kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2009年06月04日

「英国」を強調する日本における「ホメオパシー」の言語面からの検討、ならびに、その中の人が持っている「学位」について、そしてウェールズ公国(!)

4月29日に書いたエントリのアップデートをします:
2009年04月29日 「ロイヤル・アカデミー・オブ・なんとか」なる日本の学校と、「健康」分野における「英国」というブランド
http://nofrills.seesaa.net/article/118306622.html

このエントリは長いです。基本的には、「地下生活者の手遊び」さんの5月25日付のエントリ(URLは下記)、「呪術教団化するホメオパシー」のコメント欄に投稿したものの写しと、コメント欄などで提示されている点についての調べものです:
http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20090525/1243196897

「地下生活者の手遊び」さんの上記エントリは、前半では、18世紀から19世紀にかけての欧州での「医学」というコンテクストに、ドイツの医師ハーネマンの行なった「ホメオパシー」を位置づけてわかりやすく解説してくださっています。英語版ウィキペディアのハーネマンの項にある次の記述を、より詳しくしたような内容。
Hahnemann "recommended the use of fresh air, bed rest, proper diet, sunshine, public hygiene and numerous other beneficial measures at a time when many other physicians considered them of no value."


そして後半部分が「現代(の日本)におけるホメオパシー」について。そこでは4月29日の当ブログのエントリで扱った「ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー」なる専門学校の設立者である由井寅子さん(「日本ホメオパシー医学協会」の会長でもある)が書籍に書いておられる文章が検討されています。

ホメオパシーの根本を理解することは、ハーネマンを理解することです。しかし残念ながら、彼が本当に伝えたかったことは正確に伝えられていません。その理由として、一つには、各国語の翻訳書に問題があったことがあり、二つには、ケントの教えを中心にすえたクラシカル派によってハーネマンの教えが歪められ、ないがしろにされて来たからです。しかし近年、世界的にハーネマンの復興運動とも、真のホメオパシー復興運動とも言うべき運動が起っています。その運動のなかで、本書はそのさきがけとも呼べる記念碑的な著作となりました。まさに本書こそ、真のホメオパシーとはどうあるべきか?また、ハーネマンの真意はどこにあったのか? それを知るために必読の文献と言って差し支えないでしょう。

ホメオパシー出版-ホメオパシー・ルネサンス


この書籍の監訳者、つまり引用したまえがきを書いたのは由井寅子氏。

「クラシカル派によってハーネマンの教えが歪められ」という記述に注目にゃんな。

……略……


「ケントの教えを中心にすえたクラシカル派」なるものについて私はまったくわからないので、由井さんがおっしゃりたいことがこの引用部分からはっきりわかるわけではないのですが、後続の部分で「ハーネマンの真意」と表されているものについて、「教え」という日本語が使われていることに(「論」や「理論」、あるいは「方法論」、ちょっと方向性変えて「哲学」や「理念」、「考え」などではなく)、私も「えっ?」と思いました。

それが即「宗教」(あるいは「宗教めいた何か」)につながるかどうかという点については、日々「ことば」を相手にしている立場では保留しますが(もっと検討を加えてみなければ判断できない。実際に、非常にカジュアルな感じで、「ニュートンの論」と言ってしかるべきところを「ニュートンの教え」と言う、というケースはないわけではないので)、「宗教」という見かたは否定しません。むしろ、私の第一印象としては「非常に宗教めいている」といったところです。

そしてそれ以上に、「これは科学の態度ではない」ということについては全面的に同感です。

「地下生活者の手遊び」さんでは後続の部分で、この由井さんという方について、「ロイヤルアカデミーオブホメオパシー」のサイトの「学長紹介」から次の部分を引用しておられます。

2008年9月…英国認定ホメオパス連合(ARH)の学術大会に招聘され、「医原病と発達障害におけるホメオパシーのアプローチ」について、発表を行う。発表後、「ホメオパシーに対し、このように傑出した貢献を遂げた人は、由井会長以外考えられません。将来、由井会長の達成に見合うような人がでるかどうか見守るだけです。」とのコメントとともにARHから特別表彰を受ける。

ロイヤルアカデミーオブホメオパシー[RAHとは・学長紹介]



この点について、「英国認定ホメオパス連合(ARH)の権威は、英国内やホメ業界内で、どの程度あるのでしょうか?」という主旨のコメントが投稿されていたので、少し詳しく見てみたところ……というのがこのエントリ(「地下生活者の手遊び」さんにコメントで投稿したもの)の主旨です。

以下、まずは「地下生活者」さんのところに投稿したコメントの写し。

こんにちは。「英国認定ホメオパス連合(ARH)」について少し見てみました。

Alliance of Registered Homeopaths (ARH):
http://www.a-r-h.org/index.htm

About Usのリンクから、Who runs ARH? に行くと、Chairの方の欄に:
In the spring of 2001 Karin, together with five like-minded colleagues, formed the Alliance of Registered Homeopaths (ARH).

とあり、設立は非常に新しいということがわかります。

また、「英国認定ホメオパス連合」という日本語がかなりミスリーディングです。Alliance of Registered Homeopathsですから、区切るとしたら「英国認定」「ホメオパス連合」ではなく、「英国」(で活動している)「認定ホメオパス」(の)「連合」。(正確さを重視するなら、訳語は「英・認定ホメオパス連合」などとするのではないかと個人的には思います。)

「認定」という訳語も非常にミスリーディングです。原文では Registered です。ARHのサイトを見てみると:
http://www.a-r-h.org/join.htm
http://www.a-r-h.org/JoinARH/FullMembership.htm

これらは「登録」の要件の説明のページで、ARHのリストに掲載されている英国のホメオパシーの学校(college: 英国の場合は「大学」ではなく「専門学校、専修学校」が多い)で過程を修了した人や、既にホメオパスとしての仕事をしている人が「登録」でき、登録料金は年に£295(2006-07年)、さらに英国とアイルランドでは年額£44で保険をつけることもできる……といった説明です。(また、ARHのリストにない学校、英国外の学校を卒業した人も、一定の条件で登録はできるそうです。)

この「ARHのリスト」に、由井会長がロンドンに開いた学校、The Royal Academy of Homoeopathy (Japan) の名があります。(ただし、その学校のサイトにある学校名は、The Japan Royal Academy of Homoeopathyです。)
http://www.a-r-h.org/JoinARH/FullMembership/list.htm
http://www.homeopathy.ac/
http://www.rah-uk.com/

蛇足ながら、ARHの「登録(認定)ホメオパスを探す」のページで、CountryのところでJapanを指定しただけでSearchをクリックすると、日本での登録者一覧が閲覧できます。
http://www.a-r-h.org/FindMembers/find.php

なお、The Japan Royal Academy of Homoeopathyは、英国政府の認定を受けてはいます。URLが非常に長いので短縮しましたが、下記はOfsted(教育水準局; 少々ややこしいのですが教育省とは別の政府機関です)のAdult Learningのカテゴリのページです。
http://bit.ly/169oBZ

Adult Learningの教育機関でOfstedのリストにあるということは、「看板だけは学校」という状態ではなく教育を行なっている実態があるという意味ですが、それ以上の何かを意味するわけではないと思います。(子供の教育機関についてのOfsted認定はまた意味合いが違うのですが。)

ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシーは、王室とは縁もゆかりもないのに「ロイヤル」を名乗っているのが個人的には解せないのですが、一般的な「語学学校」などと同じく「学位 degree」を出しているわけではないので、「ディグリー・ミル(ディプロマ・ミル)」ではないです。ディグリー・ミル以前というか、「英国留学」がブランド化されているだけのような感じがします。(「だけ」というには、Royal Academyという名称はちょっと……と思いますが。)


ついでだから、ディプロマ・ミル云々に関してもう1点。

RAHの「学長紹介」から、「学位」っぽいものを抜書きすると:
http://www.homeopathy.ac/pro.html
◆Hon.Dr.Hom [ ホメオパシー名誉博士(Pioneer University)]
◆Ph.D.Hom [ ホメオパシー博士(International Medical University)]


"Hon.Dr.Hom" (ピリオドの直後のスペースくらい入れろというに) は、Honorary Doctorate Homeopathy、"Ph.D.Hom" はPhD of Homeopathyでしょう。第一印象は、名称からして「身内だけの学位」じゃないっすか、ってことなんですが、それぞれの大学名を検索してみると……。

Pioneer University
http://www.phau.org/PHAU/Pioneer_university.htm

これはどっからどう見ても「ふつうの大学」(オクスフォード大学とか、マンチェスター大学とか、東京大学とか、日本大学とかのような大学)ではないですね。About Usへ直行……。

http://www.phau.org/PHAU/About_US/Aboutus.htm
Pioneer University is the first International Open University and the fastest growing postgraduate institution in Homeopathy and other complementary medicines. ... Pioneer University is fully Accredited by Appointment to the Hon. President of the Grand Council of the SBC Antico Principato Di Seborga, Europe and co-ordinated by their Commercial Office - located in the Principality of Wales, UK. Pioneer University is certified by the SBC Education, Culture and Faith (Registration No.: 22) to offer Certificate, Diploma, Bachelor, Master and Doctorate programme in Homeopathic and Alternative Medical sciences. ...


ええと、まず固有名詞らしい International Open University ってのがわかんないんですが、それはとりあえず飛ばして、この記述からわかるのは「ホメオパシーなどの代替医療専門」ということ、「大学」として学位(ディプロマ、バチェラー、修士、博士)を出している根拠は、欧州のthe SBC Antico Principato Di Seborgaでの認可によるもので、ここの教育・文化・宗教省(か何か)で認可されている(登録番号22)――って、何でしょうかこの「アンティコ・プリンシパト・ディ・セボルガ」とは。イタリア語ですけど。

というわけで検索すると:
01 June 2006
Fake Degrees, Fraudulent Schemes: Scams Exposed. Widespread Damage To Seborga's Reputation
http://seborgatimes.blogspot.com/2006/06/fake-degrees-fraudulent-schemes-scams.html

これは、the Principality of Seborga(←さっきのイタリア語の固有名詞の英訳)の月刊広報の英語版のページのようです。この記事は、同年2月に「セボルガの大学? うーん、どうでしょう」という記事を出したところ大反響がありました、という内容で、「勝手にうちを名乗る大学の数々」の存在を細かく指摘したもの。エントリの末尾にそれら偽大学の一覧があります。Pioneer Universityの上述のURLは、この一覧の中にはありませんが。

そんなことより、このPrincipalityについて。さくっと検索して出てきたウィキペディア日本語版を参照すると、「公国と自称し独立宣言を行った地域である。ただし、外国の国家承認は全く受けていない」とのこと。さらに「イタリア政府とセボルガの間には何等の緊張もない。イタリアの法、医療サービス、通信、学校、その他すべての公共サービスがイタリアの他の地域同様に供給されている。住民はイタリアの行政サービスを受け、政治的権利を行使しており、地方税と(イタリアの)国税を納入している」とのこと。つまり真面目に「国家」と位置付けられるのかどうか、という点でものすごく疑問です。(「わが国は独立国家である」という信念や意気込みがどうこうというのではなく、単に手続き的に。)

【追記】「地下生活者の手遊び」さんんのコメント欄で、この「セボルガ公国」についてドキュメンタリーでご覧になったことがあるという「うさぎ林檎」さんに教えていただいたのですが、どうやら小さな村が村おこし的に『公国』を名乗っている状態のようです。ただし「公国」を名乗る歴史的な経緯はあるそうです。(だから本当に村おこしとして「なんとか国」と名乗って「なんちゃって通行手形」を出したりしているのとはちょっと違う。)【追記ここまで】

で、Pioneer Universityいわくこの「公国」のCommercial Officeがウェールズにある、ということですが……ちょっと待て。何て書いてある?
the Principality of Wales, UK

待て待て待て待て。The Principality of Walesは「歴史的な名称」です。

で、この「歴史的な名称」が現在のプロパーな地名として使われることはなく――「俗称」的には使われるし、ウェールズ民族主義ではプロパーなものとして使うのかもしれない。ウェールズの民族主義については私はまったくの門外漢だからよくわかんないけど――、その点「セボルガ公国」の「われわれは独立国家である」論も重なっているような気もしなくはないのだけど、つまりこれはだな……ええとなんだっけ、ツボりすぎて何を書こうと思ったのか忘れたからまあいいや……そうそう、セボルガ公国の公式サイトの英語版を見ても、「Commercial OfficeがUKのWalesにあります」みたいなことは書かれてなくて、よくわかりません。

これについては、これ以上調べる気も時間もないです。ちなみに「セボルガ公国駐日通商代表部」はこちら。(←URLに注目。「無料ホームページ」、infoseekです。)この「公国」を、一般的な意味で「公国」として扱えるかどうかには大きな疑問があるし、そのような「公国」の「大学」というものにどのような意味があるのかというと……まあとりあえず、一般的な大卒の人が持っている学位と同じ意味ではないですよね。

もうひとつの学位を出している、International Medical Universityは、マレーシアにまったく同じ名称の大学があることは確認できましたが、HomeopathyでのPhDを出すような大学ではなさそう(大学のサイトでPhDのところを参照)。

じゃあってんで、「"International Medical University" homeopathy」で検索すると、International Medical University of Natural Educationという「大学」が見つかります。ここは……
http://www.imune.net/index/home.html
IMUNE exists to offer educational resources in natural medicine. It is modelled on an "Open University" structure to provide access to a reservoir of natural medicine knowledge. IMUNE offers a broad spectrum of course syllabuses, examinations and qualifications to service the interests of all students interested in natural medicine.


これもPioneer Universityと同じく、Open Universityですね。しかもホメオパシー専門っぽい。

【追記】上の追記と同じく、「地下生活者の手遊び」さんんのコメント欄で「うさぎ林檎」さんに教えていただいたのですが、このInternational Medical University of Natural Educationは一応通信教育の大学で、学位(らしきもの: degreeとかdiplomaとかいう名称ではなくcertificateとかなので、その時点でよくわかりません)が「法律的な権威を持つのか持たないのか」については、FAQを見ても「もにゃもにゃした説明で」よくわからなかったそうです。しかもそのFAQ、HTMLじゃなくてPDFでやんの (IMUNE FAQS Qualifications.pdf っていうのをクリック)。うん、これは確かにもにゃもにゃしています。「一般的な学位としては通用しない」と考えるのが妥当だと思います。

私が上の大学の説明の「ウェールズ公国」(←そこかー、と自分でも思うんですが、the UK of GB and NIにはちょっとうるさいマニアなので)で笑い転げて力尽きてしまったために調べが及んでいなかった部分を調べていただき、ありがとうございました。>うさぎ林檎さん。【追記ここまで】

しかし、「ロイヤルアカデミーオブホメオパシー」ことThe Japan Royal Academy of Homeopathyといい、「International Medical University」ことInternational Medical University of Natural Educationといい、教育機関名を一部省略するのはなぜなんでしょう。「慶應義塾大学」を「慶応大学」と呼びならわすのとは違いますよね。「東京なんとか大学」を「東京大学」と言ってるみたいなことになってる。

それと、RAHの「学長紹介」で非常に気になる記述がもうひとつ。
2008年9月…英国国会(ウェストミンスター宮殿)にて行われたアサートン卿主催の晩餐会に招待され、スピーチを行う。


The Palace of Westminster(<「ウェストミンスター宮殿」)も歴史的な名称が固有名詞として現在も使われているだけで、「宮殿」の実態はありません。

ていうか「英国国会 the Houses of Parliament」という固有名詞を提示して場所を特定してあるのに、なぜわざわざ「ロイヤル」な意味合いのある「宮殿」を書き添えるのか、意味がわかりません。

それで、晩餐会主催の「朝ー頓狂」(<すごい変換なので、言語屋として残しておきたい)、もといアサートン卿は下記のURLの方でしょう。この方はLordだから上院に議席持ってるだろうし、そういう方が「ウェストミンスター・パレス」で何かをなさることは別にふつうなのですが(2006年のレセプションについての記事)、「宮殿の晩餐会」って言われると、「へぇー」って思いますわね。

それから、この方の紹介文(下記)にも過剰な「ロイヤル」っぷりが……。なお、このmrch.org.ukというサイト (Registration Consul of Homeopathy UK) については、私は詳細は見ていません。時間がないので。

Aaron Kenneth Ward-Atherton
Lord of Witley & Hurcott - Wocestershire, Knight of the Order of Saint.Stanislas
http://www.mrch.org.uk/2.html
※ページの下半分から。
Kenneth was educated in Birmingham and Liverpool, from 1978 - 83, he studied Homeopathic Medicine with nobel prize nominee Prof Reinhold Voll MD MSc in Stuttgart, and subsequently at the Royal London Homeopathic Hospital with the late Dr. Marjorie Blackie Physician to HM Queen Elizabeth. ...

He has been Patron of the Complementary Therapies unit at Christie Hospital NHS Trust Manchester since 2005, and represented the department at the recent visit in March 2007,of HRH The Prince of Wales and the Duchess of Cornwall. ...

コンマの使い方がグダグダすぎてよくわからないのですが、つまり、the Royal London Homeopathic Hospital(ここは正しい意味で「ロイヤル」な病院です。参考)で一緒に学んだ内科医がエリザベス女王のお医者さんだとか、マンチェスターにあるChristie Hospital NHS Trust (←病院名。「国立クリスティ病院」みたいな感じ。あくまでも「感じ」だけですが)の補完療法ユニットの後援者で、2007年3月に皇太子夫妻がその病院を訪問したときには代表者として応対したとか……医学に関係する者としてのレジュメに書くことではないと思います。まあ、医学者を名乗っているわけではなく、パトロンとして後援している貴族なのだけど。第一、これだけ王室王室と書いてあるのに、ご本人が英王室と関係があるのかないのかもわからない。(「俺の友達、北島三郎の飲み友達なんだぜ」+「俺、仕事で山本譲治に会ったことあるんだぜ」では、「俺」と北島ファミリーとの関係は立証できません。)

こんなことで、「英国は国家としてホメオパシーをアックアップしている」とか思われたら、別に困りはしないけど、いやだな、と思います。

それに、ホメオパシーだけじゃなく鍼灸とか漢方とかも同じカテゴリで扱われているのに、由井さんに関係する日本語のページにある文章ではそれが書かれていなくて、「ホメオパシーだけは特別」みたいに見えてるし。実際には、アサートン卿の経歴にだって、Chinese Medicine(漢方)への言及はあるんですけどね。(お名前で検索すると、Chinese Medical Institute and Registerのサイトがトップに来るくらいです。思うに、この卿は「西洋医学でないもの」の分野で幅広く活動している方で、ホメオパシーはその活動分野のひとつ、ということでは。あと、卿のファミリーネームはウォード=アサートンですね、「アサートン」だけではなく。)

(印象論ですが、卿の活動は、基本的には「西洋人の東洋趣味」だと思います。これでウォード=アサートン卿が若いころにヒッピーだったとかいうバックグラウンドがあれば、完璧に「そういうことですね」なんだけどな。)

しかし、ここまで見てきた、日本ホメオパシー医学協会の人たちによる一連の「ちょっとおかしな日本語化」は、個人的には、かなりあざといという印象を受けます。ある程度英語が使える人であれば誰でも、“自分にはわかるけれど「英語のできない」人たちには原文を見たとしてもわからないか、特に気にしないこと”、ってのはだいたい見当がつくでしょ。そういうところを突いているように見えるんです。うがちすぎかもしれないけど……誤誘導などするつもりのない、単なる「変な日本語化」(平凡な誤訳の類)なのかもしれませんが、由井さんの経歴と、「英国で」とか「英国が」とかの連発っぷりから察するに、こんな「誤訳」をするほど英語に不慣れとは思えないので。

さらに、何となく気が向いたので、日本語ページも検索対象に含めて同じキーワードで検索してみてみたら、こんなページが。

Homoeopathy TIMES[ホメオパシー・タイムス]
2007年8月18日 (土) 寅子先生、東奔西走
http://homoeopathy-times.cocolog-nifty.com/homoeopathic_selfcare/2007/08/post_a549.html
……由井先生のこの10年間のホメオパシーにおける活動に対して、レジストレーション・カウンシル・オブ・ホメオパシーUKからホメオパシーの修士号とパイオニア・ユニバーシティーからホメオパシー名誉博士号の授与も行われました。

……

授賞式は、同日夜に行われ、英国国民健康保険補完医療課 Aaron Ward-Atherton 卿(Lord of Witley & Hurcott)から授与されました。今回いただいた学位は次の2つです。

●Masters Degree in Homeopathy
 ホメオパシー修士号
 From Registration Consul of Homeopathy UK
●Honorary Doctorate Degree in Homeopathy
 ホメオパシー名誉博士号
 From Pioneer University

パイオニア・ユニバーシティーは、英国ウェールズのthe SBC Antico Prin-cipato di Seborgaのグランドカウンシルの名誉会長任命によって完全に認可され、SBC教育、文化、履行によって保証されており、ホメオパシーと大体医学科学におけるサーティフィケイト、ディプロマ、学士、修士、博士を提供しています。

「英国ウェールズのthe SBC Antico Prin-cipato di Seborgaのグランドカウンシルの名誉会長任命によって完全に認可され」の意味のわからなさはすごい。Seborgaはウェールズにあるわけではありません。

さらに、文中に「レジストレーション・カウンシル・オブ・ホメオパシーUK」なる組織名らしきものが出てきますが、ウェブ検索で出てくるのが1件だけという状態では、何かの誤記なのか何なのか、わかりません。でもおそらくは、この文章を書いた人が、Registration Consulの「コンスル」を「カウンシル」と間違えてしまったのでしょう。Registration Consulというのは、上で見たウォード=アサートン卿のプロフィールが掲載されているサイトにある名称です。

ちなみにConsulとは:
http://eow.alc.co.jp/consul/UTF-8/



追記:
ホメオパシー(などの代替医療)は、1960年代後半から再評価されたものです(→ウィキペディア英語版に記述あり、ソースつき)。ハーネマンの時代からずっと人々の間で大人気だったというわけではありません。

私は60年代末の当時を知る人から「代替医療」を含む「オルタナティヴ」なものについてちょっと話を聞いたことがあるのですが(立ち話で)、その人の知っている範囲では(&私が記憶している限りでは)、「カウンターカルチャー」のコンテクストで、「何か違うもの something different」が流行して「みんながはまった everyone was instantly into it」、という感じだったそうです。「とりあえずやってみようよ」的な。

60年代後半から70年代前半といえば、工業国では公害が深刻で、ひどい薬害(サリドマイドなど)が社会問題化し、またヒッピーの思想が広まっていたという背景があります。

ちょうどタイムリーなことに、3日のガーディアンに、その時代に「ホールフード」の店を立ち上げ、後に「ヴェジタリアン」食品でもヒットを出した企業家についての記事が出ています。(かなりおもしろい記事です。)

なお、英国では、元々はホメオパシーはハイソなもので(←19世紀の話)、そのころの一般庶民の生活といえば、『オリバー・ツイスト』のような状態。住宅街には下水もろくに整備されていないような。そういうところで、「衛生面に気をつけて、ゆっくりしていましょう」的な療法が「これはすごい」ということになったとして、何の不思議もありません。1960年代以降のはそれとは違い、「東洋趣味」というか「西洋近代文明万能論の否定」の潮流のなかのものです。

で、第二次大戦後、つまり現代の英国の医療制度ではホメオパシーには保険が利くようになっているのですが(それをめぐる攻防はまた別のお話)、下記の説明(ウィキペディア英語版、ソースあり)によると、イングランドではGP(体調が悪くなったときに最初に診察を受ける医師)がホメオパシー・レメディを処方する件数は、2005年から07年の間に40パーセント以上減り、ホメオパシー病院が閉鎖される事例も出てきているとのこと。一方でスコットランドではイングランドよりもホメオパシー・レメディが処方されることがずっと多いそうです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Regulation_and_prevalence_of_homeopathy#United_Kingdom

上記ウィキペディアにも「ソース」として示されているのですが、今年1月には「大学でのホメオパシー」が下火になってきているとの状況が報道されています。
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/education/article5614896.ece

あと、何となく検索してみたら2005年のデイリー・メイルにこんな記事がありました。内容もまとまっているし読みやすいので、メイルだけどリンクします。

Homeopathy - Undiluted Tosh!
by MICHAEL HANLON, Daily Mail
Last updated at 11:57 12 4?? 2005
http://www.dailymail.co.uk/health/article-344594/Homeopathy--Undiluted-Tosh.html

一部抜粋:
First, let's be clear about some terminology. There is no such thing as 'alternative medicine'. There is medicine which works, and medicine which does not. 'Medicine' which does not work is simply snake oil and fit only for the bin.

So where does homeopathy fit in and what do its practitioners claim?

In the late 18th Century, 'traditional' medicine was in a mess. After consultation with a 'doctor', patients - in reality victims - would be purged, burned, gassed and flayed in order to effect a cure. No wonder so many died.

Dr Hahnemann thought this was a nonsense and came up with a new theory. ...


つい最近、Financial Timesにも。これは、ちょっと上で参照したタイムズの記事とは逆方向の見方ですね。

Is a degree in homeopathy a sick joke?
By Richard Tomkins
Published: May 23 2009 01:32
http://www.ft.com/cms/s/2/e2772e34-45a0-11de-b6c8-00144feabdc0.html

納税者の立場から、税金が投じられている大学のコースについて検討を加えている団体があるという書き出しの記事ですが(実際、かなり馬鹿馬鹿しいコースがあることは確か)、本題はUCLのDavid Colquhoun教授が「反科学的」としてcomplementary and alternative medicineでの学位というものに厳しく反対している、という件。
In fact, says Colquhoun, his position is quite different from that of the lobby group (注:the lobby groupとは、「納税者の立場から」という団体のこと). "What they didn't do, in my view, was to distinguish between the degrees that are in honest, if not very intellectual, subjects and those that are based on new-age gobbledygook. If it's thought that the only way to get more plumbers is to offer a BSc in plumbing, I wouldn't really object. Plumbing, golf management and so on are quite honest occupations - not very intellectual, perhaps, and no one's going to mistake them for nuclear physics, but they're legitimate occupations and they do what they say on the label. The degrees I object to are those that are in subjects that aren't true, and that's largely restricted to various forms of quackery."
つまり教授は、代替医療について、new-age gobbledygook(ニューエイジ系のわけのわからない表現)に基づいたものだ、真実を扱っているものではないと述べています。

記事は、このような批判があるにもかかわらず、実際には、この9月からの大学の学位取得 (BSc) のコースで42の大学が合計84の代替医療(鍼灸も含む)を教えることになる(それらの大学の多くが、1992年の学制改革でUniversityとなった、元Polytechniqueである)という件についての説明を挟んで、最近の「代替医療の人気」をEnlightmentならぬEndarkmentというコンテクストで語っています。



そういえば、と思い出したこと。

昨年7月、旧ユーゴ戦犯法廷で逮捕状が出されていたラドヴァン・カラジッチがつかまったとき、彼が「代替医療の先生」に化けていたこと、講演会などをしていたことが報道されました。
http://nofrills.seesaa.net/article/103438678.html

「代替療法のダビッチ先生」として活動していたカラジッチも、自身の「権威付け」のために、「学位」とか「米国で学んだ」とかいったことをやっていました。まあ、彼の場合は持っていると言っていた「学位」は持っておらず、言っていた通りに米国にいた事実もないという状態で、つまりすべてが単なる「嘘」だったのですが。

いずれにせよ、「代替療法」は何らかの「本場」性を有した「権威」とのセットでお膳立てされることが多いみたいですね。そのときに、西洋でなら「インドで」とか「中国で」が出てくるのかもしれませんが、日本だと「英国で」、ということらしい。

英国がそんなにすばらしければ、「子供が太りすぎている」のが社会問題化して、テレビ番組でおなじみのシェフが給食改善運動を始めたりしてないと思うんですけど。

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TVバラエティ, ジェイミー・オリヴァー
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※この記事は

2009年06月04日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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スコットランドの給食が酷すぎると嘆く9歳少女のブログが話題に(画像あり)
Excerpt: 1 :番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です:2012/05/12(土) 12:32:33.89 ID:2TwONjmV0 ?PLT(12001) ポイント特典わびしい給食を英少女が嘆く、ブロ..
Weblog: ニュー速嫌儲板 【ノンアフィ】
Tracked: 2012-05-13 06:02





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼