kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2009年01月22日

イヴニング・スタンダードが「外資」系になることが決定。

ロンドンの地域新聞、The Evening Standard (以下「ES」) の売却が本決まりになった。売主はthe Daily Mail & General Trust (DMGT)、つまりデイリー・メイルのメディアグループ、買い手はBBCthe Sunいわく「元KGBのスパイ」(米国のUSJやNYTもそう呼んでいる)、ガーディアンいわく「ロシアのオリガルヒ」であるところのアレクサンダー・レベデフ(アレクサンドル・レベデフ; Alexander Lebedev)とその息子による持株会社、売却価格は£1で(つまり「無償ではない」という意味でしかない名目上の価格)、ESの株の75.1パーセントが、DMGTからレベデフに譲渡される。

※この件についての記事はGoogle Newsで探すのが手っ取り早そうです。
http://news.google.co.uk/news?ned=uk&hl=en&ned=uk&scoring=n&q=%22evening+standard%22+lebedev&ie=UTF-8

ESの編集長からの告知:
New owner and new future for the Evening Standard
Evening Standard
21.01.09
http://www.thisislondon.co.uk/standard/article-23624766-details/New%20owner%20and%20new%20future%20for%20the%20Evening%20Standard/article.do

前半はいかにもプレスリリース調で読んでいて欠伸が出る定型文だが、後半が興味深い。行間に込められた感情が響く。へっぽこな日本語にするより原文で見ていただきたいが、ご参考までに。

まず、イヴニング・スタンダードの181年の歴史のこの最新の章の背景をご理解いただきたい。(デイリー・)メイル系の各紙やメトロ紙、英国で3番目に大きな地方紙チェーンを所有するロザミア家が、エクスプレス・グループ【注:別のメディア・グループ】から、ロンドン唯一の夕刊紙であるスタンダード紙の全面的支配を得るという長らくの願いをかなえたのは、1985年だった。スタンダード紙の報道に巨額の投資をしたロザミア家のもと、スタンダード紙は順風満帆で、フリート・ストリート【注:ロンドンのメディア街】で最も優れた書き手の何人かを雇い、首都の政治的、文化的、経済的生活について卓越すると同時に影響力のある報道を行なっているとの評判を維持してきた。

しかしながら、近年はスタンダード紙の求人・自動車・不動産広告が――これがこの新聞の主要な収益源のひとつであるが――インターネットに流れるようになり、読者の習慣も変わり、ロンドンの人口動勢も代わり、スタンダード紙は無視できないほどの財務上の損失を出すようになり始めた。銀行からは何度もスタンダード紙を売却するようにとアドバイスされていたが、DMGT【注:ロザミア家のメディア・グループ。デイリー・メイル】 はスタンダード紙を大いにサポートし続けた。

2年前に、ルパート・マードックのニューズ・コーポレーションが、「ロンドン・ペーパー」という無料新聞を創刊したが、これはスタンダード紙とその無料配布姉妹紙であるライト紙の部数を落とそうと計算してのものだった。ロンドン・ペーパーによるニューズ・コーポレーションの現在までの損失は、4000万ポンドほどと考えられている。

アレクサンドル・レベデフが、4代ロザミア子爵のジョナサン・ハームズワースに、スタンダード紙への興味を示して最初に連絡を取ったのは、18ヶ月前であった。ロザミア卿とDMGTは売却に乗り気ではなかった。

しかし、景気後退がじわじわと進み、英国の新聞すべてが経済的に厳しいプレッシャーを受けるなか、DMGTがスタンダード紙の将来を確実にするために必要とされる投資を無期限で供給することはできない、ということがはっきりした。

また、もしスタンダード紙が新たな資金を確保できない場合は、廃刊という可能性が非常に現実的なものになる、ということも徐々に明らかになった。

このような背景があって、レベデフ側とDMGTとの交渉が開始された。この2週間、両者はスタンダード紙の編集上の信用性と、スタッフの利益の双方が守られるということを確実にすることに集中してきた。


というわけで、「オーナーは変わるが基本的な部分は変わりません」という宣言(プラス、「マードックの野郎!」という叫び)が出ているのだが、DMGTも保有株をすべて手放すわけではなく、今後もESとの関係を続けていくとのことで、新聞の傾向(右翼)は基本的にはあんまり変わらないのではないかと思う。新社主はこの凋落しつつある新聞のてこ入れとして編集長を変える方針らしく(ファッション&ライフスタイル誌の『タトラー Tatler』で仕事をしていた人の名前が挙がっている。記事リンクさぼりますが)、ということは、現編集長のPaul Dacreの「断固として保守党支持」の色は薄れるのではないかという観測をガーディアンはちょっと書いている――まあ、メイルに関連する話でガーディアンを参照するともれなく「うはははは」となります、ということだが。ガーディアンがこの買収話をスクープしたことでDMGTサイドではちょっといろいろあったようだし。

しかしいずれにせよ、ロンドンの看板ともいえる新聞が、UKのガチ右翼(デイリー・メイル)から、ロシアの富豪に譲渡されるのは、チェルシーFC(ローマン・アブラモヴィッチ……今週のサンデー・タイムズが何か食わされたみたいですが)のころなら「絶好調のロシア経済」みたいに語られたのかもしれないが(実際、ロシア人が英国の新聞を所有するのはこれが初なのだそうだけど)、2008年9月以降の米国発の金融危機の荒波が、「ケルトの虎」と呼ばれたアイルランドをボコボコにしたあと、英国経済を本格的に削り始めているらしい今日この頃ではそういう感じでもない(そもそも「ロシア経済」が金融危機の影響を受けなかったわけではないし)。

むしろ、メディア(マスコミ)全体を覆うムードの中で――具体的には、民放テレビ局の「チャンネル4」の窮状(C4は現在、チャンネル5との合併の話まで出ている)、同じく民放の「ITV」の窮状(ITVはしばらく前から地方局のリストラの話が盛ん)、the Independentなどを出しているUKとアイルランドのメディア企業(インディ自体は常に赤字で収益源はthe Belfast Telegraph)の社主であるアイルランドの大富豪、Sir Anthony O'Reilly(1932年生まれだから英国臣民でもあり、アイルランド人でもSirの称号つき)がWaterford Wedgewoodの破綻で大損失をこうむったこと(WWの一部はアイルランド成分でできています……Waterfordのクリスタルガラスがアイルランドなので)、といった話が次々と出てくる環境、プラス、英国に限らない「メディア不況」(NYTがメキシコの富豪にとか、いろいろあります)――、こういう中で見ると、「ロンドンの新聞といえば」という存在であるESが「外資になる」ことの意味って……なんだろう。(引っ張っておいてすみません。わかりません。^^;) 個人的には「えええええ」という感覚はかなりある。特に売却価格が名目上のもの(£1)ということには、「そこまで来ていたのか」という。主要な問題は、広告収入の減少(ESの収益の柱だった「地域に根ざした広告」の出稿が激減していること)にあるとのことで、それを打開するのは今は相当大変なのではないかとも。

ES新社主のアレクサンドル・レベデフは1959年生まれ。2008年5月の『フォーブズ』誌の「世界の富豪」で358位に入ったロシアの富豪で、アエロフロートの3分の1を持っているほか、ロシアの数少ない独立した新聞のひとつである『ノヴァヤ・ガゼータ Novaya Gazeta』の共同オーナーのひとりである――と書くより、アンナ・ポリトコフスカヤが殺されるまで仕事の場としていた新聞を、ミハイル・ゴルバチョフと共同で支えていて、ポリトコフスカヤ殺害の犯人に結びつく情報に巨額の懸賞金を出していた人物、と書くほうがわかりやすいかもしれない(わかりにくくなるかもしれないけど)。

また、2003年のロシア下院選挙でRodina党の(たぶん)比例代表で当選し、一時与党(つまりプーチンの)統一ロシアの会派に行くも、ロディナが社会主義連合のFair Russiaに加わったときにロディナに戻り、現在はそちらの幹部になっている。キエフ(ウクライナ)でのチェーホフ劇場のプロジェクト(ケヴィン・スペイシーやジョン・マルコヴィッチが関係している)にもパトロン的な立場で関わっているらしい。

インテリゲンチャの家に生まれた彼は「モスクワのエリート」で専門は経済。80年代から「外務省職員」(経済アタシェ)としてロンドンに赴任し(つまりKGB)、1992年に中佐として退役、その後投資会社を設立し、つぶれかけていた銀行を買って再生させた。以後、その銀行を中核に事業を展開している。
http://en.wikipedia.org/wiki/Alexander_Lebedev

レベデフはES買収にあたってロンドンに持株会社をつくり、ロンドン在住の28歳の息子を社長にして(うは)、個人的な友人でもある華のある人々(ミハイル・ゴルバチョフとかトニー・ブレアとか)も巻き込んで、もっと若い層にアピールする紙面づくりを目指すとかなんとかいう話を、ガーディアンは書いている。
http://www.guardian.co.uk/media/2009/jan/21/alexander-lebedev-london-evening-standard

あと、BBCにこんな小ねたが。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7841891.stm
He has previously revealed that he used the paper to find out information when he was a young spy based in London.

レベデフは、ロンドンに拠点を置く若きスパイだったころに、情報を探すためにこの新聞を使っていた、と以前話していた。


レベデフがKGBであれ何であれ、ロンドンといえばES、定番すぎて珍しくもないような気が。フレデリック・フォーサイスの小説『戦争の犬たち』でも、準備段階でキャット・シャノンが呼びよせた欧州大陸の傭兵の滞在場所を探すのにこの新聞のクラシファイドを使ってたりするし。

しかし、ベルリンの壁が壊された1989年から20年、ロンドンの保守新聞がロシア人の経営になるとは。

※この記事は

2009年01月22日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 15:00 | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼