kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2017年09月15日

今日のロンドンのボムは、攻撃者が意図した通りには爆発しなかったようだ。

北朝鮮のミサイル発射で始まり、ロンドンのボムで終わる一日だった

DJwBkpAXcAA1BZK.jpg今日のロンドンのボムは最近のニュースというより、遠い日の「ボム・スケア」を生々しく思い出させるようなものだったが、攻撃者にとって「成功」と呼べるような爆発には至らず、爆発現場となった地下鉄車両の写真は「真っ黒く焦げた車体」や「ぐにゃりと曲がった扉」のような、ある意味「わかりやすい写真」ではなく、死者はなく、22人が病院に搬送されているという負傷者のうち誰も命に関わるような怪我をした人はいない。多くは火傷だそうで、車内に乗り合わせていた人々は「火の玉がこちらに向かってきた」、「四方八方に炎が」といった証言をしていたが、報道機関のサイトでビデオを見ても、例えば2005年7月7日の攻撃のあとのような様相の人はいなかった。つまり、今日は攻撃された側(地下鉄やその利用者、広く見れば一般の社会)が「ラッキー」だったのだ――そんな言葉を、どうしたって思い出さずにはいられない。

Today we were unlucky, but remember we only have to be lucky once. You will have to be lucky always.

https://en.wikipedia.org/wiki/Brighton_hotel_bombing#IRA_statement


警察や報道機関のツイートと、自分でガーディアンとBBCのLive blogを見ながらツイートしたものを中心に、一覧できるようにしてある。情報の追記もそちらで。

ロンドン、地下鉄車両内で爆発、22人が負傷で病院に搬送(2017年9月15日)
https://matome.naver.jp/odai/2150547472625257001

爆発物が仕込まれていたのは、建築現場などでよく使われている作業用バケツのようだ。それが激安系スーパーマーケットLIDLの何度も使えるショッピングバッグ(エコバッグ)に入れられていた。そういう荷物を持って誰かが地下鉄に乗っていても、それらしい服装や年恰好の人だったら特に目立ちはしなかっただろう――今日までは。

2005年7月7日のあと、ロンドナーの個人ブログで「電車の中で、iPodの白いイヤフォンコードを背中のリュックから出して音楽を聴いている人を見ると、ドキっとするようになった」という個人の言葉を読んだことを思い出す。


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posted by nofrills at 23:43 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月09日

非実在「イケメン戦場フォトグラファー」の件、あれこれ記事を読んでわかったことのメモ(&「アミナ」の連想)

「アミナ・アラフ」のことを思い出すが、「アミナ」を軽く超える詐欺だ。アミナは、プロフィール写真などは全然関係のない人がFacebookにアップしていた写真をパクってはいたが、基本的に、テキストベースで、「創作」を「事実」として、個人ブログやネット上の掲示板、Facebookのような場で語っているだけだった。しかし今回発覚したのは、架空の「戦争写真家」が、どこかからパクってきた写真を左右反転するなど加工して自分の写真として大手に売り込み、採用されていたという事案である。「アミナ」の実在を疑わなかった大手メディアも問題だが、実在しない「戦争写真家」の写真を配信・掲載した大手メディアはもっと問題だ。

他人の写真をパクって加工して自分の写真と偽っていただけではない。その架空の「戦争写真家」は、自分の顔(&ボディ)写真として、全然関係のないイケメンの写真をパクってきて、それを別のところからパクってきた戦地の写真と合成して「取材中の僕」を捏造してさえいた。それだけでも呆れて物も言えなくなる話だが、「若い頃に白血病にかかって生還した」とか、「フォトグラファーであると同時にサーファーで、世界を回っている」とか、「国連機関で人道支援をしている」とか、全てが嘘。バファリンの半分はやさしさでできているかもしれないが、このオンラインの人格の半分は虚偽、半分は捏造だ。そしてその「自分自身の悲劇を乗り越え、他者の悲劇を記録し、人々に伝えているヒロイックな人道主義者♂(しかもイケメン)」というペルソナで、オンラインで女性をたらしこんで、自分に都合のよい環境づくりをしていたらしい。それも複数。

「アミナ」は正体がばれてさらし者になったが、この「戦争写真家」は詐欺がばれれば話は終わりで、「中の人」は名乗り出ることもなく、Instagramの彼のアカウントが消えたように、ただ消えてしまうだけだろう。

instagram-edu-martinsp.png

この話を知ったのは、いつも巡回しているガーディアンで見た記事だった。

War photographer who survived leukaemia exposed as a fake
Dom Phillips in Rio de Janeiro
Tuesday 5 September 2017 19.04 BST
https://www.theguardian.com/world/2017/sep/05/war-photographer-eduardo-martins-survived-leukaemia-exposed-fake?CMP=share_btn_tw

問題の人物は「Eduardo Martinsという32歳のブラジル人フォトグラファー」を名乗っており、シリアのアレッポやイラクのモスル、ソマリアのモガディシオに取材に入っていると語って/騙っていた。

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posted by nofrills at 07:46 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月01日

暴力と憎悪の連鎖、そしてテロリズム……非主流派リパブリカンに武器・爆薬を流すなどしていた英軍兵士の件(UTVのドキュメンタリー)

前項「たった1人で北アイルランド和平をひっくり返していたかもしれないテロリストが英軍内に浸透していた件」の続き。

■判決から1ヶ月経過し、UTVがドキュメンタリー番組を制作
さて、判決が出てから1ヵ月後、8月31日に北アイルランドのTV局UTV(現在はITV傘下)の "Up Close" という番組枠で、キアラン・マックスウェルの事件と現在のディシデント・リパブリカンについてのドキュメンタリーが放映された。ウェブで誰でも見ることができる(英国内からの接続でなくてもOK。ただしBrightcoveなので要Flash)。長さは約45分。見終わるとぐったりするような内容だ。

「まるでスパイ小説のようですが、今日の番組でお伝えすることには、一切、フィクションの要素はありません」と導入部で述べるレポーターは、UTVのシャロン・オニール記者。アイリッシュ・ナショナリズムの研究者として有名なエイモン・フェニックス博士や、元軍人といった人々の解説も要所要所に入っている。

Up Close - Marine Maxwell the Traitor
http://www.itv.com/utvprogrammes/utv-up-close/up-close-marine-maxwell-the-traitor

最初の3分半は番組オープニングと導入部で、特に冒頭1分40秒までは「海兵隊とはどのような組織か」を説明するパート(映像は英軍のプロモビデオ)なので飛ばしてもよい。

本編はキアラン・マックスウェルの生い立ちの説明から始まるが、ここで驚いたのは、「カトリック」である彼のお父さんが英軍人だったという事実だ。

現在31歳の彼が生まれたのは、1985年か1986年、北アイルランド紛争のど真ん中で、「カトリック」のコミュニティにとって英軍は基本的に「敵対的勢力」であった時代だ。番組のナレーションは言う。「当時、カトリックが治安当局で働くことは通常ではなかった。しかしラーンにおいては事情が違っていた」。

「数」があること、「過半数」を取ることがストレートに「正しさ」を意味するかのような単純化された世界観が支配する土地の、圧倒的に「プロテスタント」ばかりの地域で、常に「少数派(マイノリティ)」である「カトリック」。労働者階級のカトリックにとっては、思想や理念より働き口が重要だ。そして2002年、16歳のキアラン・マックスウェルは、ロイヤリスト(UDA)のモブにぼこられ重傷を負い、心的外傷も受ける。そのとき、彼はシン・フェインの機関紙であるAn Phoblachtの取材を受けているが、その時代にはもうシン・フェインにとって暴力(フィジカル・フォース・リパブリカニズム)は過去のものとなっていたわけで、ここで彼がAnPの取材を受けていたことは、彼の暴力的な過激主義への道とは関係なかろう。

暴行事件のあと、キアランの両親は変化を求め、息子にカウンセリングを受けさせるなどした。そして暴行から7年後の2009年に息子が志願したとき、両親は息子は完全に立ち直ったと認識した。2010年、24歳で軍隊に入った彼は起訴訓練を終えてイングランド南西部サマーセット州トーントンを拠点とするようになる。この町は軍隊とのつながりが非常に強い町で、「父親も兄も弟もみな海軍」といった家も多くあるし、人々は軍を大切に思っている。そのような町を拠点とする軍人の1人が、英軍と敵対する暴力主義の組織(テロ法に指定された「テロ組織」でもある)のためにあのようなことを行なっていたという事実に、人々は驚愕と怒りを隠さない。

番組はここから、「キアラン・マックスウェルの2つの顔」に迫っていく(ここまでで10分)。

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posted by nofrills at 23:00 | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「蚊を脅迫してTwitter凍結」なる話題、BBCは裏取った上でサイトに載せてるのかな。FakeNewsではないという確証が持てないんだけど

BBC News Japanのこんな記事が話題になっている(このサイトの記事は、英語記事からの翻訳である)。

何カ所も刺されて蚊に「死ね!」とツイート……アカウント凍結
2017年08月31日
ポール・ハリソン、BBCソーシャルニュース
http://www.bbc.com/japanese/41105014

私はBBC Newsは英語で読むので、BBC News Japanはほとんど見ないのだが、何となく見てみたこの記事のページには、何かとっても違和感がある。何だろう……と数秒眺めて気がついた。

この記事、ほかのニュース記事(例えば "「対話は答えではない」 北朝鮮対応でトランプ米大統領" っていう超シリアスな記事)などと完全にフラットに並んでいるように見えているのが、違和感の原因だ。

mosquitotwitter01-min.png


ちなみに原文(BBC Newsの英文)はこう。記事セクションの上にBBC Trendingというヘッダーが入っていることに注目。これがBBC Newsサイト内での「コーナー」を表す。

mosquitotwitter02-min.png

本来BBC Newsにはコーナーの区分があって、「シリアスなニュース」の記事と、いわゆる「こぼれ話」「珍ニュース」や「ネットで話題」を扱うブログ的な記事とは区別ができるようになっている。それを示しているのが記事セクションの上にあるヘッダーなのだが、仮にBBC News Japanのサイトで閲覧した場合のようにそのヘッダーがない状態でも、内容的に考えて、この記事は誰がどう見ても後者(「こぼれ話」「ネットで話題」系)だ。

BBC Newsのサイトをよく知らない人にその違いを言葉だけで説明するのはとても難しいので、さらにキャプチャ画像を見ていただきたい。左が普通の「シリアスなニュース」(この記事……何かえらいことになってますね)、右が「珍ニュース」(この記事)。

ordinarynews-min.png newsfromelsewhere-min.png

右側のキャプチャ画像のヘッダーに書かれているNews from Elsewhereは「世界のどこかからのニュース」というような意味で、この記事の執筆者クレジットは、"By News from Elsewhere...as found by BBC Monitoring" と記されている。で、このBBC Monitoringというのは、英国(というか英語圏)以外のメディアの報道をモニターする部門、つまり外国の新聞やテレビで報道されている「小ネタ」的な話題を英語で紹介する部門のことだ。BBC Monitoringの記事は、BBCに所属するジャーナリストが裏取り・取材をしたものとは違い、基本的に「外国のメディアが何を報道しているか」を英訳したもの。だからこのコーナーの記事は、BBCのサイトに出ているからといって「BBCの報道」と考えるわけにはいかないし、「BBCだから内容もしっかりしているだろう」と前提することも、厳密には、できない。

このような、BBCのジャーナリストが裏取り・取材をしたわけではない記事が出るコーナーが、BBC Newsのサイトにはまだ他にある。それが「ネットで話題」系の記事が掲載されるBBC Trendingのコーナー(今回の「蚊への脅迫でTwitterサスペンド」の記事の掲載コーナー……BBC News Japanのサイトではそういうコーナーに掲載されていることがわからないのだが)である。

trending-ugc-min.png

このコーナーのページには、PCで見た場合は右肩(iPadだとページの一番下)に "About this Blog" として、 "The BBC bureau on the internet. Reporting on what's being shared and asking why it matters." という説明がある。「このブログは、BBCのインターネット支局です。何が話題になっているかを報告し、なぜそれが重要性を持つのかを問います」という意味。つまり「ネットで話題になっていることを解説する」ということだ。簡単にいえば、基本的には「ツイッターのまとめ」のようなものである(そういう記事は、英語圏では大手報道機関が量産している。インディペンデント系列のindy100.comが具体例としてわかりやすいだろう)。

このコーナー(ブログ)が取り上げるトピックが英語圏のものである場合、また英語圏外のものでも最初から英語で書かれている場合は、専門家のコメントが添えられていたり、何らかの分析が行なわれていることも多い(単なる「まとめ」のことも多いが)。時には非常にしっかりした仕事がなされていることもある。例えば2014年11月、シリア内戦に際しどっかの「意識高い系」のアーティスト気取りが、役者を使って撮影したフィクションのビデオを「実際の映像」としてネットにアップするというとんでもない出来事があったとき、デイリー・テレグラフなど大手メディアのアカウントも含め、非常にたくさんのアカウントが映像を真に受けてそのまんま拡散する中、ファクトチェック専門業者と組んでがっつりと冷静な検証を行ない、ビデオの作者を突き止めていたのがこのBBC Trendingだ。ごく最近も、極右による反Antifaの情宣で、事態とは無関係な家庭内暴力についての写真が勝手に利用されていたことについての調査・検証記事を出している(こちらは検証は外部の人が行なっている)。

だから、BBC Trendingのコーナーの記事だからといって即「BBCが取材せず、ネット上の情報をまとめている記事だ」と決め付けることはできないのだが、それでも、このコーナーの記事については、「BBCがこのように報じている」として他人に伝えること(拡散すること)ができるクオリティがあるかどうか、かなり慎重にならなければいけない。

というところでようやく本題だが、「蚊を脅迫してTwitterアカウントをサスペンドされた日本人」の記事は、BBC News Japanのサイトではわからないが、BBC Newsのサイトでは絶対に見間違いようがないくらいはっきりと、BBC Trendingと表示されている。
http://www.bbc.com/news/blogs-trending-41097947

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posted by nofrills at 11:00 | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月31日

たった1人で北アイルランド和平をひっくり返していたかもしれないテロリストが英軍内に浸透していた件

英軍に、今なお武装闘争を信じて活動を続けているアイリッシュ・リパブリカニズム信奉者が浸透していた、ということになる。それも単なる「英軍」ではない。海兵隊だ。軍隊でのエリート集団に非主流派リパブリカンのテロリストが入り込んでいたのだ。唖然とするよりないよね。

テロリストの名前はキアラン・マックスウェル。30代に入ったばかりでFBなども普通に使っている「いまどき」の若者だ。FBには軍隊での訓練中に笑顔を見せる写真などがアップされていた。



2016年に発覚したこの事件の判決が出たのが、今からちょうど1ヶ月前の2017年7月31日だった。そのときからずっとブログに書こうとしていたのだが、どうにもまとまらずにずっと下書きのままになっていた。判決から1ヶ月になるし、そのタイミングでUTVのドキュメンタリーも出たので、もう無理にでも公開しておこうと思う。以下、事件発覚時までさかのぼってみていくので、記述はとっちらかったものになるかもしれない。

これは「ディシデント・リパブリカン組織のやったこと」というより、「ディシデント・リパブリカン組織に参加する個人のやったこと」だ。そしてその個人は、もしも何も発覚せずに活動を続けていたら、たった1人でも北アイルランド和平プロセスをひっくり返していたかもしれない。大げさに煽るのではなく、彼、キアラン・マックスウェルのやっていたことは、本当にそういう重大性を持っていた。

判決を受けて、英国政府の北アイルランド担当大臣は、この件を解決に導いた捜査当局に敬意を表し、「人命を救ったことは間違いない」と評価し、「この個人(被告)がなそうとしていた害は、(禁固18年と保護観察5年の計23年という)量刑を見れば、いかほどの規模になろうとしていたかがわかる」と述べている(原文は下記)。



本来ならば、判決のあったタイミングで北アイルランド自治政府の2トップ(ファーストミニスター&副ファーストミニスター)からも自治政府の司法大臣や各党の警察担当者からもコメントが出るところだが、あいにく北アイルランドの自治議会・自治政府は、今年1月に瓦解して以来、ストップしたままだ。その自治のシステムを再起動させる話し合いも、7月のプロテスタントのパレード・シーズンを前に決裂し、そのまま夏休みに入っていた。北アイルランドの政治家たちは、この厄介なテロ事案について、特に発言する必要に迫られることなく過ごしているということになる。

ただ、仮に、キアラン・マックスウェルの判決が出たときに自治システムが通常通りに稼動していたとしても、政治的にはさしておおごとにはならなかっただろう。「IRA」という看板につい目を奪われて、「シン・フェインの身内」と思ってしまうかもしれないが(実際、そのように位置づけてわめきたてているロイヤリスト過激派もいる)、今「IRA」という看板で武装活動を続けているのは、北アイルランド紛争期に「IRA」だったProvisional IRAではない。Provisional IRAの方針に反対し、離反していった分派組織だ。キアラン・マックスウェルが関わっていたContinuity IRAは、そういった「非主流派リパブリカン武装組織 (dissident Republicans)」の主要組織のひとつだが、そういった非主流派のことは、ユニオニストだけでなく、シン・フェイン(リパブリカンの主流派)も厳しく非難している。実際、「厳しく非難」などという言葉では生温いほどだ――2009年3月、時代遅れの「武力至上主義」を貫こうとして警官を撃ち殺した非主流派に対し、故マーティン・マクギネスが発した言葉は、これ以上厳しい非難の言葉はないというくらいに厳しいものだった。
http://www.irishnews.com/news/2017/01/21/news/widow-of-murdered-officer-stephen-carroll-hails-mcguinness-for-denouncing-traitors--895619/
Mr McGuinness, speaking as deputy first minister, received a death threat after branding the killers "traitors".

He said: "These people, they are traitors to the island of Ireland. They have betrayed the political desires, hopes and aspirations of all of the people who live on this island."


マクギネスはそれまでにも何度もディシデンツから脅迫を受けていたのだが、この発言のあとはますます深刻な脅威にさらされることとなっていた。ネット上には今も、自分たちを「アイルランドにとっての裏切り者」呼ばわりしたマクギネスに対するディシデンツの反発・中傷・脅迫の言葉が残っている(新聞記事の一部として、あるいは彼ら自身のブログやYouTubeなどに)。

閑話休題。

事件が発覚したのは2016年3月だった。その後容疑者が逮捕・起訴され、最初の報道から約1年4ヶ月後の2017年7月に裁判が終わり、禁固18年という刑が言い渡され、事件の全貌が明らかになったのだが、当初は軍人が絡んでいるなどということは誰も思いもしなかっただろう。私もだ。

■発端〜武器庫の発見
1916年のイースター蜂起から100年という記念の年である2016年の3月、北アイルランドの自然公園(Carnfunnock Country Park)内、雑木林みたいなところの地面に掘られた穴に、ガチでやばいものがいろいろ蓄えられているのが発見された。発見は(垂れ込みなどによるものではなく)偶然で、通りすがりの人が異状に気がついて警察に通報した、と報じられていた。

北アイルランドには、周知の通り、今でも活動を続けている武装組織がいくつか(いくつも)ある。往時に比べれば規模は小さいし、社会における広範な支援もないが、紛争終結後の武装解除最終期限を過ぎても、武装を放棄していない集団が複数ある。また、かつての紛争期に密かに作られた「武器庫」がそのまま忘れ去られていたケースもある(そういうのが発見され、70年代のソ連製のRPGが出てきたりとかしたことも実際にある)。だから最初に「武器庫発見」のニュースの見出しを見たときは「紛争期の遺物かなあ」と私は思った。紛争期どころか、ひょっとしたら100年前の異物かもしれない、とも。

しかし、記事を読んでみたら明らかにそうではなかった。この脅威は現在のものだった。

Weapons cache found in Carnfunnock country park, Co Antrim
Sunday 6 March 2016 14.42 GMT
https://www.theguardian.com/uk-news/2016/mar/06/weapons-cache-found-in-carnfunnock-country-park-co-antrim

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2017年08月28日

「立て続けのテロ」と「過剰反応」が乱れ飛び、「情報操作」も加わって、何が何やら……という日々

欧州では夏も終わりつつある8月第3週、理不尽な暴力が多くの命を奪い、地域社会に傷を負わせた。8月17日にスペイン、カタルーニャのバルセロナとカンブリス(カンブリルス)で車を使った攻撃があり(この事件に関わったテロリストのグループは、現時点で全員死亡もしくは逮捕・起訴されている。バルセロナの事件の前日にアルカナーという町にあるガスボンベ・ボム工場が誤って爆発したため、ボムを使った大規模な攻撃計画が頓挫し、代わりに車突入という手段がとられたと思われる)、その詳細な状況もまだわかっていないうちに18日にはフィンランドのトゥルクで刃物を使った攻撃がなされた(殺傷の容疑者は1人で起訴済みのほか、現時点で逮捕されていない国際手配者あり)。カタルーニャのテロで尊い命を奪われた被害者は、現時点で16人(事件後ずっと入院していたドイツ人女性が亡くなって1人増えた)、フィンランドでは2人。

続く8月第4週は、犠牲者が出たという話は聞かなかったものの、やはり「テロ」やそれに類する事件が、立て続けに複数個所で起きた。23日(水)の夜にオランダのロッテルダムで行なわれる予定の米バンドAllah-Lasのライヴに対して何かが行なわれるいう情報をつかんだスペイン当局からオランダ当局に連絡があり、結果、ライヴは中止となった(このときに、たまたまそのライヴハウスの近くを「ガスボンベを積んだ車」がふらふらと走っていたため、運転手のスペイン人が逮捕されたので情報が混乱し、Twitterなどでは「欧州のシェンゲン・エリアをdisる会」みたいなBrexit支持のアカウントなどが根拠も示さず自分たちの主張をわめきたてていたが、その車はライヴの中止とは無関係であることが判明している)。この事件では翌24日にはロッテルダムからあまり離れていないブラバント州の町で、22歳の容疑者が逮捕され、さらに2人目の容疑者も逮捕されたが、その後起訴されたとかそういう報道は私は見ていない。そもそも「Allah-Lasという名前のバンドに脅迫」などという事実があったのかどうかも判然としない。スペイン当局がオランダ側に緊急事態を告げるきっかけとなったのはチャットアプリTelegramの投稿で、Telegramはイスイス団メンバーやその支持者が使っていることで有名ではあるが、イスイス団以外の一般の人々も普通に使っている。

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posted by nofrills at 23:20 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「想像の共同体」を背負った拳が巨額のマネーを生む。

普段、アイルランド&英国のニュースが入ってきやすいようにしてあるので、格闘家(総合格闘技)のコナー・マクレガーの話題は非常に頻繁に見かける。マクレガーは、私がモニターの中で見ている世界では誰もが知るスポーツ界のスーパースターで、ファッション・アイコンでもあり、格闘技に興味がなくてもいつの間にか顔と名前が一致するようになってしまっているような人だ。だから、米国時間で26日(土)夜、日本時間で27日(日)昼間にラスヴェガスで行なわれた「世紀の一戦 the Fight of the Century」のことは、開催が決まったときから日常的に記事見出しなどを見かけていた。

ちなみに「世紀の一戦」という表現は、1971年に行なわれたボクシングのモハメド・アリとジョー・フレイジャーの試合について使われたのが一番有名なようだが、実際にはそう銘打たれた試合は、20世紀には1910年、1921年、1938年に行なわれており、フレイジャーとアリの試合は「世紀の一戦、その4」だったようだ(ここに記載がないだけで、他にもそう銘打たれていた試合はあったのかもしれないが)。21世紀に入ってからは、2015年のフロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオの試合が「世紀の一戦」とされており、今回、2017年のメイウェザー対マクレガーの試合は21世紀2度目&メイウェザーにとって2度目の「世紀の一戦」だった。これからもきっと何度でも「世紀の一戦」は行なわれるのだろうが、メイウェザーはこれで引退してしまったので、メイウェザーにとっての「世紀の一戦」はこれが最後となるようだ。

なお、私は個人的に格闘技には特に関心はなく、試合も見ていない。本稿は試合そのものについては扱わない。この試合をめぐるムードというかナラティヴについてのメモである。

それにしても、この試合の事前の過熱っぷりはすごかった。BBCのようなメディアでも、普段、ボクシングであれ総合格闘技であれ、こんなふうに試合が話題になることはないというくらいに大きな話題になっていた(だから、総合格闘技にもボクシングにも特に関心のない私でも、いつどこで行なわれる試合で、どんな選手がこぶしを交えるのかといったことは自然と把握していた)。試合で動く金もハンパではなく、何かもうみんながギラついた感じで見つめているという感じだった(マクレガーの試合がいかにカネを生むかということについてはスポーツナビの高橋テツヤさんの記事が詳しい。UFCデビューの前週まで役場に並んで生活保護を受けていたマクレガーが、巨額のマネーを叩き出すようになるまでを振り返っている)。

だがアイルランドでの熱狂は、そういうギラつきとはちょっと違っていた。コナー・マクレガーは、本人がアイリッシュ・トリコロールの旗(アイルランド国旗)を多用するなどしてアピールしまくっている通り「アイルランドの息子」だ。「うちのコナー・マクレガー」だ。

かくして、ラスヴェガスは、試合前にこういうことになっていたという(撮影地点はマンダレイ・ベイ・リゾートのようだ)……サッカー系の大手Twitterアカウントが「アイリッシュがその場を掌握したときには何もなすすべなどなくなる。そのことを、アメリカのセキュリティは素直に受け入れるべきである」と述べるような状態に。

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posted by nofrills at 20:30 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月21日

【訃報】リズ・マッキーン(ジミー・サヴィルの性犯罪について、BBCで調査報道を行なった記者)

「ジミー・サヴィル Jimmy Savile」という名は、現在、日本語圏ではどのくらい記憶されているだろうか。

1926年に生まれ、2011年に没したサヴィルは、1960年代から2000年代にかけて、BBCテレビの音楽番組や子供番組の司会者として活躍した国民的なTVパーソナリティだった(テレビのほか、ラジオの仕事もある)。1971年にOBE, 1990年にナイト爵という栄誉に輝いてもいる。

誰も文句の付けようのない名士にしてスターだったはずのこの著名人が、その立場を利用して多くの年少者を傷つけた汚らわしい性犯罪者だったことが公になったのは、本人が死んでから1年になろうとするころだった。

2012年10月10日 「お茶の間の人気者」で「名士」だった人物の公然の秘密は、あまりにおぞましいものだった。
http://nofrills.seesaa.net/article/296724178.html

実際には、サヴィルがセクシャル・プレデターだったことは、業界では公然の秘密だったという。それを、サヴィルは人格者であると思い込んでいる世間一般に知らしめたのは、2012年のITVの番組と、BBCの調査報道だった。

この「BBCの調査報道」は、局内ですさまじい抵抗を引き起こしていた。

「疑惑」が公になったあと、BBCはしばらく、「ことを荒立てない方向」で何とかしようとしていたようだ。自局の調査報道の看板番組、Newsnightではサヴィルの件は放送しないと決定したりしていた。しかし、事の深刻さゆえ、その方針は1週間もしないうちに撤回され、もう一つの看板番組であるPanoramaでサヴィルの件を扱うことにしたという。
http://www.guardian.co.uk/media/2012/oct/09/jimmy-savile-bbc-sex-abuse-allegations

http://nofrills.seesaa.net/article/296724178.html


BBC - The Editors: Jimmy Savile and Newsnight: A correction http://bbc.in/VjeB4l サヴィルの疑惑についてNewsnightで放映しないことにした件でのディレクターの説明が不正確なものであったという声明

https://twitter.com/nofrills/status/260330536831176704


ジミー・サヴィルの真の顔を調査し、その報道によって英国の人々に衝撃を与え、その後、「ギョーカイ」ではびこってきた同様の卑劣な性犯罪を刑事事件化する道を拓いたBBCの記者とディレクターは、「勇気あるジャーナリスト」として同僚から尊敬され、「重要な仕事をした社員」として上司から評価されて当然だった。「さすがBBC、身内にも遠慮せず、すごい報道をする」といった外部の賞賛の声が当時あったが、それはそのような尊敬や評価があって当然という思い込みとセットだった。

だがそのような思い込みは、実際には「思い込み」に過ぎなかった。ジミー・サヴィルの「公然の秘密」を調査し裏取りして番組にしたジャーナリストたちは社内で干され、その調査報道には上層部からの妨害があったことが大きく報じられたのは、2015年夏のことだった。調査報道班のプロデューサーはBBCをクビになり、記者は自発的にBBCを辞めざるをえなくなった。閑職に追いやられた者もいた。

そのような経緯でフリーランスとなった記者は、この年代のジャーナリストの多くと同じように、北アイルランド紛争関連の取材を経験していた。複雑で微妙な武力紛争のなかの取材を重ねて実績を作ってきた有能な記者だ。彼女を追い出すBBCって……とドン引きするのが普通の反応だろうが、そんな反応などものともしないのがBBCなのかもしれない。

ともあれ、その記者、リズ・マッキーンの名前が、18日(金)に久々にBBCのサイトに出ていた。死亡を告知する記事だった。

サヴィルの性犯罪を暴いたリズ・マッキーンは、52歳の若さで急死した。死因は脳卒中(脳血管の病気は本当に怖い。私の周囲にも、20代で朝起きてこないので家族が見に行ったら……といった事例がある)。

Ex-BBC reporter Liz MacKean dies after stroke
http://www.bbc.com/news/uk-40981585

Ex-BBC News correspondent Liz MacKean has died after suffering a stroke.

MacKean, 52, worked for the corporation for more than 20 years but left in 2013 amid a row over the decision to shelve her investigation for Newsnight about disgraced DJ Jimmy Savile.

She began her career at BBC Hereford and Worcester, before presenting on Breakfast and reporting from Northern Ireland and Scotland.

MacKean went on to work on Channel 4's Dispatches programme.

BBC director of news James Harding paid tribute to MacKean, saying she had earned a reputation as a "remarkably tenacious and resourceful reporter".

"In Northern Ireland, she won the trust of all sides and produced some of the most insightful and hard-hitting reporting of the conflict," he said.

"It was as an investigative reporter that she really shone, shining a light on issues from the dumping of toxic waste off the African coast to Jimmy Savile, the story for which she is probably best known."

...


以下、Twitterの貼り付け。

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ケンブリッジ大学出版局がジャーナル『チャイナ・クオータリー』の記事の一部を中国国内からアクセスできなくした件(リンク集)

標題の件。ブログの地の文を書いている余裕がないのですが、記録のため、Twitterに投稿したものをざっと貼り付けておきます。本稿は、内容的にはリンク集です。

この件、何より必要なのは、原文(英語)でケンブリッジ大学出版局(Cambridge University Press, CUP)のステートメントを読むことです。英語報道ではpull out, remove, blockといった表現が錯綜していて、正確に何があったのか、どういうことが行なわれたのかがよくわかりません。ましてやそれが日本語に翻訳されるとますますわけがわからなくなります(変な例しか思いつかないのですが、911陰謀論で "pull it" というこなれた英語表現の意味をめぐって話が混乱したことを想起していただければと)。

CUPのステートメントへも下記でリンクしていますので、各自、リンク先でご確認ください。

日曜日(20日)には中国の検閲対象となったジャーナル、『チャイナ・クオータリー』の編集長や、検閲対象とされて中国国内からはアクセスできないようにされた論文の著者(研究者)のインタビューも出ています。それも下記にリンクしてありますので、各自、リンク先でご確認ください。

なお、本稿については、リンク先をお読みにならない場合は、SNSやはてブでのコメントは、ご遠慮いただきますよう、お願い申し上げます。

何があったのかについては:
Cambridge University Press blocks readers in China from articles
Richard Adams Education editor
Friday 18 August 2017 19.14 BST
https://www.theguardian.com/education/2017/aug/18/cambridge-university-press-blocks-readers-china-quarterly
Cambridge University Press has blocked readers in China from accessing hundreds of academic articles – including some published decades ago – after a request by Chinese authorities, arguing that it did so to avoid its other publications from being barred.

The publisher confirmed that hundreds of articles in China Quarterly, a respected scholarly journal, would be inaccessible within China, after a letter from the journal’s editor protesting against the move was published.

“We can confirm that we received an instruction from a Chinese import agency to block individual articles from China Quarterly from within China,” CUP said. “We complied with this initial request to remove individual articles, to ensure that other academic and educational material we publish remains available to researchers and educators in this market.”


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2017年08月14日

ロンドン、国会議事堂のビッグ・ベンの鐘の音が、来週月曜から2021年まで聞けなくなる。

ロンドン、テムズ河畔に立つ国会議事堂の時計塔についている時計、愛称「ビッグ・ベン」には鐘があり、毎日時を告げている。また、「毎日正午に奏でられるビッグベンの鐘のメロディは、四つの音で奏でられる日本の学校でお馴染みのチャイムのメロディの基となった」ことでも知られている。

英国会のYouTubeアカウントがアップしている映像で、その「チャイムのメロディ」も、時を告げる鐘の音も確認できる。


この鐘の音が、しばらく聞けなくなるということが、今日発表された。大掛かりな修理を行なうため、来週月曜日(21日)から、4年間(2021年まで)止まるそうだ。英国のことだから、「2021年まで」というのが「2022年まで」になり、「2023年まで」になるかもしれない。 (^^;)

詳細は以下にて。

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2017年08月13日

米シャーロッツヴィルでのネオナチのデモについて

ネオナチのすることは、基本的にちょっと書き留めるくらいでスルーするようにしているのだが、今回のこれはちょっとスルーできないような気がするのでブログに記録しておく。といっても、ブログの文を書こうとするとまた時間がかかってしまって結果的に塩漬けにしてしまうので、基本的にTwitterのログの貼り付け。

昨年の英国でのEUレファレンダム(6月)、米国での大統領選挙(11月)のあと、「反グローバリズムで移民排斥主義のアンチ・オーソリティーの勢力(極右勢力)が投票で勝つ」ということが、英米だけでなく欧州各国で起きるのではないかと予想され、英語圏メディアが「パニック報道」的なものを展開していたことをご記憶だろうか(英語圏メディアの日本版の一部でも見られたが)。米大統領選のあと、オーストリア大統領選挙(前回の結果が僅差だったため、再投票という判断が法的に下された)、オランダ総選挙、フランス大統領選挙……という具合に欧州各地で大きな選挙が行なわれ、そこで英国のUKIPや米国のトランプ支持者的な「アンチ・オーソリティの勢力」が、ある意味「ドミノ現象」的に勝利をおさめるのではないか、という予想がなされ、オーストリアの自由党(故ヨルグ・ハイダーの党、というと前回のパニック報道を思い出す方も多いだろう)、オランダのヘルト・ウィルダース(PVV)、フランスのマリーヌ・ルペン(FN)といった政党・政治家や、その側近(キングメイカー)たちが「次はこの人だ!」的に、BBCなど大手メディアで注目された。しかし結果は、誰も勝たなかった。「アンチ・オーソリティ」が勝利を収めたのは英米だけだ。

上に述べた国々のほか、今年総選挙が行なわれる欧州の大国で昨年から注目されていたのがドイツだが、選挙は9月に迫っているというのに、今、「国際報道」と呼ばれる報道機関はめっちゃ静かだ。というのも、「極右」ブームでパニック報道が繰り広げられていたときに「英米の次はオランダか、フランスか、ドイツか〜〜〜〜っ!」ときぃきぃ声で騒がれていた「アンチ・オーソリティ」の政党、AfDが、現実的に勝つ見込みがなくなったからだ。フランスのマリーヌ・ルペンと同様に若くて(40代)「いかつくて暴力的な極右勢力」のイメージとは遠い女性党首がこの4月に選挙戦出馬を見合わせると決断し、それによってAfDは「今までも常にどこかにいたような極右政党」的な存在になりそうだと報じられている。つまり、もう全然注目されていない。「欧州難民危機」と騒がれたころに英語圏でパニック報道を引き起こしていたPegidaなど、今は英語圏では名前を見かけることもない。あれらのパニック報道は組織の宣伝の役割を果たし、英国ではEDL創設者の通称「トミー・ロビンソン」や、EDL以上に過激な反イスラム団体「シャリーア・ウォッチ」を立ち上げたアン・マリー・ウォーターズ(この人、アイルランド人なんだよね。ブロガーで煽動家の「グイド・フォークス」もアイルランド人だけど)などがPegida UKなる団体を立ち上げたが、ニュースで名前を見ることはない。

だがそういったことだけで「よかった、極右はメディアの注目を失い、おとなしく、元いた巣窟に戻ったんだ」と短絡することもできない。英国でいえば、UKIPは政党としては溶け去ったが、UKIPが撒いた種は枯れずに「草の根」を構成しているし、フランスでは、中央は確かにエマニュエル・マクロンのEMが席捲しているかもしれないが地方議会などFNが一定の勢力を有しているといった具合だ。

というわけで、極右勢力にとっては、思い描いていたシナリオ(極右版の「世界同時なんちゃら」を描いていたと思われる)通りには行っていないかもしれないが、ガッカリするような結果を得ているわけでもない。何しろ、世界一の超大国アメリカが彼らの手中にあるのだ(と彼らは思っている)。

だから、オーストリアで負け(もしここで極右が勝ってたらえらいことになってたと思う……他の国とはシンボリズムが違う)、オランダで負け、フランスで負け、ドイツで戦う前から負けるなど、欧州でシケった結果しか出せていなくても、アメリカでは極右は元気だ。これまで社会の片隅で細々と「言論の自由がある!」ということを根拠に発言をしては無視され、「われわれを無視するのは、奴らにとってわれわれの言う真実が都合が悪いからだ」などと強がって支持者の間だけで盛り上がっていた地下組織が、政権の中枢に代弁者を持っている。そのことは、私は2016年11月までは想像してもいなかったが、彼らを非常に強くエンパワーしたのだと思う。メディアだってもう彼らのことを無視できないのだ。普通の大統領なら、ネオナチのスローガンを唱えるような連中のことはばっさりと非難する発言をするし、そんなことはほとんどニュースにもならない(なるとしてもベタ記事だ)。しかしトランプは「普通の大統領」では全然なく、ネオナチのスローガンを唱えるような連中をばっさり非難することはしない。そして、そのこと自体がニュースになり、それがまたネオナチを勇気付ける。「俺たちの大統領だ」、「アメリカは、自分たちが望む方向に変わりつつある」と。

bbcnews13aug2017.png

US President Donald Trump is facing criticism for his response to the violence at a white supremacist rally.

A woman was killed and 19 people injured when a car ploughed into a crowd of counter-protesters in Charlottesville, Virginia.

Mr Trump condemned violence by "many sides" - but stopped short of explicitly condemning the far-right.

http://www.bbc.com/news/world-us-canada-40915569


以下、シャーロッツヴィルで何があったかの経緯を含め、Twitterのログ。

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posted by nofrills at 23:56 | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

人を助ける人たちの事務所が何者かに襲撃され、7人もが銃殺された。 #WhiteHelmets

市民によるボランティアの救援隊、シリア・シヴィル・ディフェンス (Syria Civil Defence)、通称「ホワイト・ヘルメッツ」。政府による武力弾圧・武力行使やら、各種武装組織の軍事的行動やらで機能しなくなった救急・消防分野を担っている彼らの活動を追ったNetflixでの短編ドキュメンタリーが、米アカデミー賞を受賞したことでも知られているが、ネットでは何より、YouTubeなどにアップされる現場映像を通じて彼らの活動に接している人が多いだろう。

Netflixのドキュメンタリー・予告編:


※ネット上の日本語圏では彼らについて書くと陰謀論者の皆さんをお騒がせするなどすることになるが、その背景についてはウィキペディアにまとめられているものを参照(「アポロは月に行っていない」とかいうのと同種の陰謀論者の《物語》においては、彼らは「闇の勢力による世界統一の野望の情報工作員」であるようです)。もっと詳しいことを知りたい人はこれな。陰謀論の信奉者は、こんなんがまともに相手にされると思わないように。

彼らの映像で最も広く閲覧されたもののひとつが、アレッポでのこの映像だ。上記のNetflixドキュメンタリーの予告編の最後のほうにも使われているが、2014年6月、シリア政府による住宅街への「たる爆弾」投下(と書くと「証拠もないのに決め付けている」と絡まれるので一応書いておくけど、2014年8月にジェイムズ・フォーリーが殺害されてアメリカが「自衛」云々で動き出す前のシリア内戦において、空からたる爆弾であれクラスター爆弾であれ何であれ爆弾を投下できる能力、つまり空軍力を持っていたのは、政府軍だけだった)によって建物が瓦礫の山にされたあと、その瓦礫の中に埋まっていた生後2週間足らずの赤ん坊を救助隊が救出した。何時間も何時間も、瓦礫を素手で掘り続けても見つからず、諦めようとした矢先に、泣き声が聞こえてきた。さらに掘り進めた先の壁か崩れ落ちた天井板の穴の向こうに、赤ちゃんはいた。



赤ん坊を引っ張り出し、腕に抱きかかえたのは、ビデオで状況を語っている若者、ハレド・ファラさんの同僚のハレド・オマールさん。彼は今からちょうど1年前の2016年8月、アレッポの反政府勢力支配地域での空爆で、死亡した。31歳だった。CNNの記事が、情報がよくまとまっている。

Syrian White Helmet rescuer killed in Aleppo
Updated 2324 GMT August 12, 2016
http://edition.cnn.com/2016/08/11/middleeast/syria-white-helmet-hero-killed-aleppo/index.html

そして1年後、2017年8月12日にまた、今度はイドリブ県で、「赤ん坊を救出したホワイト・ヘルメッツのメンバーが殺された」ことが伝えられた。それも1人ではない。7人もまとめて殺された。今回は政府軍の空爆ではない。ロシア軍の空爆でもないし、米軍の攻撃でもない。銃撃だ。それもどこかに出かけていて襲われたのではなく、ホワイト・ヘルメッツの拠点(詰め所)の中で。

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2017年08月08日

アイルランドが荒波に翻弄されすぎな件(一夜にして現れた砂浜の話)

1つ前のエントリで言及した山本正氏の『図説 アイルランドの歴史』(河出書房新社「ふくろうの本」)には、下図のような帯がかかっている(オレンジ色なのはシリーズ共通で、アイルランドの文脈でいう「オレンジ」とは関係ないと思うが、それでも何か笑ってしまう)。

book-historyofireland-kawade.jpg

歴史の荒波に翻弄された「妖精の国」「緑の島(エメラルド・アイル)」
古代から現代までを俯瞰する画期的通史!
(略)
豊かな文化を育むも苦難の歴史を歩んできた
アイルランドのすべてがわかる! 決定版!


「歴史の荒波」というのはただのクリシェ(常套句)だが、アイルランドを翻弄した「歴史の荒波」ならぬ、「リアル世界の荒波」の記事が出ているのに気づいたのは、8月5日の夜だった。本はまだ本棚から取り出したままになってて、この帯の「荒波に翻弄」の文字列に、しばしにやにやしていた(傍から見たら相当不気味だ)。

アイルランド島の西海岸、島の上半分(北半分)で一番出っ張ったあたりにあるメイヨー州アカル島 (Achill Island)。島だが本土とは非常に近く、橋でつながっている。この島の名で画像検索すると、うちら凡人が「アイルランド」と聞いて思い浮かべるような、丈の短い草が表面を覆っているだけの、でこぼこした岩肌っぽい土地に海、という写真が多く並んでいる(中には羊がもこもこしているものもある)。

アイルランド島の西海岸は大西洋からの強風で土が吹き飛ばされてしまうため、木が根を張ることができず、森・林や茂みのようなものがなく、ただ芝生のような草が地面を覆っているということを初めて知ったとき、ちょっとほっとくと木々の間に蔦やら葛やらが繁茂して濃密な空間をつくる日本のこの環境ではそこらに出るのは「お化け」や「妖怪」や「キツネ、タヌキ」だが(私の曾祖母は生前、「若いころに山でキツネに化かされたことがある」と言っていた)、アイルランドでは彼らが潜む木の陰もないから、「妖精」なんていう可愛いものがふわふわと飛んでたりするんではないか、などという他愛もないことを思った。

妖精が実在するとは、もちろん私は思っていない。しかし、妖精がいると考えた人々は実在した。その人たちがそう考えたのは、そういう考えにつながるような不思議な出来事があったからだろう。曾祖母が「キツネに化かされた」と考えたような不思議な出来事に遭遇したように。

そして、アイルランドで昔、人々が「妖精がいる」と考えたのは、こういうことがある(あった)からかもしれない、というニュースに私がネットで遭遇したのは、今年5月のことだった――メイヨー州のアカル島というところで、33年前、荒天の中消えてしまった砂浜(砂が全部なくなってしまった)が、一夜にして復活したというニュースだ。

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2017年08月04日

北アイルランドの「自治」に関する、よくある誤解・誤認について

北アイルランドの自治議会・自治政府は、現在、絶賛空転状態のまま夏休み中だ。夏休み明けにどうなるのか、全然見通しが立たないのだが、この北アイルランドの自治システムについて、「1999年、ブレア政権下での地方分権法によって設けられたものだ」といった誤りをけっこう頻繁に見かける。

直近の例は、この6月にちくま新書から出た近藤康史氏の『分解するイギリス』で見たものだ。この新書は、2015年の総選挙と2016年のEUレファレンダム以降の「ウエストミンスター・モデル」(英語でググるとthe Westminster systemという表現が数多く表示されるが、the Westminster modelという表現も比較政治学の分野の論文など数多くヒットする)の現状を解説・検討する本で、「そもそも『ウエストミンスター・モデル』とは何なのか、どのような性質なのか」というところからたっぷり解説してくれていて、読者がその「モデル」を規範(モデル)と思っていようといまいと、有益な本だと思う(英国の政治システムを規範と思っている人にとってはことさらに有益かもしれない)ということは最初に述べておく。なお、このタイトルにはどうしても、「ぐは、トム・ネアン!」と反応してしまうのだが、著者の近藤氏の「分解」の定義(「序章」の最後に記されている。紙の書籍でpp. 36-37)は、「連合王国の解体」的な意味に限定はされない(ただ、実際にそのように「分解」しているのかどうかについては、この書籍の奥付にある発行日と数日前後して行なわれた今年の総選挙の結果を見るに、疑問がある。というか、70年代にもこういう程度の「分解」は起きていたのではないか。19世紀にも)。
4480069704分解するイギリス: 民主主義モデルの漂流 (ちくま新書 1262)
近藤 康史
筑摩書房 2017-06-06

by G-Tools


本稿はこの書籍について論評する目的ではないので、書籍紹介はここまでにして本題に入ろう。問題の記述は第1章「安定するイギリス」(この章では「モデル」たるイギリスについて解説されている)の第5節「集権的国家」内、「連合王国としてのイギリス」という小見出しのパートである。紙の本ではp. 74.

 この点で重視されるのは、先の「立法権」の問題である。1999年の分権化以前において、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドに、地域固有の議会は設置されていなかった。

※引用者注: 下線部は誤り。

――近藤康史『分解するイギリス――民主主義モデルの漂流』(ちくま新書1262)、筑摩書房、2017年


スコットランドとウェールズに立法権のある議会が設置されたのは、確かに、1999年の分権化においてである。しかし、北アイルランドはそうではない。あのややこしい土地には、あのややこしい土地が「北アイルランド Northern Ireland」として「南」から切り離されたときから、「地方固有の議会」が設置されていた(北アイルランドを「地方 region」と呼ぶことには抵抗があるが……provinceなので。ただ、これも日本語だと「ほとんどの場合、日本語では州と訳すが、アイルランドは例外で地方と訳す」という状態で、実にややこしい)。1920年に、The Parliament of Northern Irelandが設立されていたのである。

一方、現在絶賛空転中の北アイルランド自治議会は、The Northern Ireland Assemblyである。

「パーラメント」と「アセンブリー」の両者、建物は同じストーモントの議事堂(写真)を使っているとはいえ、別物である。日本語版ウィキペディアはなぜか両者を「北アイルランド議会」として一緒くたに扱っているのだが(日本語版ウィキペディアでページが創設されたときは私は一切見ていなかったので、なぜこうなっているのか、経緯はわからない)、日本語では同じ「議会」でも英語ではparliamentとassemblyという別の語が用いられているので、辞書ならばともかく事典としては、本来一緒くたにすべきではなかろう。ちなみにparliamentとassemblyの違いについてはこちらなど。もっともっとちなみに、スコットランドはThe Scottish Parliamentで、ウェールズはThe National Assembly for Walesである。もっともっともっとちなみに、The Scottish Parliamentは文法的にThe Parliament of Scotlandと言い換えられそうなものだが、後者はスコットランドとイングランドのunionが成立する前の、「スコットランド王国」時代の議会のことであり、両者の言い換えは成立しない。(同様のことが、The Republic of Irelandと、The Irish Republicの間にも生じている。これについてちゃんと把握できたのは、日本語を介在させることをやめたからだ。)

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2017年07月31日

これは「炎上狙い」の「逆張り」か――サンデー・タイムズが提供した、あからさまな性差別・反ユダヤ主義言説の居場所

アイルランドの大手新聞で論説記事(コラム)を書いている書き手に、ケヴィン・マイアーズという人がいる。個人的には、「この人の書いたものは基本的に読まない」と決めている書き手だ。名前を知ったのがいつだったか、そのきっかけは具体的に何だったかはもう覚えていないが、ベルファスト・テレグラフ(北アイルランド拠点のこの媒体は、アイルランド共和国の大手紙のひとち、アイリッシュ・インディペンデントの系列で、論説などはアイリッシュ・インディのものが掲載されていることがよくある)に掲載されていた北アイルランド紛争絡みの文章だった。アイルランドには(英国と同じく)「IRA憎し」でナショナリスト・コミュニティについての偏見を隠そうともしない書き手がいるが、マイアーズはそのひとりだ。

マイアーズは、ウィキペディアによると(彼はウィキペディアに項目が立てられるような「ジャーナリスト」なのだ)、1947年にイングランドのレスターで、アイリッシュの移民の家に生まれ、1969年にアイルランドのダブリンにあるユニヴァーシティ・コレッジ・ダブリン(元々はアングロ・アイリッシュ、つまり英国系プロテスタントの名門校)を卒業してアイルランドの公共放送RTEのジャーナリストとなり、北アイルランド紛争が最も激しかった時期を北アイルランドの記者として過ごした。後にその時代のことを "Watching the Door: A Memoir, 1971–1978" という回想録にまとめているが、私は未読である。

1990年代にはRTEでクイズ番組の司会者となり、近年はラジオ局での仕事が多いようだが、それと並行してアイルランドの大手新聞に論説記事を書いてきた。

アイルランドの大手新聞だけではない。今検索してみたら、英国のカトリックの新聞『カトリック・ヘラルド』にもマイアーズのページがある。(今はウィキペディアから消されているが、編集合戦になる前の版によると、マイアーズはイングランドでカトリックの学校に通っている。)
http://www.catholicherald.co.uk/author/kevin-myers/

7月30日(日)、そのマイアーズの名前が、TwitterのUKのTrends欄トップにあった。キャプチャを取るのを忘れていたが、現地昼にはTwitterが大変な騒ぎになっていたようだった。

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2017年07月28日

「紛争」の20年後、「紛争」の20年前: IRA停戦から20年/映画『邪魔者を殺せ(けせ)』

20年前の1997年7月20日、IRA (Provisional IRA) は停戦した。この停戦は、さらにさかのぼること3年前の94年8月末に宣言され、96年2月のロンドンのドックランズ爆弾事件で破棄された停戦を、復活させるものだった。当時は「どうせまた破られるんじゃないのか」という懐疑論も強かっただろうが、最終的には、97年7月のこの停戦が決定的なものとなった。これを大きな契機として北アイルランドでは和平合意が(すさまじいエクストリーム交渉を経て)実現し(1998年4月のベルファスト合意、通称「グッドフライデー合意」、略称GFA)、「北アイルランド紛争」は終わり、「和平プロセス」が動き出した。その「和平プロセス」はいろいろと難しい部分もありながら定着し、IRAは2005年7月28日に「武装活動の終結」を宣言し、「紛争」は再燃することなく現在に至っている。

このような決定的な停戦から20年ということで、各メディアで特集が組まれていた。BBC News Northern Irelandでは、当時のニュースや、BBCでセキュリティ部門の記者をしていたブライアン・ロウアン(現在はフリー)のレポートなどを1本(1分程度)にまとめている。下記記事にエンベッドされている。(映像の最後に、PUPのデイヴィッド・アーヴァインの姿がある。PUPはロイヤリスト武装組織UVFの政治部門で、多くの記録者が言及していない「和平の当事者」だ。)
http://www.bbc.com/news/uk-northern-ireland-40656954

ロウアンの当時の解説によると、停戦の宣言は青天の霹靂ともいうべきものだった。ほんの数日前まで、IRAはさらなる攻撃を行なおうとしていたのだが、ジェリー・アダムズとマーティン・マクギネスがIRA指導部に対し停戦への復帰を強く主張し、IRAがそれを飲んだというわけだ。そしてIRAが停戦したことで、シン・フェインは政治交渉の場に加わることが可能となり、それが翌98年の和平合意(GFA)につながっていった。

ちょうど7月のオレンジ・マーチが終わり(1997年というと、ドラムクリーがえらいことになってた)、ロウアンは休暇でアイルランド共和国のドニゴールにいたのだという(休暇なのにドニゴールにまでしか行けなかったのかもしれない。ちなみにドニゴールは北アイルランドのすぐ隣だ。東京でいうと江ノ島って感じ)。いきなりの展開を告げるBBCの同僚からの電話で「BBCラジオ・フォイル(デリー市)でジャケットとシャツとネクタイが待ってる」と告げられたのだそうだ。そしてロウアンは、ベルファストからではなくデリーからこの重大ニュースを報告した。

そういったことを振り返っているBBCの記事は、何というか、非常に、あのー、アレだ。

To properly assess the Adams statement of July 1997, you have to understand the positions that both he and McGuinness held within the republican leadership back then.

That was explained by a former Royal Ulster Constabulary (RUC) Chief Constable Sir Hugh Annesley in an interview with the BBC the previous summer.

"There is no doubt in my mind that, at the top, the Republican Movement - the Provisional IRA and Sinn Féin - are inextricably linked.

"So, I do not see this artificial distinction that's been drawn.

"I believe Messrs Adams and McGuinness are very, very influential people and I think they have a major say in the conduct overall of the republican thrust."


You, はっきり言っちゃいなYO!

20年が経過しても、この点ははっきり言えないようだ。

ともあれ、1997年7月にこのような急展開が可能になったのは、同年5月に英国で政権交代が実現していたことが大きく作用している。

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2017年07月23日

【便利】Twitterカードの表示を強制的に更新させる方法 (Twitter Card Validator)

当方、Twitterは基本的に、BBC Newsやガーディアンなど英語圏の報道機関のサイトの記事についてメモるために使っている。それぞれの記事についているTweet thisボタンを使って、見出しとURLと簡単なメモをツイートしている。そうすることで自分のTwitterのログ(Twilogを利用している)が、自分が読んだりあとで読もうと思ったりした記事のデータベースとなり、何かと便利である。

BBC Newsなど大手報道機関は、現在まず例外なく、Twitterカードを使って、個々のTwitterユーザーがツイートする記事の見出しとリード文、記事付属の写真が、個別ツイート内で展開されるように設定している。そのため、私のTwitterのTLはどこかの大手報道機関の記事のTwitter Cardがずらっと並んでいる。

例えば1997年のIRAの停戦(最終的停戦)から20年を振り返るこの記事は、次のような手順でTwitterにメモっている。

1. 記事にあるTweet thisボタンを押す。
twthisb.png

2. ポップアップ・ウィンドウに見出しとURLが自動的に入力されているので、あとは余った文字数を使ってメモを付け加える。
twthisb2.png

3. このようにフィードされる。
twthisb03.png

たいていの場合は、このように、何の問題もなく自分が意図した通りの表示になるのだが、BBC Newsで頻繁に行なわれるように、同じURLで記事が上書き更新され、見出しやリード文が書き換えられ、写真も入れ替えられてしまうと、ツイートでフィードしている見出しや自分で書いたメモの内容と、Twitterカードに表示されていることにズレが生じることがある。例えば下記のようなケースだ。

twthisb4.png

こういうことが生じると、Twitter上で見る限り、自分が参照先の記事に書かれていないこと、おかしなことを言っているように見えてしまうので、若干困ることがある。リンク先を参照していただければ、BBCの記事更新のタイミングに伴う単なるズレだということは即座にわかるはずだが、誰もがみなリンク先の記事を見てくれるわけではない(ちなみにこのツイートはImpressionが960くらいの段階で、リンクのクリック数は3である。30ではない。3である)。このズレは時間が経過すれば解消されるのだが(Twitterカードが更新される)、それがいつになるかはわからないし、解消されるまでの時間(短くて数時間)は困った状態が維持されることになる。

こういうことが生じると「またTwitterカードのズレが生じている……」ということも書き添えるようにしているのだが、今回、Twitter上で仲良くしている方からよいことを教えていただいた。

Twitter Card Validatorというのがあるそうだ。
https://cards-dev.twitter.com/validator

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2017年07月07日

「ホームグロウン」の《物語》が、語らないものがある。

twittertrends07072017.png7月7日、私が見ているTwitterの画面では、#LondonBombingsがTrendsの上位に入っている。ハッシュタグを見てみると、追悼式典の写真や追悼の言葉、当時の報道などに混じって何の余地もない「ヘイトスピーチ」も並んでいる。またさくさくとミュートしたりブロックしたりするだけの簡単なお仕事をする。それらのヘイトスピーチが自分の中に残す汚い感情と、それらに接して自分から出てくる汚い言葉を、麦茶で流し込む。そうして流し込んだものは排泄されるのだろうか。それとも蓄積されるのだろうか。

あの晩の今くらいの時刻、私は東京の自宅でTVニュースを見て、画面に表示されていた「爆発地点マップ」に目を奪われていた。そのマップはその時点での情報に基づいていて、その時点の情報はかなり混乱していたので、実際には爆発がなかった場所も多くマッピングされていたことがしばらくして明らかになるのだが、その時点で「ロンドン地下鉄の複数の場所で爆発があった」ということは確実で、その4年ほど前に米国で起きたことから一気に日常語化していた(ちょうど、その10年前に東京で起きたことから「異臭」が日常語化していたのと同じようなことだ)「同時多発テロ」という六字熟語がすぐに頭に浮かんだ。と同時に、これはロンドンであり、ロンドンであるということはあの可能性(もあるんじゃないかとも思った。2001年にイーリングのパブをボムって以来、イングランドで爆発物が摘発されてはいるが、大きな活動は報告されていない武装組織があるのだから……しかし、それは「可能性がある」ではなく、「可能性もある」、というより「可能性が完全に否定できるものなのだろうか」のレベルでしかないことは、その組織名を頭に浮かべた瞬間にもわかってはいた。ただ、あの組織ではないという根拠はまだないだろう、根拠がない以上は断定はできないはずだ、ということでしかなかった。そしてそういうことを考えてる一方で、ネット上の英語圏で「公共交通機関がテロの標的にされるなんて、ロンドンがこんな目にあったことはなかったでしょう」とかいう、何をおふざけあそばしているのですかと言わざるを得ないような愚かな言葉(個人の感想)に接して(当時はTwitterのようなものはまだなかったので、報道記事やどこかのブログのコメント欄でだが)、「っていうかあなたがたアメリカ人がIRAを支援してたんですよねぇ?」という感情的な反発の中に自分が絡め取られていくのをそのままにしておくよりなかった。(アメリカ人のIRA支援については、ボストンのアイリッシュ・ギャングのボスとその兄である政治家と幼馴染の警官との黒い関係を描いた実録もの映画『ブラック・スキャンダル Black Mass』に少し出てくるが、「言及はされている」という程度なのでわかりづらいかもしれない。あの映画は「2時間ドラマ」でしたな……カンバーバッチの持ち腐れ。)

日本語圏でも「ニューヨークとワシントンDC、マドリードに続き、ついにロンドンも」的な言説が横行し、あたかもパニック映画を見ているようなムード、という言い方がきつすぎるようなら、ニュースを見て勝手にパニクってるようなムードに覆われていた。過去数十年にわたってマドリードはETAがいたし(実際、当時のアスナール首相は「列車爆破はETAだ」との見解に固執していた)、ロンドンはIRAの活動域だった。欧州の人たちは、そんなに簡単にパニクらんよ。

彼らを新たにパニクらせるためには、新しい概念と新しい言葉が必要だった。「今起きているこれは、過去に起きてきたものとは違うのです、異質なのです」という情宣が必要だった。

「ホームグロウン home-grown」という概念が日常に導入されたのは、正確に、いつのことだっただろう。

自分のログを掘ればそれがわかるかもしれないが、今はそんなことをする気力はない。暑さでバテバテだ。

IRAのころは「ホームグロウン」という概念などもちろんなかった。そもそも1960年代以降のIRAを形にしたのは、イングランド人の父とアルスター・プロテスタントの母を持つイングランド人で、彼こそ「ホームグロウン」と呼ばれるべき人物なのではないかと私などは思うのだが、その概念が英国外で、つまり「テロ」という文脈ではIRAの活動域外でできたものなので、現代IRAには適用されなかった。

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2017年07月05日

UEFAチャンピオンズリーグ予選で、ベルファストのリンフィールドとグラスゴーのセルティックが対戦する。

UEFAはたぶん気にかけてもいなかったのだろう。気にかけていれば、別組になるようにしたんじゃないか(例えば「スペインとジブラルタル」のように)とも思うが、代表ではなくクラブの大会だからそういう配慮がなされることもあらかじめないのか。ということは、今までUEFAチャンピオンズ・リーグ(以下「CL」)において、この組み合わせにならなかったのは、偶然なのだろうか。

とにかく、すさまじいことになった。

CLは、スペインやドイツ、イタリア、イングランド、フランスなど各国リーグの上位チーム、つまり強豪がひしめき合うグループステージの前に、予選が行なわれる。UEFAランキングで上位に入らない国のリーグの優勝チーム同士がホームとアウェイで試合を行ない、出場枠を争う。予選は6月末から開始され、まずは1回戦で10チームが競い合い、勝ち残った5チームが、1つ上のランクのリーグ優勝チームが待ち構える2回戦に進む。今年の日程は、1回戦がファーストレッグが6月27・28日、セカンドレッグが7月4・5日で、2回戦はファーストレッグが7月11・12日、セカンドレッグが7月18・19日である。

bonfire12thjuly.jpg2回戦はファーストレッグが7月11・12日である――大事なことなので二度言いました。

北アイルランドに関心がある人で、この日付にピンとこない人はいないだろう。むしろ、この日程で、ただでさえナショナリズムが燃え盛るスポーツの試合(「外国」のチームとの試合……北アイルランドは単独の「国」ではなく、その「ナショナリズム」、すなわち「アルスター・ナショナリズム」は一筋縄ではいかないのだが)を行なうなど、怖いものなさすぎだろ (^^;) と思うだろう。

北アイルランドはUEFAランキング(2017年6月6日)で、全54協会のうち47位。北アイルランドのリーグ優勝チーム(NIのサッカーリーグは改組改編が相次いでいるのでやたらとややこしく見えるが)は、CLでは予選1回戦から戦うことになる。そしてその1回戦を勝ち上がった次にあるのが、11th night12thに行なわれる2回戦のファーストレッグだ。

これだけでも (^^;) だが、今年はそれでは終わらない。

今年CLに行った北アイルランドのリーグ優勝チーム(2016-17シーズン)は、リンフィールドFCである。ホーム・グラウンドのウィンザー・パークは、北アイルランド代表のホームでもある。サッカーというスポーツ自体が北アイルランドではあらかじめ「政治的」にもなりうるのだが(サッカーのルールブックは「英国生まれ」だ、ということで抵抗感を持つ人々もいる)、リンフィールドの「セクタリアニズム」は、何を前にしても「サッカーと政治は別ですヨ」と涼しい顔をしたがる人でも無視することは難しいくらいのものだ。あまりよい記述ではないのだが(「中立的」であろうとして軸がぶれてしまっている)ウィキペディアから。原典にはソースが付記されているので、詳しくは原典をご参照いただきたい。
Linfield are generally regarded as a 'Protestant club' and draw the vast majority of their support from one side of the community. However, the squad itself is one of the most diverse in the Irish League. The club has also been regarded as sectarian in the past, both in respect of its alleged employment policy and of the behaviour of its fans. This sectarian reputation is partly the result of the actions of fans who have a history of occasional anti-Catholic behaviour ranging from sectarian chanting on the terraces to outright violence. Part of the problem has been attributed to Windsor Park's location in a part of Belfast that is predominantly Protestant.

https://en.wikipedia.org/wiki/Linfield_F.C.#Sectarianism_and_violence


「ファンの行為 the behaviour of its fans」には、物を投げるなどの暴力的行為のほか、セクタリアニズム丸出しのお歌を歌う、などといったことが含まれる。「セクタリアニズム丸出しのお歌」というのは、グラスゴーの「オールドファーム」でも歌われているのだが、要するに「カトリックに対するプロテスタントの優位」をまくし立てるような歌、「カトリック」を罵倒するような歌である(が、オレンジ・オーダーの中の人は問題のお歌が「セクタリアニズム」のお歌であるという事実すら認めようとしていない。すさまじいdenialismだ)。

そんなお歌でも、「そこにプロテスタントしかいない」場合には、仲間内の結束のシンボルになる程度かもしれない。だが実際にはああいうお歌は、「相手に対する優位」を言うため、要するに「挑発」するための道具のひとつだ。

そういう道具を持ったチームが、「アルスター・ナショナリズム」(その主要な成分は「カトリックに対するプロテスタントの優越」の意識である)が燃え盛る7月11日か12日に試合をする……しかもホーム(ベルファストのウィンザー・パーク)で。

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posted by nofrills at 23:32 | TrackBack(0) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月04日

はてなブックマークのレイアウトが変更になった

もはや毎日は見なくなって久しいはてなブックマークの自分のページを、先ほど北アイルランド和平プロセスに関する記事のメモをチェックするために見てみたら、レイアウトが変更されていた。

あとからはてブの開発ブログを見てみたら、7月3日付けでアナウンスが出ていた。
http://bookmark.hatenastaff.com/archive/2017/07/03

それによると、6月1日に予告がなされていたので、単に私が見てなかっただけだ。
http://bookmark.hatenastaff.com/entry/2017/06/01/150000

【変更前】(Googleキャッシュからサルベージ)

hatebumypage01.png


2006年にはてブを使い始めてから一度、今回と同じくユーザー全員のページのデザインが有無を言わさず全面変更になったことが一度あるので、現時点で「変更前」のこのデザインは、私にとって2代目である。上記キャプチャを見ればわかるとおり、背景画像をユーザーが自由に指定でき、タイトルの下に短い説明を書くことが可能だった。現時点では下記のように書いてあった。
http://nofrills.seesaa.net/ ブログの補完。読んだことくらいはメモしておきたい記事を片っ端から。基本的にただのメモ。/拙ブログ被ブクマ一覧⇒ https://is.gd/JCkht1 /雑音排除⇒ https://is.gd/9gXuIi


そして、このデザインのあとに、はてなではまた新たなデザインを導入した。もう何年も前のことだ。これは「ソーシャル」な機能的には充実していたようだが、私は基本的に個人のメモとしてしかはてブは使わない(他の人がブクマしているものを参考にするということが、ほとんどない。というか、そういう使い方をしていない)ので新デザインに切り替えても恩恵はなく、レイアウトも見づらいので変更していなかった。それが今回、強制的に変更されたわけだ。

【変更後】……というかさっきアクセスしたらこんな画面で、「うわ……」と思った。

hatebumypage2.png


「マイホットエントリー(Twitterの友達の間で話題になったエントリー)」は便利なのかもしれないが、私の使い方では、完全に余計な機能でしかない。Twitterとはてブを連携させて使っていたら非常にめんどくさいことになったので連携を切ったのがしばらく前。もう二度と連携させる気はない。そもそもTwitter上の私の「友達」(って誰だ。相互フォローになってるエルサレム・ポストとかベルファスト・テレグラフか)ではてブを使っている人はほとんどいない。

だがこれ、連携させない限り、ログインしている状態では、毎度毎度左サイドバーの「ブックマーク」をクリックしないと自分のブクマを確認することもできないのだろうか。うっとうしいな。まあとりあえず、当ブログのサイドバーなどにはってあるはてブへのリンクは、URLを http://b.hatena.ne.jp/nofrills/bookmark に変更しておこう。めんどくさいが。

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posted by nofrills at 21:00 | TrackBack(0) | 事務的なこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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