kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2019年04月20日

北アイルランド紛争の死者が1人、増えた。(デリーの暴動でジャーナリスト死亡)

1994年のProvo停戦&ロイヤリスト諸組織停戦から四半世紀が経過する年の、1998年の和平合意から21年目のグッド・フライデー(聖金曜日)を迎える前の晩に、「北アイルランド紛争の死者」が1人増えた。民間人でジャーナリスト。女性。将来を期待される29歳で、数週間内にも書籍が出ることになっており(校了してたみたい)、この先の出版の契約もあった。専門分野は「紛争」のレガシーとトラウマ。

彼女の死は、最初はイングランドではほぼ無視されていたが(イングランドにとって北アイルランドは「よその土地」なのだ)、やがて大ニュースとなり、世界中から彼女を悼む声が集まってきている。葬儀費用などを集めるためジャーナリストたちによるクラウドファンディングも立ち上がった。(彼女自身、とても苦労しながらジャーナリストとして活動してきた人だ。)

記録はNAVERまとめを利用してとってある。まだ完成していないが、このあとまた手を入れるつもりだ。https://matome.naver.jp/odai/2155565677562110001

本ブログでは「記録」とは別に、若干の解説のようなことをしてみようと思う。

最近日本でも「かわいいうさちゃんのイベント」的に商業化しつつある様子が特に100円ショップの店頭で見て取れるイースターは、キリスト教の非常に重要な宗教行事だが、アイルランドでは、現在の(今のところ分断された形での)独立へとつながることになる1916年の蜂起(イースター蜂起)を記念するという歴史的・国家的なナラティヴの機会でもある。

「アイルランド共和国」として独立国家になっている26州では、1916年に蜂起者たちが立てこもったダブリンのGPOの建物の前で、軍事パレード(といってもアイルランドの軍は今は自衛力しか持たず、それも、恥ずかし気もなく「自衛」「国防」を「軍事」「戦争」の同義語としている諸国とは異なり、本当に自衛力)が行われたりする。

一方「英国の一部」として独立前の状態のまま残されている「北アイルランド」、すなわち「北部6州」では、現在もなお、「北アイルランド紛争」までの時代と同じように、「武力を以てのみ、英国からの独立を果たすべし」という主義主張(「フィジカル・フォース・リパブリカニズム」という)を抱いた武装集団が、旗をかかげ軍装にバラクラバにサングラスというスタイルで、紛争で斃れた「同志たち」が眠る墓地までパレードを行なうという、(小規模とはいえ)軍事的な示威行為の機会となっている。

そして彼らは「IRA」を名乗っている。だから、北アイルランドに関心なんか持っていないブリテン本土のメディアが、とっくの昔に停戦し、だいたい武装解除してほぼ機能停止しているProvisional IRA (PIRA) に関する記事に、今なお武力至上主義を奉じているIRAを名乗る勢力の写真を添えることすらある。軍装にきれいな旗の彼らのパレードの写真は、参加人数は少なくてもとても見栄えがするし、一目で「それ」とわかる。(なお、PIRAが今でもギャング団として勢力を持っていること、彼らは銃を持っていること、ときおり内紛で銃撃事件が起きていることは事実だが、もはやそれらは「紛争」時代の「政治的暴力」ではないし、そのように扱われてもいない。)

イースターに軍装で見栄えのするパレードを行なうこういった勢力は、北アイルランド全体でそれができるほどの数を持たない。メンバーや支持者は広い範囲にいるのかもしれないが、パレードを行なえるような地域は数少ない。

そして、北アイルランドから見れば、「川を挟んだ向こう側」なのに「英国の一部」に入っているという、分断の地理的な不自然さを背負っているような都市であるデリー市(DerryかLondonderryかという呼称論争を見れば、そのややこしさがわかるだろう)は、その武装至上主義の勢力がイースターのパレードを行なえるくらいの地域の支援がある。

これらの勢力は、1998年の和平合意(グッドフライデー合意: GFA)を支持していない。というか、2019年の今も武装活動を続けているのは、PIRAがその和平に応じたことに怒ってPIRAから離脱した勢力だ。

そう。彼らの旧称はReal IRA(組織自体は「IRA」としか名乗っていないにせよ……「自分たちこそ本家本元のIRAである」という主張があるので、「IRA」としか名乗らないのだ)。1998年4月の和平合意を支持しない、IRAの中の超過激派・超強硬派だ。1998年8月15日(土)にオマーという「紛争」とはあまり縁のなかった小さな町の商店街に自動車爆弾を仕掛け、9月の新学期前の買い物を楽しむ人々や、スペインから修学旅行に来ていた小学生の一団を殺傷した勢力だ。この勢力が、数年前にデリーを拠点としてきたより小さな勢力と合流して再編した。これも単に「IRA」を名乗っているのだが、IRA諸勢力を区別しなければならない立場(つまり一般の報道など)では、現在は「the New IRA」、または引用符つきで「the New 'IRA'」などと呼ばれている。

GFA後、和平を推進することとなったPIRAが「主流派リパブリカン (mainstream Republicans)」とされる一方で、このReal IRA/New IRAのような勢力は「非主流派(反主流派)リパブリカン (dissident Republicans)」と呼ばれている。

これら「ディシデンツ」には複数の武装勢力があるが、2019年4月の段階で活動しているのはNew IRAだけのようだ(もっともっと規模の小さな集団はあるかもしれないが、ある程度の規模がありテロ組織としての能力があるのはこの組織だけ)。Real IRAの分派よりもっと早い段階で(1980年代に)別の政治的理由によってPIRAから分派したContinuity IRAは、RIRA同様にGFAを支持してなかったが、現在は停戦している(武器庫は持ってるかもしれない)。

繰り返しになるが、彼らは和平合意を支持していないし、現在も武装活動を続けている。2019年1月のデリーのカーボム、2月のロンドンの郵便ボムは、New IRAが「われわれはここにいる」と示すために行ったと考えられる。規模の面では、10年ほど前には「数十人単位にすぎない」と言われていたはずだが、どうやら拡大しているようだ。それも、年少者を大勢加えている。10代の少年たちに「銃を持て、祖国を奪還せよ」のロマンティシズムを吹き込んでいるのだろう。2009年3月の警官銃撃事件(Continuity IRA)のあと、事件の起きたアーマー州の武装集団が身内のSNS(当時はMySpaceか、今はもうなくなってしまったSNSだったかも)で10歳〜12歳くらいの子供をがちがちに武装させている写真を回覧しているのが問題となったこともある。(数年前にイスイス団が子供を武装させて写真を撮っていたとき、「やってることがディシデンツと同じだ」と思ったのはここだけの話。)

New IRAというのは、そういう組織だ。

2019年4月18日の木曜の晩、イースターを目前に控えたこのタイミングで、デリー市のクレガン地区(ここはずっと前からディシデンツの拠点として知られている。有名なFree Derryのゲーブルが記念碑のように立っているボグサイド地区の隣で、おおまかにひとつ市街地側)で、警察の強制捜査が行われた。

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2019年04月18日

彼女たちの地獄

たまたまタイミングが重なっただけだが、今日目にするニュースは若い女性たちの「地獄」の話がずらりと並んでいて気が滅入る。画面の中に、9歳の女子が自殺し、18歳の女子が自殺し、19歳の女子が焼き殺されたという文字情報が連なっている。

以下は相互に関連性のない3つの事件についてのメモである(相互の関連性を勝手に読み取って陰謀論を唱えたり、私がこれらが関連していると主張したりしていると解釈したりはしないでください)。

■アマル・アルシュテイウィさん(9歳)
9歳の女子はカナダのカルガリー市で自殺した。背景には学校でのいじめがあったと考えられ、保護者は学校の教諭に相談したというが、市教育委員会は「いじめを示すものは何もない」と述べ、警察も「捜査が行えるほどの証拠がない」と言っている――日本でもよくある話だ。

これに「ひどい」と憤ると、きっと弁護士先生が信じたがいような上から目線で「現地の法律を見たのですか?」とか「もっと勉強しましょう」などと言ってくださることだろう。

だがこのケースを「学校でのいじめって、どこも同じだね〜」で済ませないものにしているのは、自殺した9歳のアマル・アルシュテイウィさんは、難民だったということだ。3年前、彼女の一家はシリアの戦乱を逃れ、難民としてカナダに定住している。そしてアマルさんはクラスメイトたちから身体的暴力を受け、言葉での暴力も受けていたことを両親に相談していた。

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posted by nofrills at 23:56 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Avast Antivirus (Ver. 19): Gmailの署名欄に勝手に付加される「ウイリスフリー。avast[dot]com」を消す方法

先週、アンチ・ウイルス・ソフトのAvast(アバスト)が起動しなくなってしまい、Avastのサポートサイトで説明されている手順に従って、いったん完全にアンインストールしたあと、再インストールを行なった(この手順に従わないと、完全なアンインストールができないようなので注意)。この一連の手順の中で「セーフモードで再起動」の必要があり、Windows 10だとなんかめんどくさそうな説明が書かれていたのだが(Windows 7までの「F8」が使えないとかで)、私がやったときは、ほっといたら普通にセーフモードで再起動されていた。勝手にアップデートされているWindows 10(ちなみにエディションはHome)で、2019年4月の時点では、セーフモードでの起動について仕様が変わっているのかもしれない(深く調べたわけじゃないので、そのあたりは各自でご確認のほど)。

さて、そうしてAvastを入れ直したあと、ブラウザからGmailでメールを送信したら、フッター部分に勝手に「ウイルスフリー。avast[dot]com」という文言が入ってしまっている。

avast-footer.jpg


gmail-avast-googlesearch.jpgそういえばはるか昔、ウェブ検索してやり方を調べ、このメッセージを消す設定をした気がする。でも詳細を覚えているはずもない。そこでとりあえず「Gmail Avast」という適当な検索ワードでググってみると、みなさん、これに困っているようで、この問題の解決方法を説明したページが検索結果上位に並んでいた。

目にした中で最も日付の新しいApricoさんの「Gmailでavastが勝手にメールのフッタに入れる署名を消す方法!」という記事(2019年9月2日)を参照すると、確かに、「こうだった」と思い出せる内容だ。Avastで[設定]→[一般]と進み、表示された画面で[アバストのEメール署名を有効にする]のチェックを外すだけの簡単なお仕事。30秒もあれば終わる。

おれ、これの設定が終わったらコーヒー淹れるんだ……。

結論から言おう。私がコーヒーを淹れることができたのは、約1時間後だった。なぜか。それは、Apricoさんの記事で説明されていた方法、つまり私自身が以前やったと記憶している方法で必須の画面が、今のAvastでは出てこないからだった。つまり、「Avastで[設定]→[一般]と進み、表示された画面で[アバストのEメール署名を有効にする]のチェックを外すだけの簡単なお仕事」のはずが、「Avastで[設定]→[一般]と進……進めてないんじゃね」となってしまったのだ。



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posted by nofrills at 20:00 | software | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月14日

東京では、まだ桜が咲いている。

4月13日の今日も、東京のこのあたりの住宅街の中では、まだ桜(ソメイヨシノ)が咲いている。

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1本の木に、葉っぱだけになった枝(それも、葉っぱがもうかなり大きく育っている)と、「満開」状態の花だけの枝が同居しているものもある。下の方の枝は葉桜、上の方は花。背景には半月。

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Weather Newsに、「今年の東京の桜、ちょっと変?暖冬と季節外れの寒さで"マダラ咲き"に」という記事が出ている。いわく、上野公園の桜が満開だった期間は、過去5年(2014年から18年)平均は5.4日だったが、2019年は10日もあり、2014年以降で最長だったという。この理由について、日本花の会樹木医の和田博幸さんが「この冬は暖冬で休眠打破がしっかり行われないため目覚めが悪かった上に、開花後は季節外れの低温となってしまったため開花が一気には進まず、マダラ咲きを助長」したと考えられると説明している。

確かに今年は「マダラ咲き」だった。上述したように、1本の木の中で極端に状態が違っているのは満開になったあとだけではなく、咲くのもじわじわ、じわじわという感じで時間がかかっていた(下の方の枝が満開になったあとも、上の方はつぼみのままだった)。

とはいえ、すでにとっくに全部散ってしまっているような木もある。だがそれは一日中交通量が多い道路沿いだったり、商業地区だったりして、気温が安定して高そうな場所だ。

でも、3月の終わりに散歩に出たときには、かなり大規模な桜並木になっている場所で、日当たりなど特に条件に違いはなさそうなのに、「この木はもう満開に近くて、その隣の木はまだ2分咲きくらい」ということになっていた。


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posted by nofrills at 00:02 | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月03日

Awesome Screenshotで「ネットワークエラー」が起きてスクリーンショットの画像がダウンロードできない場合の対処法

PC (Windows 10) + Chrome + Awesome Screenshot でウェブページ全体のスクリーンショット(キャプチャ)をとった際に、「ネットワークエラー」が出てダウンロードが失敗することがある。

キャプチャをとる操作をしてEditの画面に行くまでも時間がかかることからも明らかな通り、出来上がった画像ファイルのサイズが大きすぎることが原因だ。

その場合、直接ダウンロード (Local save) するのは無理だが、Google Driveに送ることはできる。今さっき、約10MBのスクショで成功した。

やり方は簡単で、

  1. Awesome Screenshotで "Capture Entire Page"

  2. 出てきた画面(Editの画面)で必要であれば画像編集の操作をして "Done"

  3. 操作パネル(画面右側)で "Local save" の欄にあるボタンを押してみて(ここまでは通常の操作)

  4. 「ネットワークエラー」が出たら、"Local save" の欄の上にある "Cloud save" から "Google drive" を選択(下図)
    awscs.png

  5. Googleにログインしていなければここでログインして、Google driveへの送信の操作をする(公開範囲の設定などもここで)

  6. Google driveへの送信は数分かかった(お茶を淹れに行っている間には終わっていた)

  7. 操作パネル内に表示されているURLにアクセス

  8. たぶん「プレビューできません」というメッセージが表示されているのでプレビューせずダウンロード



こうして、1350 x 34150 ピクセルのキャプチャ画像(約10MB)を無事ダウンロードすることができた。このように、直接のダウンロードもクリップボードへのコピーも失敗するような場合は、Google driveへの保存が最も手っ取り早いと思われる。

以上、覚え書き。

posted by nofrills at 07:00 | software | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月02日

「新元号の隠されたメッセージ」的な陰謀論が出る日に備えた記録

今日2019年4月1日、新しい元号が決定され、発表された。個人的には、役所の書類の記入でしか使わないと思うが(しかも記入のたびにいちいち「今何年でしたっけ」とか「2018年って平成でいうと……?」とか尋ねることになるに違いないが)、「令和」という元号になったことやその出典が万葉集だということは忘れずにいられるだろう。

その様子を私はTwitterで自分が作成・管理しているNewsのリストで見ていた。このリストは英語圏の報道機関やジャーナリスト、学者が中心で、日本のアカウントも少しはいっているというもので、日本語圏が朝から大騒ぎになってることはここを見ててもわかったが、具体的にどう大騒ぎになってるのかはよくわからなかった。そもそもテレビないし、別に気にならないトピックだからどうでもいいと、ネットの大海に出て様子をうかがうこともしてなかった。

そういう次第で、発表されたあとの騒ぎのようなものも特に見かけていないのだが、ひとつ、秀逸なジョークが流れてきた。それは「令和」という文字の中に「アベ」を読み取るという荒業を見事に成し遂げたもので、座布団5枚くらいあげてもいいんじゃないかと思った。何なら、タモリ倶楽部のTシャツを添えてもいい。

その荒業は、ざっくり言えば、「神」という漢字の中に「ネコ」というカタカナを見て取るのと同じ流儀でなされている。それは、看板に書かれた「神」の字のつくりの一部が消えて「ネ」と「コ」が浮かび上がっている、という偶然の発見が元になっているらしい(本当にそんなふうにきれいに文字の一部が消えた看板が実在したのかどうかは私は知らないが)。実際、「ネコ」と読めはするが、「コ」の字の縦画の長さ(高さ)が足りていないので、とてもアンバランスな字面になっている。でもおもしろいからいい。言葉として意味もあるし、何よりかわいい。

nekotowakaiseyo.jpgこの「神」と「ネコ」はすっごい昔から「ネットのネタ」(英語圏でいうmeme)として有名なもので一種の「パロディ」と言えるものだ。特に有名なフレーズ(元になったフレーズ)が縦書きの「ネコと和解せよ」(より厳密には「ネコ」の部分を半角カタカナにする)で、私が最初に目にしたのはいつだったか、覚えていないが、RSSリーダーが登場する前のこと、つまりウェブサイトの更新を知るために毎日わざわざサイトをチェックするか、「アンテナ」的なものを使っていた時代だったように思う。むろんTwitterとかが出てくるずっと前、ブログとかmixiより前のこと(「Web 2.0」の前のこと)だったと思う。

そのくらい昔からあるから、うちらインターネット老人会の人々は「ネコと和解せよ」と、「コ」の字の高さが足りてなくない横書きのテクストを見ても、元の写真(変になってしまった看板)を思い浮かべることができるし、そもそもそんなルーツなどいわずもがなで、誰にも説明する必要などないことだと了解している。だが、説明が必要ないのは老人会の間でだけのことで、なおかつ「ネット上のネタ」は老人会の面々がかつてよく知っていた「雑誌の投稿コーナー」や「宝島のVOW」のような消え物では全然なく、ネットにアップされて人々の間を流通している限りは、常に「そこにある」状態になる。好事家が古本屋を回って探すようなものではなく、中学生が検索エンジンに適切なワードを放り込むだけですぐに出てくる。そして、20年前のネタが今日のネタのように流行するということも普通にあるし、その場合、そのネタのルーツなど誰も知らなくても、ネタそのものが意味が通っておもしろければ広く共有されていく。

実際、数年前(「数年」といっても老人の言うことなので10年くらいかもしれないが)にTwitterで「ネコと和解せよ」が爆発的に流行ったときには、多くの人が「ネコ」は「神」という文字の一部であるということを認識していないようだった。なぜなら「猫と和解せよ」や「ねこと和解せよ」といった表記も大量に流れていたからだ。解説サイトには横書きで、「コ」の文字も普通にバランスの取れた形で、元ネタの色だけを再現した「ネコと和解せよ」のフレーズが見られた。つまり「元ネタ」がほとんど全く意識されていない形。単にキーボードを「neko」と打鍵しただけで生じる文字列が、「神」という漢字の一部を塗りつぶすという手間のかかる方法で生成する「ネコ(に酷似した文字列)」と同列に並べられていた。

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posted by nofrills at 01:38 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月25日

英国では怒りが大爆発した人々がすごい勢いでネット署名をし、デモを行うなどしているが、私は風邪で、東京は桜が咲き始めている。

風邪を引いた。単にだるいんだと思っていたら風邪だった。

その間に画面の向こうではいろんな動きがあった。英国では、Brexitについての政権・政府の仕切りの悪さに人々の怒りが爆発して、「Brexit反対、Article 50を撤回せよ」というネット署名が1日で300万を超える勢いで集まっていた(一方でフランスでは、政府に対する怒りを爆発させたのだという人々がまたパリの街で暴れていた)。署名が300万を超えた翌日には、ロンドンで「Brexit反対」(Article 50撤廃要求、および/または第二のレファレンダムことPeople's Vote要求)のデモが行われ、ざっくり100万人が集まった。あまりに人が多すぎて、「行進」にならなかったらしい。

そこまでは先週、風邪引く前に予想していた通りなのだが、土曜日・日曜日と様子がおかしい。テリーザ・メイに対する退陣要求が出ているというのだ(いずれはそうなるにせよ、まだちょっと早いだろう)。3月18〜22日の週に、EU27か国の側は英国に対し、「テリーザ・メイがEUとの間で取りまとめた合意(協定)案が議会下院で可決された場合は5月22日まで、可決されなかった場合は4月12日までの期限日の延期を認める」と伝えた(英国は6月末までの延期を求めていた。これが拒否された形。ようやく、Brexitの日程に関する主導権は英国ではなくEUが握っているということが英国のBrexit過激派にも伝わっただろうが、遅すぎる)。

これが英議会で受け入れられるかどうかはまだ確定はしていないが、受け入れられないと考える理由はなさそうだ。つまり、「3月29日の合意なき離脱」だけは回避された。そのあと? どうなるかわからない。「合意案の可決」が当面の関心事だが、これまで2度にわたってその「合意案」に不支持の票を投じてきた議員たちの何人かが、ことこの期に及んで「苦汁を飲んで支持する」などといったことを表明しているらしいし、修正もいろいろ提案されて、それぞれ採決されるだろう。だがもう私は集中力がとっくに切れている。今のこの状態についても「んなん、英議会で合意案が2度目に否決されたときにやっとけや」としか思わない。こんなんに振り回されっぱなしの人々がたくさんいるということが、気の毒でならない。

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posted by nofrills at 07:00 | flickr | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月17日

変化したアイルランド、首相が男性パートナー同伴で外交

今日、3月17日はセント・パトリックス・デイ(アイルランドの守護聖人、聖パトリックの亡くなった日)で、アイルランドの祝日。世界各地がシンボルカラーの緑に染まるのは、ここ20年くらいの間にアイルランドがプロモーションを成功させたためだが、元々この「3月17日の緑祭り」はアイルランドが発祥というより在外アイルランド人、特に北米の人々が始めたものだ(ソース)。

アイルランドと北米の縁は深い。映画でもその《物語》に関するものは非常にたくさんある。『タイタニック』や『ギャング・オヴ・ニューヨーク』のような歴史大作もあれば、『ブルックリン』のような一人の女性の人生と内面をじっくり描いたものもある。私は今日は10年以上ぶりにジム・シェリダンの『イン・アメリカ』を見た。天使のような子供から目が離せない、センチメンタルなメロドラマ(とてもよく作られている)。



一方、コンピューターの画面の中は通常運転で、ニュージーランドで発生したモスク襲撃テロに関連して極右がなんちゃらといったフィードがあふれていて、アイルランドはBrexitの話とラグビーのSix Nationsの話(25-0だったのに最後に意地を見せてトライを決めて25-7にするあたり、アイルランドらしいと思った)のフィードがたくさんあるが、中には、一部Brexitと関連して、セント・パトリックス・デイでの訪米外交のフィードもあった。

セント・パトリックス・デイでの訪米外交はアイルランド共和国の政治トップだけでなく、北アイルランドの政治トップも行なっており、Brexitがあの状況のなか、DUPのアーリーン・フォスターはワシントンDCから写真をフィードしてきたりしている。

一方、アイルランド共和国はレオ・ヴァラドカー(ヴァラッカー)首相がDCに行っている。彼はアイルランド生まれのアイルランド人だがお父さんがインド出身の医師で(だからアイルランドの白人優越主義者には嫌われているし、「移民」呼ばわりもされている)、アイルランド初の人種的マイノリティの首相なのだが、それ以上に彼が注目されているのは、ゲイであることをオープンにしているうえで与党党首に選出され、首相となったということだ。

同性カップルが珍しくなくなった現在では、外交行事では「男の首相とファーストレディ」や「女の首相とファースト・ハズバンド」というのが慣習だった場面で、「男の首相とファースト・ハズバンド」「女の首相とファーストレディ」ということになることもある。昨年はヴァラドカー首相は確か外交的な場には単独で出席し、カジュアルな場でだけパートナー(男性の医師)を伴っていたと思うが(要確認)、今年はパートナー同伴で外交行事をこなしている。

中でも注目され、ウェブで実況中継のようになっていたのが、現政権の中でもものすごい保守派として知られるペンス副大統領のもとを訪問したときのことだ。


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posted by nofrills at 23:58 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月13日

Flickrの縮小

当ブログがファビコンにしている写真は、2008年5月に撮影した公共の花壇のナデシコだ。カメラを持った腕を目一杯下げて、ファインダーを見ずに適当にシャッターを押して歩いた結果の一枚で、Creative Commonsのライセンスで、写真共有サイトFlickrにアップしてある

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しばらく前から告知されていたように、Flickrが無料サービスを大幅に縮小する。この1月からは、Proアカウントを取得しないと(=無料ユーザーだと)全部で1000点までしかアップロードしておくことができなくなっていて、既に1000点を超えてアップロードしているユーザーはログインすると「Proアカウントに切り替えましょう」と促す画面が表示される。Proアカウントは、月払いだと$6.99/month, 年払いだと$4.99/month, つまり$59.88/yearとなる(Source)。ProアカウントではAdobe Creative Cloudが15%オフになるなど外部の優待も受けられる。

既にアップロードされている写真・ビデオで、1000点を超えている分については、3月12日(米国時間。つまり日本時間ではがっさりいって3月13日)以降、順次削除されていくことになる(当初は2月に削除開始予定だったのだが、データのダウンロードがうまくいかないなどしていてユーザーからの意見があり、1ヶ月延長された)。

ただし、Creative CommonsのライセンスやPublic Domainで公開されているなど「コモンズ」(広く共有されるべきもの)の一部としてFlickrで公開している写真・ビデオは、削除対象とはならない(この点、少し迷走したが、最新の2019年3月8日発表の方針では、CCライセンスにしたのがいつであるかは問わず、Flickr.com上にアップされたCCやPDの写真はすべて、削除対象外にする、と説明されている)。また、既に亡くなったユーザーのページはそのまま保全されるという(Flickrは基本的に「削除されない」という前提で利用されてきたサービスなので、現時点で既に世を去っているユーザーへの対応としては、正しい判断がなされたと思う)。

自分がアップロードした写真・ビデオは、削除が始まる前なら全部バックアップを取ることができる。3月13日に書いても「今さら」感があるかもしれないが、記録のために書いておくと、Flickrにログインした状態でAccount → 画面右下の "Your Flickr Data" の欄で青いボタンを押す、というシンプルな手続きでダウンロードできる(その場ではできず、DLの準備が整ったらメールでお知らせが来るという形……メール来てなかったけどw)。私の場合、写真は6000点を超えているのだが、1時間もかからずにDL準備ができていたようだ。複数の圧縮ファイルに分割してDLできるようになっているから、ファイルサイズが大きすぎてなかなかDLし終わらないというトラブルもかなり回避できるだろう。DLリンクは3週間有効になっている。

d-rdy.jpg

各種ヘルプは、サポート・フォーラムの下記のスレッドの最初の投稿にまとまっている。
https://www.flickr.com/help/forum/en-us/72157676293604137/

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posted by nofrills at 22:00 | flickr | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月10日

今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (2): ブラディ・サンデー事件加害兵士らの訴追の問題、軽視される「法の統治」

今週の北アイルランド関連ニュースから、先ほどのエントリで最近のディシデント・リパブリカン組織の動向についてまとめたが、本エントリではより深刻な「法の支配」や「国家の暴力」についてまとめておきたい(「まとめる」=「一ヶ所に集めておく」であり、「内容を解説する」ではない)。

ここで何をやるか、先ほどのエントリから抜粋すると:
つい先日、パット・フィヌケン弁護士殺害事件についての司法の判断が出たばかりなのだが、来週は1972年1月30日デリーの「ブラディ・サンデー(血の日曜日)」で市民を撃ち殺した英軍兵士の訴追の可否をめぐる結論が出されることになっていて、英保守党の政治家たち何人かが「仕事をしただけの軍人を殺人罪に問うとは」というスタンスでわめき始めており、その中で現在の北アイルランド大臣カレン・ブラッドレーがかなりなトンデモであることが発覚(ブラディ・サンデーについては2010年に「撃ち殺された人々は全員無辜の市民」と結論したサヴィル卿の調査報告書が出たときに、当時の首相デイヴィッド・キャメロンが「英軍の行為に正当化の余地なし」と認めて謝罪をしているのだが、今の保守党の政治家たちはそれを無視している)、それと同時に、今週は1971年8月のバリーマーフィー事件(デリーのブラディ・サンデーの約半年前に、ベルファストで英軍が市民11人を撃ち殺した)のインクェストが始まっていて、非常につらい事件のディテールが改めて語られている(倒れた人を英軍は撃った、というような)。


てんこ盛りだ……。作業が終わる気がしないが、やるしかないだろう。先ほどのエントリでも、いつものような細かいリンクは入れていないが、ここでもそういうのは省略する。詳細を調べたいと思った方は適宜英語で検索を(日本語で検索してもほぼ何もわからないと思うが、検索ワードによれば&運がよければ大学の研究者の論文PDFが検索結果に出てくるはずで、それを読めばよくわかるはず)。

今回の動きが最初にTwitterで見られたのは、3月はじめのことだった。

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2019年03月09日

今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (1): ディシデンツ周り(英軍基地襲撃・警官銃撃から10年、ロンドンの爆発物)

今週(3月3日から9日)は北アイルランド方面が騒がしかった。それも、昨今の主要な関心事であるBrexitとはほぼ関係のないことで。

まず、何もなくても「今週はこういう週」ということがわかっていたのは、2009年3月の2つのテロ事件から10年を迎える、ということだった。

1件は2009年3月7日夜のアントリム州英軍基地襲撃。マセリーン基地(駐屯地)でアフガニスタンに向けて出発する直前にちょっと時間があったのでピザを頼み、配達を受け取りに出た20代初めの兵士(非武装)2人が、基地の外にいた銃撃犯に撃ち殺された事件で、未解決だ。これはReal IRAが犯行を認めていて、2人が起訴されて裁判が行なわれたが、1人は無罪となり、ここで有罪になったもう1人も控訴審で無罪となった。ちなみに2人とも銃撃の実行犯として起訴されたわけではなく、つまり、英軍兵士を基地の入り口で銃撃した当人を、当局は起訴に持ち込むことすらできていない。

もう1件は同年3月9日のクレイガヴォン警官襲撃。通報を受けて駆けつけた警官を銃撃者が待ち伏せして殺すという陰惨極まりない事件で、こちらはContinuity IRAだった(この事件でCIRAの存在を知った人も多かったかもしれない)。この事件では2人が起訴されて2人とも有罪になって、現在刑務所の中にいるが、彼らの支援者というか「反英」な人々が何かと賑やかである。

今これを書いているとき、今日は3月9日で、私は今日は定点観測ということでBBC News NIのページを開きっぱなしにしているが、クレイガヴォンの事件についての「あれから10年」の記事は見かけていない。7日のマセリーン基地襲撃事件については、未解決ということもあって「あれから10年」の記事を見たのだが。

そういうタイミングで、ロンドンの交通の要衝3箇所に郵便で爆発物が送られた。翌日にはスコットランドからも同様の報告が出た。

さらに、つい先日、パット・フィヌケン弁護士殺害事件についての司法の判断が出たばかりなのだが、来週は1972年1月30日デリーの「ブラディ・サンデー(血の日曜日)」で市民を撃ち殺した英軍兵士の訴追の可否をめぐる結論が出されることになっていて、英保守党の政治家たち何人かが「仕事をしただけの軍人を殺人罪に問うとは」というスタンスでわめき始めており、その中で現在の北アイルランド大臣カレン・ブラッドレーがかなりなトンデモであることが発覚(ブラディ・サンデーについては2010年に「撃ち殺された人々は全員無辜の市民」と結論したサヴィル卿の調査報告書が出たときに、当時の首相デイヴィッド・キャメロンが「英軍の行為に正当化の余地なし」と認めて謝罪をしているのだが、今の保守党の政治家たちはそれを無視している)、それと同時に、今週は1971年8月のバリーマーフィー事件(デリーのブラディ・サンデーの約半年前に、ベルファストで英軍が市民11人を撃ち殺した)のインクェストが始まっていて、非常につらい事件のディテールが改めて語られている(倒れた人を英軍は撃った、というような)。

これらのことを、大きく2つに分けて整理・記録しておこうと思う。まずこのエントリでは10年前のReal IRA, Continuity IRAと、今のNew IRA(元Real IRAなどが再編した集団)関連、ディシデント・リパブリカン関連のトピックを。

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posted by nofrills at 23:08 | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月04日

「モモ・チャレンジ」は、心配のあまり、大人たちの反応が過剰になった事案。「フェイクニュース」ではなく。

この2月末、一度見たら目に焼きついてしまうような奇怪な顔写真のついた報道記事のフィードが、Twitterで私の見ている画面にいくつか流れてきた。往年の「口裂け女」と貞子を合体させたような顔写真で、フィードされている記事はガーディアンのものだった(ガーディアン記事のTwitter Cardで表示される写真が、その奇怪な顔のものだった)。「うげ、何じゃこりゃ」とは思って記事URLをクリックして読んだ記事の内容を、いくつかのツイートに分割して投稿し始めた私は、それを途中で中断して投稿したツイートを全部消した。この件については、連続したツイートの一部だけが拡散されても困ると思ったからだ。

というわけで、さくっとツイッターに流して終わるということにはできなかったのだが、かといってブログに書くこともしなかった。「書くほどのことではない」というより、正直、「書くにしても、どこに重心を置けばいいのか」ということがわからなかったからだ。メディアが別のメディアを批判したりしている声がでかかったし、過去に類例があったのを思い出してその記事の外でネット検索で調べてみたがはっきりしないことが多くて、何というか、全体像をつかみかねてしまっていた。

が、この騒動の発端近くにいたのが北アイルランド警察だった(そして「ねとらぼ」に北アイルランド警察のFBのキャプチャが載っていた! PSNIの「ねとらぼ」デビューなんて、想定外すぎる)という奇遇も手伝って、全体を見渡してみることができた。

下記に書いてある。

「こんな怖い話を聞いたんですけど……」で始まったネット上の "都市伝説": 「モモ・チャレンジ」とは
https://matome.naver.jp/odai/2155168676005142901


問題の奇怪な顔写真は使わないように編集してある(画像を非表示にしてある)ので、そういうのがいやな人が見ても大丈夫だ。私個人はそういう編集はあまりしたくないのだが、ああいう「衝撃画像」的なインパクトのある写真を何度も何度も繰り返し目にすることが精神衛生上よくないということは自分の体験からもわかっているので(イスイス団の暴力の最盛期に本当に懲りた)、「検閲」と批判されるかもしれないが、画像を非表示にした。英国のメディアはそういうところは配慮せず、がんがん奇怪な写真を使ってくるので、けっこう消耗する。(元々、例えば米国のメディアより、何というか、センスがアレだし。)

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posted by nofrills at 23:35 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ある言説や思想がトンデモであることは、それが社会的に共有されることを全然妨げない: 陰謀論についての注意喚起のために

2001年9月11日の所謂「米同時多発テロ」から17年半になろうとしているときに、今さら「911陰謀論」を自分のフィルターバブル内で見ることになるとは思っていなかった。

だが、逆に考えて、17年半も経過していれば、あのトンデモな陰謀論が「今までになかった新たな説明」みたいに見える人も、それなりに多くいるだろう。ちょうどうちら世代の人々が「アポロは月に行っていない説」など、教科書で事実として扱われていることに「疑問」を「突きつける」言説に新鮮味を覚えたのと同じように。そういうトンデモ言説の中には、南京虐殺否定論のように、一部のトンデモ界隈の外に出て書店の棚をそれなりに埋めるほどにメインストリーム化しているものもある。ホロコースト否定論をぶちかます医療関係者の発言力は、ここ数年で強まりこそすれ弱まってる気配はない(ホロコースト否定論をぶちかましても、「信頼される発言主」というステータスは揺らいでいない)。

トンデモであることは、その言説や思想が社会的に広く共有されることを、全然妨げない。

それだけに余計に、この陰謀論については、それが「トンデモ」だということを知っている者が書いておくべきだろうと思う。たとえその言説や思想そのものをストップすることができなくても(ましてや「潰す」ことなど絶対にできやしない)、それに近づいてしまった人にとって、「そっちは危険だよ」と注意を促すことくらいは、少しはできるだろう。

というわけで、先日のTwitterでの発言をここにまとめておく。


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2019年03月03日

『操られる民主主義』の原著など、ジェイミー・バートレットの電子書籍が300円台なので買うべき。(付: Amazon Kindleで洋書を買うときの注意)

ここ数年、ビッグデータだAIだフェイクニュースだっていうのと並行して、英語圏では「情報通信技術と民主主義」についての調査・検証や考察がなされていて、2018年(特に後半)は日本語の翻訳書の出版も続いた。

そのひとつがジェイミー・バートレットの『操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(草思社)。電子書籍もあるので、書店に出向かずとも読むことができる。

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか
ジェイミー バートレット
草思社
売り上げランキング: 32,318


本書内容より
・アンケート回答がビッグデータに吸い込まれていく
・自分が知っている以上に自分のことが知られている
・トランプの大統領選とケンブリッジ・アナリティカ
・イギリスのEU離脱、プーチンのサイバー戦の正体
・ネットは人びとの抑えられた感情を増幅していく
・怒りの共有が細分化された「部族」を生みだす
・プラットフォームを持つ企業が市場を独占する
・AIは仕事の格差を産み、社会の分断が加速する
・仮想通貨とブロックチェーンが揺るがす社会基盤

◎本書もくじより
イントロダクション テクノロジーが社会を破壊する?
第1章 新しき監視社会――データの力は自由意志をどのように操作しているのか
第2章 「部族」化する世界――つながればつながるほど、分断されていく
第3章 ビッグデータと大統領選――デジタル分析が政治のありかたを揺るがす
第4章 加速する断絶社会――AIによって社会はどうなるのか
第5章 独占される世界――ハイテク巨大企業が世界をわがものとする
第6章 暗号が自由を守る?――国家を否定する自由主義者たち
結論 ユートピアか、ディストピアか
エピローグ 民主主義を救う20のアイデア


このテーマでのバートレットの講演:



で、昨日調べものでamazon.co.jpである書籍のページを閲覧したとき、そのページの下部に、
  The People Vs Tech: How the Internet Is Killing Democracy
  Jamie Bartlett
  ¥320
と表示されているのに気付いた。というか正確には、「¥320と見えたのは見間違いで、¥1,320かな」と思ったので二度見した。

見間違いではなく、Kindle版が本当に320円だった。その場でamazonにログインしてこのKindle版を購入した(そして「デジタル積読」をまた増やしてしまった……)。


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2019年02月28日

「国家テロ」の真相に光は当てられるのか――パット・フィヌケン殺害事件に関し、英最高裁判断

30年前の1989年2月12日、北アイルランドは「紛争」のさなかにあった。その日、北ベルファストの「カトリックの地域」のある家に銃を持った男2人が押し入り、一家の主を14回撃って殺した。日曜日の晩のことで、カトリックの一家は揃ってサンデー・ディナーのテーブルを囲んでいた。テーブルの下に隠れた子供たち3人は、父親が目の前で無残に撃ち殺されるのを目撃した。

殺害されたのはパット(パトリック)・フィヌケン。39歳で、職業は弁護士(ソリシター)。弁護士といっても紛争時のことだ。彼は多くのリパブリカンの弁護士を務めた。クライアントのなかには、ボビー・サンズをはじめ1981年のハンストで落命した者たちもいたし、警察に問答無用で撃ち殺された人の遺族もいた。パットの3人の兄たちはIRAのメンバーとして知られる存在だった。(ただしパットは、弁護士としてロイヤリストをクライアントにしたこともあり、ダブリンの大学で法律を学んでいるときに知り合ったプロテスタントの女性を妻としていた。)

というわけで、パット・フィヌケンの殺害はただの「殺害」ではなく「暗殺」だった。事件後、UDAが実働部隊UFFの名義で犯行声明を出し、「パット・フィヌケンはIRAの幹部だったので殺害した」と述べた。しかし、彼がIRAの一員だと裏付けるものはなかった(それでも今なお、ネット上ではロイヤリストたちがその主張を繰り返している)。

Killing Finucane: Murder in Defence of the Realm
Killing Finucane: Murder in Defence of the Realm




書いてると長くなって書き終わらないのではしょるが、この暗殺事件は警察(当時の北アイルランド警察、つまりRUC)とロイヤリスト武装組織との結託 (collusion) が背景にあった。1998年の和平合意(ベルファスト合意/グッドフライデー合意)のあとで紛争を「過去」として扱い始めたころ、英国政府とアイルランド共和国政府が「まったくの部外者」である引退したカナダの判事ピーター・コーリー氏を責任者とし、フィヌケン事件をはじめとする殺人事件について、警察と武装組織との結託に関する調査を開始した。コーリー氏は2004年に調査の結果を報告書にまとめ、フィヌケン事件など4件の殺人事件について、パブリック・インクワイアリーの実施による真相究明を勧告した。

しかし2005年、英国政府(当時は労働党ブレア政権)がパブリック・インクワイアリ実施法を改訂し、フィヌケン事件など4件についてパブリック・インクワイアリを行なうことが事実上できないようにしてしまった。その後、いろいろあったが3件についてはパブリック・インクワイアリという形を取らずに最終的な結論が出されたが、フィヌケン事件だけは、パット・フィヌケンの遺族(目の前で父親が殺されるのを見た息子は長じて父親と同じ弁護士となった)がパブリック・インクワイアリの実施を求めてきた。

その件でひとつ、大きな節目となることが、2019年2月27日にあった。以下、ちゃんと文章を書いている余力がないのでTwitterの貼り付けだけだが、リンク先も参照すれば話の内容はわかると思う。


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2019年02月26日

Twitterが自動で表示してくれる「重要なツイート」が、なかなかポイントを押さえている件

Twitterでは基本的にHomeはlatest Tweetsを表示させるようにしてあるのだが、しばらくHomeを見ずにいると勝手にリセットされて、top Tweetsが表示されていることがある(スマホのアプリの場合)。

Top tweetsというのは、自分が見ていなかった間(ログインしていなかった間、アプリを立ち上げていなかった間)、自分がフォローしている人たちがツイートしたりリツイートしたりしたものの中で、システムが「重要」と判断したもののことだ。私の場合、私が寝てた間とか仕事してた8時間くらいの間になされた米英のジャーナリストや学者、活動家の発言のうち、その日の主要なトピックに関連したものが表示されていることが多い。

定番としては英国ではBrexitの話(私がTwitter見ていられる時間にうんざりするほどフォローしてるんだけど、それでもまだ見落とされるツイートが大量にある)、米国では、少し前になるが連邦政府機関閉鎖の話や国境の話が目立っていた。ほか、アフリカ特派員がツイートしているDRCなどの情勢など、ガーディアンやロイター、BBCのウェブサイトをチェックしてても目にしないようなトピック(それも6時間前にツイートされたもの)が流れてきていたりしてて、機械的処理にしては精度が高く、なかなか実用的だ。私がフォローしている人のなかには、例えば「アメリカ人の軍事系ジャーナリストで、ツイートの半分くらいは雑談やスポーツの話」という人もいるのだが、雑談やスポーツの話がtop Tweetsとして表示されることはまずなくて、そのアカウントからは地政学や国際関係についての話がtop Tweetsとして表示されている。

というわけで、(日本語で見たときにはどうなのかわからないが)英語で見る限り、Twitterはなかなかがんばっているという印象を抱いていたのだが、昨日は「なかなかがんばっている」どころか、「有能な秘書がついている」ような感覚になった。

個人的にBrexit関連に気を取られているので、米国、というか米大陸の話題はあまりよく見ていないのだが、ここ数週間でベネズエラ情勢がかなり緊迫してきていて、この数日はいよいよアレな感じになってきていることは把握している。これについてTwitterのような場で下手に発言するとロックオンされたり「CNNを信じているアホ」と罵倒されたりすることになるから、自分からツイートはほとんどしていないが、見出し程度は見ているし、ツイートされてきた報道記事のURLをクリックしたりもしてはいる。だからTwitterでは、「@nofrillsのアカウントの中の人は、ベネズエラ情勢について少しは関心がある」というくらいには把握していることだろう。私がTwitterに渡している情報(閲覧履歴など)で十分解析できる範囲で把握できることだ。

そうやってウェブサービスの運営側に自分の情報を渡した場合、少し前まではフィードバックといえば「表示される広告が『あなたの関心にあったもの』になります」とかいう程度だったのだが(しかし私のネットでの調べものは、例えば翻訳の作業で「人体の部位の名称を調べる」とかいうことがほとんどだから、それに基づいて「関心」を判断されて「膝のサポーター」のようなものの広告がガンガン表示されても、個人的な関心とは関係ないというオチがついている)、Twitterのような場ではもっとダイレクトに「自分のフィルターバブルの中に入ってくる情報で、なおかつ自分が見落としているもの」になってきている。私はFacebookは使っていないからFBのことはわからないが、FBではTwitterと同様かそれ以上に、この感じで物事が動いているだろう(しかもかなりエグいものがバンバン飛び交っていることだろう……日本語圏でも「ダ○○クト出版」なる広告主がGoogleの広告でやたらと出てきて、その陰謀論めいた文言にはうんざりさせられているのだが、FBではああいうのが普通に飛び交っているはずだ)。

ともあれ、私が「有能な秘書がついている」ような感覚になったのは、下記キャプチャにあるような一連のツイートが表示されていたことによる。Twitterでは「親ツイート」に対する反応を簡易的にまとめたような画面で表示してくれるのだが、その「親ツイート」は私にとっては観測範囲外、米共和党のマルコ・ルビオ議員の発言だ。

その発言は、現在のニュースとしてはベネズエラ情勢の文脈にあるのだが、テクストではそれが明示されていない。というか、ルビオ議員は写真をツイートしただけだ。そしてその写真に対し、私がフォローしている人たちが反応している。そこに、通例コンピューターの自動処理にはあまり期待できないような「文脈」があったので、感心してしまった。

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2019年02月20日

根拠のない楽観論を吹き飛ばしたはずのホンダのスウィンドン工場閉鎖が、よりいっそうのプロパガンダの機会となっている件。

自動車メーカーのホンダ(本田技研)が、欧州唯一の生産拠点である英スウィンドンの工場を2021年に/2022年までに閉鎖するということが、おとといSky Newsなどで報道され、昨日、ホンダの正式なステートメントで確定された



スウィンドンはイングランド南部、ウィルトシャーにある都市で(ただし「シティ」の格は持っていない)、人口は2011年のセンサスで18万人程度。お手軽にウィキペディアによるとホンダのほか、ミニ(BMV)の工場があり、さらにドルビーやインテルといった企業が拠点を有しており、金融機関やエネルギー企業の英国本部が置かれていたりする。

2016年6月のEU離脱についてのレファレンダムでは、スウィンドンは54.7%が「離脱」に投票していた

「離脱」という選択の背景には、「エリートたちにお灸を据えてやろう」という動機が大きかったこと(「離脱」に投票した人が必ずしも本気で「離脱」するなんて思ってたわけではないということ)や、UKIPがずっと前から喧伝していたような右翼的ファンタジーによる「(彼らの言う)主権回復」という《物語》(あるいは《神話》)があったことは確かであるにせよ、実際に票を投じる人々が「国がEUから離脱しても、自分たちや子供たちの生活には影響はないか、あるいはもっとよくなる」と楽観していなければ、「離脱」に投票するという行動にはつながらなかっただろう。

実際、スウィンドンの「EU離脱」派は、その雇用を支える重要な一部となっているホンダの工場が閉鎖されるなどということは、想定していなかった。それは、投票結果を報じるBBC News記事にも出てくる「EU離脱」派の国会議員の発言にも見て取れる(同記事には「EU残留」派の議員の発言も引用されている)。

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2019年02月07日

BBCは嘘をつく。そしてしれっと修正する。(「情報として最小限で必要不可欠な限定句を省略する」という手法について)

1つ前のエントリが、結局は、メディアがview数を目当てにスピンした(ミスリーディングなことをわざと書いた)という事案だったかもしれないのだが、6日に、同じようなスピンが行なわれている現場にリアルタイムで遭遇した。

どちらにしても、実際にあった発言の一部を、狭いスペースに入る程度に切り出して(ここに「編集判断」が働く)、そのいわば「短縮版」を、「放流」すれば勝手に「拡散」されていくようなSNSという場に放り投げるだけの簡単な(それでいて手法としては計算されているような)お仕事。1つ前のエントリは、内容としては多少は「社会」的な面もあるにせよ、カテゴリーとしては「芸能ニュース」だったが、ここに書くのはもろに「国際」「政治」のカテゴリーで、つまり「フェイクニュース」という表現で語られるべきことだ。

Screenshot_2019-02-06-21-43-25.jpgさて、何があったか。2月6日の夜、本を読んでいた私は何気なくBBC Newsのアプリを立ち上げてみた。そこで目にしたものに、思わず崩れ落ちた。

先日も書いたが、今の英国――というよりイングランドのBrexit支持界隈のムードは基本的に完全に "Us vs Them" になっている。 "Us vs Them" はすべてを敵味方に分ける考え方で、「我々に賛成・同調しない者は、みな敵だ」という状態。世界のすべての国を例えば「反日か、親日か」で分けて考えるようなことは、便宜的に、考えや状況を整理するためにやるのならまだましだが(それでも私はそういう考え方はとらない)、実際に何か対立や争いがあるときにその枠組みで考えることは、極めて危険なことだ。「自分たちの思い通りにならないのは、敵のせいだ」という思考で物事をみるとき、そこに見えてくるのは「解決すべき問題」ではなく「叩き潰すべき敵」であるだろう。

そういうのが煽られているときに、「敵」が「暴言」を吐いて、我々を「侮辱」している、というストーリーがあれば、煽られている人々はますます感情を高ぶらせて怒りを募らせるだろう。

ここで見出しになっているドナルド・トゥスクの発言も、それを伝えるBBCの見出しも、絶望的なまでにひどいものだと私は見てとった。こんなの、感情を煽ることにしかつながらない。



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posted by nofrills at 08:50 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リーアム・ニーソンの発言の炎上、そしてウィンストン・チャーチル――あるいは「誰の人種主義がどのように、どこまで、人種主義と認められるのか」。

(Twitterだけで終わらせようかと思ったけど、ジョン・バーンズがウィンストン・チャーチルを持ち出してきたのは記録しておくべきだと思い、ブログを書いている。)

映画俳優が不用意な発言をして炎上しているだけだったら、見出しを見るだけで終わっていただろう。だが今回炎上しているのはリーアム・ニーソンだ。しかも炎上の中身が「人種差別」。

リーアム・ニーソンについては、日本では特に「ハリウッド俳優」と見なされているし、「米俳優」と呼ばれることもあるが(実際、米国在住だし米市民権は持っているはず)、出身は北アイルランドである。それも、プロテスタントが多数の地域に暮らすカトリック、という立場にあった人だ。北アイルランド紛争下で個人を常に「集団の一員」と見なすのが当たり前という環境の中に身を置いて、それを体験している人が、今ここで「人種差別」で炎上しているというのはどういうことなのか――記事を読まずにはいられなかった。そして読んで、唖然とした。

私が読んだのは、英国の通信社Press Association(日本で言えば「共同通信」のようなところ)の記事である。これをただの「芸能人の問題発言」とはとらえていなさそうな媒体だからという理由でベルファスト・テレグラフを見に行ったのだが、中身はPAだった。

Liam Neeson: I walked streets hoping to kill black person after friend was raped
The actor has said he wanted revenge for the attack.
February 4 2019
https://www.belfasttelegraph.co.uk/entertainment/film-tv/liam-neeson-i-walked-streets-hoping-to-kill-black-person-after-friend-was-raped-37781066.html

PAの記事は、別の媒体(英インディペンデント……あとでリンク)の記事内容をかいつまんでまとめたような記事で、どういう発言があったのか、それがどういう文脈でなされたのかはよくわかる。

いわく、公開を間近に控えた新作映画(またいつもの復讐もの)の主人公の行動について、インディペンデントのインタビュアーが質問したのに対し、ニーソンは「実際にあったことです」と前置きして、自分の体験を語った。発言内容は、次のようなものだ。
「以前のことですが、自分が遠方に行っている間に、友人がレイプされまして。旅から戻ってきてからそういうことがあったのを知ったのです。レイプという状況に、本人は見事に、それは見事に対処していたのですが、私はといえば……まずは彼女に、犯人は誰なのかわかるかと訊いたのですが、わからないと。そこで何色だったのかと (What colour were they?)。彼女の答えでは黒人だと」

「私はコッシュ(棍棒)を持って街を歩き回りました。誰かがちょっかいを出してくるのを待って――こんなことを言うのは、恥ずかしいことなのですが――。1週間くらい、そうしてましたね。黒人のクソ野郎がパブから出てきて、私に言いがかりをつけてきてくれるんじゃないかって思いながら。そういうことになれば、そいつを殺せる、と」

「1週間か、1週間半か、そのくらいずっとその調子でした。彼女に行き先を尋ねられれば『ちょっと散歩にね』と答えていましたよ。『何、どうしたの?』『いや、別に何ともない』というやり取りもありました」

「恐ろしいことでした。今思い返せば、自分がそんなことをしたとは、実に恐ろしい。今まで誰にも明かしたことのない話ですよ。それを(よりによって)ジャーナリストにこうして語っている。実にとんでもないことです (God forbid.)」

「ひどい体験でしたが、そこから私は学んだのです。最終的には『おまえは何をしてるとんだ』思って」

「私はああいう社会の出身で――紛争期の北アイルランドで育ちまして、ハンストで死んだ人たちも数人知ってますし、紛争に深く絡め取られていった知り合いも何人もいます。復讐の必要性というものは、私は理解している。けれどもそれは、さらなる復讐を呼ぶだけです。さらなる人殺しがまた人殺しに。北アイルランドは、それを証明しています。世界中で起きているそういうこと、そういう暴力がその証明です。しかし、初期衝動的に(復讐が)必要だと感じることは、私は(身をもって)理解しています」


一読して、「何と正直な」と感嘆しつつ、呆れかえってしまった。こういうことを、新作映画のプロモーションで、インタビュアーに喋るということの意味がわからなかった。しかもその新作映画が、またいつもの「復讐劇」なんでしょ。私は常々「あの路線つまんないし、リーアム・ニーソンの無駄遣いだからやめれば」と思っているのだが、「復讐」をドラマチックでロマンチックな、一種の「男のロマン」に仕立て上げるお芝居をしながら「復讐はよくない」と言ったところで、説得力ないじゃんね。しかも北アイルランドのベルファストでは、紛争が終わって20年経過してもいまだに、現実にパラミリタリー絡みの殺人事件が発生して、家族が「報復はやめてください」と訴える、ということが起きているのだ。

例えば『スリー・ビルボード』みたいにして「復讐」を描いた作品のプロモーションなら、ニーソンの発言の意義も一応わかると思うけど、事実上シリーズ化している「リーアム・ニーソン主演の復讐もの」にそういうの期待できるかっていうと……。

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2019年02月05日

妄想に規定された、Brexitをめぐる風景(2019年1月以降現在までのざっくりとしたまとめと、覚え書き)

私の見るパソコンの画面の中で、妄想が現実を侵食している。その「妄想」は何も新しいものではない。過去にも見かけはしている。そのときはドン引きしつつ「あー、はいはい」と流したりしていたものだ。しかし、最近――英国会下院でのテリーザ・メイの "meaningful vote" 以降は目に見えて――ドン引きしながらも生温かく見守ることができるという限界を超えている。目にしたら「何これ!」と叫んでしまう。あるいは見なかったことにしてそっ閉じして、その後は近寄らないようにしてしまう。(それがどういうののことかは本稿もっと下の方に書いてある。)

2019年1月15日の "meaningful vote" でメイがEUとの間に取り付けてきた合意(協定)案が歴史的大敗北を喫して以降、Brexit(ブレグジット)をめぐる英国内の論点としては、選択肢は「Brexitしない(英国がArticle 50の発動を一方的に取り消す)」、「期限日(3月29日)の延期」、「合意なし(no-deal)のBrexit」、「再度のレファレンダム(People's Vote)」、そして「メイが持ってきて否決された合意案の修正」の5つになっている。

「Brexitしない」という選択肢は、事実上、理論上のものにすぎない。与党保守党のみならず、最大野党(the Official Opposition)の労働党もEUからの離脱は実行する構えだからだ(2018年12月の時点で、労働党のジェレミー・コービン党首は「総選挙をやって政権交代しても、Brexitは実行する」と明言している)。

同じ理由で、「再度のレファレンダム(People's Vote)」もほぼ可能性はない。2018年10月には、ロンドンでPeople's Voteを求めるデモが、すさまじい規模で行なわれたし、それは日本語圏でもニュースになっていたが、何十万人もが街頭に出たからといって、それがウエストミンスターの議事堂内で討議されることにはならない。労働党は、かなりの数の議員たちがPeople's Voteを支持していても、党執行部は「断固Brexitを推進」の方針を貫いている。そもそも、再度レファレンダムを行なったところで、Brexitしない(EUに残留する)という結論が出るという保証もない(世論調査では「今実施すればEU残留になる」という結果が出ているとたびたび報じられているし、1月以降は企業が次々と英国から出て行くというニュースが続いているので、論理上は「こんなことになるならEUに残留したほうがまし」と考える人が増えていると考えることはできるが、「もうここまできているのだから」と考える人も増えているかもしれない。そもそも「事前の世論調査」があてにならないことは、近年の選挙結果が示している通り)。

というわけで、現時点で現実味のある選択肢として残っているのは、「期限日(3月29日)の延期」、「合意なし(no-deal)のBrexit」、「メイが持ってきて否決された合意案の修正」の3つと言えよう。

そのうち、現政権がやろうとしているのは、「メイが持ってきて否決された合意案の修正」である(当たり前といえば当たり前だが)。その「修正」を要求しているのは、保守党内のBrexit過激派(昔は「欧州懐疑派 Eurosceptics」と呼ばれていた人たちが、今は「Brexit過激派」になっていると思ってだいたいよさそうだ)で、どこをどう修正しろと言っているかというと、例の「バックストップ」である。つまり「バックストップを除去せよ」と。

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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