランドでは2000年代になってからずっとその作業が行なわれているようなものだ。そして、いくつかの事件や出来事で急に進展したりしつつ、最終的にもうPIRAがPIRAとして活動することはないということが確定したのが2年前(ここで、英軍は北アイルランドでの治安維持作戦を終了させている)。今から1年前には "The Organisation" はすでに組織の体はなしていないと公式に報告された(IMC 19th Report)。でも個人は残るし、その個人の頭や手にあるものも残る。んで、「IRA解体」は、例えば警察が「IRAはもう存在しません」と宣言するような形では確定していない。何かフェードアウトしちゃったねっていう感じになっている。そういう形にしたのは、いろいろと配慮あってのことだろうと思う。今回、「個人として非主流派に手を貸す者がいる」ということがこれ以上はないほどの公式筋から報告されたのは、配慮があってもなお、っていうことだろう。(ごにょごにょとごまかす記述でわかりづらいけど申し訳ない。)

報告書の2.9は、RIRAやCIRAより規模の小さな(マイナーな)集団 (Oglaigh na hEireann, IRLA, Saor Uladh) について、「特に報告すべき材料はない」という短い文。2.10は、eirigiについてのIMCの見解まとめ――「パラミリタリー集団というよりは、激しい抗議行動に照準を合わせた政治集団である」という見方だ。「eirigiのメンバーや元メンバーの中には重大な暴力事件に関係した者もいることは把握しているが、テロ行為をおこなっているわけではないと考える」という感じ。2.11は、ナショナリストの地域での「自警団」の活動が活発化していること(これは、北アイルランド紛争という文脈で見ると、「歴史は繰り返す」に見えるのだが)。特にベルファストのConcerned Families Against Drugsと、デリーでのRepublican Action Against Drugsという団体(かつて、IRAがこのような「ドラッグ密売取り締まり組織」の体裁の集団を作っていたことがある)。IMCはこれらのブループが、パイプボムを含めて各種攻撃を行なっていると見ている。

このあとは各組織についての各論だ(順番は、名称のアルファベット順)。

Continuity Irish Republican Army (CIRA)
2.13, 2.14で3月9日のクレイガヴォンでの警官射殺事件について軽く述べ(詳細は、捜査中なので述べられていない)2.15で、4月はじめのRossleaでの偽爆弾事件、7月のアーマーでの爆発物事件はCIRAの犯行であると考えられると指摘、またPSNI(警察)が4月と5月にベルファストで発見した弾薬や爆弾製造器具はCIRAのものだと考えられるとの報告。2.16からあとはメンバーが「自警活動」を行なっているとかいったことの報告で、これらは特に新しい話ではない。

INLA
どうせギャング活動の話だし、INLAは10月10日ごろに武装解除については明言を避けた状態で活動停止宣言をしているので、飛ばします。なお、INLA活動停止宣言はヒラリー・クリントンの欧州訪問と同時期で、ヒラリーは「北アイルランド和平はあたくしの実績」と大法螺を吹いて憚らない人なので(彼女が夫の補佐役として北アイルランド和平に関わったのは事実としても、和平は彼女の実績ではない)「お土産」が必要だったのだろうと私は勝手に思っている。

Provisional Irish Republican Army (PIRA)
武装組織としての活動はなく、政治的な活動しかしていないが、「少数の元メンバーが非主流派を手伝っている、これはPIRAのストラクチャーが解体されたあとでは驚くべきことではない (A small number of former PIRA members have given assistance to dissident republicans. This is not surprising following the dissolution of PIRA's structures)」。ともあれ、IRAのIRAとしての活動はない、という点では、IMCの報告書はこの1年以上一貫している。

Real Irish Republican Army (RIRA)
……長い。4ページ近く、ずっとRIRAの活動実態の報告。主な事件だけで、3月の英軍基地襲撃だけでなく、5月のアーマーでの爆発物、6月のストランド・ロード警察署での爆発物、7月のベルファスト、Ardoyneでの暴動(→過去記事)―― improvised explosive devices were thrown とあるのだが、火炎瓶のほかに何か投げていたんだろうか――、8月のアーマーでの学校近くの爆弾、その数日後のフォーキルでの爆弾(→過去記事)。セクタリアン攻撃も数多く行なっており、7月にバリミナでプロテスタントの家に放火、8月にもまた放火、など。銃撃は、ニーキャッピングだろうけど、ベルファストで「脚を撃った」事件多数。3月、ティローンで現金強奪(£600,000)。4月の声明では、RIRAには「治安機関で仕事をする者は誰であれ『処刑』する『権利』がある」と主張、また新聞の取材に応じて「期が熟せばメインランドに戦線を展開する」とも語り、せんせーこのひとたちあたまおかしいです。(明らかに誰がどう見てもフィジカル・フォース・リパブリカニズムが『時代遅れ』になっているこの状況下、なぜこのモチベーションを維持していられるのかがまったくわからない。)

そして2.34で組織が拡大していることについての説明(ベルファストでメンバーを新規に迎え入れている。RIRAといえばどちらかというとデリーが拠点だったが)。

結論としては、「CIRAとRIRAはdeadlyです」ということだ。

次、2.36からはロイヤリストの組織についてで、これはいきなり各論で、全部で6ページくらいだ。扱われているのはLVF(既にただのギャングとしての実態しかなくなって久しい), UDA, UDA East Antrim Group (分派), UVF/RHCの各組織。UDAとUVFについては武装組織としてはもう終わりだという宣言がこの6月に出て(UVFは武装解除ステートメントを出した)、それから、この報告書の対象期間からは少し外れているが、9月上旬に武装解除についての報告が公式筋(IICD)からあったということも書かれている。

また、今年5月にColeraineでカトリックの男性たちがプロテスタントのモブに暴行を受け、1人死亡、1人意識不明の重態となった件についてもUDAについてのセクションで触れられている (2.41) が、UDAが組織としてトップから命令を下して行なったことではない、との結論だ。(なお、2.41の記述はあっさりしたものだが、それはこの事件での加害者の訴追に向けた動きが現在進められているからだろう。英国では事件報道は、法廷で何かが語られるまでは、控えられる。)

第3節は事件の統計。報道から受ける印象と、実際の数値とは開きがあるものだなあと思う。例えば「非主流派リパブリカンのパニッシュメント・シューティング」は、BBC NIでしょっちゅう報道されているような気がするのだが、リパブリカンによる発砲で負傷者が出たケースは実は「6ヶ月で20件」で、4年前のロイヤリストの「6ヶ月で60件超」などより全然少ない(なお、第22次報告書対象期間の半年間では、ロイヤリストの発砲はゼロ件。これはIMCが武装組織監視を開始してから初めて)。襲撃(暴行、assault)に至っては、リパブリカンによるものは5件、ロイヤリストによるものはその7倍以上の38件だ。単に数だけで比較すればロイヤリストのほうが凶暴、ということになるかもしれない。

しかし、ロイヤリストの暴力が、政治的暴力というより犯罪組織の抗争という性格であるのに対し(最も多くの死者を出していたとき、それは組織内部または組織間の殺し合いが多かった)、リパブリカン(非主流派)のは政治的意図を有した暴力であり、その対象は「対立組織の構成員」ではなく、警官だったり、場合によっては一般人だったりする。そして、「カトリックの警官を標的として狙う」という戦術は、数には表れないような深刻な影響をコミュニティに与える。警官の家に脅迫があり、中には転居を余儀なくされた家もあるとかいった報道も、BBC NIやベルファスト・テレグラフにある。

で、報告書は3.14でパラミリタリー活動についてのまとめをしていて、そこでは、今回の対象期間の半年における「殺人3件」は2007年3月から8月の期間以来の高い数値であること、リパブリカンの銃撃、ロイヤリストの襲撃(暴行)はそれぞれ急増していること、数値だけで見ればロイヤリストの暴力は倍増していること、そしてProvisional IRAは銃撃・暴行は行なっていないこと、などなどが箇条書きにされている。ここを読むのが前置の傾向をつかむ上では最も手っ取り早いだろう。

次の第4節は「リーダーシップ(指導部)」について。これは、シン・フェイン (Provisional IRA), PUP (UVF), UPRG (UDA) という「武装組織の政治部門」についての現況報告で、前のとあんまり変わってないから読むのは飛ばしてもいい。ただ、UDAが分派してUDA East Antrimというのができている件については、一応「含み」がどんなもんか見ておくべきなのかもしれない。(なんかぼやーんとしてるんだけどね。)

第5節の「警察と司法の権限」のところは、元々テーマ的に、IMCの報告書など読んでも何もわからないので飛ばしてOK。実際に何か特別なことが書かれているわけでもない。第6節の「その他」のところは、Paramilitaries and the Criminal Justice System in Northern Ireland と、Employment and other difficulties for former paramilitaries についての短い記述。「北アイルランド紛争」の後の社会という点についてのキーワードが散りばめられている感じ。

そのあとの付録部分は、「IMCとは何か」的な解説のために宛てられた部分と、北アイルランドおよびベルファスト市内の地域別デモグラフィー(カトリックとプロテスタントの比率)。最後のは、基本的に単なる数字の羅列なんだけど、宗派比率が1:99とか、眺めていると頭の中がもやもやしてくる。

以上。

追記:
Slugger:
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/latest-from-imc-report-former-provos-helping-dissidents/

※この記事は

2009年11月08日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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