kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2017年04月25日

【フランス大統領選】「フェイク・ニュース!」と叫ぶなら、今だ――ハッシュタグの大量投稿は、誰によるものだったのか。

_95761439_french_election_624_vwithre.pngフランス大統領選挙の第一回投票が23日(日)に行なわれた。決戦投票に進む2人は誰かという点での結果が出るにはあまり時間はかからなかった。事前に言われていた通り、En Marche! という新政党を立ち上げたエマニュエル・マクロンが第1位で、得票率は開票率97%の段階で23.8%、2位がFN (国民戦線)のマリーヌ・ルペンで、得票率は21.5%。あとはこの段階での脱落候補で、共和党(UMPが改組・改称した政党)のフランソワ・フィヨン元首相が19.9%で3位、ベテラン左翼政治家のジャン=リュック・メランションが19.6%、現在政権を担っている社会党のベノワ・アモンが6.4%で、フランスは二大政党のどちらの候補も決選投票に進めなかった。(以上、数値のソースはBBCのこの記事。右のキャプチャ画像も同じ)

FTはこれについて「第1回投票の結果は、1958年にシャルル・ド・ゴールが確立したフランスの政治システムが受けている打撃を象徴している。ほぼ60年を経て初めて、左派と右派の二大政党の候補者がいずれも大統領選の決選投票に進めない結果となった。第5共和制の政党政治の既成勢力が私たちの眼前で瓦解した」とまとめている。「有権者の10人に4人以上がルペン氏か急進左派のメランション氏を支持した……2012年大統領選の第1回投票では、この2人の合計得票率は29%にすぎなかった」という事実に注目する同紙記事は、今回の選挙は「伝統的な左右の対立軸でおおむね政治が認識され、争われてきたフランスにとって……未知の領域」であると述べている。注目すべきはそのことだろう。英国もまた「(政権交代を前提とした)二大政党制」がこの先も続いていくのかどうかは、極めて不透明な状態だ(日本と同様の「与党の一強状態が長く続く」状態になるのではないかと思う)。

BBCは、まともな「報道」系の分析記事として読む気がしないようなぺらっぺらの内容だが(少し前のBuzzFeedや、今のHeavy.comのような「チェックすべき情報のまとめ」記事レベル)、サイドバーなどに表示されて多くの読者を誘導している記事が、"The left is in ruins" とことさらに書き立てている。確かにThe left *establishment*はin ruinsだが(英労働党のエリートさんたちと同じく)、この記事は、「左翼の瓦解」と叫びながら、左翼票を(社会党支持層の中からも)持っていったと思われるメランションについて言及すらしていない(彼もまた、今回の大統領選で「大躍進」を遂げたことは事実だというのに)。そして(あえて「左右」で語るなら)左翼より、ルペンのようなものに代表されようとしているthe rightのほうがよほど深刻な状態にあるのだが、この記事はそういうことはスルーしている。むしろ、BBCの「ルペン推し」は投票前も投票後も全然変わっていない。この記事でも、ルペンは笑顔を浮かべて支持者のセルフィにおさまるというフレンドリーな写真で紹介されている。一方で、決選投票で彼女と対決するマクロンは、警察官とボディーガードと思われる人々に回りを固められて手を振っているという「権威」っぽい写真だ。実際、彼は超エリートさんだが、マクロンを「新星」ではなく「権威」とみなす言説は、ネット上できぃきぃ喚いているアンチ・エスタブリッシュメントのトランプ支持の英語話者の間で相当広く見られる。というわけで、どうもBBCは「極右の台頭」という《物語》を語ることに本気で取り組んでいるとしか思えず、残念極まりない。

前項で述べたように、英国のメディアは多くの場合、投票日前の世論調査でトップとなり、実際の投票結果でもトップだったエマニュエル・マクロン(どうでもいいがフランス語なので、語強勢は後ろの音節に来る。つまり「"マ" クロン」という読み方ではなく、「マク "ロ" ン」である)を、大統領選前の報道ではほぼずっとほとんど無視していた。誰もが見る場所で「フランス大統領選」の話題で出されているのはマリーヌ・ルペンの名前と顔写真、あるいは妻への不正な金銭支給による公金横領の疑いがかかっているフランソワ・フィヨンの名前と顔写真で(まあ、フィヨンに関する記事は訴追に関するものなど、「政治ニュース」ではなく「事件報道」だったが)、トップランナーのマクロンのそれではなかった。第一回投票が終わり、マクロンがトップだという事実が誰の目にも明らかな形で確定した現在は、選挙前のこの笑止千万な状況は終わるかもしれないが、BBCを見ていると、まだこれからも続く可能性も高いなと思う。むしろ、「本当の勝負はこっから」ということで、ますます「ルペン、ルペン」という騒ぎが大きくなるかもしれない。前項で見た通り、ナイジェル・ファラージがマクロンがEU支持であることをTwitterという場でいじりだしているわけで、ファラージが騒げば英メディアは(ガーディアンとインディペンデントを除いて)それになびく。というか、メディアがこれからどう動くかを先頭に立って知らせてくれるのがファラージ、ということになってしまっているのが昨今だ。

英語圏がどんだけ大騒ぎしようと、フランスの人たちにはどこ吹く風かもしれない(が、私はそうであってほしいと思っているから、私の考えることにはいわゆる「確証バイアス」がはたらいているかもしれない)。しかしそれでも、ネット上で、英語圏からフランス大統領選挙を見ていて非常に目立つ奇妙な現象があるということは、それなりにまとめて書きとめておく意味があるだろうと思う。とりわけ一度は――特に「Web 2.0」ともてはやされた時代(イラク戦争の時代)に――大まかにいえば「ネットで人々が発言することは、世界をよくすることだ」と信じる側にいた人々は(私もそのひとりである)、現在、「ネットで人々が発言する」ことが当たり前になったあとに何が起きているかを改めて直視する必要がある。自分に直接は関係のないトピックならば、その「直視」も余計な先入観なくできやすいだろう。そして多くの日本語話者にとって、フランス大統領選挙は「自分とは直接関係のないトピック」の最たるものだろう。

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2017年04月24日

フランス大統領選は「親EU」か「反EU」かの選択だ。「極右の台頭」の文脈に組み込んではならない。

今週水曜日、2017年4月26日は、ピカソが「ゲルニカ」という作品にした都市爆撃からぴったり80年となる日である。
ゲルニカにはバスク地方の自治の象徴であるバスク議事堂とゲルニカの木があり、歴代のビスカヤ領主がオークの木の前でフエロ(地域特別法)の遵守を誓ったことから、ゲルニカはバスクの文化的伝統の中心地であり、自由と独立の象徴的な町だった。フランスの思想家であるジャン=ジャック・ルソーは、「ゲルニカには地上で一番幸せな人びとが住んでいる。聖なる樫の樹の下に集う農夫たちがみずからを治め、その行動はつねに賢明なものであった」と書いている。この爆撃は焼夷弾が本格的に使用された世界初の空襲であり、「史上初の都市無差別爆撃」や「史上初の無差別空爆」とされることもある。この爆撃は敵国民の戦意をそぐために行われる戦略爆撃の先駆けと考えられており、戦略爆撃は第二次世界大戦で本格化した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%AB%E7%88%86%E6%92%83


ピカソの「ゲルニカ」の成り立ちについては、下記の本がとてもよかった。中学生に読めるような易しい本だが、内容は濃い。
4905194326ゲルニカ―ピカソ、故国への愛
アラン セール Alain Serres
冨山房インターナショナル 2012-05

by G-Tools


2014年に第一次世界大戦(当時はただの「大戦 Great War」と呼ばれていたが)開始から100年を迎えて以降、英国の大手メディアで「○○の戦いから100年」という記事を目にすることが頻繁だが、それと同時に第二次世界大戦についても「○○作戦から70年」、「○○事件から75年」(75年はthree quartersで大きな節目として扱われる)といった記事が書かれて日々流れてきている。

加えて、第二次大戦はVEデイで完全に終わったのではなく、めっちゃくちゃになったヨーロッパはその後数年はしばらく大変な状態にあったので、2017年の今もまだ「○○から70年」という記事が流れてくる。先週は、英軍によるヘリゴランド(ドイツ語読みはヘルゴラント)島での大爆破について、対岸からそれを見ていた島の人々の声を軸にした記事がBBCに出た。当時英軍は、ドイツ軍が蓄えていた大量の未使用爆弾を処理する必要があり、「ビッグバン作戦」という作戦を立案して、ドイツの西側の沖に位置する同島で爆破した。同島が選ばれたのは、ここがドイツ軍によって要塞化された一大軍事拠点だったためだった(戦争に負けてもなおいろいろと諦めきれないドイツの勢力が、ここを利用して何かを画策することを事前に阻止するという目的があった)。この爆破は、現在に至るまで、核を使用しない爆発としては最大のもので(当時の英軍による記録映像が同記事に入っている)、当時英軍は150キロも離れた少し内陸のハンブルクにまで、「爆発(の衝撃波)に備えて、建物の窓・扉を開けておくように」という指示を出していた。対岸からは、既に対戦中に島から退避させられていたヘルゴラント島の人々が、自分たちの島が爆破されるのを見守っていた(実際には見ることはできず、音だけだったという)。中には島が破壊されてなくなってしまうと思っていた人もいたが、島は消えてなくなりはせず、1952年に島がドイツに返還されると人々も島に戻り、現在は1,483人が暮らし、免税店目当ての観光客を迎えている。この島はナポレオン戦争の時代に英国が占領し、1890年にドイツに寄贈されるなど、英国との歴史的な関係は浅くない……。

こういった「欧州事情」の記事を見るたびに、部外者の私は改めて、EUがノーベル平和賞を受賞(2012年)したことの意味を思わずにはいられない。当時は「馬鹿げている!」と思ったし、今も「ノーベル平和賞はもう終わりにしたほうがいい」と思っているが(ダルフールやシリアやウクライナや南スーダンを前にしたときにそう思わずにはいられない)、少なくとも、受賞の理由について理解はできる。あのドイツとあのフランスが戦争になるということが考えられない今の現実を構築してきたのは、「欧州共同体」という理念だ。

日曜日(23日)に一回目の投票が行なわれたフランスの大統領選挙は、内政上の課題がもちろん最重要なのだが、それを除いては、まず「Brexit後のEUがどうなるのか、EUをどうするのか」を問うものだ(英国での議論の推移を改めて振り返る限り、「移民がー」というフレーミングは、そのデコイに過ぎない。むろん、そういう語りを積極的に採用して目立つのが移民排斥の「ホワイト・ナショナリズム」の陣営、つまり平たく言えば「ネオナチ」系であるということは確かだが)。「反EU」の候補者でEUを "根本的に変える" 方向で動くのか、「親EU」の候補者で英国が抜けたあとのEUを一層強化する方向で動くのか。

日曜日の投票結果、トップで決選投票に進んだエマニュエル・マクロンは「親EU」の候補者だ。壇上に置かれた旗に明らかなように。

emacronspeecheuflag.png

*via http://www.bbc.com/news/world-europe-39689385

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2017年04月20日

(続)英テリーザ・メイ首相は、なぜ「解散総選挙」を行なうのか、それによって何がしたいのか。

1つ前のエントリの続き。

本文の前にまず、「解散総選挙」についてのまとめのようなチャンネル4ニュースの映像クリップ。


※メイ首相のスピーチの文字起こし:
http://www.telegraph.co.uk/news/2017/04/18/theresa-mays-early-general-election-speech-full/

このスピーチについては、「その目的ならArticle 50発動前にやる(英国民が納得した上でArt 50を発動する)のが筋では……」というのが私の個人的感想。あと、「野党がー」がやたらと多いので、本当の目的はここで語っていることよりむしろ、「自身の足元固め」と「野党つぶし」、「長期安定政権」だろうなと思う(Brexitは交渉だけでは終わらない。その後、軌道に乗せるところまでやらねばならない。何年ものスパンで見ていかねばならない)。

さて、メイ首相が「抵抗勢力」に退場してもらう機会を欲しているということをよりはっきりさせるもう1つの事例が、ハートルプール選挙区のイアン・ライト議員の不出馬表明である。ライト議員は保守党ではなく労働党の人だが、この選挙区で起きていることは、Brexitというものが英国の政治にとってどういうものかをわかりやすく示す一例だと思う。

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2017年04月19日

英テリーザ・メイ首相は、なぜ「解散総選挙」を行なうのか、それによって何がしたいのか。

保守党の超大物、ケン(ケネス)・クラークが、6月の選挙には出馬しないという。クラークは保守党内の「親EU」陣営の代表的な政治家で、1973年に英国がEC(現在のEU)に加わる前から下院議員を務めている。
Two of the best known names in British politics, Labour's Alan Johnson, and Conservative Ken Clarke have both said they will be retiring on 8 June. Mr Clarke is the longest serving MP at Westminster, having first been elected in 1970.

http://www.bbc.com/news/uk-politics-39631768


この「超大物の引退」のニュースが加わったことで、テリーザ・メイ首相が前言を撤回して解散総選挙に打って出た理由が、いっそうはっきり見えるようになったと思う。要するに英国会(下院)でのBrexit反対論を終了させ、「Brexitは英国を二分している」という外からの認識を「英国はBrexitで一致している」という認識に改めさせ、自身について言われる「選挙で選ばれていない首相」という事実に「選挙で選ばれた首相」という事実を上書きしたいのだ。うちら日本人に馴染み深いフレーズを使うなら「抵抗勢力」を――政界の用語の用例がすぐに見つからないので、とりあえず経済界の発言をベースにするが――「駆逐」し、これまた日本人好みの言い方をすれば「全員一丸となって」、Brexitという「難局を切り抜けようとしている」のだ。

ダウニング・ストリートで解散総選挙の方針が宣言されて24時間以内に次々と出た分析・解説系記事より:
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2017年04月18日

英テリーザ・メイ首相がこれまでの発言を翻し、解散総選挙実施へ。6月8日投票。

労働党は、本気で勝ちに行くだろうか。「この選挙で負けた責任を取る」というきれいな形でジェレミー・コービンを退陣させることができる好機として利用するのではないか。

もちろん、「勝ちに行く」だけの力があるかどうかは別問題だ。だが、労働党は、信じがたいほど内向きになっている。2015年総選挙の結果を受けてエド・ミリバンドが退陣し、その後9月の党大会で、多くは「一般党員」たちの支持によってジェレミー・コービンが党首に選ばれてからこの方、労働党(ニュー・レイバー)の上層部やPR部門はずーっと一貫して、「保守党を相手にどう戦うか」ではなく「コービン党首をいかに引きずりおろすか」に注力してきた。「コービンでは選挙に勝てない」という言説はよく流されているし、実際に労働党の議員たちが「コービンおろし」を画策して失敗したことも一度ではない。「だれそれがシャドウ・キャビネットから辞任」というニュースは、少なくとも二度、政治面の大ニュースになった。そのたびに「激震」を引き起こすはずだったのだろうが、実際にはコービンの周辺から「変なのがいなくなってより磐石になった」ような状態だ。現在のシャドウ・キャビネットの陣容には、私でも目を背けたくなる。

そして「コービンでは選挙に勝てない」と大手新聞(ガーディアンのような)に発言の場を持っている特権的な立場の人が発言するたびに、特権などカケラも持っていない一般人がTwitterで「このクソ・ブレアライトが!」と叫ぶ。それが何度も繰り返され、そのうちにどんどん過熱して、労働党支持者が労働党支持者に対して「ブレアライトめ!」というレッテルを貼って回るのが常態化し、実に非生産的で醜悪な光景が展開されるようになったのは、軽く1年以上前のことだ。2016年6月のEUレファレンダムは、そういう空気の中で、イングランドの夏を祝う季節の始まりを告げるグラストンベリー・フェスの初日(木曜日)に行なわれた。

元々、投票前の報道などで「離脱という結論になることはまずない」と言われ続け、投票するために必要な登録をするまでもないかということで棄権した人も多かったと思われるが、コービン率いる労働党は、「EU残留」を看板に掲げながらも、気の抜けたようなキャンペーンをするに留まった。

元々EUレファレンダムは、「EU離脱」派は「変化」だの「取り戻せ」だの、ポジティヴな響きのする言葉を並べて明るいヴィジョンを提供することができた一方で(もちろん「移民制限」というどす黒い思想もあったが、それすら、2016年の英国では以前ほどどす黒くは聞こえないものになっていたようだ)、「EU残留」派は現状維持を訴えるだけで、分が悪かった。ほっといても維持されるであろう現状のために、だれが尽力しようと思うだろう。

そういう事情ももちろんあるのだが、コービンの場合、そういうのとはちょっと違っているとみるべきだろう。「EU離脱」でキャンペーンを展開したのは、ニュースになるのはUKIPのような右翼陣営の離脱派がほとんどだったが、左翼陣営にも離脱派はいた。というか元々「反グローバリズム」は(UKIPやドナルド・トランプのような人たちとはまったくかけ離れた)左翼陣営で盛んに主張されてきたことで、EUについても「反グローバリズム、反キャピタリズム」(「反キャピタリズム」は「富を独占し、悪いことをしてもお咎めなしで銀行家だけがおいしい思いをするのはおかしい」というような考え。必ずしも共産主義ではない)の考えから「よくないもの」、「打破すべきもの」とする主張がある。コービンの立場は元々その立場で、あの人は労働党党首になってなどいなかったら、2016年6月のEUレファレンダムでは左翼の側の「離脱」陣営に立っていたことは確実だ。

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2017年04月15日

日本で桜の花が咲いているとき、日本以外でも桜の花が咲いている。

4月3日は、よく晴れていた。

近場にソメイヨシノの大きな木が2本ある。今年は花が遅かったが、陽気に誘われたように、この日、ようやく五分咲きに近くなっていた。1本目の木の下の右側にはレジャーシートを広げて楽しそうにくつろいでいるお母さん2人と子供たちがいて、左側には小学生の女の子たちが真剣な表情でスマホを掲げて貼り付いていた。この木の枝はけっこう下まで下がっているので、身長が150センチに満たない彼女たちでも、腕を伸ばせば何とか、撮りたいような写真が撮れるのだ。

私は枝の先の方だけを撮って、とりあえず、自転車にまたがってもう1本の大木に行くことにした。

Untitled

Modest ones


もう1本の大木は児童遊園の中にある。少し離れたところから見ると、上の方の枝はまだまだこれから咲くところだ。

Another big Somei-yoshino tree


と、大木のほうから、キラキラと輝くような笑い声が聞こえた。

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2017年04月05日

「Windowsセキュリティでシステムが壊れていることを検出」? 「あと○秒でファイルを削除」? そんな表示が出ても無視すればOK。

ちょうど2年ほど前に、危なく、厄介なマルウェアをインストールしそうになったことを書いたが、今日も変なのに遭遇した。2年前の記事がけっこう読まれているようなので、今日の変なのについても少し書いておこう。

PCでのメインのブラウザはFirefoxで、ポップアップ抑制やトラッキング禁止などの環境は整えてあるのだが、Firefoxは最近のアップデートで重くなりすぎてまったく使えない(たしか51にアップデートされた直後からひどくなったと思う)。というわけでサブのブラウザ、Chromeを使っているのだが、Googleに閲覧履歴などあれこれ溜め込まれるのに抵抗感があるので、適宜、「ゲスト」モードを併用している。「変なの」に遭遇したのは、そのゲストモード使用時だ。

なお、Chromeの「ゲスト」モードでは、通常のユーザーとして設定してある拡張機能などが何も使えない(Incognitoモードでは設定次第で拡張が使えるが、「ゲスト」では無理)。よって、ポップアップ抑制やトラッキング禁止、ドナルド・トランプへのツッコミなど、ふだんサブとして使っているChromeでの環境は反映されない。

で、そのゲストモードを使って、私はFlickrにログインした(Flickrのログインには、米YahooのIDが必要である)。Flickrはログインするとまず、自分がフォローしている人たち(旧称contacts)が新しくアップした写真があれこれ表示される。みんな、上手いなあ……と目の保養をし、遠い異国の風景写真や建物の細部の写真をfaveしたあと、自分のページにアクセスして、何枚か写真をアップロードしようとしたときだったと思う。植物の学名を調べたりするためにいつも横に新規ウィンドウを開いておくので、今回もそうしたところ、突然、このような「警告」が表示された。

nisekeikoku.png


メッセージが表示されている部分のみ拡大すると:

nisekeikoku-c.png


下に、文字起こし(というかテキストデータ化)しておこう。私のIPアドレスなどは伏せるが、文末の「。」が半角ピリオドになっている箇所も忠実に再現しておく。

Windowsセキュリティシステムが破損しています

Windowsシステム: Windows 7

IP: ***.***.***.***

ご注意: Windowsセキュリティによってシステムが壊れていることが検出されました。ファイルは***秒で削除されます.

必須: 下の[更新]ボタンをクリックして、最新のソフトをインストールしてスキャンし、ファイルが保護されていることを確認してください.


この「ファイルは***秒で削除されます」の部分はカウントダウンしていくようになっている。

意味がわからない。「Windowsセキュリティシステムが破損しています」ということは、破損しているのは「Windowsセキュリティシステム」だ。一方、「Windowsセキュリティによってシステムが壊れていることが検出されました」ということは、破損しているのは「システム」でそれを検出したのが「Windowsセキュリティ」だ。で、「おや、これはひょっとして『Windowsセキュリティ』と『システムが破損しています』の間にナカグロなりコロンなりを入れるのを忘れているのかな」と気づくわけだが、カウントダウンの秒数に煽られてパニクってしまったら、そんなことは考えないだろう。

なお、「何を言っているのかわからないメッセージに促されて[更新]を押すなんてことはありえない」などと冷笑気味に言う人もいるかもしれないが、よく訓練されたWindowsユーザーは「意味がよくわからない悪文」をおかしいと思わない。なぜなら、このような意味の分かるような分からないような悪文はWindowsではデフォだからだ。Windows 95から使っている私が断言するが、Windowsの日本語は、センスがまったくよろしくない。それにこのメッセージの日本語の壊れ方は、フィッシング・メールや、LINEでの「iTunesカード買うのを手伝ってくれませんか」詐欺の「変な日本語」ほどではない。だからこのメッセージを見て、カウントダウンに煽られて[更新]ボタンを押してしまう人がいることは、想像に難くない。

だけどこのカウントダウン、何もせずただほっといたら、「残り1秒」のままずーっと停止してた。お茶沸かしに行って戻ってきてもこのままだった。

nisekeikoku3.png


さらにそれから15分か20分かそこらほっといてリロードしてみたら、Not Foundになってた。

nisekeikoku4.png


だから、こんなのはほっといても大丈夫だ。

もう少し詳しく見てみよう。


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2017年03月30日

英国が正式にBrexitの手続きを開始した日のこと&「北アイルランドにとってのBrexit」について(雑な「分離」論に要注意)

29日、英国では朝イチでテリーザ・メイ首相が正式に「EU離脱」の意思をEU側に伝える書状に署名し、英国の代表者がブリュッセルにそれを届けるという手続きが行なわれた。書状を受け取ったEU側の代表者、ドナルド・トゥスク欧州理事会議長(「EU大統領」とも呼ばれる立場)は、「もうすでにミス・ユー状態である」的なことを記者会見で述べた。これから2年をかけて、英国はEUを離脱する。

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※レターは全部で6枚。全文はこちらからPDFで閲覧できる

その「英国」は、正式名称を「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」といい、「グレート・ブリテン」はイングランド、ウェールズ、スコットランドから成り立っている。だから「イングランド、ウェールズ、スコットランド、および北アイルランド連合王国」と言ってもよさそうなものだが、そう言うのも正確ではない……というあたりが実に英国らしくめんどくさい。まず第一に、英国は「連邦」ではない。1997年に政権をとった労働党による改革で、ウェールズとスコットランドに自治議会・自治政府が設置されたが(それぞれ権限には違いがあり、スコットランドのほうが「高度な自治」を行なっている)、イングランドにはそういう自治政府はなく、イングランドの立法は英国全体の立法府(すなわちウエストミンスターの議会、以下「国会」)が行なっている。一方で、北アイルランドは、1921年の「アイルランド分断」によって「北アイルランド」が今のような形で正式に成立して(つまり「プロテスタントがカトリックより多くなるように境界線を引いた上で、アイルランドのほかの部分からもぎ取られて」)以来、ずっと自治議会・自治政府を有し、ブリテン島とは別の政治を行なってきた。これは基本中の基本中の基本である。

「北アイルランド紛争」が生じたのも、単に「IRAがいたから」ではなく、その自治議会・自治政府のもとで、「少数派」である「カトリック系住民」(←日本のマスコミ様用語)が二級市民の扱いを受けてきたことが原因である。南アフリカのアパルトヘイトにもなぞらえられたその差別構造を覆すためには武装闘争しかないと多くの若者たちが信じた現実が、北アイルランドにはあったのだ。議会が常に「プロテスタント」(正確には「ユニオニスト」、つまり「英国との連合・統一 unionの維持を望む人々」)が優位になるよう選挙区割を決めたり(ゲリマンダリング)、住宅や就業といった人がまともに生活するうえでの基本的なことでも、「カトリック」は差別されていたりといった状態だった。元々北アイルランド紛争については「女王陛下に牙をむいたテロ集団IRA」的な漫画チックな説明がなされることが珍しくなかったかもしれないが、そのような勧善懲悪の物語は現実とはかけ離れている。興味がおありの方は、今月亡くなったマーティン・マクギネスについて、政治学者の菊川智文さんが2014年に書かれた電子書籍(Amazon Kindleのみ)にそういった背景がわかりやすくまとめられているので、参照されたい(Kindle Unlimitedに入っている。別途買い求める場合は250円)。

Brexit以降の日本語での「北アイルランド」に関する言説の多く(メインストリームの報道を含む)、特に「(英国からの)分離」という用語でスコットランドと北アイルランドを単に並べている言説は、北アイルランドに関するこの基本的事実を踏まえていそうにないので、注意を要する。北アイルランド(「北部アイルランド」、「北部6州」)は、あらかじめ、「アイルランドとしての統一性」を奪われた存在であり、その統一性を取り戻そうというのが、北アイルランドという領域において「アイリッシュ・ナショナリズム」と呼ばれる思想・理念・運動である。その「アイルランドの統一」のために武力を使うことを辞さない、というより、武力を以てしか「アイルランドの統一」は達成できない、と信じている人々が、さまざまなIRAをはじめとする「アイリッシュ・リパブリカン」(以下、単に「リパブリカン」)である。

https://twitter.com/GerryAdamsSF彼らリパブリカンは、1916年のイースター蜂起から100年という大きな節目を迎えた翌年である今年、"1 Million Voices for Irish Unity" という運動を組織している。Twitterでは@IrishUnityで、FBのページもある。リパブリカンの政党であるシン・フェインの主要メンバーのTwitterのアイコンは、今年に入ってからずっと「赤地に白丸」になっているが(右図参照 via kwout)、それがこの運動のアイコンだ。彼らが求めているのは「北アイルランドの英国からの分離」というよりは、「南北アイルランドの統一」である。その「アイルランドの統一」は、単に人の流れや経済上の結びつきのために国境を開放するだけでなく、国家主権・領土というものを前提とする場合、必然的に「北アイルランドの英国からの分離」を意味する(「英国の一部であること」と「アイルランド国家の一部であること」は、相互に排他的である)。

日本語圏では、アイリッシュ・ナショナリズム/リパブリカニズムについてのそういった基本をふまえずに、単に「分離」として「Brexit後に高まる声」的に処理するという非常に乱暴なことが行なわれ、結果、はなはだしく不正確な印象が漂わされるということになっている。

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2017年03月24日

マーティン・マクギネスの棺はデリーのボグサイドを巡り、葬儀は北アイルランド紛争と和平のプロセスをたどった。

Googleマップを開き、"derry ireland" を検索する。Googleが送り返してくるのは、"Londonderry, UK" だ。

googlemap-derrylondonderry1.png

私の検索ワードも間違っていないし、Googleの検索結果も間違っていない。この町は、そういう町だ。

この町がDerryと呼ばれるべきか、Londonderryと呼ばれるべきかという話になるとやたらとややこしいことになるし、それは「べき」論を超えたもので、この町のことをDerryと呼ぶ人の政治理念・政治思想は「緑」で、宗教はまず「カトリック」だ(稀に「プロテスタント」の人もいるが)。彼らはこの町のことをDoireと書くこともあるが、それは英語ではなくアイルランド語の綴りだ。Londonderryと呼ぶ人は「オレンジ」の側で、「プロテスタント」だ。「緑」の側の新聞はDerry Journalで、「オレンジ」の側の新聞はLondonderry Sentinelだ。私はDerryの人としか話をしたことがないが、Londonderryの人は、そんな機微をとらえていそうもない極東の島国の微妙なロンドン・アクセントのあるジャパニーズ・イングリッシュの使い手が自分の町をDerryと呼んでいるのを聞いたら、とても悲しがるかもしれない。

ああ、都市名だけでこれだけの文字数を楽々と費やせる町。

こういうややこしい町なので、都市名が「両論併記」されることがある。Googleマップでは "Londonderry, Derry" という語順になっているが、一般には "Derry/Londonderry" だ。こういうふうに書くにも、どっちを前にするとかいったことでもめるので、機械的に「アルファベット順」にしてあるのだ。「デリー/ロンドンデリー」は読むにも適しているのでよく用いられるが、書き言葉では "(London)derry" という表現もある。

さて、Googleマップの画面でピンが立っているのは、フォイル川の東岸だ。こちら側は「ウォーターサイド」と呼ばれ、住民の大多数は「Londonderry市民」である。市庁舎だとかメインのショッピングセンターだとかいったものがあるのはウォーターサイドの側ではなく、川の西岸で、そちら側は「シティサイド」と呼ばれる。シティサイドは「Derry市民」と「Londonderry市民」が暮らしていて、前者が多数派だ。このシティサイドの側、マップのキャプチャ画面でLの文字あたりを中心に、マップを拡大してみよう。

googlemap-derrylondonderry2.png


Bloody Sunday Monumentと、Derry City Walls(城壁)の印が現れた。その東側から川にかけて色がついている部分が市街地(城壁の中、旧市街)である。

マップをさらに拡大すると、「レッキー・ロード」や「ビショップ・ストリート」といった地名が現れる。ブラディ・サンデー事件の証言集や事件についての資料を読んだ人なら記憶しているに違いない地名だ。

googlemap-derrylondonderry3.png


デリーの城壁の外側、この辺りが「ボグサイド」と呼ばれる地域で、決して広くはないこの地域は「北アイルランド紛争」について一度でもまともに調べるなどした人なら必ず知っている出来事がいくつも起きた地域である。

さらに拡大すると、Bloody Sunday Monumentに代わり、Free Derry Museumが表示され、その下側にまた何かアイコンが出てくる。

googlemap-derrylondonderry4.png


そのアイコンにカーソルを合わせてみると、それがFree Derry Cornerであることがわかる。

googlemap-derrylondonderry5.png


Free Derry MuseumやBloody Sunday MonumentからFree Derry Cornerを経てさらにまっすぐ進む道を道なりに行くと、進行方向左(方角としては東)に感覚的に90度カーブしているところがある。ここにあるのが「ロング・タワーの聖コルンバ・チャーチ」である。カトリックの教会(チャーチ)だ。

googlemap-derrylondonderry6.png


デリーにはデリー教区をつかさどる聖ユージーン大聖堂(カシードラル)がある。城壁のある高台から見て下のほうに広がる平地にそびえるその尖塔は、デリーの町の風景を特徴付けるランドマークである。一方、ロング・タワーの教会はもっと目立たない、地味な、地元の人々が通う日常的な教会だ。(ちなみに城壁のほうにも聖コルンバにちなんだ豪華な教会があるが、そちらは聖公会=チャーチ・オヴ・アイルランドの教会である。)

マーティン・マクギネスの棺は、ボグサイドの自宅からほんの数百メートル先のその教会まで、ゆっくりゆっくりと時間をかけて、ご家族、およびIRAとシン・フェインの人々の肩に担われて、進んでいった。その道沿いには、地元の人たちにとってはシンボルであり、外部からの観光客を呼ぶ観光資源でもあるボグサイド・ミューラルが点在する。2017年3月23日(木)の夜10時半過ぎ(日本時間)から、デリーからネットで中継されてくるマーティン・マクギネスの葬儀の映像を見ているときに最初に指がPrint Screenキーに向かって動いたのは、ものすごい数の人々と、それらのミューラルの1枚をカメラがとらえたときだった。

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ミューラルに描かれている学校の制服を着た女の子は、アネット・マクガヴィガンという名で、1957年に生まれ、1971年9月6日に14歳で死んだ。ボグサイドで発生した英軍とIRAの「銃撃戦の巻き添い」だ。ブラディ・サンデー事件の約5ヶ月前のことで、アネットは北アイルランド紛争が始まってから100人目の民間人(一般市民)犠牲者で、子供の犠牲者としては一人目だった。

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2017年03月21日

【訃報】マーティン・マクギネス

MartinMcGuinnessDies_BBC.png


こんなに早く、こんなエントリを書くことになろうとは。

martinmcguinnessrip.pngRest in power, and rest in peace.

1月の政界引退表明時のやつれ方が激烈だったので、引退の理由となった「健康状態の問題」は相当深刻なのだと察しがついた。しかしそれは、(本人の意思とは別なところで、アイリッシュ・タイムズのスクープによって)公にされた病名で、説明がつくことだった。あんな病気なのだから、あのくらいやつれて当然だ、と。それに写真や映像は照明によっていかようにもなる。

この人はファイターだから、戻ってくる。そう思っていた。何しろまだ60代だ。

3月2日の北アイルランド自治議会選挙のとき――この選挙について、驚くべきことに私はまだブログの記事を書いていないのだが(選挙後の膠着状態が続いているうちに、タイミングを完全に失った)、3日の開票で選挙結果(DUPのボロ負け、シン・フェインのバカ勝ち――しかし最終的にはわずか1議席の差でDUPが第一党の地位を保持したが、北アイルランドでユニオニスト/ロイヤリストの側の政党のマジョリティが破られ、ナショナリスト/リパブリカンの政党が議席数で並ぶ、などということは、まさに「歴史的」なことだった……その話はまたちゃんと書くよ)がだいたい出揃ったころ、Twitterにいるご兄弟が「マクギネス家、盛り上がってる人がいます!」と口々にツイートしている一方で、本人のアカウントは選挙当日の発言があったっきり沈黙していた。政界引退したあとは、新リーダーのミシェル・オニールにすべてを任せるということを印象付けるため、あえてツイートなどしないようにしているんじゃないかと考えたが、今思えば、それは多分私の側の「正常性バイアス」だった。病気の治療に専念するためという理由で政界引退した人だ、Twitterも静かにはなるだろう。ピーター・ロビンソンなんぞ、完全に姿を消してしまっているわけで(Twitterのアカウントも「DUP党首」だったので、後任のアーリーン・フォスターに譲ってしまった)。だから発言がないのも、もっともなこと、正常なことなのだ。そう思っていた。

どうしても気になってTwitterをチェックしたのは、3月20日のことだった。1993年3月20日、IRAのボムがイングランドの小都市ウォリントンの商店街の鉄製ゴミ箱の中で爆発し、買い物に来ていた人々を無差別的に殺傷した。このボムで殺されたのは2人の子供たち(幼児と中学生)で、IRAの「武装闘争至上主義」は内部からも揺らぐことになったのだが、その後、停戦が成立し、最終的に1998年4月の和平合意(グッドフライデー合意、ベルファスト合意)への流れをシン・フェインのチーフ・ネゴシエーターとして仕切ったマーティン・マクギネスと、ウォリントンで中学生の息子を殺されたコリン・パリーさんは、以後………どうにも要領を得た文章が書けない点はご容赦いただきたい。「意識の流れ」みたいになっていて、それが今できる精一杯のことだ………

ともあれ、マクギネスとパリーさんは直接対面し、「和平」と「和解と赦し(表記基準次第で『許し』)」という重いテーマに真正面から向き合うという活動を公開の場で行なってきた。そして3月20日の記念日に、パリーさんの立ち上げたNGO「ピースセンター」のツイッター・アカウントはいつも通りの「紛争と和平、和解と赦し」に関するニュースのフィードと、記念日の追悼行事(黙祷)についての告知のフィードを流していたが、マクギネスのアカウントは沈黙していた。コリン・パリーさんの個人アカウントは元々まれにしか発言がないのだが、そのときに見たものをRTしたのが3月20日のことだった。

martinmcguinnessrip2.png

この3月、1993年のボムで殺されたティム・パリーは、生きていれば、36歳の誕生日を迎えてから半年ほどになっていた。2月、コリン・パリーさんは実業界(IRAのボムの影響を受けまくった人たちは含まれているだろうか)の人々を前に、息子を失ったパリーさんが、ピース・センターを立ち上げるに至ったことの背景を語っていた。そして2月下旬、北アイルランドでまた警察官がディシデント・リパブリカンのボムの標的にされたとき(攻撃は失敗したが)、マーティン・マクギネスはそれを強く非難していた。

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【ネットの使い方】知らなかった植物の名を、インターネットで調べるまで

そこに何が植えてある/生えているのかなんて、気に留めたこともなかったのだろう。歩いていたら、白いチラチラしたものが大量に目に入ったので、「花かな?」と興味を持って近づいてみて初めて、そこに植物が植えてある/生えていることに気づいた。それは大きな建物の裏手、常に日陰になっているような場所で、きちんと間隔を保って立っている大きな木の足元だ。

近づいて見てみると、花であることは間違いないのだが、タネツケバナやハコベやミミナグサのようにわかりやすくかわいいわけでなく、何とも奇妙な花だ。遠目で白くチラチラしていたのは、花弁や花弁のように見えるガクではなく、おしべそのもののようだ(この花には、花弁や花弁のように見えるガク――アジサイの「花弁的なもの」のような――がない)。

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あとでネットで調べよう、と思って写真を撮っていると、「何かある?」と通りすがりの人に声をかけられた。「花だと思うんですけど、何でしょう、これ……」と指さすも、その人も「なんだこれ」と首をかしげるばかり。「花は花だろうねぇ。興味あんなら、むしって持ってっちゃいなよ」と言うその人は、植物と庭いじりが好きだという口ぶりだった(「ガーデニング」というカタカナっぽい雰囲気ではなかったが)。「柵の外に出てるの、いっぱいあるよ。地下茎だろうね。地下茎だからさ、どこまでも増えてっちゃうのよ。引っこ抜いてって植えればこんなん、どんどん増えるよ、あっちにも、ほら!」というその言葉に従っていたら、将来的に私はキュー・ガーデン的なものでも始めることになってしまいかねないので、「いやいや……今から買い物に出かけるところなので」と丁寧にご辞退申し上げた。実際、引っこ抜いた植物を手に持ってスーパーのお豆腐コーナーで厚揚げを選ぶなどするわけにもいかない。

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さらに建物の入り口の方に行くと、柵のないところにも同じ植物が植えられていて、真上からの写真を撮ることもできた。大きく伸びた花穂もあった。

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その大きく伸びた花穂から、「そういえば、『なんとかトラノオ』と呼ぶ植物があったな」とウェブ検索してイブキトラノオという植物についてのウィキペディアの項目を見つけたが、花は似ていてもが全然違うし、それにあちらは高山植物だ。では……とイブキトラノオが属しているタデ科のイブキトラノオ属の一覧を見てみるも、みな花は似ているが植物としては違う。

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2017年03月17日

聖パトリックの日に、緑色ではない一角に接した。

時バエは矢を好む。もとい、光陰矢の如し。米大統領選の結果を見て「おーまいがー、来年はどうなってしまうのか」と言っていたのはつい最近のことのように思えるのに、その「来年」はもう3月の半分以上が過ぎ、今日は聖パトリックの日になってしまった。3月17日である。

聖パトリックの日といえば、東京でもだいたいいつも、風が春めいてきたなあなどと感じるころだが、今年は寒い。自転車に乗って横断歩道で停車中に、マスク越しに鼻まで届く沈丁花の芳香が乗ってくる風も冷たく、午後3時をすぎて日が傾きだしたあとは、昼間はぐるっと巻いていただけのマフラーを、ぐる、ぐると重ねて巻くことになる。

そういえば今日は金曜日で、ということはセント・パトリックス・デーが祝日となっているアイルランドの人々は3連休で、今日どんなに飲んでも二日酔いで仕事にならないなどという心配をする必要がない人も多く、Twitterを見てるだけで酒臭くなるレベルで酒臭いことになるだろう。そういえば水曜日くらいから、BBC Northern Irelandのサイトでは、例年3月17日は酔っ払いでひどいことになるベルファストの学生街が、今年は輪をかけてものすごいことになるのではないかという記事が出てたと思う。

というわけで、まあセント・パトリックス・デイだし、成分補給してくれそうなトラッド系の音楽でも聞くか、なるべくバラエティ豊かな方がいいから、コンピレーション盤を探してみよう……とやってみたら、多すぎて話にならない(笑)。みんな、アイリッシュ大好きだな!

……とか何とかやってるうちに、パディ・ライリーの曲が入った「麗しのベルファスト」というこんぴ盤がリストに出てきた。ダブリン出身で、サッカーのアイルランド共和国代表サポをはじめ、アイルランド共和国のスポーツの試合で観客がよく歌うThe Fields of Athenryとフォークソングの最も有名な歌い手で、ダブリナーズでの活動でも知られるパディ・ライリーの曲が、「ダブリン」や「南(アイルランド共和国)」とはちょっと距離感のあるベルファストをストレートに讃えるコンピレーションに入っているのは、珍しいんじゃないかと思った。

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2017年03月12日

BBC Newsでの微笑ましいハプニング(真顔)についての反応が示した「偏見」

韓国の大統領がついに罷免という大変な事態となり、世界中の注目が韓国に集中したその日、現地の大学(釜山大学)で国際関係論を教えている英国人のケリー教授は、BBC World Newsのコメンテーターとして、ウェブカムを使ってロンドンのスタジオのキャスターのインタビューを受けていた。ケリー教授は朝鮮半島についての専門家である。インタビューが進み、今回の事態が「より広い範囲に」、つまり朝鮮半島全体にどのような影響をもたらすかという深刻な面についての話になったとき、いきなり背後のドアが開き、どん・どん・どん・どんのバスドラ4つ打ちに合わせるように踊りながら、子供が入ってきた(ここで視聴者は、ケリー教授のインタビュー場所が大学の研究室ではなく自宅の書斎であることに気づく……英国ではこれは朝のニュースだったそうだが、韓国と英国は8時間の時差がある)。子供はそのままずんずんと前進して、パパが見詰めているカメラをじっと見詰める。教授も真顔なら、お子さんも真顔である。

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背中を向けているキャスターも真顔であることに疑いの余地はなく、真顔好きとしては、「これはすばらしい真顔博覧会ですね」と感嘆を禁じえないのだが、このあと、事態は急展開を見せる。どっかから「教授、アウト〜」って聞こえてきそうな画面だ。

短い映像だし、言葉などわからなくても見ればわかるので、まだ見ていない方には、ぜひごらんいただきたい。ただしお茶を飲みながらとか歯を磨きながらとかいった「ながら」視聴はおすすめしない。



これについては、「真顔」という観点を軸に、事態発生時にBBCのニューズルームにいたジャーナリストや当事者(キャスター、教授)のツイートとそれへのリプライを、下記に「まとめ」ておいた。

(・_・) 英国式真顔の真髄、あるいは「絶対に笑ってはいけないBBCニュース」
https://matome.naver.jp/odai/2148922169496268301

といっても、わざわざ「まとめ」にしたのは決して、これが「真顔好きにはたまらない」ものだったからだけではない。「真顔好きにはたまらない」からわざわざまとめたのではない。大事なことなので二度言いました。真顔で。 (・_・)

教授が「アウト〜」になり、事態がクライマックス(教授の「すみません」との発言)を迎えるシーン。大慌てで飛び込んできた紺色のボーダーの服の女性が誰であるかをどう認識するかについて、議論になったのである。

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2017年03月11日

単なる「テクノロジー・プラットフォーム」に入り浸り、その「テクノロジー」の言う通りにしていたら、極右言説・陰謀論が視界にあふれてしまったという話(Facebookについて)

WIREDの日本版サイトにこんな翻訳記事が出ている。

Facebookはもはや「プラットフォーム」ではないし、中立でもない
2017.03.11 SAT 21:00, TEXT BY DAVEY ALBA
http://wired.jp/2017/03/11/facebook-media-company/
原文: https://www.wired.com/2017/03/facebooks-officially-media-company-time-act-like-one/
フェイスブックは、従来のメディア企業として分類されるのを頑なに拒んでいる。米国の成人の半数近くがFacebookでニュースを見ているにもかかわらず、CEOのマーク・ザッカーバーグは、Facebookを「テクノロジープラットフォーム」と呼ぶことにこだわっているのだ。だが、こうした古い議論はもはや必要ない。とくに、フェイスブックが独自の動画コンテンツの制作を始めたいまとなっては。

『DIGIDAY』US版によると、フェイスブックはモバイルアプリ用に「スポットライト・モジュール」と呼ばれるタブを開発しているという。Facebook用に制作された番組や長時間の動画コンテンツをハイライトするものだ。


FBが立ち上げようとしているこの「動画コンテンツ」の詳細は、ここでは措く。私はFBは使っていないし、別に興味もない。それより、下記の指摘だ。

動画制作の領域に確実に踏み込みつつあるフェイスブックは、巨大メディアとしての責任を回避しようとしており、それは議論の的となっている。

……フェイスブックは、コンテンツ制作を手がけることで、「単なるプラットフォームである」と主張することはもはやできなくなる。

結局のところ、「コンテンツをつくる」というのは、フェイスブックが編集上の判断を行うことを意味する。それは、動画制作者が何をするか、あるいはしないか、そしてその動画のフォーマットや長さ、トーンを決めるのに、フェイスブックが意見をもつということだ。そしてもちろん、フェイスブックは番組に直接資金を投じることになる。そこに、ニュートラルなものなど何もない。


FBというのはアメリカ企業で、基本的にアメリカしか相手にしていない。英語圏ならまだしも、言語が異なる(それも、使う文字から異なっている)日本語圏では、また事情が違っているのかもしれない。だがいずれにせよ、FBについては次のような問題(をザッカーバーグが絶対に認めようとしないという問題)が指摘されている。同じ記事から。

フェイスブックは、編集上の判断をこれまでまったく行ってこなかったというわけではない。「Facebookは、決してニュートラルなプラットフォームではありません」と、コーネル・テックでSNSを研究する法律学教授のジェイムス・グリメルマンは言う。「常に、どこよりも効率よくコンテンツを拡散してきたのです」

フェイスブックの技術的・社会的な決定は、コンテンツに明らかな影響を与えてきたと、グリメルマンは語る。……


グリメルマン教授の言葉に、私は昨日読んだBuzzfeed.comの記事を思い出した。内容をかいつまんで連続ツイートしたものだ。元からそれをブログに引っ張ってくるつもりだったが、このWIREDの記事はちょうどタイミングよかった。

というわけで、昨日読んだBuzzfeedの記事である。

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2017年03月10日

アモス・ギタイ監督(イスラエル)の映画、『フリーゾーン Free Zone』

画面の左半分弱を占めた若い女の横顔。音楽(歌)が流れ、女が顔をしかめ、涙を流す。アイメイクが黒く尾を引いて頬の上を流れ落ちる。オープニング・クレジットからの7分間、この映画はずっとその映像だ。流れている歌の歌詞は日本語の字幕で画面下部に表示される。泣いている若い女の横顔は、見ている者の目を引きつけて離さない。

freezone-song.png  私の父が買った 安い値段で
  子羊! 子羊!
  私の父が買った 安い値段で
  そうハガダに 書いてある
  猫が待ち伏せしていた
  子羊に跳びかかり 食い殺す
  子羊を食い殺した猫を
  犬が絞め殺す
  父が買った子羊
  安い値段で
  子羊! 子羊!……

字幕によると、この歌はさらに次のように続く(2番)。

  棍棒が
  犬を罰する
  猫を食いちぎった犬
  父が買った子羊を 食い殺した猫
  父は安い値段で 子羊を買った
  子羊! 子羊!

続いて、今度は「火が棍棒を燃やす」で始まり、また同じ「子羊を殺した猫を殺した犬を罰した棍棒」が(逆順で)繰り返される。

次は「水が火を消す」。そして「子羊を殺した猫を殺した犬を罰した棍棒を燃やした火」(の逆順)。

それから「近くを通った牛が 火を消した水を飲む」。そして「子羊を殺した猫を殺した犬を罰した棍棒を燃やした火を消した水」(の逆順)。

これで終わりではない。次は「水を飲んだ牛を殺しに 肉屋がやって来る」。そしてまた、繰り返される。「その牛は水を飲んだ、その水は火を消した、その火は棒を燃やした、その棒は犬を罰した、その犬は猫を絞め殺した、その猫は子羊をかみ殺した、その子羊は私の父が買った」。

そしてついには「堕天使が現れて 肉屋を殺す」。

  堕天使が現れて 肉屋を殺す
  肉屋は水を飲んだ牛を殺し 
  水は火を消した 
  火は棒を燃やし
  棒は犬を罰した
  犬は猫を絞め殺し
  猫は父が買った子羊を
  食い殺した
  子羊! 子羊!

先月Twitterに流していたのだが、3月9日(昨日)まで、アモス・ギタイ監督の映画『フリーゾーン』がGYAOで無料で配信されていた。このように「○月○日まで、いつでも再生可能」という形だと、ついつい「今見なくてもいいや」と思って後回しにしている間に最終日になってしまうのが常で、9日の夜になってようやく見た。

見ている間、完全に引き込まれたし、おもしろかったので、最終日の夜で「今から言われても見れない」という人が多いかもと思ったけど、Twitterに「おもしろい映画だった」ということを書いて投稿した。見終わって立ち上がってお茶でも入れたころには、見ている間にちぐはぐさを感じた部分の印象が強まってきて、「きっと、長い映画をカットして90分に収めたのだろう」と思えてくるのだが(実際、イスラエルで保守派から文句を言われた「嘆きの壁」近くでのシーンが最終的にはカットされたそうだが、それは主人公の若い女の「物語」がばっさりとカットされていることを意味する)、そういったちぐはぐな部分(例えば、【ネタバレ回避のため文字を背景色と同じにしてあります→】「アメリカ人」は丘を歩きながらレベッカに語ってないで、商売で借りた金を返すよう尽力しろよ【←ここまで】とか)をしのぐ「会話劇」の凄みと強さがある。そして、その「会話」は、ツイートした通り、英語、ヘブライ語、アラビア語で為され、3言語がシームレスにくるくると入れ替わる。

特におもしろかった(興味深かった)のが、物語が動き始めてほどないところで出てきたガソリンスタンドの場面だ。

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2017年03月07日

アイルランド、テュアムで埋められていた子供たちは新たに見つかったんじゃない。約3年前の指摘を政府がようやく事実と認めたのだ。

2014年6月、私は何に関心を持っていただろう。イスイス団の西洋に対する残虐な敵意の垂れ流し祭りが始まる2ヶ月前で、自分の関心の非常に大きな部分がイスイス団に向けられたあとのことは覚えているが、その前のことは思い出せなくなってしまった。Twitterのログを見返しても雑多すぎて、イマイチはっきりとしない。そのときに私が関心を向けていたことは確かにあるのだが、その後に起きたあまりにも大きな、あまりにも衝撃的なことに吹き飛ばされて、それらは自分の中で流れを作っておらず、ただ「断片」となり、確かに記録として存在はしていてもあとからたどることは難しくなってしまった。

それでも、2017年3月3日、北アイルランド自治議会選挙の開票実況をゲラゲラ笑いながらTwitterで追っていたときに(選挙についてのブログはこのあとで書きます。まだ笑えるから困る)、アイルランド共和国から流れてきたニュースに出てくるその地名には、聞き覚えがあった。ゴールウェイ州だよな、とも思った。決して馴染み深い地名ではないのに。

実際、2014年6月7日、自分は下記のようにTwitterに投稿していたのだ。

tuambabies-june2014.png


自分の書きぶりからわかるが、このとき、このニュースを伝えるセンセーショナルな文言を、非常に多く見たのだろう。そういう中で、何とか「冷静な」ものを見ようとしていたことがうかがえる(「正常性バイアス」ってやつだろう)。そして私はアイリッシュ・タイムズは(特に宗教がらみのことではアイリッシュ・インディペンデントなどに比べて)信頼できるメディアだと思っていたし(今でもそう思っている)、そこにあるバイアスに気づいていなかったのだろう。

そう、2014年6月の私のバイアスに、2017年3月の私は気づかされている。

さっきから、「何のことだ」と思われているかもしれない。このことだ。

アイルランド、カトリック教会が運営していた児童施設の跡地から、大量の子供の遺体が見つかった。
https://matome.naver.jp/odai/2148855831728187001

2017年3月3日、北アイルランドのリストの画面と、ベルファスト・テレグラフやBBC Northern Irelandの開票速報の画面を開いて、ウィキペディアの選挙区ごとのページを見て前回の選挙のことなども確認しながら、北アイルランドの人々の「うはー」とか「うひょう」という声が響く中、単なる数字を見てゲラゲラ笑っていたときに、北アイルランドのリストに "Tuam" という地名を含むツイートがいくつも流れてきていた。

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2017年03月03日

ストーク・オン・トレント補選(2月23日)結果……あれでもまだ、議席を取れないUKIPは注目に値する政党なのか?

英国では選挙が行なわれるのは木曜日という慣行があるが、今日は木曜日で、北アイルランド自治議会(ストーモント)の解散・総選挙の投票日である。ということは、ぼーっとしているうちに、前回の「英国での選挙」から1週間すぎたということで、それについて私は書こうとしていたのに、何という体たらくか、ということだ。

前回の「英国での選挙」というのは、2月23日(木)に投開票が行なわれた、英国会下院(庶民院)の補欠選挙のことだ。この日、2つの選挙区で補選が行なわれ、うち1つについては補選が決定した経緯も当ブログで書いている。つまり、トリストラム・ハント(労働党)の件だ。

2017年01月14日 英国的な、あまりに英国的な(ヴィクトリア&アルバート博物館の新館長)
http://nofrills.seesaa.net/article/tristram-hunt-resigns-as-mp.html

ハントが議員辞職したことで補選が引き起こされることになった選挙区は、ストーク・オン・トレント・セントラル。日本では(何らかのイメージがあるとすれば)おそらく「陶芸の町」というイメージが最も強いであろうイングランド中西部(ウェスト・ミッドランズ)の大都市、ストーク・オン・トレントのいくつかある選挙区のひとつだが、この都市の産業を製陶以上に支えてきた石炭産業・製鉄産業が1990年代以降衰退し(製陶産業も、特に2008年の金融危機以後、縮小している)、近年ここが注目されるのは(注目されることがあるとすれば)「かつて労組(労働党の支持基盤)の町だった産業都市と、極右思想への支持の拡大」という文脈でのことが多かった。BNP (the British National Party) が英国で「伸張する極右」の代名詞だった2000年代、BNPが議席を獲得した地方議会としてメディアで大きく取り上げられていた中には、ストーク・オン・トレント市議会も含まれる(2011年にBNPは同市議会の議席をゼロにしている)。BNPが崩壊したあとのことは、労働党支持の新聞、ガーディアンで「ストーク・オン・トレント」のタグのついている記事の一覧をさかのぼって見ると、様子がつかめるだろう(ヴィクトリア朝を専門とする学者でもあるトリストラム・ハントがウェッジウッド博物館の存続を求める論説を書いていたりするのも味わい深いが)。
https://www.theguardian.com/uk-news/stoke-on-trent

stoke-on-trent-euref-results.pngストーク・オン・トレントは、昨年6月の「EUレファレンダム」の際は、「離脱」派が優勢ということで注目を集めた「イングランドの衰退した工業都市」のひとつだった(「注目を集めた」といっても、この都市に関しては、例えばサンダーランドなどとは異なり、帰結がどうなるかではなく、「離脱」票が「残留」票にどの程度の差をつけるかということだったと記憶しているが)。実際、投票が終わってみれば、右図の通り、「離脱」が69.4%、「残留」が30.6%というすさまじい結果だった(投票率の65.7%は、全イングランドの73.0%という数値を大きく下回っている。投票結果についてはウィキペディア英語版が見やすい。地域ごとに「離脱」「残留」のパーセンテージが一覧できる表がある。並べ替えも可能)。かくして、ストーク・オン・トレント(を含むスタフォードシャー)は「ブレグジットのハートランド Brexit heartland」などとも呼ばれてきたのだが、EUレファレンダム投票直前の2016年6月14日のガーディアンの現地ルポが、Brexitというものをめぐる市井のムードについて、生々しい。

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2017年02月20日

ドナルド・トランプの世界では、パキスタンとスウェーデンが区別されないらしい。トランプ支持者の世界では、スウェーデンは燃えているらしい。

当の米国では新政権発足後のいわゆる「ハネムーン」期間など、今回に限っては存在してもいないのに、なぜか日本語圏はそういうムードに浸りきっていて「トランプ大統領の経済政策のお手並み拝見」とかいう言説があふれかえっていて(そういう言説、気をつけないとだめですよ)、特に書店の店頭などはすさまじいことになっているのだが(去年は格差だピケティだデモで民主主義だとやってた棚が、今年はトランプ一色で、出版されるトランプ本の中身は、多くの場合、「中立」という体裁をまとったトランプへの消極的支持または積極的礼賛)、モニターの中に私が見る世界は、(ときどき「偵察」的に見に行くalt-rightのサイトは別として)それとはまったく違う。何しろすべてがデタラメなのだから(GBWのとんでもないデタラメが、まっとうに見えてきて困る)、特に「反トランプ」であるわけでもない圏、つまり単に「トランプ支持ではない界隈」ではこうあるのが当然だが。

特に今回が異常なのは、いわゆる「燃料投下」がやまないことである。スポークスパーソンとか広報とかいった部門やそっち方面の補佐官が、「大統領の失言をフォローする」どころか、自分たちががんがんトンデモをぶちかましている(彼らのは「失言」などというレベルではなく、「トンデモ」である。そのうち「レプタリアンがー」とか言い出すんじゃないかと思って、生暖かく見守るくらいがちょうどいい)。

トランプ政権のトンデモ番長はケリーアン・コンウェイだ。彼女は選対本部長から大統領顧問となった人物だが、元々はテッド・クルーズ陣営のスタッフだった。コンウェイが選対本部長になった経緯を私は把握していないが(正直、この人のことはどうでもいい)、確かトランプ陣営は選挙時にあまりにトンデモでデタラメだったことに耐えかねて選対本部の人が途中で離脱してて(NationかMother Jonesか何かでその過程について激白してたと思う)、離脱した人のあとに入ったのがコンウェイではなかったかと思う(要確認)。

彼女のトンデモっぷりは、大統領就任式典直後に "alternative facts" なる概念を披瀝したことで、全米および全世界が知るところとなった。

「もう一つの事実」(英: Alternative facts)は、2017年1月22日に放送されたミート・ザ・プレスのインタビューにおいて、アメリカ合衆国大統領顧問ケリーアン・コンウェイが行った発言で、ホワイトハウス報道官ショーン・スパイサーのドナルド・トランプ大統領就任式に関する虚偽発言を擁護した言葉である。インタビューを行ったチャック・トッドが、スパイサー報道官はなぜ「明らかな虚偽発言」を行ったのか問いただしたところ、コンウェイ顧問は「もう一つの事実だった」と答えた。それに対してトッドは「もう一つの事実とは事実ではない。虚偽だ」と反論している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%81%86%E4%B8%80%E3%81%A4%E3%81%AE%E4%BA%8B%E5%AE%9F


コンウェイの悪名をさらにとどろかせたのが、2月2日に為された「ボウリング・グリーンの虐殺 Bowling Green Massacre」発言である。「ボウリング・グリーン」はケンタッキー州にある町の名前で、2011年にこの町で、アルカイダに対する資金・物資の援助の容疑で2人のイラク人が逮捕され、連邦裁判所で「テロリズム」で起訴された。つまり、ボウリング・グリーンで2人のイラク人「テロリスト」が逮捕・起訴されたということになるのだが、彼らは人を殺したり爆弾を作ったりしたわけではなく、米国が「テロ組織」と規定している組織(アルカイダ)への支援を行なったわけである(そんなことで「テロリスト」になるのなら、アメリカのアイリッシュ・コミュニティにはIRA支持の「テロリスト」は大勢いただろう)。しかし、ケリーアン・コンウェイの「オルタナティヴ・ファクト」の世界では、つまり普通の事実の確認を取らずに構築されている世界では、彼ら2人のイラク人「テロリスト」は、ボウリング・グリーンの町で「虐殺(大量殺戮)」を行なったことになっていた。そして彼女は、自分の信じていること(マイルドにいえば「勘違い」)を、そのまま、テレビのインタビューで披瀝したのである。

むろん、彼女は即座に嘲笑された。ボウリング・グリーンの町では人々が「存在しもしない大量殺戮事件のために」という言葉をかかげて、キャンドル・ヴィジルを行なったりしていたし、Twitter上の英語圏は、「機知に富んだ一言」でたいそう賑わった。

これで赤っ恥をかいた政権スタッフは、以後、しゃべる前に事実確認を行なうようにするなど、事実に対する態度を改める……のなら普通だが、トランプ政権は「普通ではない not normal」し、自分たちが「普通ではない」ことをドヤ顔して見せ付けるような人々で構成され、支持されている。
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2017年02月18日

【訃報】ディック・ブルーナ

Twitterの@Miffy_UKのアカウントは、ミッフィー、つまりディック・ブルーナの絵本のうさぎ「ナインチェ」(日本では「うさこちゃん」として親しまれてきた)に関連するイベントやグッズ、テレビ番組の告知を行なったり、絵本から抜粋した文と絵をツイートしたり、「子供たちとミッフィーちゃん」という光景の写真やミッフィーちゃんをかたどったお菓子の写真などを紹介している。最近はinstagramからの写真を紹介していることも多い。

普段は色にあふれたこのアカウントが、18日、色を失っていた。ヘッダー写真が真っ白になっていた(黒ではなかった)。

miffiy_uk.png

ディック・ブルーナ。1927年8月生まれのオランダのアーティストが、90歳の誕生日まであと半年あまりというこの時期に、逝ってしまった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Dick_Bruna

その悲報がどのように広まっているかが、私の目の前に開いた小さな窓の中に見えた。

以下はその記録。ささやかな。

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2017年02月06日

【英語】単数形か、複数形か、それが問題だ(The teamなど「ひとつの集団」の扱いについて)

英語で、「ひとまとまりの集団」を単数扱いにするか、複数扱いにするかはけっこう神経を使う。例えば、The team was in London at the time. とするか、The team were in London at the time. とするかといったことだ。

これは、ネット上の英語教師・学習者のフォーラムなどでもよく話題になる。

http://www.english-test.net/forum/ftopic44474.html で検討されているTOEICの問題は、単純に「文法の問題」として考えれば悪問だが(答えが2つある)、何番目かの回答にあるように「ビジネスで意思を伝える定型文」としてみた場合は答えは1つしかないのかもしれない。

http://english.stackexchange.com/questions/76371/jury-was-divided-or-jury-were-divided の質問者の混乱は、私にも「あるある」で("The jury is out" と言い、"The jury were divided" と言う、どっちなんだよ、っていう)大変に興味深いが、この質問への回答に書き添えられている英米差もあり、やっかいだ(英国は複数扱い、米国は単数扱いが多い)。

私の書くものでは英国流で複数扱いをしてることが多いと思うが、一般的にいって、The Beatlesのように団体名そのものが複数形の場合はare, wereを使っても違和感がないが、Pink Floydのように複数形でない場合はare, wereを使うと変なふうに見えるということはあるだろう。

……というわけで、いろいろと気を使うので、煮詰まってくると、「単数・複数が関係ない表現を使えないか」とかいうことを考え始めたりもする。The team was/were in London. ではなく、 The team stayed in London. とすればいいじゃない♪ とか、The team would leave London for Paris. というふうにもできるよね、とか。うん、わかってる。逆にめんどくさいよね。

そんなお悩みを一発でぶっ飛ばしてくれる(あるいは、そんなお悩みをますます倍増させる)「生きた英語」を見かけたのでメモ。内容はヘヴィーだが、英語の例文としてはシンプルだ。

The PSNI's Legacy Investigations Branch (LIB), which was formed in 2014, are currently investigating 1118 killings.

http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/northern-ireland/exbritish-soldiers-criticise-psni-decision-not-to-probe-ira-attacks-on-them-35424698.html


これは、北アイルランド紛争期の犯罪(殺人、殺人未遂、傷害、爆発物設置など)の捜査についての記事で(現地には「時効」というものはない)、それら、言ってしまえば「古い」犯罪の捜査のために、通常の警察の業務を行なう部門とは別に、PSNI(北アイルランド警察)のなかに設けられたLIBという部署についての文である。

ひとつの文(複文)の中で、単数形で受けてるところと複数形で受けてるところがある。

理屈をいえば、最初のところが単数形なのは、LIBというチームをひとつのものとして扱っているからで、次が複数形なのは、LIBというチームの構成員それぞれが犯罪の捜査を行なっているから、ということになるだろう。

こういうときに「揃っていない」のが大変に気になるのだが、この例を見る限り、必ずしも揃っていなくてもよいようだ。だからといって、「全部適当でいい」というわけでは、断じてないのだが。

ちなみに、「ひとつのものとして扱う場合は単数形」というのは基本だが、ためしに "a group were formed" というのをググってみたら大変なことになった。仮定法過去の文例も含まれてるけど、それにしてもこれはカオスだ。

学生さんへ: これで「よかった、少し気が楽になった」と思う人はたぶん英語向き。「なんだよ、余計ややこしいじゃん。規則作って揃えろよ」と思う人は、英語以外の文法がっちがちの言語のほうが合うかもしれません。

4760820094英文法解説
江川 泰一郎
金子書房 1991-06

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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