26日晩、イラクとの国境から8キロほどのところにあるシリアの村に4機のヘリが飛来し、中から米軍の部隊が出てきて、建設中の建物を急襲し、8人を殺した。8人は民間人、うち4人は子供だという。
……と、「断定形」で書いているけれども、これはシリアの国営メディア、Sanaの報道の内容だ。そしてそれが「事実」なのかどうか、そうであるとしてどの程度「事実」であるのかは、現段階ではイマイチ断言できない。米国が沈黙している――肯定も否定もしていないからだ。(まあ、「肯定も否定もしていない」ときは、「そういうこと」という解釈をするのが当然というか順当というか、なのだけれども。)
Sana放送の「攻撃現場」の映像は、BBCの下記記事(27日付、BBCでの第一報)にエンベッドされている。(映像がエンベッドされたのは、記事が出てしばらくしてからである。)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7692153.stm
急襲があった現場を日が落ちてから取材しているもので、照明がちゃんとしていないので全体像が見えないが、見える範囲では、一般人の家か建設現場の飯場のようだ……というか、人が寝起きする場と書くべきか。布団があって、コンロがあって、「踏み込まれた」直後らしく、散らかっている。
日本語記事(AFP記事を日本語化したもの)は:
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2532335/3470622
この記事の参考写真は、2005年のアル・カイム包囲戦のときのものだ。アル・カイムはシリアとの国境に近いイラク、アンバール州の村で、シリアからイラクに流入してくる戦闘員の中継地とのことで、包囲攻撃を受けた。今回、「ヘリでやってきた米兵が8人を殺した」シリアのアブ・カマルの村は、国境を挟んでアル・カイム村と向かい合うような位置関係らしい(「らしい」というのは、ちゃんとした地図をまだ見ていないから)。
というわけで、こっちとしては「2005年の話」が蒸し返されている、という印象を禁じえないのだが――アンバールは「平定」されたっつって、治安権限も米軍からイラク側に移譲されているのにね、とっくに――、とにかく米国が「肯定も否定もしていない」段階では「何ですかこれは」という段階から先に進めない。
27日のBBC記事@第一報の末尾に、アル・カイムの市長のロイター取材での話として、「国境のシリア側の村がシリア軍に包囲されたあと、米軍ヘリがその村を攻撃した」と述べている、とあるが、これもまた、米国が沈黙している上に、ダマスカス(シリア政府)が「違法なテロ攻撃だ (criminal and terrorist aggression)」と米国を激しく非難している状況では、何が何やら、である。
「何が何やら」になっているのは、基本的に、ワシントンでも同じで、ダナ・ペリノ報道官によるブリーフィングではこの件についての質問が繰り返されたが、ぺリノ報道官は頑として「ノーコメント」を貫いた。
このブリーフィングの書き起こしをベルファスト・テレグラフ(英国のインディペンデント)が掲載しているのだが、これがすごい。
US responds to Syria raid claims: 'No comment, no comment, no comment,' no matter how many times you ask
Tuesday, 28 October 2008
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/world-news/us-responds-to-syria-raid-claims-no-comment-no-comment-no-comment-no-matter-how-many-times-you-ask-14017645.html
ペリノ報道官といえば、30代で容姿端麗で、「キューバ危機って何でしたっけ」みたいにバカのふりもできるなどタブロイドのネタになりやすい話題提供にも長けた人で、個人的には美女軍団(彼女と、最近あまり見かけないアン・クールターと、サラ・ペイリン)という米共和党の秘密兵器の重要人物であると思っているのだが、まあそんなことはどうでもいい。
今日は彼女から「ノーコメント」の言い方を学びたいと思う。この書き起こしは、「一読するだけで、I'm not able to do ... と、I'm not going to do ... 使い方がわかる」という教材として売り出せそうな勢いだ。実際、音声もつければ、それなりに売れる「英会話」の教材になるだろう。少なくとも、サラ・ペイリンの「困ったときはウィンクで時間稼ぎ」よりは実践的である。
記者の質問:
今週末にあったようなシリアへの攻撃がさらに行なわれる可能性はどの程度あるのでしょうか。
ペリノ報道官:
合衆国政府は現在のところ、その件の報道にはコメントいたしておりません。今はわたくしにもコメントできません (I'm not able to [comment] here, either.)
記者の質問:
パキスタンについては話しているわけですが、つまりパキスタンへの攻撃ですね、地上からであれ空からであれ。これについては、当局者 (U.S. officials) も認めています。同種のことがほかの国へも拡大しているということではないかと思います。そこでうかがいたいのですが、どのような理由で、いつ、どこに、どのような方法で、という点についてですね、我が国がこの先見込みとして……(おそらくここで質問をさえぎられている)
ペリノ報道官:
それについてもわたくしは一切コメントできません、ノーコメントです (I can't comment on it at all, no.)。
記者の質問:
標的が成功したかどうか、つまり標的を攻撃したのかどうかという点ですが、何か聞いておられますか。
ペリノ報道官:
この点については、いかなる形でも、わたくしからはコメントはいたしません (I'm not going to comment in any way on this)。それについて、わたくしはコメントできません (I'm not able to comment on that)。
記者の質問:
(ブッシュ)政権側で、「君たちが自分たちの後始末もできないのなら、私たちが代わって後始末をしてやろう」というような決定が成された、とかいうことですら、あなたは述べることができないのですね。
ペリノ報道官:
この件についての報道には、わたくしはコメントいたしません。わたくしからはノーコメントです (I'm not going to comment on the reports about this, no, I'm not)。ほかのご質問、どうぞ。
記者の質問:
シリアの抗議についてコメントをお願いできますか。
ペリノ報道官:
それについては一切わたくしからはコメントいたしません (I'm not going to comment on it at all)。今日のブリーフィングは短くなりそうですね。(笑いが起きる)
記者の質問:
ホワイトハウス(米大統領府)の誰かがシリアの誰かと話をしていますか。
ペリノ報道官:
存じません、わたくしは知りません (I don't know. I don't know)。
記者の質問:
ではこの点について質問したいのですが。別の国の政府が何かを主張している。こういう場合、どこかで、その主張について肯定するか否定するかしなければなりませんよね、違いますか。(お、一般論に切り替えた。)
ペリノ報道官:
ジム(=記者の名前)、わたくしの口から言えるのは、報じられている件についての報道にはわたくしはコメントできませんし、わたくしがコメントすることもない、ということだけです。どうしても口を割らせてやるというのならこちらにいらしていただいてもかまいませんよ。でもわたくしは今日はこの件については、いかなるかたちでも、コメントいたしません (I will not be commenting on this in any way, shape or form today)。あるいは明日も。
……
このあとは記者の質問も短くはなるけれど、この調子でまだしばらく続く。佳境に入ると、「Nine Inch Nailsの歌詞か」とツッコミたくなるような全否定っぷりだ。
で、報道官は「誰もコメントしないと思いますよ (I don't believe anybody is commenting on this at all)」と述べているのだが(つまり、ホワイトハウスに緘口令があると述べている)、実際、メディアの取材に対し口を開いた「高官」は、「匿名を条件に」している。
上記AFP記事では、匿名の米高官が「作戦の成功」を明言し、「外国人戦闘員をイラクに潜入させていた仲介者」の、Abu Ghadiyaという男が標的だったことを認めている。
この「高官」が大統領府の人なのか、国防総省なのか、あるいは国務省なのかもわからないが、「標的」となったアブ・ガディヤという男については、各メディアの記事に名前が出ている。
http://www.google.co.jp/news?ned=uk&hl=en&ned=uk&q=Abu+Ghadiya&btnG=Search+News
インディペンデントがパトリック・コッバーンの記事なのでURLだけ。(まだ読んでない。)
http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/us-admits-raiding-syria-to-kill-terrorist-leader-975443.html
※今回のシリアへの越境攻撃については、また改めて別に記事立てると思います。記事クリップは下記で。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/Syria/USA/
















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