kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2008年11月06日

今月から義務化される英国での「留学生の指紋押捺」について

今月から義務化される英国での「留学生の指紋押捺」について、BBCに解説記事が出ています。

※この件に関しては、このエントリの末尾に「リンク集」を置いておくので、各自ご参照ください。

英国内での「指紋押捺」は、11月25日以降にヴィザの延長手続を申請する人たちから始まります。(日本国内で申請するときはもう始まっているんですよね……違ってたらコメント欄で指摘してください。)

Foreign students fingerprint fear
Page last updated at 00:30 GMT, Thursday, 6 November 2008
By Sean Coughlan
BBC News education reporter
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/education/7708990.stm

The Home Office's tightening of border controls, set out earlier this year, will include the requirement that "we check and record the fingerprints of any applicants applying for a student visa".

"All students allowed to come here will need to obtain a biometric identity card, so we know exactly who they are and what they are entitled to do."


BBCのこの解説記事は、英国人やEU国籍の学生に比べて高い学費を納める「外国人留学生 overseas studentes」が、英国の大学にとっていかに重要な「収入源」になっているかを前提に、指紋押捺を含む入国管理新制度の導入で留学生が減るのではないかという懸念が大学側にあること、生体認証登録ができる設備のある施設が、UK全体で6箇所しかないこと(んで、それがどこにあるのかを内務省のヴィザ関連の説明のページで確認しようとしても、簡単には見つかりません。たぶん仕様です……というかたぶんページ内容の更新がまだなのだろうと思います)、手続の予約ができない(らしい)ので、列に並ぶなど時間がかかるのではないかということ(クロイドンの行列……)、などが書かれています。

UKでは、何年か前に――調べてみたら2005年1月1日ですから3年以上前ですが――、政府に登録していない語学学校などの学生には、学生ヴィザを出さない、という制度変更が行なわれています。しかし、このBBC記事によると、その後もインチキ学校(「ヴィザ取り学校」というか)は消えず、この3年間で約300の学校がインチキだと判明しているそうです。
Almost 300 bogus colleges have been uncovered in the past three years.


「制度があっても充分に機能していない、それがブリティッシュネス」……ということなのかどうか、私は知りません。知りませんよ、ええ。

BBC記事には、"The changing rules for overseas students are part of a 'clamp down on bogus students', announced by the Home Office, which will see colleges having to hold a licence from the UK Border Agency." って書いてあるんですから。from the UK Border Agency の部分が未来を表すwillを導いているのだとしても、2005年から「留学先の教育機関が『教育機関の登録簿(Register of Education and Training Providers/今回新たに英国教育省によリ設置)』に登録されていることが必須条件」になっているのだから、話がよくわかりません。

(そもそも「ブレアの行革」後の英国の行政機構の改組が頻繁すぎて、正直ついていけてません。1年で消える部署とかあるし、組織名も「なんとか, かんとか and なんとか for なんとか」みたいなふうになってて、覚えられないっす……。)

BBC記事には、教育機関として設立されているのに授業の実態がなく、単にヴィザ発給を行なっているだけの「ニセ学校」がある、といったことが、今さらのように、記事の地の文に書かれているのですが(ホームオフィスのコメントではなく)、そこが現在完了形なので (There have been widespread concerns ...) いつの話なのかわかりません。2005年の制度変更(登録機関じゃないとヴィザ出しません、っていうの)は、それをターゲットにしたものだったでしょう。それとも何ですか、これは陰謀論ホイホイですか。「英当局はビッグブラザー社会を実現する口実として、ニセ学校を泳がせているんだよ!」みたいな。(←冗談です。冗談として書いています。私が本心からこういう考えを抱いているとは思わないでください。)

閑話休題。ともあれ、英教育省(Department for Education and Skills) の管轄だった教育機関登録簿の管理が、来年3月から、the UK Border Agency (旧IND、だったと思う。つまりイミグレ) の管轄になる、ということだと思います。BBC記事を素直に読めば。

そして、来年9月からはさらに規則が厳格化され、学生の出席状況について何か問題があれば、教育機関(大学および専門学校)がUK Border Agency(つまりイミグレ)に報告することが、事実上義務化されます――これを公式には a "sponsor management system" と呼びます。

はい、そこ、気軽に「ジョージ・オーウェルの予言は当たった」とか言うんじゃありません。
The Newspeak term for the English language is Oldspeak. Oldspeak is intended to have been completely eclipsed by Newspeak before 2050.

http://en.wikipedia.org/wiki/Newspeak


で、先日「英国のリセッション」に関連した記事のコメント欄で、「不況の原因が『外国人』に求められる」という現象ないし事象について、読者さんと私の間で少しやりとりがあったのですが、私もまだちょっとどういうことか把握できていないのですけれども、内務省の、つまりイミグレーションをめぐる「制限強化」の政策と、既にずっと前から産業空洞化している産業衰退地域(ストーク・オン・トレントなど)での極右、特にBNPの伸張や、「移民が多い地域」でのBNPの伸張(→今年5月の地方選挙を参照)とに関連があるかどうか、正直、まだわかりません。

コメント欄でトピックとなった「イミグラントの数を制限」という発言の主、労働党のフィル・ウーラス議員(内務省の閣外大臣でもある)は、バックグラウンドとしてはガチの左翼(労組)で、かつてはAnti Nazi Leagueの活動家だった人です。選挙区は、2001年に大規模な「人種暴動」が発生したオールダム東で、この選挙区では2001年の総選挙でBNPが立候補の供託金を没収されない(つまり「泡沫政党ではない」)レベルの得票を記録しています。

この推測が当たっていないことを私は祈りますが、これらのことから、いわば「学生時代にナイーヴに移民排斥に反対していた」人物が、自分の足元で「移民排斥論のBNPが得票を伸ばした」ことに並々ならぬ脅威を感じ、「イミグレーション」というものを「冷静に」考えてみた結果が、「イミグラントの数を制限すべき」という発言だったのではないかと私は考えています。おそらく彼は、学生時代(ANLにいた時代)に真面目に「移民問題」を検討したことがなく、それでいて「移民排斥」に反対していたのでしょう。空疎なことに。

しかも前回極右勢力が伸張していた80年代とは違い、今は「EU域内からの移住者や出稼ぎ労働者」を「減らす」ことは、システム上できない。EUが拡大すれば拡大するほど、「移住者や出稼ぎ労働者」は増えるだろう、という慢性的恐怖(フォビア)が、どの程度かはわからないけれども、英国にはある。じゃあユーロに加わるか、EUを離脱するかという大きな方向転換がメインストリームの政治で検討されていてもよさそうなのだけれども、そういう気配はない。そんなときに「我が国の雇用に深刻な影響を及ぼすイミグラント」に安易な注目が向けられている――フィル・ウーラスの態度はそういうものではないかと、私には思われます。当たっているか、的外れなのかはわかりません。

で、恐ろしいことに、そういう人物が内務省のミニスター(閣外大臣)である、というのが、現在の労働党政権です。(「1968年」をリアルな何かとしているような、本心から左翼の人たちが、「ゴードン・ブラウンやジャック・ストローは、かつて信じていたものを今は信じていない」と嘆いていたりしますが。)

そして、上記のような、いわば「経済的脅威としての(EU内・EU域外からの)イミグラント」というストーリーに、内務省独自の(といってよいと思いますが)「国家安全保障上の脅威としてのイミグラント」というのが重ねあわされているところに、「学生」の存在があります。

日本での「テロ対策強化のための『外国人』の指紋押捺義務化」について、「日本で『テロ』と呼ばれうるものを実行したのは、地下鉄サリンであれ爆弾であれ、日本人だったのに」という反論が即座に可能であるのと少し似ていますが、英国の「テロ」で「外国人」によるものは――私も全部を見ているわけではないので正確に断言できるわけではありませんが――、多いわけではありません。

でも、近年のhigh profileな「テロ事件」で「外国人」が実行犯である事件というのはあり、さらに「英国を拠点とする外国人が米国で計画」といったケースもあります。

エントリが長くなりすぎてポイントがぶれるので、その話は別のエントリにします。
→書きました:
http://nofrills.seesaa.net/article/109245682.html



【リンク集】
留学の計画がある方、学生ヴィザの延長をしたい方などは、各自、下記ページなどをご確認ください。ご家族にも基本的なことは知らせておいてください。

ビザ情報と就労についてのアドバイス@ブリティッシュ・カウンシル
http://www.britishcouncil.org/jp/japan-educationuk-immigration-and-work.htm

ビザ情報@英国大使館
http://ukinjapan.fco.gov.uk/ja/visas/

英国ビザ申請センター
http://www.vfs-uk-jp.com/japan/index.aspx

イギリス留学 学生ビザ情報 @マイナビ留学
http://ryugaku.mynavi.jp/uk/visa.html

Visa application guidance > Students (INF 5) @UK Border Agency (Home Office)
http://www.ukvisas.gov.uk/en/howtoapply/infs/inf5students

UK IMMIGRATION NEWS@英イミグレ関連専門家のサイト
http://www.migrationexpert.com/uk/Visa/uk_immigration_news.asp
※とてもよくまとまっていて見やすいです。

※この記事は

2008年11月06日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:30 | Comment(7) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
クロイドンの行列、懐かしいですね。魔法瓶にあったかい紅茶を入れていけとか、マニュアルが出回りましたっけ(私自身は残念なことに(?)、一度も行ったことがないですが)

インチキビザ取り学校は、どんなに規制を強化してもなくならないでしょうね。それこそ、魚心が有るから水心があるのであって。
Posted by ヒナキ at 2008年11月07日 13:43
今の内務省のポリシー見てると、war on bogus schoolsが宣言されてるんじゃないかと思います。

ここまで「厳しく」して、それでいて「英国への留学」が魅力あるものであり続けるという自信の根拠が、正直わかりません。Universityを増やした結果がこれかい、という大学の財政状況といい……ブレアの "Education" 連発演説が懐かしいですね。
Posted by nofrills at 2008年11月07日 22:05
留学生話が突然大ネタに(笑)
とりあえず、extension用に指紋を取って頂ける6か所のセンターは、
> Croydon, Sheffield, Liverpool, Birmingham, Cardiff, and Glasgow
http://www.ukba.homeoffice.gov.uk/studyingintheuk/extending/idcardstudent/

にあるそうです。所在情報はといえば、当然のように別ページに(しかもこちらには、どこにもfingerprintsと書いてない(笑))。
http://www.ukba.homeoffice.gov.uk/contact/contactspage/peos/

確かポイント制のtier2(技能労働者)と4(学生)と5(短期の人とか)の申請には、スポンサー(受け入れ先)が必要なんですけど、スポンサーと認められるためにはライセンスが必要で、それを発行してるのがUKBA。一方、おそらく教育機関が登録云々というのは、単に教育機関としてのライセンスだろうと思います。去年から、教育を所管する省庁が19歳未満(DCSF)と19歳以上(DIUS)だかにわかれてますが、ニセ学校絡みだと後者が持ってそう。さしずめ、教育機関のライセンスがないとスポンサーのライセンスを取れない、とかではないかと(ほんとにライセンス好きですよね>イギリス)。
で、2005年から厳しくなってるはずの制度が全然効いてないというのは、制度と監視する責任者を設けても、人手はむしろ減らすために実地チェックができなくて結局グダグダに、みたいな、ここしばらくのイギリスでは全く珍しくない話に行き着く予感が。

本体の移民問題については、また荒らしまがいになっちゃうので控えます(笑)。
Posted by hh at 2008年11月08日 11:54
hhさん、「ネ申」と呼ばせてください。

言われてようやく「それだー、ポイント制だー」と気付いた私は、「サラ・ペイリン」と呼ばれてもいいです。

> 人手はむしろ減らすために実地チェックができなくて結局グダグダに、みたいな、ここしばらくのイギリスでは全く珍しくない話に行き着く予感が。

2秒ほどで、ヒースローのターミナル5とか、ホームオフィスの相次ぐdata lossとか(もはやメディアもろくに報道しなくなってきた感が)。「盗まれた」とか「クラッキングの被害にあった」とかではなく、役所が管理する個人情報が入ったUSBメモリがそのへんに落ちてたとか、送付作業中にディスクがどっか行っちゃったとか、しかもディスクが暗号化されてなかったとか、いやになるくらい具体例を思い浮かべることができます。

そこで現場のマニュアルなどで対処しないで、法律を変えて対処しようとするのはやめてほしいです。

フィル・ウーラスについては、書きたいことがおありになれば関連する範囲でどうぞご遠慮なく。
Posted by nofrills at 2008年11月08日 20:11
んー、ではお言葉に甘えて。
正直なところ、前回お邪魔した時の書き込みは説明もなく煽りすぎだったかなと反省しております。少なくとも問題となったTimesのインタビューで彼が主張してる表面上の内容は、要するに「不法は不法、合法は合法としてきっちり線引きをしよう」、というもので、これ自体は基本的に今のヨーロッパ標準の枠内なんですよね。で、既に合法的に国内に居る人たちに対する差別とかいわれなき非難とかはやめよう、とか、宗教差別はやめよう、とかいうのも至極(気持ち悪いぐらい)真っ当。
ただ、tnfukさんも以前同様の趣旨のことをおっしゃってたと思いますが、やっぱり「移民」というタームは、どこかで「よそ者」と同義になる瞬間があって、とたんに合法だろうが違法だろうが、政治難民だろうが経済難民だろうが、いろんな層をひとくくりにしてしまう。これは、政府の恣意的な混同以前に、国民の間にある広がりをもって根強くある「感じ」によるところも相当大きいと思います(だからこそ、telegraphとかdaily mailみたいな屑新聞が煽る・売れるような)。
例えば、今回の彼の直接の失言である「移民入れすぎで人口7000万越えはいたしません!!」(多分昨年10月の人口推計あたりからの流れで、現在のペースで移民が増えれば、今後20年で到達)という物言い。出来もしない約束であるという批判もさりながら、少なくとも公式に把握されてる限りでこの5年で急増したポーランド人を念頭に置かずに聞くことが難しい言説なわけです。これと、「やっぱり移民じゃなくてイギリス人を雇用すべきでしょ」、という物言いを併用すると、EU法上もイギリスの入管制度上も、正当な手続きで働きに来てる人々は、しかしやっぱりイギリス人の雇用を奪ってるんです、という言説になってしまう。政府はこれまで基本的に逆の説明をしてきたにもかかわらず、また、ほぼ間違いなくこれから雇用が悪くなるであろうこのタイミングで。
しかも、彼のいう「イギリス人」というのが、特定の地域では白人よりむしろアジア系@元移民向けの揉み手の道具として発語されてるところがますますいやらしい。正確に把握してる自信はないですが、アジア系が自分より弱い立場の現役移民(、避難民、あるいは西インド諸島系移民)に不満のはけ口を求めるという構図がどうも成立しつつあって(BNPはその辺に付け込んでるわけですよね)、彼は結果的にそれを煽りかねないことを平気で言ってる。それも、どうも経歴から考えて、スピンの疑いが強い。

もちろん、自国の労働者の失業悪化を食い止めなければ、というのはよくわかるんです。ことここに至る経緯には各種突っ込みどころがあるとはいえ、働き口もなく、澱になって溜まってしまった揚句、貧困から犯罪に流れていったりとか社会保障制度のお荷物に、みたいな自国民が増えるのは経済的にも財政的にもできる限り避けたいだろうし。ブラウンもすでに去年、イギリス人に優先的に仕事をとかのたまってしばらく叩かれてましたが(まさに、EUからの人々に対する差別でEU法違反だろ!!と)、Home Officeも警察界隈のちょっとおかしい人たちは別として、彼にそこまでの底意というか、「右傾化」みたいな要素はそんなに感じられないんですよね。ただ、違う選択があり得たにも関わらず、結果的に東欧から予想をはるかに上回るポーランド人を呼び込んでしまったのは現政権の責任なわけで、これに対する国民の反発が予想以上に強かったので、選挙用にわざわざ鉄砲玉を起用してみました、というのは、やっぱりちょっとあざとすぎやしないかと。

あー、やっぱり長くなってしまった。すみません。
Posted by hh at 2008年11月11日 02:55
> どうも経歴から考えて、スピンの疑いが強い。

私もその点、まったく同感です。それゆえ、彼の言葉の使い方は気にかかるんですよね。タームとしての「移民」を、一般語としての「移民」と混同されることの危険をまるで考慮していないように見えたので。そして、フィル・ウーラスはそういうことに気付かないようなバックグラウンドの持ち主ではない。というか、マイケル・ハワードの保守党が2005年の選挙で持ち出した「immigration制限はracismではない」とかいうキャッチフレーズを、労働党が自分たちのものにしたのかな、という気も……。

> 彼のいう「イギリス人」というのが、特定の地域では白人よりむしろアジア系@元移民向けの揉み手の道具として発語されてるところがますますいやらしい。

ああ、これありますね。British valueの名にかけて、inclusiveなsocietyであるBritainの国民の皆様! みたいなの。

ゴードン・ブラウン政権になって、何ていうのかな、イデオロギー的というか、Britainとしての「イズム」を煽る方向に動いているような気が強くしています。むろん、それは「白人の国民国家」の「イズム」ではないのだけれども(例えば、あの無茶苦茶刺激的な映画『Hunger』を撮ったスティーヴ・マクイーンが「黒人」であることに注目して書かれた記事は私が見た限りでは皆無で、単にBritish film directorとかLondon-based artistという扱いです。1970年代のような「アイリッシュへの憎悪」を明示しないまでも隠さないような記事であっても)、「英国 Britain」というvalueを「守らねばならない」という方向。

ポーランドからの建設作業員さんたちはすでにかなり英国を離れていると聞いていますが、それを調べようと思ったら、12-13 April 2002のワルシャワでのコンファレンスでのペーパーが見つかりました。古いものなのですが、ちょっと興味深いので。

Migrant Polish Workers in London: Mobility, Labour Markets and the Prospects for Democratic Development
http://www.case.com.pl/dyn/servFile.php?plik_id=71598
※PDFです。

CASEというシンクタンクのサイトにあり、筆者はBill Jordanさん。3ページ目に、「ロンドンにいる若い世代のポーランド人は、migrationとみなされるべきではなく、グローバライゼーションの時代の経済流動性の一種だとみなされるべきだと考えている。本稿ではその点を検討したい」とあります。

ちょっと話がずれているかもしれませんが、取り急ぎこんなところで。
Posted by nofrills at 2008年11月11日 20:03
たしかに、ウーラス発言はまるで保守党のバリエーション(笑)。ただ、政府自体は、いまのところまだ踏みとどまってるみたいですね。House of Lordsの数量制限案も、一応突っぱねてますし。
Brown rejects cap on immigration recommended by peers (Times Online, April 1, 2008)
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/politics/article3660392.ece
だからこそ、新任の鉄砲玉にもとりあえず猿ぐつわ(笑)をかますポーズが必要なわけですが。

>British valueの名にかけて、inclusiveなsocietyであるBritainの国民の皆様! みたいなの。
冗談抜きで、意識調査では「多様性が大事だからいろんな人が来てOK」みたいな回答が結構多く出るとか(これもたしかipsos mori)。実態がどのようなものかは、no frillsさんがよくご存じだと思いますが。
ちなみに上記の"Hunger"の監督の件は、公式の場で肌の色を云々するのが人種差別やら宗教差別やらとの兼ね合いで結構リスキーな雰囲気(差別禁止法に抵触、とまでいかなくとも、間違ったメッセージとして受け取られかねない)も影響しているような。政治的な正しさでいえば肌の色よりまだしも出身国・地域を云々する方が無難、というか。
もちろん、おっしゃるところの「アイリッシュへの憎悪」は、色の違いに基づくわかりやすい差別とは質的に異なる、何か人間のもっと暗い部分の表れなのかな、とは漠然と思いますが。
また、Wikiによれば、BrownのBritishnessは、もう10年越しに近いみたいですね。てっきりイラク戦争で失われた「大きな物語」の復権なのかと思ってました。やっぱり自信喪失中なのだろうか>イギリス。というか、ほんとにその一体感というか連帯感は役に立つのか。
http://en.wikipedia.org/wiki/Britishness

あと、ポーランド人の帰国については、正確な数字は出ないと思います。現在の東欧労働者向け制度(WRS)は、せいぜい最初の雇用契約しかフォローしてないみたいなので。
というか、住宅市場の低迷で建設業がやばい、みたいなのは結構前から聞いてた気がするのに、オリンピック需要のせいか、実際に業況が目に見えて下向いたという数字が出たのは、ようやくついこないだのような。多分、統計に出ない形で首を切られてた非正規の移民が多かったのだろうと想像しますが。観測記事としては、例えばこんな感じでしょうか(ご覧になってるとは思いますが)。
Labour gap opens as Poles go home (Guardian, August 24 2008)
http://www.guardian.co.uk/business/2008/aug/24/migrantworkers

というか、なにしろ自然に・自発的に戻ってるだけじゃなくて、ポーランド政府が呼び戻している(笑)。
Poland launches campaign to lure back migrant workers (Independent, 24 April 2008)
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/poland-launches-campaign-to-lure-back-migrant-workers-814747.html

それと、2004年のEU加盟以降の東欧労働者の状況については、こんな報告も(イギリス限定ではないですが)。
East European workers face 'modern slavery' in old Europe (EurActive, 17 September 2008)
http://www.euractiv.com/en/socialeurope/east-european-workers-face-modern-slavery-old-europe/article-175427

> The EC treaty grants all workers certain rights, such as a minimum wage, protection from unfair discrimination, health and safety protection and working time rights.
But instead of equal treatment, many Eastern European migrant workers have had to cope with a system which Hall described as "modern slavery". Intimidation, emotional abuse or "exploitative practices" such as late or no payment at all, lack of proper contracts and holiday schemes and no access to social security were "frequent" occurrences, according to Hall's report.

ポーランドの市民権保護委員会なる組織(議会オンブズマン?)が、イギリスの学者に書かせたものみたいです。若干改訂したらしいですが、元ネタは多分このペーパー。
"The Treatment of Polish and other A8 economic migrants In the European Union member states"
http://www.rpo.gov.pl/index.php?md=3236&s=1

読んで字の如くですが、まさに(アイルランド人、西インド諸島系、アジア系に次ぐ)新たな二級市民。先日、日本で公開されてたケン・ローチのIt's a Free World...をさらに数倍悪くしたような話は、折にふれてメディアにも転がってましたし、驚くにはあたらない気もしますが(そういえば最近見ない)。

・・・胸を借りるつもりとはいえ、よそ様で調子に乗って暴れすぎですね。重ねてすみません。
Posted by hh at 2008年11月12日 02:31

この記事へのトラックバック





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼