kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2017年02月20日

ドナルド・トランプの世界では、パキスタンとスウェーデンが区別されないらしい。トランプ支持者の世界では、スウェーデンは燃えているらしい。

当の米国では新政権発足後のいわゆる「ハネムーン」期間など、今回に限っては存在してもいないのに、なぜか日本語圏はそういうムードに浸りきっていて「トランプ大統領の経済政策のお手並み拝見」とかいう言説があふれかえっていて(そういう言説、気をつけないとだめですよ)、特に書店の店頭などはすさまじいことになっているのだが(去年は格差だピケティだデモで民主主義だとやってた棚が、今年はトランプ一色で、出版されるトランプ本の中身は、多くの場合、「中立」という体裁をまとったトランプへの消極的支持または積極的礼賛)、モニターの中に私が見る世界は、(ときどき「偵察」的に見に行くalt-rightのサイトは別として)それとはまったく違う。何しろすべてがデタラメなのだから(GBWのとんでもないデタラメが、まっとうに見えてきて困る)、特に「反トランプ」であるわけでもない圏、つまり単に「トランプ支持ではない界隈」ではこうあるのが当然だが。

特に今回が異常なのは、いわゆる「燃料投下」がやまないことである。スポークスパーソンとか広報とかいった部門やそっち方面の補佐官が、「大統領の失言をフォローする」どころか、自分たちががんがんトンデモをぶちかましている(彼らのは「失言」などというレベルではなく、「トンデモ」である。そのうち「レプタリアンがー」とか言い出すんじゃないかと思って、生暖かく見守るくらいがちょうどいい)。

トランプ政権のトンデモ番長はケリーアン・コンウェイだ。彼女は選対本部長から大統領顧問となった人物だが、元々はテッド・クルーズ陣営のスタッフだった。コンウェイが選対本部長になった経緯を私は把握していないが(正直、この人のことはどうでもいい)、確かトランプ陣営は選挙時にあまりにトンデモでデタラメだったことに耐えかねて選対本部の人が途中で離脱してて(NationかMother Jonesか何かでその過程について激白してたと思う)、離脱した人のあとに入ったのがコンウェイではなかったかと思う(要確認)。

彼女のトンデモっぷりは、大統領就任式典直後に "alternative facts" なる概念を披瀝したことで、全米および全世界が知るところとなった。

「もう一つの事実」(英: Alternative facts)は、2017年1月22日に放送されたミート・ザ・プレスのインタビューにおいて、アメリカ合衆国大統領顧問ケリーアン・コンウェイが行った発言で、ホワイトハウス報道官ショーン・スパイサーのドナルド・トランプ大統領就任式に関する虚偽発言を擁護した言葉である。インタビューを行ったチャック・トッドが、スパイサー報道官はなぜ「明らかな虚偽発言」を行ったのか問いただしたところ、コンウェイ顧問は「もう一つの事実だった」と答えた。それに対してトッドは「もう一つの事実とは事実ではない。虚偽だ」と反論している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%81%86%E4%B8%80%E3%81%A4%E3%81%AE%E4%BA%8B%E5%AE%9F


コンウェイの悪名をさらにとどろかせたのが、2月2日に為された「ボウリング・グリーンの虐殺 Bowling Green Massacre」発言である。「ボウリング・グリーン」はケンタッキー州にある町の名前で、2011年にこの町で、アルカイダに対する資金・物資の援助の容疑で2人のイラク人が逮捕され、連邦裁判所で「テロリズム」で起訴された。つまり、ボウリング・グリーンで2人のイラク人「テロリスト」が逮捕・起訴されたということになるのだが、彼らは人を殺したり爆弾を作ったりしたわけではなく、米国が「テロ組織」と規定している組織(アルカイダ)への支援を行なったわけである(そんなことで「テロリスト」になるのなら、アメリカのアイリッシュ・コミュニティにはIRA支持の「テロリスト」は大勢いただろう)。しかし、ケリーアン・コンウェイの「オルタナティヴ・ファクト」の世界では、つまり普通の事実の確認を取らずに構築されている世界では、彼ら2人のイラク人「テロリスト」は、ボウリング・グリーンの町で「虐殺(大量殺戮)」を行なったことになっていた。そして彼女は、自分の信じていること(マイルドにいえば「勘違い」)を、そのまま、テレビのインタビューで披瀝したのである。

むろん、彼女は即座に嘲笑された。ボウリング・グリーンの町では人々が「存在しもしない大量殺戮事件のために」という言葉をかかげて、キャンドル・ヴィジルを行なったりしていたし、Twitter上の英語圏は、「機知に富んだ一言」でたいそう賑わった。

これで赤っ恥をかいた政権スタッフは、以後、しゃべる前に事実確認を行なうようにするなど、事実に対する態度を改める……のなら普通だが、トランプ政権は「普通ではない not normal」し、自分たちが「普通ではない」ことをドヤ顔して見せ付けるような人々で構成され、支持されている。
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2017年02月18日

【訃報】ディック・ブルーナ

Twitterの@Miffy_UKのアカウントは、ミッフィー、つまりディック・ブルーナの絵本のうさぎ「ナインチェ」(日本では「うさこちゃん」として親しまれてきた)に関連するイベントやグッズ、テレビ番組の告知を行なったり、絵本から抜粋した文と絵をツイートしたり、「子供たちとミッフィーちゃん」という光景の写真やミッフィーちゃんをかたどったお菓子の写真などを紹介している。最近はinstagramからの写真を紹介していることも多い。

普段は色にあふれたこのアカウントが、18日、色を失っていた。ヘッダー写真が真っ白になっていた(黒ではなかった)。

miffiy_uk.png

ディック・ブルーナ。1927年8月生まれのオランダのアーティストが、90歳の誕生日まであと半年あまりというこの時期に、逝ってしまった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Dick_Bruna

その悲報がどのように広まっているかが、私の目の前に開いた小さな窓の中に見えた。

以下はその記録。ささやかな。

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2017年02月06日

【英語】単数形か、複数形か、それが問題だ(The teamなど「ひとつの集団」の扱いについて)

英語で、「ひとまとまりの集団」を単数扱いにするか、複数扱いにするかはけっこう神経を使う。例えば、The team was in London at the time. とするか、The team were in London at the time. とするかといったことだ。

これは、ネット上の英語教師・学習者のフォーラムなどでもよく話題になる。

http://www.english-test.net/forum/ftopic44474.html で検討されているTOEICの問題は、単純に「文法の問題」として考えれば悪問だが(答えが2つある)、何番目かの回答にあるように「ビジネスで意思を伝える定型文」としてみた場合は答えは1つしかないのかもしれない。

http://english.stackexchange.com/questions/76371/jury-was-divided-or-jury-were-divided の質問者の混乱は、私にも「あるある」で("The jury is out" と言い、"The jury were divided" と言う、どっちなんだよ、っていう)大変に興味深いが、この質問への回答に書き添えられている英米差もあり、やっかいだ(英国は複数扱い、米国は単数扱いが多い)。

私の書くものでは英国流で複数扱いをしてることが多いと思うが、一般的にいって、The Beatlesのように団体名そのものが複数形の場合はare, wereを使っても違和感がないが、Pink Floydのように複数形でない場合はare, wereを使うと変なふうに見えるということはあるだろう。

……というわけで、いろいろと気を使うので、煮詰まってくると、「単数・複数が関係ない表現を使えないか」とかいうことを考え始めたりもする。The team was/were in London. ではなく、 The team stayed in London. とすればいいじゃない♪ とか、The team would leave London for Paris. というふうにもできるよね、とか。うん、わかってる。逆にめんどくさいよね。

そんなお悩みを一発でぶっ飛ばしてくれる(あるいは、そんなお悩みをますます倍増させる)「生きた英語」を見かけたのでメモ。内容はヘヴィーだが、英語の例文としてはシンプルだ。

The PSNI's Legacy Investigations Branch (LIB), which was formed in 2014, are currently investigating 1118 killings.

http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/northern-ireland/exbritish-soldiers-criticise-psni-decision-not-to-probe-ira-attacks-on-them-35424698.html


これは、北アイルランド紛争期の犯罪(殺人、殺人未遂、傷害、爆発物設置など)の捜査についての記事で(現地には「時効」というものはない)、それら、言ってしまえば「古い」犯罪の捜査のために、通常の警察の業務を行なう部門とは別に、PSNI(北アイルランド警察)のなかに設けられたLIBという部署についての文である。

ひとつの文(複文)の中で、単数形で受けてるところと複数形で受けてるところがある。

理屈をいえば、最初のところが単数形なのは、LIBというチームをひとつのものとして扱っているからで、次が複数形なのは、LIBというチームの構成員それぞれが犯罪の捜査を行なっているから、ということになるだろう。

こういうときに「揃っていない」のが大変に気になるのだが、この例を見る限り、必ずしも揃っていなくてもよいようだ。だからといって、「全部適当でいい」というわけでは、断じてないのだが。

ちなみに、「ひとつのものとして扱う場合は単数形」というのは基本だが、ためしに "a group were formed" というのをググってみたら大変なことになった。仮定法過去の文例も含まれてるけど、それにしてもこれはカオスだ。

学生さんへ: これで「よかった、少し気が楽になった」と思う人はたぶん英語向き。「なんだよ、余計ややこしいじゃん。規則作って揃えろよ」と思う人は、英語以外の文法がっちがちの言語のほうが合うかもしれません。

4760820094英文法解説
江川 泰一郎
金子書房 1991-06

by G-Tools

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2017年02月05日

ケベックのモスク銃撃事件に関する「シリア人難民犯人説」というデマと、トランプ支持者界隈。そして、ボストン・マラソン爆弾事件のときの先例。

1つ前のエントリで、1月29日にカナダのケベックで発生した極右過激派によるモスク襲撃(6人死亡、ほか負傷者多数)について書いた。襲撃者が「極右過激派のローン・ウルフ(組織という背景を持たない単独犯)型テロリスト」であることが公になるまでには少し時間がかかり、その間にネットでは「噂 (rumour)」が流れていた。

このケースでは「噂」には大きく分けて2種類あり、その1種類は「事件発生後まもない段階での混乱」(警察が「容疑者」とした人が、実は「被害者」だった)に基づくもので、大まかに言えば、ネット、特に「リアルタイム」と信じられていることが多いソーシャルメディアで、既に古くなった情報が少し後まで人から人へ伝えられ続けるというケースだった(その背景には「人々の思い込み」とか「正常性バイアス」もあると思うが、そういったことについての分析は、たとえリソースがあっても、ある程度の時間はかかり、すぐには出てこないだろう。そもそも一介の一般人である私にはそんなことをするリソースはないのだが)。

そして、もう1種類はあまりに異様なもので、1つ前のエントリで扱うことを諦めざるを得ず、次のように簡単に書くに留めてある。

そして、容疑者の名前がわかった。(実はこれが判明する前にも薄気味の悪いデマが出回ってたんだけど……同じようなことがボストン・マラソン爆弾事件のあとにもあったよね。まあいいや、そっちまで書こうとすると書き終わらないから先に行くね。下記の名前が出たとたんに、このデマで騒いでた界隈は静かになったらしいんだけど、それもボストン・マラソン爆弾事件のときとそっくりだ。同じ連中が釣られてたら笑うけど、笑えないか)

http://nofrills.seesaa.net/article/quebec-mosque-shooting-white-nationalist-terror.html


本エントリでは、それについて書く。

まず、「同じようなことがボストン・マラソン爆弾事件のあとにもあった」という部分について説明しなければならないだろうが、そのパートから書き始めたら極めて読みづらいものになってしまったので、構成を変更し、先にケベック・シティ・モスク銃撃事件に関する「薄気味の悪いデマ」について書いて、ボストン・マラソン爆弾事件のときの「同じようなこと」は後に置くこととする。

■ケベック・シティ・モスク銃撃事件での「デマ」(「銃撃したのは難民だ」説←無根拠な虚偽情報)
1つ前のエントリに簡単にリンクだけ入れてあるが、「ネットメディア」のひとつであるPrntlyでは「ネット上では(※このサイト曰く『Twitter上では』となっているが不正確)、ケベックのモスクを銃撃したのは『バシール・T』と『ハサン・M』という名前の人物だ」という話になっていた(以下、虚偽・誤情報の中で出てきた名前については、当記事の地の文では一部をイニシャルとするようにする。キャプチャ画像など、検索にひっかからない形ではそのまま示す)。

その記事の一番上に掲示されているツイートは「ケベックのCBCが、銃撃犯はかくかくしかじかという名前のシリア人難民だと報じている」と書いているが、削除されている(このアカウントのツイート内容は政治的rantばかりの様相で、ツイート主の居場所も不明。「反イスラム」のほかはアメリカの話ばかりで、少なくとも、ネットでラジオでも聞いてるなら別だが、「ケベックのCBC」の報道を直接知ることができるような場所にいそうな雰囲気ではない)。

「CBCがこれらの名前を伝えていた」とするツイートは、Prntlyのこの記事を離れてウェブ検索でもう1件見つかったが(こちらはアメリカにいるアメリカ人のようだ)、それも削除済みで(Googleキャッシュは残っている)、そのツイッタラーのTLにはほかに1件だけ、ケベックの事件についてのフィードがあり、Googleキャッシュを参照するとその記事を根拠としているように見えるが、実際にはそう「見える」だけで発言のソースがそれだとは言っていない(し、当該記事に「容疑者2人の名前」も見当たらない)状態で、この人物が何をソースに「CBCで報道」と発言したのかは確認できない。なお、残っていたGoogleキャッシュで確認できた範囲では、「これらの名前は4chanでジョークとして投稿されたものだ」という指摘がリプライとしてつけられている(が、元のツイートの主がそれに反応した形跡はない)。4chanなど私には到底確認できないが(どの板なのか、といったこともわからない)、本当に「4chanのジョーク」だった場合、最初っから無根拠である。

なお、ここでリンクしたPrntly.comというのは、単に検索して知っただけのサイトだが、「小さい政府」だとか「リバタリアン」だとかいった傾きを持つ、「既存メディア」に対抗する姿勢でネット上の情報を「まとめ」ている自称「ニュース」サイトであるということは、注意しておく必要がある。リンクした記事の見出しで「Twitter上では」と打たれているが、それはこの自称「ニュース」サイトの運営者がこれらの名前を見たのがTwitter上だったという程度の話である(そのような記述になっている)。このサイトは、Twitterで取りざたされているその名前の出所を確認することすらしていない自称「ニュース」サイトで、実際この「ニュース」の記事は、「Twitter上で言われていることをメモった」ものでしかなく、「どんな名前が取りざたされていたか」を確認するためになら使えるという程度だ。ソーシャル・メディアを使う個人による情報のリアルタイムな発信と集積は、既存のメディアの取材と同等か、それ以上の意味・価値を持つのではないかということで「ネットの力」が注目されたのは2009年イラン大統領選挙後の不正追及運動や2010年12月から2011年のいわゆる「アラブの春」のときで、その流れは既存の大手メディアをより開放的にするという結果を生じさせたが、それと同時に、ネット上に「ネットの力」を妄信し、「既存メディアに反対」というだけの勢力に場を作らせることにもなった。そして、大手でキャリアを積んできたジャーナリストたちによって新たに開始された「ネットの力によるニュースサイト」がパトロンによる資金の引き上げという形で継続不能となる一方で、活動家や学生がネットに転がっている話を、最小限の事実確認も取ろうとせずに「ニュース」としてまとめるサイトは、それが元々小規模なプロジェクトであるがゆえに、これからも自称「ニュース」サイトとして存続する。これが現実の光景だ。ディストピア小説なんかより、現実はもっとずっとディストピア的である。

というわけで早速話が脱線しているが、閑話休題。このPrntly.comという「まとめサイト」にも出てくる名前で、Twitterを検索してみよう。その結果の画面のキャプチャが下記だ(キャプチャは2017年2月4日に取得。事件からほぼ5日後で、これらの名前が容疑者の名前とされる根拠などないとわかってから何日も経過している。以下同)。


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2017年02月02日

カナダ、ケベックのモスク銃撃事件(白人優越主義者によるテロ)と、ネット上のデマ、そしてFox News

1月29日(日)の夜(現地時間)、カナダのケベックにあるモスクが、銃を持った男に襲撃され、6人も撃ち殺された。
https://en.wikipedia.org/wiki/Quebec_City_mosque_shooting

この衝撃的で陰惨なテロ攻撃(カナダのトゥルードー首相は、「テロ」と言うべき場面で「テロ」という言葉を使える人物であることを世界に示した)が、日本語圏のメディアでどのくらい報道されていたかは私は把握していないが(たまたまタイミング的に、Yahoo! のトップページも見ていなかった)、英語圏でも、私の見た範囲ではさほど大きな報道には見えなかった(カナダの報道機関のサイトを見ていれば、もちろん違っていただろう)。その理由は、1月20日以降、毎日毎日キテレツな出し物が上演されるかのごとくの米ホワイトハウスが連日、報道機関のサイトの一番いいところを占有し続けているからだ(そういう状態の中でほとんど気づかれずに流れていったニュースはいろいろあるだろう。英ウォッチャーにとってはなつかしの、"bury the bad news" 的な状況が、もう2週間近く継続している)。この日は、前日から続いて、批判的な人々と多くの主流メディア(英デイリー・テレグラフなど「保守」系を含む)によって "Muslim ban" と称された「イスラム圏の特定7カ国」に関する米国への入国禁止措置(査証発給停止)がトップニュースだった(妥当なことだ)。

日本時間で1月30日(月)の18時ごろに見たときのガーディアンのトップページ(インターナショナル版)。クリックで原寸表示。

guardian30jan2017s-min.png


ケベックはフランス語圏で、北アフリカなどフランス語圏からの難民・政治亡命者が多く暮らしている。襲撃されたモスク(英語で「ケベック・シティ・モスク」)はそういった人々が通う礼拝の場だ。そこが襲われたのは、日曜日の夜の礼拝の時間だった。ホワイト・ナショナリズムを信奉し(つまり北米の文脈では「白人優越主義者」である)、「反イスラム」の理念を抱く27歳の大学生による無差別的な銃乱射によって命を奪われたのは、39歳から60歳の男性たちで、大学の農学部の教授、食料品店の店主、薬剤師、ケベック行政府職員。それぞれに子供たちがいて、6人全員がカナダ国籍を持ち、2人はギニア共和国との二重国籍、ほか、モロッコやアルジェリアとの二重国籍の人々だった(ソース)。


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2017年01月30日

北アイルランド紛争について、英国政府が「過去の書き換えは許さない」と語るとき

こういろいろあると、「せめて記録だけは」とかいうことすら、やる気がなくなってくる。ブログに書くべきだと考え、書こうとしたことがあっても、下書きにもならないうちに気持ちが薄まっていく。1週間もすればそういうのが自分の中で落ち着いて、沈殿物のようなものが残るから、それを書けばいいと思ってはいたが、1週間(いや、実際には1週間以上)まったく途切れなく次々と「すさまじいこと」が起こり続けているので、対応しきれない。結果、ときどきTwitterで断片的な発言だけする、ということになっている。特に英国のテリーザ・メイ首相という人がどういう政治家なのかは、日本語圏では全然踏まえられていないので、1箇所にまとまった文章を書いておくとよいだろうとは思っているのだが……(日本語圏はナントカの一つ覚えみたいに「過激派対穏健派」の図式に固執していて、メイについても「レファレンダム前にはEU残留派だったので、穏健派だろう」と思い込まれているようだ。まったくばかばかしい。内務大臣として彼女がどういうことをしてきたか、在英日本人、特に英国人と結婚して英国で暮らすことになったspouseの人たちに聞いてみるといい)。

さて、そんな中でも唯一、ある程度は書いているのが北アイルランド関連だ。といっても、マーティン・マクギネスの政界引退というドでかい話題があったから書いているのであり、それがなかったらどうだったか、わからないが。

そして本日(29日)のニュース。ガーディアン/オブザーヴァー(ガーディアンの日曜)のインターナショナル版のトップページで、久々にNorthern Irelandの文字を見たと思ったら、こんな話だ。

Troubles inquiry focusing too much on police and army, says James Brokenshire
https://www.theguardian.com/uk-news/2017/jan/29/troubles-inquiry-focusing-too-much-on-police-and-army-says-james-brokenshire


記事自体はPress Association(通信社)の配信記事で、これを「インターナショナル版のトップページ」に持ってくる編集判断は、なかなかすごいと思う。

guardian29jan2017b-min.png

※画像クリックで原寸表示。なお、キャプチャ取得時になぜかまたガーディアンのフォントが読み込まれない症状が再発しているのでフォントがおかしい。また、キャプチャ取得のソフトウェアの動作の具合によって、一部つぶれている部分がある(上段のトランプ政権に関するニュースの部分)。

この記事は、英国政府のジェイムズ・ブロークンシャーNI大臣がサンデー・テレグラフに寄稿したものを抜粋し、その背景を簡単に解説するもの。1〜2分もあれば読める分量だ。

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2017年01月27日

北ベルファストでの警官銃撃事件(2017年1月23日発生)

さて、「北部」のシン・フェインのリーダーがミシェル・オニールに決まったとアナウンスされる少し前、ベルファストから「テロリストによる銃乱射」のニュースが入っていた。

場所はCrumlin Road, 毎年夏の「水かけ祭り」の季節(最近は水かけをやらなくなったが)にニュースになる北ベルファストの地名に明るい人ならピンとくる地名だ。そしてあのあたりは、ここ2〜3年ほどは非常に静かになっているが(「暴れ」を抑制できている)、大変に緊張感の高いエリアである。といっても「カトリックとプロテスタントの対立」というよりも、「リパブリカン側での対立」があるためだ(これを「内部の対立」と呼ぶのは不正確だが、「北アイルランドはプロテスタント系住民とカトリック系住民が対立して」云々という古いナラティヴを今でも適用可能なものとして信じている人向けには「内部の対立」という言葉を使うのが伝わりやすいだろう)。

その詳しい状況については、2016年10月に「内輪もめ」について詳細を報じたベルファスト・テレグラフの記事を参照。この記事で言及されている「住民団体」(プロテスタントの行進に反対する住民グループのひとつ)の名称は、夏の「水かけ祭り」などに関連してよく出てくるので、「ああ!」とピンと来る方も多いだろう。アードインという地域では、この「住民団体」を含むディシデント・リパブリカン(非主流派のリパブリカン)と、シン・フェイン(リパブリカンの主流)の間の対立や、ディシデント・リパブリカンの別々の組織間の対立が、一般のニュースに出てくる程度に激しい。

そういう地域で、警察を標的とする銃撃事件が起きた。場所はクラムリン・ロードのガソリンスタンド……ってそこは基本的に住宅街だろうが! 「紛争」期のフィクションで多用されていた類型に、「IRA(プロヴィジョナルIRA)は軍隊的で統制が取れているが、IRAとは別のリパブリカン武装組織は狂犬の集団だ」というものがあるが(例えばトム・クランシーの『愛国者のゲーム』)、それらはまったくのフィクションというわけではなく、今もまだ武装闘争至上主義を掲げて活動を継続しているディシデント・リパブリカンの組織は、本当にいろいろと見境がない。子供たちが大勢通る通学路であることなどおかまいなしに、何を標的としているのかよくわからない爆弾を仕掛けたりもしている。そしてそういうディスデント・リパブリカンのことを、マーティン・マクギネスを筆頭に、シン・フェインの政治家たちは非常に強い言葉で非難してきた。そしてディシデンツは、そのことを「変節」と解釈している。ディシデンツは、地方にある拠点の町だけでなく北アイルランドの首都ベルファストの主流のシン・フェイン(つまりプロヴィジョナルIRA)の支配地域で活動し、そこで勢力を拡大することで、彼らなりの目標を彼らなりに達成しようとしている。

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2017年01月26日

北部(北アイルランド)のシン・フェイン、マーティン・マクギネスに代わる新たなリーダーは40歳の女性だ。

moneilltwt.png北アイルランド紛争(1969〜1998)を生きてきた元「IRA司令官」、マーティン・マクギネスの後任は、1977年生まれの若い政治家……シン・フェインはピンチをチャンスに変える技能のワールドカップがあったら優勝候補と呼ばれることは間違いないだろうと思われるような政党だが、今回もまた「これまでずっと頼ってきた屋台骨が第一線を退く」というピンチをチャンスに変えることができるのだろうか。

1月23日(火、現地時間)、北部のシン・フェイン(彼らは「北アイルランド」という言い方をしない)が、マーティン・マクギネスに代わるリーダー(「党首」ではない)として、現在の自治政府で保健大臣を務めるミシェル・オニールを選んだと告知した。詳細は下記。

Northern Ireland: Michelle O'Neill named Sinn Fein's new northern leader
https://chirpstory.com/li/344753


特に党内で選挙のようなものが行なわれたという話は見かけていないのだが、シン・フェインなりのやり方で選ばれたのだろう。前週後半にマクギネスが第一線を退くことを明かしてからの数日の間だったか、あるいはマクギネスが自治政府の副ファースト・ミニスターを辞してからの2週間の間だったかははっきり覚えていないが、その間にマクギネスやジェリー・アダムズと同世代でばりっばりの「元IRA」の大物政治家が「私はリーダーにはならない」とメディアで発言するなどしていたので、世代交代するんだろうなと思ってはいたが、それにしても現在40歳の人をトップに持ってくるとは、ずいぶん思い切ったものだと思う。

シン・フェイン全体のトップはジェリー・アダムズだが(実に30年以上、このポストにある)、2009年、アダムズの実の弟が実の娘に対し性虐待を加えていたということが虐待被害者本人によって明かされたあと、いろいろとしどろもどろな応対をしたりしたが、結果的には生まれてこの方ずっと拠点としてきた西ベルファストを離れることにし、2010年に「翌年(2011年)のアイルランド共和国総選挙に出馬する」と表明してそのときに保持していたウエストミンスター(英国下院)の議席(議席は持っていても、シン・フェインなので出席はしない。その点の詳細はこちら参照。「英国政府への抗議」云々とはちょっと違う)を返上、選挙区をボーダーの向こう側のラウスに移し、相変わらずなぜか余裕で当選した。そのあとのアイルランド共和国の総選挙でも議席を落としていないので、アダムズは現在「ジェリー・アダムズTD」(TDはアイルランド共和国下院の議員のこと)であり、シン・フェインの党首(プレジデント)である。そういうことができるのも、シン・フェインはアイルランド島全域の政党だからだ。

で、そのアダムズのもと、共和国のシン・フェインは何人かの副党首を置いている。そのひとりで最も重要な役を務めているのがメアリ・ルー・マクドナルド。1969年、ダブリンの生まれで、北アイルランドとは特に関係はない(元々はFFのメンバーだった)。現在ダブリン・セントラル選挙区選出の下院議員である彼女は、党大会はもとより、党主催のイベントの数々(「歴史を振り返る」系のとか、「政府の政策に抗議する」系のとかいろいろ)でスピーチなどを行なっており、共和国の報道で顔写真を見ることもとても多い。

というわけで、シン・フェインは南(共和国)も北も、「女性政治家」の存在感がぐっと増してきているのだが、視野を広げるとより壮観である。まず、今日解散した北アイルランド自治議会のエクゼクティヴ(自治政府)のトップ(ファースト・ミニスター)が女性(DUPのアーリーン・フォスター)。北アイルランド自治議会では閣僚を出す主要5政党のひとつであるアライアンス党もトップは女性だ(ナオミ・ロング)。かくして、北アイルランドは主要5政党のうち3政党が「トップが女性」ということになっている。(時間軸をさかのぼると、SDLPもマーガレット・リッチーが党首だったことがあり、主要5政党で女性をトップにしたことがないのはUUPだけとなる。)

さらに広い範囲を見ると、英国首相が女性(保守党、テリーザ・メイ)、スコットランド自治政府のファースト・ミニスターが女性(SNPのニコラ・スタージョン)となっており、仮に3月の選挙後も北アイルランドの2トップが現状のままだとすると、British-Irish Councilの主要メンバー(英国・英国内自治政府とアイルランド共和国政府)は女性の方が2:1の比率で多くなる。

……という話で盛り上がっているのをちょっと見かけたのだが、個人的にはもはや「女性だから」と珍しがっている時代でもあるまい、と思っている。それよりも、北アイルランドという文脈では、世代だ。

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2017年01月24日

エコー・チェンバー(タコツボ)として機能するFacebookについての論文を読む(ニュース記事で見かけた論文の探し方)

今日、たまたまこんな記事を見た。

フェイスブックなどSNS、視野狭め偽情報拡散の一因にも 研究論文
CNN.co.jp 1/23(月) 13:46配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170123-35095395-cnn-int
(CNN) フェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)はユーザーの世界を広げるどころかむしろ視野を狭めさせ、特定の先入観の形成を促し、それが誤った情報の拡散につながる――。イタリアや米国の研究チームがそんな論文を米科学アカデミー紀要に発表した。

研究チームはデータモデリングの手法を使って、陰謀説と科学情報の2種類のコンテンツが拡散する様子を描き出した。

その結果、「ユーザーは特定の論調に関連したコンテンツを選んで共有し、それ以外は無視する傾向があることが分かった。特に、社会的均一性が情報を拡散させる原動力になっていることが示されており、ありがちな結果として、均一的で偏向した集団が形成される」。論文はそう結論付けている。

……


itnews24jan2017.pngこの記事について知ったのは、Yahoo! Japanのニュースの「トピックス」のページを見たときだ。右の図のように、「SNSは偽情報拡散の一因 論文」という文字数を切り詰めたヘッドラインがあった。過去、SNSで間違った情報(日本語圏で一般に流通している表現では『デマ』とも)が拡散することについての論文をわざわざ探して読んでがっかりすることが何度かあったので(「間違った情報」に、被害者支援の募金を騙る詐欺など、ちょっとそれは性質が異なるのではというものが含められていたりした)、今回も「まあ、2016年11月の米大統領選以降、fake newsってのがバズワード化した状態だから、論文の1本や2本は書かれるよな……」程度の気持ちでそのヘッドラインをクリックしたのだが、今回のこれは、過去の「SNSでの誤情報拡散について」という系統の論文とはテーマそのものが違うようだ。記事を一読して、この論文はアブストラクト(論文の冒頭に置かれる要旨の説明)だけでも読みたいと思った。

というわけで、Yahoo! Japanのニュースに出ていたCNN.jpの日本語記事(誰でも読めるもの)から、誰でも使えるGoogleを使って、元の論文を探してみよう。

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2017年01月23日

英国の核兵器システム(トライデント)の誤射についての質問に答えることを拒んだテリーザ・メイ首相

yhn23jan2017.png英国の核抑止力(保有核戦力)、「トライデント」システムは、2016年夏に英国下院での採決を経て、更新された。あと50年くらいは英国は核抑止力を持ち続けるわけで、この「トライデント更新」は、そのほんの数週間前に日本の広島で初めて行なわれたG7外相会議で採択された「広島宣言」(覚えてる?)について、英国は「はあ、まあ、話だけはうかがいますた」的な態度であるということを意味した。英労働党のジェレミー・コービン党首は、2015年の総選挙後に「党内野党の代表」(労働党の左派はブレアの「ニューレイバー」以後、「党内野党」化している)として党首選に出たとき――このとき彼自身も、彼の支持者たちも、コービンが党首になるとは本気では思っていなかったのだが――、「党内野党」のいつもの主張である「トライデント廃止」を掲げていたが、結局、2016年夏の議会での採決に際しては、「労働党はトライデントについては廃止の方針でまとまる」という党議拘束をかけることはしなかった。CNDの幹部であるコービンが労働党の党首になっても、英国の「核抑止力」(カギカッコつけとく)については何をどうすることもできないのは、いわゆる「原子力ムラ」的な事情もむろんあるのだが、労働党の支持基盤である「労働者」が何を望んでいるか(あるいは何を望んでいないか)ということが大きかった。……ということは2016年夏に(ブログでは書いてないかもしれないが)Twitterでちょこちょことメモってたと思う(読む必要がある方は、私のTwilogを掘ってください)。なお、現在首相をつとめているテリーザ・メイ保守党党首は、2016年夏にはまだ「保守党党首候補」だったが、前政権(デイヴィッド・キャメロン政権)でずっと内務大臣をつとめてきた人なので、閣議にかかるような問題はよく知っている立場だ。

その「トライデント」システムに関連して、英国が大騒ぎになっていることを、1月22日(日)のTwitterのUKのTrendsを見ているときに気づいた(そのときのTrendsのキャプチャなどは、残念ながらとっていない)。日本語圏でまともに伝えられているかどうかは知らないが(右にキャプチャを添付したが――サムネイルをクリックで原寸表示――、Yahoo! Japanのニュースの「国際」のところには見出しは出てないようだ)、AFP BBでは記事が出ていた

英政府が核ミサイル試験失敗を隠ぺいか、計画更新の採決直前
2017年01月23日 18:13 発信地:ロンドン/英国
http://www.afpbb.com/articles/-/3115083
【1月23日 AFP】英国政府が昨年、米国沖で行った潜水艦発射型戦略核ミサイル「トライデント(Trident)」の発射試験の失敗を隠ぺいしていたと、英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)が22日に報じた。英下院ではこの試験の数週間後にトライデント・システムの更新計画が採決にかけられ、可決されていた。

 テリーザ・メイ(Theresa May)首相は、試験失敗について知っていたかどうか英BBCのインタビューで問われ、明言を避けた。


これ、ただ単に「明言を避けた」っていうレベルではなかった。BBCの日曜朝の政治系のインタビュー番組であるアンドルー・マーの番組で、今の政権のメンバーに対して特に厳しい態度をとるわけでもないアンドルー・マーが、めっちゃ堅い表情で4度も質問を行い、テリーザ・メイはそれを4度もはぐらかしていた。

そのことについてのツイートを一応記録しておこうと思う。

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ガンビアの政治が動いてアーセナルの試合があった日、世界はつながってることを実感。

西アフリカのガンビア (The Gambia) という国で大統領選挙が行なわれ、22年間も政権の座についてきた現職を野党の新人が破るというサプライズを起こしたのは、2016年11月、ドナルド・トランプが米大統領選挙を制した少しあとのことだった(そのとき私は「サプライズでない選挙はないのか」と思った)。

勝利した野党の新人のアダマ・バロウさんがTwitterで「人は政治的な面では変われても、好きなサッカーチームは絶対に変えられない」と発言し、特製の「1番、大統領」のアーセナルのユニを着てしまうような人であることを、先日、さるさん (@saru_gooner) のブログで知った

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大統領就任という立て込んでるときに合わせて、なぜかユーザーインターフェイスを変更したTwitter.

発足するや否や、報道官が「嘘、はったり」の類をぶちかましていきなりミーム化するという惨状を呈しているトランプ政権。それに対しトランプ支持者たちは……見るのもうんざりだから(っていうか見るとこちらの感覚がおかしくなるので)見ていないが、彼らのことだから、ミームにされたことも「左翼/リベラル/アンティファ/フェミ/ネオリベのwhinersが、私たちの大統領をいじめに来た!」と解釈したりするのだろう。そういうのにも、徐々に慣らされていくのだ、これからは。私が異常なことを「異常」と感じなくなるまでに、たいした時間はかからないだろう。1年もしないうちに「なぜ以前はこれが『異常』に思えていたのだろう」と思うようになっているはずだ。それへの抵抗として、私は書き留めるべきと思ったことを書き留める。できる範囲で。

月曜からの本格的な仕事始めを前にした土日の様子を見て、Twitter上で私がフォローしたりリストに入れたりしている米国のジャーナリストたちは、何がなぜ、どのようにひどいかを指摘するので大忙しのようだ。あまりたくさんは見ていないのだが、それらは「報道官発言のミーム」とあわせてRTするなどしてある。
http://twilog.org/nofrills/date-170122/asc

土曜日(21日)には、世界各地で女性たちのデモ(Women's March)が行なわれた。その様子を伝えるツイートも、21日から22日にかけてRTしている。イラクのエルビル(イラクのクルディスタン)からも、雨の中行なわれたデモの様子が伝えられてきている。米国内からは「この街としては史上最大のデモとなった」といった地方ニュースも伝えられている。

と、そのように大きな変化があって、たぶん普段よりも多くの人々がTwitterを使っているのではないかと思われたこの週末に、Twitterは緊急性などまったくなさそうなインターフェイス変更を行なった。本エントリはそのことについてのメモである。


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2017年01月20日

マーティン・マクギネス政界引退

この人に代わる政治家は、おそらくいないだろう。そのくらい、北アイルランドの政治において特異的な人物であり、重要な政治家であった(といっても、紛争期からポスト紛争期にかけて仕事をしてきた北アイルランドの政治家には特異的な人は何人もいるのだが)。

beltel20jan2017-min.pngバラク・オバマ米大統領が退任し、ドナルド・トランプの就任の儀式が始まるのとタイミングを同じくして、「マーティン・マクギネスの政界引退」というニュースが北アイルランドから入ってきた。現地の時間で19日(木)夜のことだ。ニュース系を中心に、関連のツイートはざっくりとアーカイヴしてある

マーティン・マクギネスについては説明不要だろう。

……というのでは「不親切だ」とくさされるだけなので、少しは書いておこう。まず、ワタシ的には「知らない人からの電話に出た人」(笑。あのときのことを思い出すと今でも大笑いできる)だが、それでわかる人は、「知らない人からの電話」のときに一緒にきゃっきゃうふふしていたヲチャ仲間だけだろう。

一般的には「元IRA司令官」と言われ続けている人だが、それはそれで違和感がある。北アイルランド紛争の時代にIRAのトップクラスの幹部だったことは事実だが、IRAでの活動したよりもずっと長くの時間を「リパブリカンの政治家」として政治の第一線で過ごしてきたからだ。日本では、女王と握手したときにニュースになった。

……と書いていて、もう飽きてきた。そういったことはこのブログに細かく記録してきたし、繰り返す気にはなれない。そういう「過去に書いたことの繰り返し」で消耗してしまう前に、今書くべきことを書かねばならない。どこの誰とも知らない「読み手」のために周知の事実を書いている間に、私の指先と頭の中からは、私が書きたかったことが形を結ぶ前に雲散霧消していく。「それってだぁれ」という方は、当ブログのサイドバーにある検索窓を使うなり何なりして、ご自身でお調べいただきたい。(→と、自分でもちょっと調べ物をしたときに偶然遭遇した2009年11月末のエントリが、とてもわかりやすいと思う。)

ともあれ、「IRAの司令官」だったマーティン・マクギネスは、武器を置いて政治家になり、そして政治家としてIRA(をいわゆる「武装部門」として抱えている「リパブリカン」という運動体)を、「武装闘争の停止」という方向に牽引してきた。それは、文章にしてしまえば一言だが、とてつもないことだった。マクギネスがまだ運動体(組織)の何番目かの幹部だったころ、トップは「武装闘争至上主義」とでも呼ぶべき思想で動いており(それをphysical-force Republicanismという)、運動体の目的である「統一アイルランドの実現」のためには、絶対に武力で「英国人 (Brits) を追い出す」ことになるという理念を中心にすえていた。「銃による武装闘争だけではその目的は実現できない」として「投票箱による政治的な闘争」との両立を主張したマクギネスやジェリー・アダムズの世代のリパブリカンの活動家たちが主導権を握ったのは、1980年代のことだ(そのときにアダムズ&マクギネスのいわば「新世代」のリパブリカンと袂を分かった武装闘争至上主義の人々の集団が、「リパブリカン・シン・フェイン」という名称の政治団体と、「コンティニュイティIRA」、つまりCIRAという武装組織である。CIRAは今も「武装闘争」を続けている)。

シン・フェインがアダムズ&マクギネスのもとで「銃も投票箱も」の方針に転換しようとしていたころのリパブリカン内部の人たちの証言を読むと、それは非常に難しく、忍耐力を要求されることだったということがよくわかる。その「組織の路線転換」を実現させたことが、アダムズ&マクギネスの第一の成功であり、後の北アイルランド和平へとつながっていく第一歩となった。

マクギネスは、そういう時代から実に30年あまり、リパブリカン・ムーヴメントの第一線で政治家として仕事をしてきた。そして今から10年前の2007年5月、仇敵だったユニオニスト過激派の親玉であるイアン・ペイズリーとのパートナーシップのもと、北アイルランド自治政府(ストーモント・エグゼクティヴ)のトップとなった。爾来10年。

北アイルランド自治政府は、ファースト・ミニスターと副ファースト・ミニスターの2トップでひとつという体制である。どちらかが辞すればもう一方も辞することになり、またエグゼクティヴ(自治政府)自体も、それを選出するアセンブリー(自治議会)も解散することになる。

今回、マクギネスは、政界引退を表明する前に、2007年以来ずっと就いてきた副ファースト・ミニスター(以下「DFM」)を辞した。それによってストーモントの自治議会は解散ということになり(解散の日付は1月26日、最後の召集は25日)、選挙が行なわれることになる(投票日は3月2日)。

マクギネスがDFMを辞したのは、ストーモントの政治がもうどうしようもないところに来ているからだった。

2016年の晩秋以降、北アイルランドの政治で浮上したスキャンダルがある。詳細は書いてるヒマがないのだが、地球温暖化対策として、冬季の暖房を化石燃料から再生可能エネルギーに切り替えていくために、設備を更新した事業者にはインセンティヴを出すというプログラムが問題を引き起こした。実体のない「切り替え」に対しても補助金が出るということで、元々暖房を入れていない物置に再生エネの暖房を入れて補助金ガッポリ……みたいなことが横行していた。仕組みが穴だらけだったとも言われているし、あまりにひどく悪用されたとも言われている。いずれにせよ、それによって一部の業者が甘い汁を吸いまくった。




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「ポスト・トゥルース」に対処するには「ポスト・トゥルース」をぶつけてやるのが一番……なのか? 根拠のない出まかせで有名ネットメディアとその読者が爆釣

1年前の自分なら眉をしかめて見ていたであろう。今は「いいぞもっとやれ」と拍手喝采している。

1916年について書かれた「すべてが完全に変わった All changed, changed utterly」(イエイツ)という言葉がこの上なくふさわしい2016年を経て、私も変わった。自覚できるくらいに変わった。

そのことを思い知らされたニュース。

そのソースがBuzzFeedというのも、ああ、変わったな、というポイントのひとつなのだが(以前も書いたが、BuzzFeedというウェブ媒体は、BuzzとFeedという媒体名を見ればわかるとおり、元々は「ネット上に落ちているものを拾い集め、おもしろおかしく構成して、なるべく多くのクリックを稼ぐ」ことを徹底的にやって大成功した「パクリメディア」の代表格で、創設から何年もの間、基本的に、猫写真とか「初デートあるある」的な時間つぶしの読み物とか「くだらねぇ」と笑うためにやるクイズ・診断の類を見に行く先でしかなかった。シリアスな方向に展開しだしたのは、そうやって知名度を上げて資金を調達し、UK版を展開するなどして、FTなど一流メディアで仕事をしてきた実力あるジャーナリストを何人も引き抜いて「報道」部を作るようになった後のことだ。BuzzFeedに関する英語版ウィキペディアも、「沿革」のところに沿革を書いたセクションがないとかいう状態でずいぶん統制が入っているようだが、下の方にある「批判・議論」のセクションに2012年や2013年に何があったかが一応書かれている。ちなみにBuzzFeed UKの現在の編集長は、エドワード・スノーデンの「暴露」報道を行なったときのガーディアンUSのトップで、ほかにもガーディアンからジャーナリストが移籍している)、どうやらアメリカでの「ネット言論」界においてBuzzFeedは、先日の「トランプ・ロシア文書」の公開によって、完全に、「反トランプ」の急先鋒という地位を獲得したようだ。一方で、ネット上のトランプ応援団のメディアの中には、かつてBuzzFeedでコピペ切り貼りに笑えるGIFを貼り付けたような記事を書いてた人たちも入っているだろうし、何と言うか、こんなところで「諸行無常」っすか、という心境にもなる。

閑話休題。余計な話をする前に書こうとしていた「ニュース」というのは、下記である。「ポスト・トゥルース」がメタ化してえらいカオスだ。

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posted by nofrills at 15:00 | TrackBack(1) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"Post-truth" によって形作られる時代に、それが1日でも早く終焉を迎えることを祈りつつ。

「ポスト・トゥルース post-truth」、つまり「事実以後(脱事実)」とは、つまり、「すべてを疑え」ということだ――そのように、自分の中で言語化されたのは、実はほんの少し前のことだ。陰謀論者たちのいう「すべてを疑え」が「ポスト・トゥルース」なのだ。

「疑う」、「懐疑的である being sceptical」ということ自体には別に問題はない。むしろ、大学に入ってすぐに教えられたのが、「高校までは教科書どおりでよかったかもしれないが、大学における学問においては、"懐疑的な態度で臨むこと" が必要とされる」ということだった。(ちなみに私のこういった基本的な教育のバックグラウンドは社会科学系である。)

その「懐疑的な態度」云々というのもまた、あまり「わかりやすい」ものではない。見るもの全てを疑ってかかるということでは、断じてない。またそれは、何かを必ず否定することを前提とするものでもない。(ここに含まれている「全て」とか「必ず」とかいったこと自体、非常におかしなものなのだ。)

こんなことを書いていたら、いつまでたっても書き終わらないので話をはしょる(と書くと「逃げた」などと言いがかりをつけてくる人もいるのだが)。

2016年6月に英国で行なわれたEU離脱可否を問うレファレンダム後に急速にリアルなものとして立ち現れてきた「ポスト・トゥルース」の流れにおける「全てを疑え」というのは、「エリートやオーソリティの言っていることは、全て疑え」ということだった。

「エリートやオーソリティの言っていることは、疑え」ではなく、「全てを疑え」だった。

単に「全てを疑え」ではなく、「エリートやオーソリティの言っていることは、全て疑え」だった。

それが何を意味したか。それまで「エリートやオーソリティ」とされていたものを全否定し、それまで「エリートやオーソリティ」とされていなかったものを全肯定するということだった。

今、自分で書いてても「そんなバカなことがあるか」、「どこのカルト教団だよ」と思うのだが、実際に起きたことはそういうことだった。だからこそ、Breitbertのような嘘と煽動しかやらないような「ネットメディア」(10年前ならブログだったようなものだが)が勃興してきたし、そういうのが「ウケるし売れる」とわかったら既存のメディアもどんどんそっちに流れていったのだ。

日々Twitterで流れてくる一面しか見ていないような状態だが、「保守系」の新聞の様子を見ると「うげっ」という声が喉の奥で鳴る。デイリー・メイルがああだったのは昔からだが、今のデイリー・テレグラフやタイムズは、逆側に対置されうるのが(ガーディアンやインディペンデントではなく)モーニング・スターだと思ってたほうがよいくらいに極端にふれている。また、ソーシャル・ネットのおかげで、新聞の紙の束を離れて、目玉記事の見出し(と写真)だけでもがんがん流通するようになったあとで起きたことは、あのデイリー・エクスプレスが「まともなメディア」的に振る舞い始めるということだった。デイリー・エクスプレスですよ。ザ・サンどころじゃない。(ザ・サンはあれはあれでものすごくひどい、めっちゃ問題のある媒体だが。)

「ポスト・トゥルース」を形作り、引っ張っているのは、メイルとエクスプレスとタイムズとテレグラフ、そしてネットメディア。BBCも、少なくとも国内政治(英国の中央政府の政治)に関する報道の軸足は、明らかにそちらにある。(BBCの政治部は、元々、2015年の総選挙で保守党がバカ勝ちしたときに感涙したような人が重鎮で、決して「不偏不党」ではない。)

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2017年01月18日

オバマの理想化と、チェルシー・マニング

2016年が2017年になって、ブラウザの中に私が見る世界は、「さよなら、バラク・オバマ大統領」のムードに満たされている。私が見ているのは英国の大手メディアのごく一部だが、特にBBC Newsには、米国のメディアでもないのにここまで……と思うことが何度かあった。その「さよなら」ムードの盛り上がりには、この次の大統領に就任するあの人物が「とんでもない」の一言では片付けられないくらいにとんでもない、ということが大きく寄与しているのだろう。つまり、「さようなら、まともなアメリカ」ということだ。(日本語圏ではどうなのか、知らない。書店の雑誌コーナーなど見たところ「相場」だの「トランプ・バブル」だのといった話ばかりが目に付いて、うんざりした。)

「この先への不安」が広く共有されるとき、大きな流れとして「過去への郷愁」だとか「現状への愛着」が起きるし、それが支配的になるのが常だ。バラク・オバマ大統領の任期2期8年の終わりに際し、「過去への郷愁」は生じているようには見受けられないが(さすがに誰も、オバマの前を懐かしんだりはしていない)、「現状への愛着」は日を追うごとに強まっているように見えた。そのピークが先週(1月9日から15日の週)の前半で、私は完全に、見てるだけで食あたりを起こすような状態となって、ニュースサイトにアクセスすることすらほとんどやめていた。バラク・オバマというまっとうな人を正当に評価することは必要だし、当然のことだ。しかし、次がひどいからといって、美化はいけない。次がセクハラじじいだからといって、今のオバマ・ファミリーを理想化しつくすようなことをして、「バラク・オバマの8年」を語ってはならない(確かに理想的な家族だろうが)。しかし、目に見える(狭い)範囲では、そういうムードが横溢していた。

そのときに、ブログに書いておこうと思って、メモ用紙に殴り書きした単語の群れがあるのだが、見事に意味不明、ダダイストの自動書記かと思うくらいに意味不明だ。私は何を思って、何を言語化しようとしていたのだろう。うん、「エジプト」はわかる。2013年、モルシ政権を転覆させたタハリール広場の「デモ」で、国際メディア(すでにアルジャジーラは追い出されていたが)のカメラに常に移る場所に掲げられた大きなバナー。それは、エジプトとはほとんど関係なく、基本的に「すべてオバマが悪い」というもの、バラク・オバマを批判する「反オバマ」のものだった。でも、そのことを今思い出して、私は何を書こうとしていたのだろう?

そんなふうにぼんやりとしている中、任期の終わりまであと2日というときに飛び込んできた超ビッグニュースがこれだ。

日本のメディアではどうだか知らない。BBCやガーディアンではトップニュースだ。

bbcnews18jan2017s.png


記録はとってある。全体から見れば、ごく少ししかとれていないが、どうせこんな程度でも「長い」とか文句を言われるのだろう。(私はこれを作成するにあたり、これの何倍の文字情報を見ていることやら。)

ウィキリークスに情報を流したマニングの恩赦について、日本の大手報道が報じていそうにもないことの記録
https://matome.naver.jp/odai/2148471362598559001

「恩赦」といっても、チェルシー・マニングについては、「刑の取り消し」「即時釈放」ではなく「刑期の大幅短縮(減免)」であり、マニングが釈放されるのは5月17日とまだまだ先だ。それに、そもそもマニングはあんな長期の刑(35年)に処せられるべきではなかったし(35年はdispropotionateとしか言いようがない)、収監中にあんな目にあわされるべきではなかった。彼女が自殺未遂で病院に運ばれたと報じられたのはかなり最近のことだが、自殺未遂に追い込まれたこともひどければ、その情報が外部に出された経緯もかなりひどかった。彼女はあまりにつらい思いをさせられた。それは第一義的には、バラク・オバマ政権の内部告発者を敵視した政策ゆえだ。だが、それでも、任期最後にオバマが行なった「チェルシー・マニングの刑期の大幅短縮」は、正しいことであると讃えられており、オバマへの感謝の言葉が多くウェブ上にアップされている。

あとで書き足すかもしれない。今はこれだけ書くのが精一杯だ。

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2017年01月16日

"Hard Brexit" 決定のお知らせが流れ、恫喝外交が始まり、「フェイク」という言葉自体がpost-truth化している。

普通にニュースを見てた人には何の意外性もないだろう(特に「2017年のお茶ふき初め」となったEU大使の辞任のニュースの後では)。EU離脱を決めた英国が、具体的にどのように離脱するかについて、「ハード」で行くという結論を出したという。今度の火曜日に予定されている首相演説で明示されるのだそうだ。(なお、「ハード・ブレグジット」がどういうものかについては2016年11月のニッセイ基礎研究所のこの文章がわかりやすいと私は思うが、ほかにも各報道機関やシンクタンクでたっぷり解説されているから、「それってなあに」という人は各自検索して好きなものを読めばいいと思う。)

英国の各メディアが伝えている。私が読んだのはガーディアンだが、元報道(演説原稿のリーク)はサンデー・テレグラフのようだ。ガーディアンは最もコアな「残留」論者に近い媒体で、最後の最後まで「ソフト」路線、それも「EU残留に限りなく近い離脱」的なものを求める論調の新聞である(日々、ガーディアンとBBCだけ見てると、たまに見るテレグラフやタイムズにぶったまげることになる)。

Theresa May to say UK is 'prepared to accept hard Brexit'
Guardian staff and agencies, Sunday 15 January 2017 08.48 GMT
https://www.theguardian.com/politics/2017/jan/15/theresa-may-uk-is-prepared-to-accept-hard-brexit

(日曜日だからガーディアンではなくオブザーヴァーのはずなのだが、記事クレジットが「ガーディアン・スタッフ」なので以下も「ガーディアン」として扱うことにする)

Theresa May is to announce that the government is prepared to accept a clean break with the EU in its negotiations for the UK’s departure, according to reports.

In a speech to be delivered on Tuesday, the prime minister is said to be preparing to make clear that she is willing to sacrifice the UK’s membership of the single market and customs union in order to bring an end to freedom of movement.

An article in the Sunday Telegraph cites “sources familiar with the prime minister’s thinking” as saying that May is seeking to appease the Eurosceptic wing of her party by contemplating a “hard”, or “clean”, Brexit.


"「ハード」なブレグジット" という表現(これは「ソフト・ランディング」、「ハード・ランディング」にならった表現である)を、 "「クリーン」なブレグジット" と言い換えるというのは、プロパガンダの初歩のようなことだが、実際、Brexit支持の媒体で行なわれていることだ(日本語圏では、報道もシンクタンクも「ハード」という表現を使っているようなので「クリーン」はあまり知られていないかもしれないが、「ハード」も「クリーン」も同じことである)。

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2017年01月14日

BBCも「偽ニュース(デマ)」の検証に本気出していくとの由。でもそもそも「偽ニュース」って何だろね

前項は、本当はトリストラム・ハントの話は導入部にして、これからここに書くことを本題にしようとしていたのだが、書いている途中でだるくなってきたので切り上げて、ハントの辞職だけで読めるようにまとめたものだ。

というわけで本題。

10年ほど前に「ポスト・ロック post rock」という「音楽のジャンル」の命名によって新たなマーケットが開けたように、「ポスト事実(脱事実、事実以後) post-truth」という概念が広く共有されることで、この「恐ろしい美」(イエイツ)の時代に、新たな共有スペースができるかもしれない。「かもしれない」と書いたが、それはmayよりももっと薄く遠い可能性だ。それを濃い可能性にするために、やっていかねばならないこと(英語でいうjob)が山ほどあるというのが現状だろう。

6月の英国でのEUレファレンダム(Brexit)も、11月の米大統領選も、民主的手続きにのっとった投票によって勝った側は、デマや陰謀論をばらまきまくって感情を煽るという手法をとっていた。それも「裏でコソコソ小細工」とかいうレベルではなく、正面から堂々とやった。Brexitに至ってはありえないほどめちゃくちゃな嘘まで使われた(「EUに流れている巨額の金をNHSに回そう」論など。今思うと、日本での「霞ヶ関埋蔵金」とちょっと似てたかも)。「文明化された社会の理性ある人々(国民)」なら信用できると判断せず、投票先から外すはずのデマゴーグは、しかし、最終的に勝利を収めた。「文明化された」云々ってのは、たぶん想像の産物でしかなかったのだろう(2016年に関するベネディクト・アンダーソンの分析を読みたかった)。というか私の目には、「イラク戦争という大嘘を推進したエスタブリッシュメント(政治家であれメディアであれ)」に対する不信が大爆発して、ストーンズのPaint It Blackばりに「全部嘘で塗り尽くしてしまえ!」という感情的ムーヴメントが起きているように見える「どうせ全部嘘だったのだから」と。(イラク戦争は、そのくらい、深い傷となっている。そのことを誰がどのように認めるか……11月の米大統領選前の共和党の「重鎮たち」に関する報道を見て、めったなことでは死なないはずの希望が死んでいくのを私は感じたけどね。)

I look inside myself and see my heart is black
I see my red door, I must have it painted black

Maybe then I'll fade away and not have to face the facts
It's not easy facing up when your whole world is black


かくして、デマや陰謀論、裏づけのないただの印象論の類を「とりあうべきではない(とりあう必要はない)」と扱ってきた文明社会のエスタブリッシュメント(彼らは常に「歴史の正しい側」にいた。「過ち」をおかすのは、ナチス・ドイツであれソ連であれ、彼ら以外の誰かだった)が、その「フフン」という態度を一変させ、「デマ検証」のような(彼らにとっては)ハンパな仕事に乗り出している。1月12日にはついにBBCが本気出すってよということが伝えられた(詳細後述)。

factcheck-ggl.png元々、「デマ検証」というか「ファクトチェック」は、記事を人目にさらす前に内部で行なう工程のひとつであり、それ単体で表に出すようなものではなかったのだが(だから「ハンパな仕事」なのである)、ソーシャル・ネットというインフラが整備され定着して、「個人の日記」のようなものであっても大手新聞と変わらないように機能することがあるというのが日常的になったあとでは、「うちがうちの名前で出すものには、うちが責任を持つので、うちの内部でしっかりチェックする」的な「内部」は、解体されずにはいられない。「内部」だけ守っていても、それが立っているプラットフォームが侵食されてしまえば元も子もない。足元のプラットフォームを守るために、「内部」が外に出てくるのだ。今、Googleを fact check で検索すると、右の図のような結果が表示される。このフレーズで検索することはあまりないのではっきりとしたイメージがあるわけではないが、1年前なら、このように「ファクトチェッカーが乱立している」ような状況は見られなかっただろう(「デマ検証」は、Snopes.comやMuseum of Hoaxesのような「都市伝説や陰謀論、詐欺対策専門の情報サイト」がやってることで、一般的な報道機関が扱う場合は個別の記事でやっていたと思う)。

ソーシャル・ネット上では何年も前から「ファクトチェック」系のアカウントは存在していた。アイルランド共和国(まさかと思うような誤解が日本語圏でちょっと流行っているようなので一応書いておくが、アイルランド共和国はナショナリズムゆえにアイルランド語を掲げてはいるが、実際に日常の生活や政治の場で使われている言語は英語であり、アイルランドは英語圏である)の首都ダブリンで立ち上げられたベンチャーのStoryful(2013年12月によりによってNews Corpに買収されたが)は、特にTwitter上に流れている情報が事実であるかガセかについてのチェックを行なうなどするファクトチェック専門の会社で、「中の人」たちは(2000年代のアイルランドの不況で縮小された大手メディアを去った)ジャーナリストなど経験豊富な「裏取りの専門家」たちだ。クライアントは基本的に大手メディアで、Storyfulのおかげで「釣られずに済んだ」メディアも多くあるだろう(以前、何のときだったか、BBC NewsがStoryfulのチェックについて大きく書いてたことがあった……あれかな、欧州の活動家気取りのアーティストが「シリア内戦についてのニセ映像」を「意識啓発のため」とかいって流したときかな)。今はTwitterでは「今日のニュース」のフィードと、ほのぼの系動物映像などを流しているが(Storyfulはソーシャル・メディア・ユーザーの映像のライセンシングも行なっている)、以前はTwitterで直接debunkingを行なっていた時期もある。

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英国的な、あまりに英国的な(ヴィクトリア&アルバート博物館の新館長)

デマや陰謀論、および、よりマイルドなところでは「ただの印象論」によって行なわれる情報操作が、「文明化された社会 civilised societies」において急にリアルなものとして立ち現れて、「ポスト事実(脱事実、事実以後) post-truth」という言葉を与えられ、概念化したのが2016年だった。「総体としての人々(国民)は、常に理性的・合理的で賢く正しい選択をする」というそれまでの暗黙の前提を、唐突にひっくり返したのが、6月のBrexitだった。

それまでは、「デマ・誤情報・印象論による煽動」が「民主的な意思決定」の末の勝利につながるということは、少なくとも表向きは、現代の英国のような文明世界の盟主たる国で起きるようなことではなかった。フレデリック・フォーサイスなどの小説家が物語の舞台とする「アフリカの小国」(植民地主義的な見方でいえば「辺境」)や、政府が情報統制をがっつりしている社会主義人民共和国的な国でならば起きる、というようなことだった。

Brexitの英国の政治は、いちいち日本語になりゃしないようなニュースを見ていると、実にカオティックで非生産的で、何にもならないことを延々とやってきた。レファレンダムの結果が出た瞬間、保守党の政治家たちは内部分裂と権力闘争を開始し(ドラマ "House of Cards" そっくりと評された。現在では米国版が有名な作品だが、オリジナルは90年代の英国政界ドラマだ)、労働党の政治家たちは野党 (the Official Opposition) として「離脱派の嘘」を追究するどころか、「EU残留に全力を尽くさなかった党首」(彼は「トニー・ブレアのような勝利を収めることはできない」人物とみなされている。実際、そうだろうと思うが)を下ろすことに全力を傾け始め、労働党の党員たちはますます党首ジェレミー・コービンへの支持を固めて、9月の党首選挙ではコービンがバカ勝ちした。これを私は個人的に「労働党の自殺」と呼んで、そのようにTwitterには投稿している。

そういった非生産的な流れを、いかにも英国らしく静かにしめくくったのが、「コービン下ろし」で活発に動いていたトリストラム・ハント議員の華麗なる転職というニュース(1月13日)だろう。

彼は元々ケンブリッジ大学で歴史学を修め、ロンドンのクイーン・メアリ&ウエストフィールド大で教鞭をとっていた学者である(専門はヴィクトリア朝の社会史。そういう人がマイルエンドにある大学で教えるなんて、マンガか、というようなことだ)。学者時代から、BBCの歴史番組をやったり、大手メディアにコラムを書いたりしていた。親が労働党の人で、功績を認められて2000年にトニー・ブレアによって一代貴族に叙せられているのだが、その親も学者だし、トリストラム・ハント自身パブリック・スクール出のエリートである。若いころから労働党で活動してきたが、政界入りしたのは2010年の総選挙のとき。健康に問題があって引退する議員のあとを受ける労働党候補として、唐突にストーク・オン・トレントの選挙区から立候補した(このときの候補者選定の経緯にはいろいろありそうで、地元の元々の労働党の組織が「反発して対抗立候補」ということにまでなっている)。最近では、2014年の大学教員組合のストライキを破って講義を行なったこと(しかもテーマが「マルクス、エンゲルスとマルクス主義の成立」って、すごいジョーク)で批判にさらされ、大穴のコービンが当選した2015年の労働党党首選では、候補4人のうち最も強くトニー・ブレアの路線を継承していると見られたリズ・ケンドールを支持し、ネットで個人が何の遠慮もなく発言できる場では、トリストラム・ハントをめぐる批判は、私が見るに、「怨念」とか「瘴気」といった域に達していた(今のカジュアルな日本語では「ハントへのヘイトがすごい」などと表されるかもしれない)。

その彼が、このたび、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館の館長となるため、議員をやめるそうだ。これは、お茶ふくのも忘れて真顔で「そうですか、それはようござんした」とカップの中のお茶を一口含んで熟考の間を取って反応せざるをえないくらい、英国的なニュースである。ヴィクトリア朝の研究者にとって、V&Aの館長は、まさに最高の仕事、dream jobだ。

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2017年01月07日

be missingの実例メモ

hattongdntwt.pngさっきTwitterの画面を見たら、Hatton Gardenというフレーズ(地名)がTrendsに入っていた。この地名、ご記憶の方も多いだろう。2015年に大ニュースになった地名だ。

場所は大まかにいえば「シティ」の一角である。もう少し詳しく見ると、ロンドン中心部を東西に走るOxford Streetを東に進んでいくと、Tottenham Court Road駅から東は通りの名前がNew Oxford Streetと変わり、Holborn駅のある交差点の手前からはHigh Holbornとなって、さらに東に行ってChancery Lane駅のところからはHolbornとなるのだが、そのHolbornに交わる南北に走る通りの1本がHatton Gardenだ。マップは下記。



この通りは、ロンドンの宝飾品街で、ダイヤモンドの取引の中心地として知られている、とウィキペディアに書いてあるが、2015年にこの地名が大ニュースになったのも、まさにその宝飾品がらみのことだった。

2015年4月、イースター(キリスト教)と過ぎ越しの祭り(ユダヤ教)がカレンダー上で重なり、町が休暇で休止していたときに、この通りにある貸金庫が破られ、宝石・貴金属が盗まれたことが、連休明けに発覚した。被害総額は£200 million(2億ポンド)と想像もつかないほどで、ときどきとんでもない大泥棒(まさに「大泥棒」と呼ぶにふさわしいような)が出現する英国でも、この事件は空前絶後と言われたのだが、何より人々を唖然とさせたのは、コンクリートの分厚い壁にドリルで穴をあけるという窃盗団の大胆な手口……なんてことを書いてるとこのエントリがいつまでたっても書き終わらないので、そこらへんは報道記事やウィキペディアでご確認いただきたい。被害にあった貸金庫業者はお客がいなくなってしまってつぶれた。

ほぼ2年前のこの事件、容疑者として逮捕された後、起訴され、2016年3月に有罪判決を受けたのは経験豊富な泥棒たちで(ちなみに全員が白人である)、最年長は76歳だった。

……という事件があったのがHatton Gardenという場所なのだが、その地名が2017年1月にまた話題になっている。どういう理由かというと、事件から2年近くが経過した今になって「あら、あたくしの金(gold)がないわ」と気づいた人がいるというニュースがあって、みんなが一斉にお茶ふいたということだ。

私もお茶ふいてニヤニヤしながらTwitterの画面を見ていたのだが、be missingという英語の用例としてなかなか興味深いものが並んでいたので、以下、それを記録しておきたい。

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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