kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2008年06月12日

民主主義は数合わせ、DUPがキャスティング・ヴォートで対テロ法下院通過

何かあるたびに「労働党にとって another nail in the coffin」と言われ続けているなか、またもやblunder発生というか、内閣府職員がアルカイダの活動についての機密の調査資料(JICがまとめたレポート)を電車内に置き忘れる(つまり、そんなに重要な資料を持ち出させていた)という頭の痛いことが発生:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7449255.stm

※内閣府職員が電車内に置き忘れた封筒を見つけた人が、the Sunとかthe News of the WorldではなくBBCに持ち込んだのは、いい人に拾われてよかったですね、って感じかも。(皮肉)

一方で、下院では「テロ容疑者の起訴までの拘置期間を、現行の28日から42日に延長する法案」(対テロ法案 Counter-Terrorism Bill)が、ぎりぎりで可決された。

この件で、北アイルランドの政党が、人数に似合わない大きな役割を負った件について、少し書いておきたい。

「民主主義」がただの「数合わせ」になっていることは、落胆、失望、ガッカリはするにしても驚きはしないが、これまでの「常識」――「あの政党は保守党と事実上の連合関係で、この政党は労働党と事実上の連合関係にある」というもの――が、ここまではっきりと覆されると、「北アイルランド紛争は本当に終わったのだ」的な皮肉を感じざるを得ない。

なお、シン・フェインは「アイルランドの南北分断を認めない」→「アイルランド共和国の議会にも、英国の議会にも、シン・フェインの議員は出席しない」という方針(abstentionism)を、英国についてのみ堅持しているので(アイルランド共和国については80年代に撤回)、この話には関係ない。あの政党も、北アイルランド自治政府に参加してるんだから、いいかげんにその「非出席主義」を撤回すればいいのに、「市民的自由」についてはいろいろと経験している人たちなのにもったいないと思うのだが、それはここでは本題ではない。

関係しているのはDUPとSDLPである。

DUP (Democtratic Unionist Party) は、2003年の北アイルランド議会選挙で第一党となって以来、北アイルランド最大の議員を擁する政党で、2005年の英総選挙で9人を英下院に送り込んだ。

DUPは元々が「北アイルランドは英国の一部である」派(ユニオニスト)、それも過激派・強硬派であり、「英国の連合 Union は死守する」という主義で、当然議会右翼・保守派、つまり「労働党よりは保守党に近い」の政党だ。

なお、NIのユニオニストは、伝統的にはDUPではなくUUP (Ulster Unionist Party) が第一党であった。2000年代になって落ちぶれたUUPだが、70年代とかには、この政党が英下院で保守党政権を支持したことで何とかなったことは、いろいろとある(調べるのが面倒なので具体的には書けないけれども)。そのときにいろいろと交渉をして、UUPの利益になるように英国の法制度をごにょごにょしたとかいうのも、NI関連の本を見るとかなり細かく書かれていたりする。「拘束対象となるテロリストといえばナショナリスト側のテロリスト」というのが曲がりなりにも「合法」だった背景には、ウエストミンスターでのこういう事情があったりする。

なお、UUPは元々「資本家」の多い政党だから(NIのミドルクラスの政党)、保守党の政策と親和性が高かったというのももちろんある。

一方、SDLP (Social Democratic and Labour Party) は、党名を見ればわかると思うが、左派政党、もっと正確に言えば社会民主主義政党で、つまり「労働党」と同じスタンスの政党だ。

「北アイルランド」というコンテクストでは、SDLPはナショナリストで、非暴力主義(武装闘争を完全否定)。SDLPもまた、2000年代になって議席数をがっくり減らしているが、それまではナショナリスト側での第一党だった。つまりシン・フェインより大きな党だった。

さて、現在英下院に議席を持っているのは2005年の総選挙で選出された議員で(その後、議員の死去や辞任などで補選が行なわれたケースもいくつかあるが)、DUPは9人、SDLPは3人を英下院に送っている。UUPも1人、下院議員がいる。(シン・フェインの5人は非出席主義だからカウントされない。)

DUPの下院議員は下記の9人だが、彼らの大半は北アイルランドの政治で忙しくて国会どころじゃないはずである(英国では、地方議会議員や首長と国会議員との兼職は認められているので、兼職自体に問題はない)。名前の後のMPは「下院議員」、「MLA」は「北アイルランド自治議会議員」の意味。

- Gregory Campbell MP MLA;
 NI自治政府閣僚(Minister for Culture, Arts and Leisure)←NI自治政府の文化大臣
- Nigel Dodds MP MLA;
 NI自治政府閣僚(Minister for Enterprise, Trade and Investment)←通産大臣
- Jeffrey Donaldson MP MLA;
 NI自治政府閣僚(Junior Minister at the Office of the First Minister and deputy First Minister)←官房長官
- The Rev William McCrea MP MLA
- The Rev Ian Paisley MP MLA;
 つい先日まで、NI自治政府首相
- Iris Robinson MP MLA
- Peter Robinson MP MLA;
 NI自治政府閣僚(First Minister of Northern Ireland)←首相
- David Simpson MP MLA
- Sammy Wilson MP MLA;
 NI自治政府閣僚(Minister of the Environment)←環境大臣

9人全員がMPでMLAで、9人中5人がNI自治政府閣僚、閣僚じゃない4人も「spokesman for なんちゃら」の要職にある。

こんな感じで忙しい彼らが英国の国政のことを集中して考えられるとは私には思えないのだが、いろいろと成り行きで、英国にとって非常に重要な法案の採決でキャスティング・ヴォートを握ることになってしまった。

成り行きというのはこうだ。

英下院は総議席数646だ。2005年総選挙の結果の各党の議席数は:
- 労働党(与党)=356(→この後離党、補選などで-5で現在351
- 保守党(第一野党)=198(→この後-5で現在193
- LibDem=62(→この後+1で現在63
- DUP=9
- SNP (Scottish National Party)=6
- Sinn Fein@絶賛欠席中=5
- SDLP=3
- Plaid Cymru(ウェールズ民族党)=3
- UUP=1
- その他の政党、無所属=8
- 議長職=4

で、与党は第一野党をはじめとする各政党より60議席上回っている。ところが、今回の対テロ法については労働党内での離反者が多く出て、

  【賛成】労働党主流派
  【反対】保守党、LibDem、SNP, PC, SDLP、労働党離反者

で拮抗するかたちになった。そこで注目されたのが、9議席を有するDUP……という次第。絵に描いたようなcasting voteの状況。

英国のメインストリームの政治に絡んでDUPが注目されることはまずないので、マニア的には「椿事!」と喜んでいてもいいのだが、微妙すぎて笑えない。今このタイミングでイングランドやアイルランドがヒマそうで、ルーニーやロビー・キーンが結婚式やってんのと同じくらいに笑えない。フラミニもトレゼゲもいない占星術チームがヴィエイラお兄さんとアンリなしの先発で(アンリは坐骨神経がやばいらしいですが)グダグダの試合になったのと同じくらいに笑えない。

なお、別な方面でのマニア的には、「42日間」と見たらanswer to life, the universe and everything... で笑えるだろうか。「わたしに人生を語らないでください!」ってな気分なのだが。

閑話休題。で、結局は労働党の離反者が36名出たが、賛成315、反対306で「42日案」は下院で可決された。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7448372.stm

この票差がぴったり「9」で、まさにDUPの9人と一致するのだが、採決の前、DUPが賛成に回ることがわかった時点で、「労働党は北アイルランドへの補助金をDUPに約束した(DUPの票を買った)のではないか」という憶測だか推測だかが出回った。採決時にはDUP議員席に対し「買収されたな You've been bought」との野次が保守党とLibDemから出たそうだ。うは。

採決後の記事では、William McCrea議員がこの憶測を完全否定し(賛成するのが正しいと判断したので賛成したのだ、と)、NI担当大臣のショーン・ウッドウォード(労働党)も「取引などしていない。DUP議員は自身の考えで投票を行なった」とコメントした、とあるのだが:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7449672.stm

うーん。これってさあ、この後NIに政府から金が出たら「あのときの密約の金が」って言われることになったりしないのだろうか。っていうかすると思う。そのときにNI議会でDUPに攻撃を掛けるのは……(諸事情により略)

で、カネよりも恐ろしいのは、DUPってファンダメさんなのよね……
Labour rebels claimed the DUP had obtained guarantees that the government would block efforts to use the Human Embryology and Fertility Bill, currently going through Parliament, to loosen abortion rules in Northern Ireland.


妊娠中絶に関しては、NIはどっち側に転んでもあいたたたたなのだが(ファンダメさんかカトリックかの二択)、例えば「ES細胞の研究施設をNIに作らない」とかいうことならまだわかるのだけれども、法的にどうたらということで政府・労働党からの圧力が約束されたのが本当だとしたら、ううむ。

そして、労働党と協力関係にあったSDLPは、「42日案」に反対したのだが、次のようにコメントしている。
The SDLP's Mark Durkan said the government had won a humiliating victory. His party's three MPs opposed the move.

"It had been the prospect for quite some time that the DUP could have the power to sway this vote," he said.

"Gordon Brown offered the SDLP a deal on Sunday but we told them we were not prepared to deal in civil liberties."


これは、SDLPが労働党と切れるということかもしれない。労働党が「右」に行きすぎている以上、それが賢明だと思うけれど(SDLPは元々、NIの市民的自由の追求を行なってきた政党だ)。その前から、「NIで労働党が組織する」という話もあったし、SDLPはアイルランド共和国のFianna Fáilと組むという動きもあるし、政界再編かもしれん。

で、「対テロ法」の試合会場は下院から上院に移ったわけだが、上院ではそう簡単には通らないだろう。とにかく今の労働党政権の暴走を止めなければ、という決意は相当強いはずだ。

「42日案」を含む「対テロ法」についてのBBC解説:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7447218.stm

で、ノイズがあまりに多いのであえてBBCだけで見てきたのだけれど、以下、ノイズ各種。

£1.2bn carrot for Ulster staved off defeat, claim Tories
Concessions on Cuba and miners' health help carry the vote
Nicholas Watt, Patrick Wintour and David Hencke
Thursday June 12 2008
http://www.guardian.co.uk/politics/2008/jun/12/terrorism.gordonbrown1
※リード文の意味がわからない。(笑)

Minutes after Peter Robinson, the DUP leader, led his MPs through the government's division lobby, the former Conservative leader Iain Duncan Smith intervened in the Commons to claim that the government had bought its victory.

きゃーーーっ、nobody expects IDS here!!

He asked the Speaker: "We understand there has been internal agreement to an extra expenditure in Northern Ireland of some £1.2bn announced today. I wonder if you have had notice of an emergency budget statement concerning Northern Ireland?"

Duncan Smith intervened after a day in which a series of inducements, covering Cuban sanctions and Yorkshire miners, via Churchill's "dreary steeples of Fermanagh and Tyrone" for the DUP, were offered to Labour MPs as the government embarked on what critics condemned as "pork barrel" politics to avoid defeat.

リード文だけじゃない、記事を読んでも意味がわからない。(私の不勉強で。"pork barrel" politics って何だろ。あとで調べよう。あとなんでキューバ制裁とヨークシャーの炭鉱が出てくるんだろう。DUPというコンテクストで。)

Conservative sources said a three-point package had been floated before the DUP:

- Up to £1bn in extra money for Northern Ireland by allowing the assets from the sale of army bases, due to close as a result of the peace process, to remain in Northern Ireland.

- Up to £200m by relaxing Treasury rules on the proceeds of new water charges in Northern Ireland.

- A commitment that liberal abortion laws in Great Britain, which do not apply in Northern Ireland, would not be extended to the province.

「政府、中絶について圧力」の話が保守党筋から出てくるという不思議。これは椿事だ。ニヤニヤ。

じゃあ保守党が政権取ったらそういう方向と逆に行くのかというと、これが微妙だし。ミドル・イングランドがどんどん非宗教化していっても、保守党のコアの部分は宗教を無視できない。チャーチ・オヴ・イングランドは絶対的なものだから。

The prime minister held a series of meetings with Peter Robinson, including one less than two hours before the key vote. But both the DUP and Downing Street insisted no deal had been done.

うわー、なんて底意地の悪い書き方なんだ。

Gregory Campbell, one of the nine DUP MPs, said his party had voted on the merits of the 42-day plan. "We came down in favour of the 42 days on the merits of the case."

But he said the DUP would use the leverage it now had over the government. "It proves that now beyond doubt the DUP MPs are crucial and we will be reminding them of that on each and every occasion that that comes into play, which will probably be more and more often now."

これはマジでまずくないか。DUPが国政を方向付けるなんて、UK、というかブリテンにとっては悪夢に近い。NIの有権者の誰がUK全体のことを考えてDUPに投票しているだろう。地域政党だよ、DUPは。

記事の後の部分は、キューバ制裁とかについてのあれこれがごちゃーっと。なんか、キューバ制裁ってもう解除してもいいよねって話で、「42日案」反対派(労働党内左派)を釣ろうとしたらしい。一貫性がないにもほどがあるし、そもそも実現不可能なことじゃん、米国とべったり仲良くしていたいのなら。

お茶ふきポイント:
Gibson (=Ian Gibson, the Labour MP for Norwich North), a strong opponent of sanctions, was unmoved. "My wife told me she would leave me if I voted to support 42 days. She said I had been around long enough not to fall for inducements. Even if I were offered a ticket to watch Scotland play in their first World Cup final that would be no substitute for a serious debate on this issue."

ノリッチの選挙区の議員がスコットランド人なのか……。

で、「ヨークシャーの炭鉱」の話は、長年地下で作業をしてきた人たちの健康状態悪化に対する補償の話なのだけれど、それと「テロ容疑者の42日間拘置」は話が別だ。でも釣られた議員がいるらしいけどね。議席失いたくないんでしょ。本人は「いや、その話がある前に賛成に投票しようと考えるようになっていた」と弁解しているけれど、誰も信用しないだろう。

もう完全にダメですね、労働党政権。ブレアのときはまだ、いろいろとつじつまを合わせることができていた。今はただ数合わせのみ。

なお、参考までに、複数の議員を擁する政党について、古臭い「右派と左派」の区分をすると下記のようになるのだけど、これがもはや成立しないのがブレア以降(主に2001年以降)の英国政治です。

【左派】
- 労働党
- LibDem
- SNP (Scottish National Party)
- SDLP
- Plaid Cymru(ウェールズ民族党)

【右派】
- 保守党
- DUP
- UUP
タグ:DUP 保守党

※この記事は

2008年06月12日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:51 | Comment(7) | TrackBack(1) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
David Davis辞職に気を取られてこの件に気づきませんでした。いつも助かってます。不謹慎な表現ですが、この事例は面白いですよね。早期選挙の撤回もそうですが、ブラウン政権がどんどんキャラハン政権末期のように見えてきました。

pork barrelは地元や支持団体に利益を誘導することでその支持を得る手法を指すnegativeな表現です。「票をカネで買う」みたいな。日本の自民党(特に55年体制下の)に対してもよく使われます。

さらっとしか読んでいませんが、キューバの話も炭鉱労働者の話もその文脈で出ているようです。キューバについては制裁反対派に「EUの制裁を撤回できるようにがんばるから42daysを支持してよ」と働きかけたことに対して「必死だな」と嘲笑しているようです。炭鉱労働者への補償については「笑い話ではない」ようですが、ブラウンが補償に興味を示した時期と、元NUMの労働党議員が42daysへの反対を撤回した時期が「たまたま」一緒だったことが疑惑を招いている、というような。

これは蛇足ですが、

>70年代とかには、[UUP]が英下院で保守党政権を支持したことで何とかなったことは、いろいろとある

73年のサニンデール合意に反発して保守党と袂を分かつ前(統一会派を組んでいた時期)のヒース政権にはそこそこのmajorityがありましたし、過半数を割っていた時期が長かった74-79年の労働党政権が何とか持続していた(保守党以外の政党は積極的につぶそうとしなかった)ことを考えれば、UUPが「70年代に」保守党を支えていたというのはちょっと事実に反するかもしれません。

ご参考になれば幸いです。
Posted by タツヤ at 2008年06月13日 11:04
>タツヤさん
いろいろとご教示をありがとうございます。pork barrelはそうか、「利益誘導型」ですね。英辞郎にも載ってました(ろくに辞書も引いてないのがバレバレです)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Pork_barrel

「70年代とかには、この政党が英下院で保守党政権を支持したことで何とかなったことは、いろいろとある」の箇所については、曖昧なわかりづらい記述ですみません。いくらめんどくさくなったとはいえ、自分で読んでも変な記述です(粗雑な陰謀論みたい)。「70年代」で意図していたのはサニングデール前で、「とか」が「70年代」以外……ってひどい書き方だ。「何とかなった」のが「どこ」なのか(StormontなのかWestminsterなのか)が無茶苦茶ですし。(^^;) あとで記述を明確化します。ご指摘ありがとうございました。

> この事例は面白いですよね。

"interesting" という形容詞がしっくり来ると私も思いました。

> ブラウン政権がどんどんキャラハン政権末期のように見えてきました。

ヒントをいただいて、ちょっと調べてみたら、Lib-Lab Pactのころに声をかけた政党のなかに、SNPやPCのほか、UUPがあるんですね。「アルスターの議席5増」で釣ったとか。

For survival, Callaghan needed not just the Liberals, themselves keen to avoid an election as the Jeremy Thorpe affair unfolded, but the other minor parties: the Scottish and Welsh Nationalists and the Ulster Unionists, who were promised five more Parliamentary seats for the province. Scared by the advance of the SNP, Labour reluctantly embraced devolution. The defeat of a portmanteau Bill for Scotland and Wales led to the formalisation of the Lib-Lab pact.
http://www.telegraph.co.uk/news/obituaries/1486556/Lord-Callaghan-of-Cardiff.html?pageNum=3

このときのUUP党首がハリー・ウェストで (served as leader of the Ulster Unionist Party from 1974 until 1979)、1981年の例の補選でボビー・サンズに敗れた……というのはゴシップですが、労働党が苦し紛れにユニオニスト強硬派(サニングデール合意反対派)に頼った先例が30年前にあったことでニヤニヤしてしまいます(不謹慎にも)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Harry_West

※「30年ルール」でのthe Lib-Lab Pactの資料開示のときに自分でエントリ書いてるんですが、"SAS incursion into Ireland" に気をとられて、協定については見てませんでした。見直したらおもしろいかもしれないです。
http://nofrills.seesaa.net/article/75391141.html

いずれにせよ、ゴードン・ブラウンはあちこちに「おいしい話」をばら撒いて「42日間拘置」を通したのだ、というのは、あちこちに書かれていますね。BBCはさすがに静かですし、ガーディアン(「反対」の立場の記事が山のように出てましたが)も静かなほうだと思いますが、あちこちが沸騰しているようで。

Slugger O'Tooleでは、さすがにこのネタではMick Fealtyの出番です。11日から12日にかけて集中的に記事が出ています。
http://sluggerotoole.com/index.php/archive/month/2008/06/

DUP government backing: well what did you expect?
Posted by Mick Fealty on 11 Jun 2008 at 21:40
http://blogs.telegraph.co.uk/politics/brassneck/june2008/dup_what_did_you_expect.htm
[quote]
That's not to say the moolah doesn't matter. These guys are also full blooded devolutionists. The calculation will be that they can mend whatever Tory bridges they need to when the time comes for that, and in the meantime, they can use floundering Gordon as a bulwark against any attempts by Sinn Fein to re-instate the maximal influence they lost when Tony Blair left Downing Street.
[/quote]

おそろしい…… (^^;)

この件について詳細はBrassneckではなくSluggerに書かれています。
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/dup-move-into-pole-position-in-london/

デイヴィッド・デイヴィスの行動は単に不可解です。あれは、何か意味があるのでしょうか。
Posted by nofrills at 2008年06月13日 20:16
いい刺激になれたようで、光栄です。

ヒース政権はそれなりに議席があったからUUPの支持は死活的ではなかったと思ってしまいましたが、EC加盟法案などきわどいものもありますよね、そういえば。この件は労働党の造反(政府支持)で助かったのでしょうが、divisionごとに見ればUUPがcasting voteを握ったケースも見つかるのかもしれません。僕の方こそあまり調べずに書き込んでしまいました……。

キャラハンとの比較は深く考えていない思いつきだったので、

>Lib-Lab Pactのころに声をかけた政党のなかに、SNPやPCのほか、UUPがあるんですね。「アルスターの議席5増」で釣ったとか。

ここまでしていたことに驚きました。30年前の再来だったのか(笑)。面白い情報をありがとうございます。

Lib-Lab Pactは僕もいずれ、ゆっくり見てみようと思っています。なにか見つかったら教えてもらえると、すごくうれしいです。
Posted by タツヤ at 2008年06月13日 22:07
ども、上記の続き、インディペンデント編を3度送ったんですが、はねられました。長くないのに。文字化けが1カ所あったのでそれを訂正してだめ、次に「FREEDOM FIGHTER」って言葉がセンサーされてるのかもと勘ぐって(笑)カタカナに変えてみたんですがやっぱりだめ。なぜかしら。そんなわけで残念ですが、あとでまた試みます。
Posted by 在英のチコ at 2008年06月15日 21:16
>チコさん
どうもタイミングが合いませんね。David Davisについては21:05に記事を立てたのでそちらに移動させていただきました。
http://nofrills.seesaa.net/article/100625988.html

なお、正直、デイヴィスの行動には特に意味もないと思います。(ここで自分の力を見せ付けて本気で党首の座を狙いに行くのかもしれないけど。)個人的には、新聞が報道しているのは、単に「いいネタ」としてのような気がします(保守党内紛の気配あり。インディはそこから保守党を少しでも崩したいだろうし、テレグラフはキャメロンの執行部を援護したい。タイムズはよくわかりません。ガーディアン/オブザーヴァーはカヤの外で「GWB独占インタビュー」。でも人権について誠実な、いい記事が出てます。外部ライターさんの記事ですが)。
http://www.guardian.co.uk/uk/2008/jun/15/immigration.familyandrelationships

冷静に見て、一議員の出処進退のことより、「リスボン条約に対するアイルランドの意思」の方が重要だし(アイルランドを無視して26カ国で批准して発効させるとか言い出した。シン・フェインと極右を怒らすつもりかと。笑)、GWBが英国に到着したし……。

> インディペンデント編を3度送ったんですが、はねられました。

投稿時に「ERROR」と表示される場合、多くはseesaaの側でのNGワード設定にひっかかっています。(私が管理者権限で指定しているNGワードは、芸能人の名前など過去のスパミングで特徴的だった固有名とURLですが、それらがチコさんの投稿に含まれている可能性は極めて低い。)
http://nofrills.seesaa.net/article/95447363.html

Seesaaでの設定については私にはどうすることもできないので、メールフォームで送っていただけますか?
http://www.formzu.com/formgen.cgi?ID=2175345
フォームで送っていただいたものをこちらで代理投稿しますので。
Posted by nofrills at 2008年06月15日 21:28
>タツヤさん
あれこれ多すぎて本文のリライトがまだなのですが (^^;)
UUPと保守党について、1971年8月23日のTIMEの記事を掘り出しました。Internment導入時のものです。(英国は保守党ヒース政権、NIはフォークナー政権。)
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,877253-4,00.html

[quote]
Even so, many politicians in London were beginning to face the fact that a new solution must be found for Northern Ireland. British Labor Party leaders are leaning toward some sort of Ulster-Eire relationship, perhaps an all-Ireland Council as proposed by former Home Minister James Callaghan. Labor's former Foreign Secretary Michael Stewart went so far as to say that "there can be no solution of this problem except in the context of a united Ireland." The Conservative government, however, is in no mood to tinker with the existing setup. Ulster's Unionists, after all, have provided the Tories with at least nine or ten seats in the British Parliament (out of twelve for Northern Ireland) ever since 1921, and the Tories do not want to antagonize them.
[/quote]

これじゃなくて別な資料を見た記憶がまだあるので、もう少し探してみます。

> ここまでしていたことに驚きました。30年前の再来だったのか(笑)。

私もびっくりしました。オビチュアリにしか出ていないし、英国でも忘れられてるかもしれないですね。
Posted by nofrills at 2008年06月15日 21:55
今さらですが、こちらでのアップデートを忘れていたので。はてブから掘り出してもいいんですが、面倒なのでTim Irelandのブログ(リンク集になってます)。

October 13, 2008
'42 days' is dead
http://www.bloggerheads.com/archives/2008/10/42_days_is_dead.asp

前回の拘置期間延長のときに、ブレア政権は「90日間」というとんでもない長期間の法案(ストローマン的なもの)を提出して、それを否定させることで、現行の28日間を通したので、ひょっとしたら今回の「42日間」の案にも何か裏があるかもと思って数日様子を見ていたら、そのまま忘れてました。つまり、特に何かが出てきた様子はありません。

これとは別にCriminal Justice and Immigration Billがあるみたいですけどね。
http://www.afpbb.com/article/politics/2530934/3454172
Posted by nofrills at 2008年10月23日 20:47

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英、保守党とDUPとの合意成立 (Coalition of chaos)
Excerpt: 2週間ほどかかって、ようやく……と言いたいところだが、たぶん、おおかたの人はそんな交渉が続いていたことなどもう忘れているだろう。「まだやってたんですか」っていう感じ……北アイルランド・ウォッチャーにと..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2017-06-28 04:01





【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼