kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2017年03月24日

マーティン・マクギネスの棺はデリーのボグサイドを巡り、葬儀は北アイルランド紛争と和平のプロセスをたどった。

Googleマップを開き、"derry ireland" を検索する。Googleが送り返してくるのは、"Londonderry, UK" だ。

googlemap-derrylondonderry1.png

私の検索ワードも間違っていないし、Googleの検索結果も間違っていない。この町は、そういう町だ。

この町がDerryと呼ばれるべきか、Londonderryと呼ばれるべきかという話になるとやたらとややこしいことになるし、それは「べき」論を超えたもので、この町のことをDerryと呼ぶ人の政治理念・政治思想は「緑」で、宗教はまず「カトリック」だ(稀に「プロテスタント」の人もいるが)。彼らはこの町のことをDoireと書くこともあるが、それは英語ではなくアイルランド語の綴りだ。Londonderryと呼ぶ人は「オレンジ」の側で、「プロテスタント」だ。「緑」の側の新聞はDerry Journalで、「オレンジ」の側の新聞はLondonderry Sentinelだ。私はDerryの人としか話をしたことがないが、Londonderryの人は、そんな機微をとらえていそうもない極東の島国の微妙なロンドン・アクセントのあるジャパニーズ・イングリッシュの使い手が自分の町をDerryと呼んでいるのを聞いたら、とても悲しがるかもしれない。

ああ、都市名だけでこれだけの文字数を楽々と費やせる町。

こういうややこしい町なので、都市名が「両論併記」されることがある。Googleマップでは "Londonderry, Derry" という語順になっているが、一般には "Derry/Londonderry" だ。こういうふうに書くにも、どっちを前にするとかいったことでもめるので、機械的に「アルファベット順」にしてあるのだ。「デリー/ロンドンデリー」は読むにも適しているのでよく用いられるが、書き言葉では "(London)derry" という表現もある。

さて、Googleマップの画面でピンが立っているのは、フォイル川の東岸だ。こちら側は「ウォーターサイド」と呼ばれ、住民の大多数は「Londonderry市民」である。市庁舎だとかメインのショッピングセンターだとかいったものがあるのはウォーターサイドの側ではなく、川の西岸で、そちら側は「シティサイド」と呼ばれる。シティサイドは「Derry市民」と「Londonderry市民」が暮らしていて、前者が多数派だ。このシティサイドの側、マップのキャプチャ画面でLの文字あたりを中心に、マップを拡大してみよう。

googlemap-derrylondonderry2.png


Bloody Sunday Monumentと、Derry City Walls(城壁)の印が現れた。その東側から川にかけて色がついている部分が市街地(城壁の中、旧市街)である。

マップをさらに拡大すると、「レッキー・ロード」や「ビショップ・ストリート」といった地名が現れる。ブラディ・サンデー事件の証言集や事件についての資料を読んだ人なら記憶しているに違いない地名だ。

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デリーの城壁の外側、この辺りが「ボグサイド」と呼ばれる地域で、決して広くはないこの地域は「北アイルランド紛争」について一度でもまともに調べるなどした人なら必ず知っている出来事がいくつも起きた地域である。

さらに拡大すると、Bloody Sunday Monumentに代わり、Free Derry Museumが表示され、その下側にまた何かアイコンが出てくる。

googlemap-derrylondonderry4.png


そのアイコンにカーソルを合わせてみると、それがFree Derry Cornerであることがわかる。

googlemap-derrylondonderry5.png


Free Derry MuseumやBloody Sunday MonumentからFree Derry Cornerを経てさらにまっすぐ進む道を道なりに行くと、進行方向左(方角としては東)に感覚的に90度カーブしているところがある。ここにあるのが「ロング・タワーの聖コルンバ・チャーチ」である。カトリックの教会(チャーチ)だ。

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デリーにはデリー教区をつかさどる聖ユージーン大聖堂(カシードラル)がある。城壁のある高台から見て下のほうに広がる平地にそびえるその尖塔は、デリーの町の風景を特徴付けるランドマークである。一方、ロング・タワーの教会はもっと目立たない、地味な、地元の人々が通う日常的な教会だ。(ちなみに城壁のほうにも聖コルンバにちなんだ豪華な教会があるが、そちらは聖公会=チャーチ・オヴ・アイルランドの教会である。)

マーティン・マクギネスの棺は、ボグサイドの自宅からほんの数百メートル先のその教会まで、ゆっくりゆっくりと時間をかけて、ご家族、およびIRAとシン・フェインの人々の肩に担われて、進んでいった。その道沿いには、地元の人たちにとってはシンボルであり、外部からの観光客を呼ぶ観光資源でもあるボグサイド・ミューラルが点在する。2017年3月23日(木)の夜10時半過ぎ(日本時間)から、デリーからネットで中継されてくるマーティン・マクギネスの葬儀の映像を見ているときに最初に指がPrint Screenキーに向かって動いたのは、ものすごい数の人々と、それらのミューラルの1枚をカメラがとらえたときだった。

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ミューラルに描かれている学校の制服を着た女の子は、アネット・マクガヴィガンという名で、1957年に生まれ、1971年9月6日に14歳で死んだ。ボグサイドで発生した英軍とIRAの「銃撃戦の巻き添い」だ。ブラディ・サンデー事件の約5ヶ月前のことで、アネットは北アイルランド紛争が始まってから100人目の民間人(一般市民)犠牲者で、子供の犠牲者としては一人目だった。

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2017年03月21日

【訃報】マーティン・マクギネス

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こんなに早く、こんなエントリを書くことになろうとは。

martinmcguinnessrip.pngRest in power, and rest in peace.

1月の政界引退表明時のやつれ方が激烈だったので、引退の理由となった「健康状態の問題」は相当深刻なのだと察しがついた。しかしそれは、(本人の意思とは別なところで、アイリッシュ・タイムズのスクープによって)公にされた病名で、説明がつくことだった。あんな病気なのだから、あのくらいやつれて当然だ、と。それに写真や映像は照明によっていかようにもなる。

この人はファイターだから、戻ってくる。そう思っていた。何しろまだ60代だ。

3月2日の北アイルランド自治議会選挙のとき――この選挙について、驚くべきことに私はまだブログの記事を書いていないのだが(選挙後の膠着状態が続いているうちに、タイミングを完全に失った)、3日の開票で選挙結果(DUPのボロ負け、シン・フェインのバカ勝ち――しかし最終的にはわずか1議席の差でDUPが第一党の地位を保持したが、北アイルランドでユニオニスト/ロイヤリストの側の政党のマジョリティが破られ、ナショナリスト/リパブリカンの政党が議席数で並ぶ、などということは、まさに「歴史的」なことだった……その話はまたちゃんと書くよ)がだいたい出揃ったころ、Twitterにいるご兄弟が「マクギネス家、盛り上がってる人がいます!」と口々にツイートしている一方で、本人のアカウントは選挙当日の発言があったっきり沈黙していた。政界引退したあとは、新リーダーのミシェル・オニールにすべてを任せるということを印象付けるため、あえてツイートなどしないようにしているんじゃないかと考えたが、今思えば、それは多分私の側の「正常性バイアス」だった。病気の治療に専念するためという理由で政界引退した人だ、Twitterも静かにはなるだろう。ピーター・ロビンソンなんぞ、完全に姿を消してしまっているわけで(Twitterのアカウントも「DUP党首」だったので、後任のアーリーン・フォスターに譲ってしまった)。だから発言がないのも、もっともなこと、正常なことなのだ。そう思っていた。

どうしても気になってTwitterをチェックしたのは、3月20日のことだった。1993年3月20日、IRAのボムがイングランドの小都市ウォリントンの商店街の鉄製ゴミ箱の中で爆発し、買い物に来ていた人々を無差別的に殺傷した。このボムで殺されたのは2人の子供たち(幼児と中学生)で、IRAの「武装闘争至上主義」は内部からも揺らぐことになったのだが、その後、停戦が成立し、最終的に1998年4月の和平合意(グッドフライデー合意、ベルファスト合意)への流れをシン・フェインのチーフ・ネゴシエーターとして仕切ったマーティン・マクギネスと、ウォリントンで中学生の息子を殺されたコリン・パリーさんは、以後………どうにも要領を得た文章が書けない点はご容赦いただきたい。「意識の流れ」みたいになっていて、それが今できる精一杯のことだ………

ともあれ、マクギネスとパリーさんは直接対面し、「和平」と「和解と赦し(表記基準次第で『許し』)」という重いテーマに真正面から向き合うという活動を公開の場で行なってきた。そして3月20日の記念日に、パリーさんの立ち上げたNGO「ピースセンター」のツイッター・アカウントはいつも通りの「紛争と和平、和解と赦し」に関するニュースのフィードと、記念日の追悼行事(黙祷)についての告知のフィードを流していたが、マクギネスのアカウントは沈黙していた。コリン・パリーさんの個人アカウントは元々まれにしか発言がないのだが、そのときに見たものをRTしたのが3月20日のことだった。

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この3月、1993年のボムで殺されたティム・パリーは、生きていれば、36歳の誕生日を迎えてから半年ほどになっていた。2月、コリン・パリーさんは実業界(IRAのボムの影響を受けまくった人たちは含まれているだろうか)の人々を前に、息子を失ったパリーさんが、ピース・センターを立ち上げるに至ったことの背景を語っていた。そして2月下旬、北アイルランドでまた警察官がディシデント・リパブリカンのボムの標的にされたとき(攻撃は失敗したが)、マーティン・マクギネスはそれを強く非難していた。

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【ネットの使い方】知らなかった植物の名を、インターネットで調べるまで

そこに何が植えてある/生えているのかなんて、気に留めたこともなかったのだろう。歩いていたら、白いチラチラしたものが大量に目に入ったので、「花かな?」と興味を持って近づいてみて初めて、そこに植物が植えてある/生えていることに気づいた。それは大きな建物の裏手、常に日陰になっているような場所で、きちんと間隔を保って立っている大きな木の足元だ。

近づいて見てみると、花であることは間違いないのだが、タネツケバナやハコベやミミナグサのようにわかりやすくかわいいわけでなく、何とも奇妙な花だ。遠目で白くチラチラしていたのは、花弁や花弁のように見えるガクではなく、おしべそのもののようだ(この花には、花弁や花弁のように見えるガク――アジサイの「花弁的なもの」のような――がない)。

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あとでネットで調べよう、と思って写真を撮っていると、「何かある?」と通りすがりの人に声をかけられた。「花だと思うんですけど、何でしょう、これ……」と指さすも、その人も「なんだこれ」と首をかしげるばかり。「花は花だろうねぇ。興味あんなら、むしって持ってっちゃいなよ」と言うその人は、植物と庭いじりが好きだという口ぶりだった(「ガーデニング」というカタカナっぽい雰囲気ではなかったが)。「柵の外に出てるの、いっぱいあるよ。地下茎だろうね。地下茎だからさ、どこまでも増えてっちゃうのよ。引っこ抜いてって植えればこんなん、どんどん増えるよ、あっちにも、ほら!」というその言葉に従っていたら、将来的に私はキュー・ガーデン的なものでも始めることになってしまいかねないので、「いやいや……今から買い物に出かけるところなので」と丁寧にご辞退申し上げた。実際、引っこ抜いた植物を手に持ってスーパーのお豆腐コーナーで厚揚げを選ぶなどするわけにもいかない。

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さらに建物の入り口の方に行くと、柵のないところにも同じ植物が植えられていて、真上からの写真を撮ることもできた。大きく伸びた花穂もあった。

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その大きく伸びた花穂から、「そういえば、『なんとかトラノオ』と呼ぶ植物があったな」とウェブ検索してイブキトラノオという植物についてのウィキペディアの項目を見つけたが、花は似ていてもが全然違うし、それにあちらは高山植物だ。では……とイブキトラノオが属しているタデ科のイブキトラノオ属の一覧を見てみるも、みな花は似ているが植物としては違う。

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2017年03月17日

聖パトリックの日に、緑色ではない一角に接した。

時バエは矢を好む。もとい、光陰矢の如し。米大統領選の結果を見て「おーまいがー、来年はどうなってしまうのか」と言っていたのはつい最近のことのように思えるのに、その「来年」はもう3月の半分以上が過ぎ、今日は聖パトリックの日になってしまった。3月17日である。

聖パトリックの日といえば、東京でもだいたいいつも、風が春めいてきたなあなどと感じるころだが、今年は寒い。自転車に乗って横断歩道で停車中に、マスク越しに鼻まで届く沈丁花の芳香が乗ってくる風も冷たく、午後3時をすぎて日が傾きだしたあとは、昼間はぐるっと巻いていただけのマフラーを、ぐる、ぐると重ねて巻くことになる。

そういえば今日は金曜日で、ということはセント・パトリックス・デーが祝日となっているアイルランドの人々は3連休で、今日どんなに飲んでも二日酔いで仕事にならないなどという心配をする必要がない人も多く、Twitterを見てるだけで酒臭くなるレベルで酒臭いことになるだろう。そういえば水曜日くらいから、BBC Northern Irelandのサイトでは、例年3月17日は酔っ払いでひどいことになるベルファストの学生街が、今年は輪をかけてものすごいことになるのではないかという記事が出てたと思う。

というわけで、まあセント・パトリックス・デイだし、成分補給してくれそうなトラッド系の音楽でも聞くか、なるべくバラエティ豊かな方がいいから、コンピレーション盤を探してみよう……とやってみたら、多すぎて話にならない(笑)。みんな、アイリッシュ大好きだな!

……とか何とかやってるうちに、パディ・ライリーの曲が入った「麗しのベルファスト」というこんぴ盤がリストに出てきた。ダブリン出身で、サッカーのアイルランド共和国代表サポをはじめ、アイルランド共和国のスポーツの試合で観客がよく歌うThe Fields of Athenryとフォークソングの最も有名な歌い手で、ダブリナーズでの活動でも知られるパディ・ライリーの曲が、「ダブリン」や「南(アイルランド共和国)」とはちょっと距離感のあるベルファストをストレートに讃えるコンピレーションに入っているのは、珍しいんじゃないかと思った。

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2017年03月12日

BBC Newsでの微笑ましいハプニング(真顔)についての反応が示した「偏見」

韓国の大統領がついに罷免という大変な事態となり、世界中の注目が韓国に集中したその日、現地の大学(釜山大学)で国際関係論を教えている英国人のケリー教授は、BBC World Newsのコメンテーターとして、ウェブカムを使ってロンドンのスタジオのキャスターのインタビューを受けていた。ケリー教授は朝鮮半島についての専門家である。インタビューが進み、今回の事態が「より広い範囲に」、つまり朝鮮半島全体にどのような影響をもたらすかという深刻な面についての話になったとき、いきなり背後のドアが開き、どん・どん・どん・どんのバスドラ4つ打ちに合わせるように踊りながら、子供が入ってきた(ここで視聴者は、ケリー教授のインタビュー場所が大学の研究室ではなく自宅の書斎であることに気づく……英国ではこれは朝のニュースだったそうだが、韓国と英国は8時間の時差があるので、英国の朝7時のニュースに出ているとき、韓国は夜の11時だ)。子供はそのままずんずんと前進して、パパが見詰めているカメラをじっと見詰める。教授も真顔なら、お子さんも真顔である。

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背中を向けているキャスターも真顔であることに疑いの余地はなく、真顔好きとしては、「これはすばらしい真顔博覧会ですね」と感嘆を禁じえないのだが、このあと、事態は急展開を見せる。どっかから「教授、アウト〜」って聞こえてきそうな画面だ。

短い映像だし、言葉などわからなくても見ればわかるので、まだ見ていない方には、ぜひごらんいただきたい。ただしお茶を飲みながらとか歯を磨きながらとかいった「ながら」視聴はおすすめしない。



これについては、「真顔」という観点を軸に、事態発生時にBBCのニューズルームにいたジャーナリストや当事者(キャスター、教授)のツイートとそれへのリプライを、下記に「まとめ」ておいた。

(・_・) 英国式真顔の真髄、あるいは「絶対に笑ってはいけないBBCニュース」
https://matome.naver.jp/odai/2148922169496268301

といっても、わざわざ「まとめ」にしたのは決して、これが「真顔好きにはたまらない」ものだったからだけではない。「真顔好きにはたまらない」からわざわざまとめたのではない。大事なことなので二度言いました。真顔で。 (・_・)

教授が「アウト〜」になり、事態がクライマックス(教授の「すみません」との発言)を迎えるシーン。大慌てで飛び込んできた紺色のボーダーの服の女性が誰であるかをどう認識するかについて、議論になったのである。

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2017年03月11日

単なる「テクノロジー・プラットフォーム」に入り浸り、その「テクノロジー」の言う通りにしていたら、極右言説・陰謀論が視界にあふれてしまったという話(Facebookについて)

WIREDの日本版サイトにこんな翻訳記事が出ている。

Facebookはもはや「プラットフォーム」ではないし、中立でもない
2017.03.11 SAT 21:00, TEXT BY DAVEY ALBA
http://wired.jp/2017/03/11/facebook-media-company/
原文: https://www.wired.com/2017/03/facebooks-officially-media-company-time-act-like-one/
フェイスブックは、従来のメディア企業として分類されるのを頑なに拒んでいる。米国の成人の半数近くがFacebookでニュースを見ているにもかかわらず、CEOのマーク・ザッカーバーグは、Facebookを「テクノロジープラットフォーム」と呼ぶことにこだわっているのだ。だが、こうした古い議論はもはや必要ない。とくに、フェイスブックが独自の動画コンテンツの制作を始めたいまとなっては。

『DIGIDAY』US版によると、フェイスブックはモバイルアプリ用に「スポットライト・モジュール」と呼ばれるタブを開発しているという。Facebook用に制作された番組や長時間の動画コンテンツをハイライトするものだ。


FBが立ち上げようとしているこの「動画コンテンツ」の詳細は、ここでは措く。私はFBは使っていないし、別に興味もない。それより、下記の指摘だ。

動画制作の領域に確実に踏み込みつつあるフェイスブックは、巨大メディアとしての責任を回避しようとしており、それは議論の的となっている。

……フェイスブックは、コンテンツ制作を手がけることで、「単なるプラットフォームである」と主張することはもはやできなくなる。

結局のところ、「コンテンツをつくる」というのは、フェイスブックが編集上の判断を行うことを意味する。それは、動画制作者が何をするか、あるいはしないか、そしてその動画のフォーマットや長さ、トーンを決めるのに、フェイスブックが意見をもつということだ。そしてもちろん、フェイスブックは番組に直接資金を投じることになる。そこに、ニュートラルなものなど何もない。


FBというのはアメリカ企業で、基本的にアメリカしか相手にしていない。英語圏ならまだしも、言語が異なる(それも、使う文字から異なっている)日本語圏では、また事情が違っているのかもしれない。だがいずれにせよ、FBについては次のような問題(をザッカーバーグが絶対に認めようとしないという問題)が指摘されている。同じ記事から。

フェイスブックは、編集上の判断をこれまでまったく行ってこなかったというわけではない。「Facebookは、決してニュートラルなプラットフォームではありません」と、コーネル・テックでSNSを研究する法律学教授のジェイムス・グリメルマンは言う。「常に、どこよりも効率よくコンテンツを拡散してきたのです」

フェイスブックの技術的・社会的な決定は、コンテンツに明らかな影響を与えてきたと、グリメルマンは語る。……


グリメルマン教授の言葉に、私は昨日読んだBuzzfeed.comの記事を思い出した。内容をかいつまんで連続ツイートしたものだ。元からそれをブログに引っ張ってくるつもりだったが、このWIREDの記事はちょうどタイミングよかった。

というわけで、昨日読んだBuzzfeedの記事である。

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2017年03月10日

アモス・ギタイ監督(イスラエル)の映画、『フリーゾーン Free Zone』

画面の左半分弱を占めた若い女の横顔。音楽(歌)が流れ、女が顔をしかめ、涙を流す。アイメイクが黒く尾を引いて頬の上を流れ落ちる。オープニング・クレジットからの7分間、この映画はずっとその映像だ。流れている歌の歌詞は日本語の字幕で画面下部に表示される。泣いている若い女の横顔は、見ている者の目を引きつけて離さない。

freezone-song.png  私の父が買った 安い値段で
  子羊! 子羊!
  私の父が買った 安い値段で
  そうハガダに 書いてある
  猫が待ち伏せしていた
  子羊に跳びかかり 食い殺す
  子羊を食い殺した猫を
  犬が絞め殺す
  父が買った子羊
  安い値段で
  子羊! 子羊!……

字幕によると、この歌はさらに次のように続く(2番)。

  棍棒が
  犬を罰する
  猫を食いちぎった犬
  父が買った子羊を 食い殺した猫
  父は安い値段で 子羊を買った
  子羊! 子羊!

続いて、今度は「火が棍棒を燃やす」で始まり、また同じ「子羊を殺した猫を殺した犬を罰した棍棒」が(逆順で)繰り返される。

次は「水が火を消す」。そして「子羊を殺した猫を殺した犬を罰した棍棒を燃やした火」(の逆順)。

それから「近くを通った牛が 火を消した水を飲む」。そして「子羊を殺した猫を殺した犬を罰した棍棒を燃やした火を消した水」(の逆順)。

これで終わりではない。次は「水を飲んだ牛を殺しに 肉屋がやって来る」。そしてまた、繰り返される。「その牛は水を飲んだ、その水は火を消した、その火は棒を燃やした、その棒は犬を罰した、その犬は猫を絞め殺した、その猫は子羊をかみ殺した、その子羊は私の父が買った」。

そしてついには「堕天使が現れて 肉屋を殺す」。

  堕天使が現れて 肉屋を殺す
  肉屋は水を飲んだ牛を殺し 
  水は火を消した 
  火は棒を燃やし
  棒は犬を罰した
  犬は猫を絞め殺し
  猫は父が買った子羊を
  食い殺した
  子羊! 子羊!

先月Twitterに流していたのだが、3月9日(昨日)まで、アモス・ギタイ監督の映画『フリーゾーン』がGYAOで無料で配信されていた。このように「○月○日まで、いつでも再生可能」という形だと、ついつい「今見なくてもいいや」と思って後回しにしている間に最終日になってしまうのが常で、9日の夜になってようやく見た。

見ている間、完全に引き込まれたし、おもしろかったので、最終日の夜で「今から言われても見れない」という人が多いかもと思ったけど、Twitterに「おもしろい映画だった」ということを書いて投稿した。見終わって立ち上がってお茶でも入れたころには、見ている間にちぐはぐさを感じた部分の印象が強まってきて、「きっと、長い映画をカットして90分に収めたのだろう」と思えてくるのだが(実際、イスラエルで保守派から文句を言われた「嘆きの壁」近くでのシーンが最終的にはカットされたそうだが、それは主人公の若い女の「物語」がばっさりとカットされていることを意味する)、そういったちぐはぐな部分(例えば、【ネタバレ回避のため文字を背景色と同じにしてあります→】「アメリカ人」は丘を歩きながらレベッカに語ってないで、商売で借りた金を返すよう尽力しろよ【←ここまで】とか)をしのぐ「会話劇」の凄みと強さがある。そして、その「会話」は、ツイートした通り、英語、ヘブライ語、アラビア語で為され、3言語がシームレスにくるくると入れ替わる。

特におもしろかった(興味深かった)のが、物語が動き始めてほどないところで出てきたガソリンスタンドの場面だ。

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2017年03月07日

アイルランド、テュアムで埋められていた子供たちは新たに見つかったんじゃない。約3年前の指摘を政府がようやく事実と認めたのだ。

2014年6月、私は何に関心を持っていただろう。イスイス団の西洋に対する残虐な敵意の垂れ流し祭りが始まる2ヶ月前で、自分の関心の非常に大きな部分がイスイス団に向けられたあとのことは覚えているが、その前のことは思い出せなくなってしまった。Twitterのログを見返しても雑多すぎて、イマイチはっきりとしない。そのときに私が関心を向けていたことは確かにあるのだが、その後に起きたあまりにも大きな、あまりにも衝撃的なことに吹き飛ばされて、それらは自分の中で流れを作っておらず、ただ「断片」となり、確かに記録として存在はしていてもあとからたどることは難しくなってしまった。

それでも、2017年3月3日、北アイルランド自治議会選挙の開票実況をゲラゲラ笑いながらTwitterで追っていたときに(選挙についてのブログはこのあとで書きます。まだ笑えるから困る)、アイルランド共和国から流れてきたニュースに出てくるその地名には、聞き覚えがあった。ゴールウェイ州だよな、とも思った。決して馴染み深い地名ではないのに。

実際、2014年6月7日、自分は下記のようにTwitterに投稿していたのだ。

tuambabies-june2014.png


自分の書きぶりからわかるが、このとき、このニュースを伝えるセンセーショナルな文言を、非常に多く見たのだろう。そういう中で、何とか「冷静な」ものを見ようとしていたことがうかがえる(「正常性バイアス」ってやつだろう)。そして私はアイリッシュ・タイムズは(特に宗教がらみのことではアイリッシュ・インディペンデントなどに比べて)信頼できるメディアだと思っていたし(今でもそう思っている)、そこにあるバイアスに気づいていなかったのだろう。

そう、2014年6月の私のバイアスに、2017年3月の私は気づかされている。

さっきから、「何のことだ」と思われているかもしれない。このことだ。

アイルランド、カトリック教会が運営していた児童施設の跡地から、大量の子供の遺体が見つかった。
https://matome.naver.jp/odai/2148855831728187001

2017年3月3日、北アイルランドのリストの画面と、ベルファスト・テレグラフやBBC Northern Irelandの開票速報の画面を開いて、ウィキペディアの選挙区ごとのページを見て前回の選挙のことなども確認しながら、北アイルランドの人々の「うはー」とか「うひょう」という声が響く中、単なる数字を見てゲラゲラ笑っていたときに、北アイルランドのリストに "Tuam" という地名を含むツイートがいくつも流れてきていた。

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2017年03月03日

ストーク・オン・トレント補選(2月23日)結果……あれでもまだ、議席を取れないUKIPは注目に値する政党なのか?

英国では選挙が行なわれるのは木曜日という慣行があるが、今日は木曜日で、北アイルランド自治議会(ストーモント)の解散・総選挙の投票日である。ということは、ぼーっとしているうちに、前回の「英国での選挙」から1週間すぎたということで、それについて私は書こうとしていたのに、何という体たらくか、ということだ。

前回の「英国での選挙」というのは、2月23日(木)に投開票が行なわれた、英国会下院(庶民院)の補欠選挙のことだ。この日、2つの選挙区で補選が行なわれ、うち1つについては補選が決定した経緯も当ブログで書いている。つまり、トリストラム・ハント(労働党)の件だ。

2017年01月14日 英国的な、あまりに英国的な(ヴィクトリア&アルバート博物館の新館長)
http://nofrills.seesaa.net/article/tristram-hunt-resigns-as-mp.html

ハントが議員辞職したことで補選が引き起こされることになった選挙区は、ストーク・オン・トレント・セントラル。日本では(何らかのイメージがあるとすれば)おそらく「陶芸の町」というイメージが最も強いであろうイングランド中西部(ウェスト・ミッドランズ)の大都市、ストーク・オン・トレントのいくつかある選挙区のひとつだが、この都市の産業を製陶以上に支えてきた石炭産業・製鉄産業が1990年代以降衰退し(製陶産業も、特に2008年の金融危機以後、縮小している)、近年ここが注目されるのは(注目されることがあるとすれば)「かつて労組(労働党の支持基盤)の町だった産業都市と、極右思想への支持の拡大」という文脈でのことが多かった。BNP (the British National Party) が英国で「伸張する極右」の代名詞だった2000年代、BNPが議席を獲得した地方議会としてメディアで大きく取り上げられていた中には、ストーク・オン・トレント市議会も含まれる(2011年にBNPは同市議会の議席をゼロにしている)。BNPが崩壊したあとのことは、労働党支持の新聞、ガーディアンで「ストーク・オン・トレント」のタグのついている記事の一覧をさかのぼって見ると、様子がつかめるだろう(ヴィクトリア朝を専門とする学者でもあるトリストラム・ハントがウェッジウッド博物館の存続を求める論説を書いていたりするのも味わい深いが)。
https://www.theguardian.com/uk-news/stoke-on-trent

stoke-on-trent-euref-results.pngストーク・オン・トレントは、昨年6月の「EUレファレンダム」の際は、「離脱」派が優勢ということで注目を集めた「イングランドの衰退した工業都市」のひとつだった(「注目を集めた」といっても、この都市に関しては、例えばサンダーランドなどとは異なり、帰結がどうなるかではなく、「離脱」票が「残留」票にどの程度の差をつけるかということだったと記憶しているが)。実際、投票が終わってみれば、右図の通り、「離脱」が69.4%、「残留」が30.6%というすさまじい結果だった(投票率の65.7%は、全イングランドの73.0%という数値を大きく下回っている。投票結果についてはウィキペディア英語版が見やすい。地域ごとに「離脱」「残留」のパーセンテージが一覧できる表がある。並べ替えも可能)。かくして、ストーク・オン・トレント(を含むスタフォードシャー)は「ブレグジットのハートランド Brexit heartland」などとも呼ばれてきたのだが、EUレファレンダム投票直前の2016年6月14日のガーディアンの現地ルポが、Brexitというものをめぐる市井のムードについて、生々しい。

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2017年02月20日

ドナルド・トランプの世界では、パキスタンとスウェーデンが区別されないらしい。トランプ支持者の世界では、スウェーデンは燃えているらしい。

当の米国では新政権発足後のいわゆる「ハネムーン」期間など、今回に限っては存在してもいないのに、なぜか日本語圏はそういうムードに浸りきっていて「トランプ大統領の経済政策のお手並み拝見」とかいう言説があふれかえっていて(そういう言説、気をつけないとだめですよ)、特に書店の店頭などはすさまじいことになっているのだが(去年は格差だピケティだデモで民主主義だとやってた棚が、今年はトランプ一色で、出版されるトランプ本の中身は、多くの場合、「中立」という体裁をまとったトランプへの消極的支持または積極的礼賛)、モニターの中に私が見る世界は、(ときどき「偵察」的に見に行くalt-rightのサイトは別として)それとはまったく違う。何しろすべてがデタラメなのだから(GBWのとんでもないデタラメが、まっとうに見えてきて困る)、特に「反トランプ」であるわけでもない圏、つまり単に「トランプ支持ではない界隈」ではこうあるのが当然だが。

特に今回が異常なのは、いわゆる「燃料投下」がやまないことである。スポークスパーソンとか広報とかいった部門やそっち方面の補佐官が、「大統領の失言をフォローする」どころか、自分たちががんがんトンデモをぶちかましている(彼らのは「失言」などというレベルではなく、「トンデモ」である。そのうち「レプタリアンがー」とか言い出すんじゃないかと思って、生暖かく見守るくらいがちょうどいい)。

トランプ政権のトンデモ番長はケリーアン・コンウェイだ。彼女は選対本部長から大統領顧問となった人物だが、元々はテッド・クルーズ陣営のスタッフだった。コンウェイが選対本部長になった経緯を私は把握していないが(正直、この人のことはどうでもいい)、確かトランプ陣営は選挙時にあまりにトンデモでデタラメだったことに耐えかねて選対本部の人が途中で離脱してて(NationかMother Jonesか何かでその過程について激白してたと思う)、離脱した人のあとに入ったのがコンウェイではなかったかと思う(要確認)。

彼女のトンデモっぷりは、大統領就任式典直後に "alternative facts" なる概念を披瀝したことで、全米および全世界が知るところとなった。

「もう一つの事実」(英: Alternative facts)は、2017年1月22日に放送されたミート・ザ・プレスのインタビューにおいて、アメリカ合衆国大統領顧問ケリーアン・コンウェイが行った発言で、ホワイトハウス報道官ショーン・スパイサーのドナルド・トランプ大統領就任式に関する虚偽発言を擁護した言葉である。インタビューを行ったチャック・トッドが、スパイサー報道官はなぜ「明らかな虚偽発言」を行ったのか問いただしたところ、コンウェイ顧問は「もう一つの事実だった」と答えた。それに対してトッドは「もう一つの事実とは事実ではない。虚偽だ」と反論している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%81%86%E4%B8%80%E3%81%A4%E3%81%AE%E4%BA%8B%E5%AE%9F


コンウェイの悪名をさらにとどろかせたのが、2月2日に為された「ボウリング・グリーンの虐殺 Bowling Green Massacre」発言である。「ボウリング・グリーン」はケンタッキー州にある町の名前で、2011年にこの町で、アルカイダに対する資金・物資の援助の容疑で2人のイラク人が逮捕され、連邦裁判所で「テロリズム」で起訴された。つまり、ボウリング・グリーンで2人のイラク人「テロリスト」が逮捕・起訴されたということになるのだが、彼らは人を殺したり爆弾を作ったりしたわけではなく、米国が「テロ組織」と規定している組織(アルカイダ)への支援を行なったわけである(そんなことで「テロリスト」になるのなら、アメリカのアイリッシュ・コミュニティにはIRA支持の「テロリスト」は大勢いただろう)。しかし、ケリーアン・コンウェイの「オルタナティヴ・ファクト」の世界では、つまり普通の事実の確認を取らずに構築されている世界では、彼ら2人のイラク人「テロリスト」は、ボウリング・グリーンの町で「虐殺(大量殺戮)」を行なったことになっていた。そして彼女は、自分の信じていること(マイルドにいえば「勘違い」)を、そのまま、テレビのインタビューで披瀝したのである。

むろん、彼女は即座に嘲笑された。ボウリング・グリーンの町では人々が「存在しもしない大量殺戮事件のために」という言葉をかかげて、キャンドル・ヴィジルを行なったりしていたし、Twitter上の英語圏は、「機知に富んだ一言」でたいそう賑わった。

これで赤っ恥をかいた政権スタッフは、以後、しゃべる前に事実確認を行なうようにするなど、事実に対する態度を改める……のなら普通だが、トランプ政権は「普通ではない not normal」し、自分たちが「普通ではない」ことをドヤ顔して見せ付けるような人々で構成され、支持されている。
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2017年02月18日

【訃報】ディック・ブルーナ

Twitterの@Miffy_UKのアカウントは、ミッフィー、つまりディック・ブルーナの絵本のうさぎ「ナインチェ」(日本では「うさこちゃん」として親しまれてきた)に関連するイベントやグッズ、テレビ番組の告知を行なったり、絵本から抜粋した文と絵をツイートしたり、「子供たちとミッフィーちゃん」という光景の写真やミッフィーちゃんをかたどったお菓子の写真などを紹介している。最近はinstagramからの写真を紹介していることも多い。

普段は色にあふれたこのアカウントが、18日、色を失っていた。ヘッダー写真が真っ白になっていた(黒ではなかった)。

miffiy_uk.png

ディック・ブルーナ。1927年8月生まれのオランダのアーティストが、90歳の誕生日まであと半年あまりというこの時期に、逝ってしまった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Dick_Bruna

その悲報がどのように広まっているかが、私の目の前に開いた小さな窓の中に見えた。

以下はその記録。ささやかな。

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2017年02月06日

【英語】単数形か、複数形か、それが問題だ(The teamなど「ひとつの集団」の扱いについて)

英語で、「ひとまとまりの集団」を単数扱いにするか、複数扱いにするかはけっこう神経を使う。例えば、The team was in London at the time. とするか、The team were in London at the time. とするかといったことだ。

これは、ネット上の英語教師・学習者のフォーラムなどでもよく話題になる。

http://www.english-test.net/forum/ftopic44474.html で検討されているTOEICの問題は、単純に「文法の問題」として考えれば悪問だが(答えが2つある)、何番目かの回答にあるように「ビジネスで意思を伝える定型文」としてみた場合は答えは1つしかないのかもしれない。

http://english.stackexchange.com/questions/76371/jury-was-divided-or-jury-were-divided の質問者の混乱は、私にも「あるある」で("The jury is out" と言い、"The jury were divided" と言う、どっちなんだよ、っていう)大変に興味深いが、この質問への回答に書き添えられている英米差もあり、やっかいだ(英国は複数扱い、米国は単数扱いが多い)。

私の書くものでは英国流で複数扱いをしてることが多いと思うが、一般的にいって、The Beatlesのように団体名そのものが複数形の場合はare, wereを使っても違和感がないが、Pink Floydのように複数形でない場合はare, wereを使うと変なふうに見えるということはあるだろう。

……というわけで、いろいろと気を使うので、煮詰まってくると、「単数・複数が関係ない表現を使えないか」とかいうことを考え始めたりもする。The team was/were in London. ではなく、 The team stayed in London. とすればいいじゃない♪ とか、The team would leave London for Paris. というふうにもできるよね、とか。うん、わかってる。逆にめんどくさいよね。

そんなお悩みを一発でぶっ飛ばしてくれる(あるいは、そんなお悩みをますます倍増させる)「生きた英語」を見かけたのでメモ。内容はヘヴィーだが、英語の例文としてはシンプルだ。

The PSNI's Legacy Investigations Branch (LIB), which was formed in 2014, are currently investigating 1118 killings.

http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/northern-ireland/exbritish-soldiers-criticise-psni-decision-not-to-probe-ira-attacks-on-them-35424698.html


これは、北アイルランド紛争期の犯罪(殺人、殺人未遂、傷害、爆発物設置など)の捜査についての記事で(現地には「時効」というものはない)、それら、言ってしまえば「古い」犯罪の捜査のために、通常の警察の業務を行なう部門とは別に、PSNI(北アイルランド警察)のなかに設けられたLIBという部署についての文である。

ひとつの文(複文)の中で、単数形で受けてるところと複数形で受けてるところがある。

理屈をいえば、最初のところが単数形なのは、LIBというチームをひとつのものとして扱っているからで、次が複数形なのは、LIBというチームの構成員それぞれが犯罪の捜査を行なっているから、ということになるだろう。

こういうときに「揃っていない」のが大変に気になるのだが、この例を見る限り、必ずしも揃っていなくてもよいようだ。だからといって、「全部適当でいい」というわけでは、断じてないのだが。

ちなみに、「ひとつのものとして扱う場合は単数形」というのは基本だが、ためしに "a group were formed" というのをググってみたら大変なことになった。仮定法過去の文例も含まれてるけど、それにしてもこれはカオスだ。

学生さんへ: これで「よかった、少し気が楽になった」と思う人はたぶん英語向き。「なんだよ、余計ややこしいじゃん。規則作って揃えろよ」と思う人は、英語以外の文法がっちがちの言語のほうが合うかもしれません。

4760820094英文法解説
江川 泰一郎
金子書房 1991-06

by G-Tools

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2017年02月05日

ケベックのモスク銃撃事件に関する「シリア人難民犯人説」というデマと、トランプ支持者界隈。そして、ボストン・マラソン爆弾事件のときの先例。

1つ前のエントリで、1月29日にカナダのケベックで発生した極右過激派によるモスク襲撃(6人死亡、ほか負傷者多数)について書いた。襲撃者が「極右過激派のローン・ウルフ(組織という背景を持たない単独犯)型テロリスト」であることが公になるまでには少し時間がかかり、その間にネットでは「噂 (rumour)」が流れていた。

このケースでは「噂」には大きく分けて2種類あり、その1種類は「事件発生後まもない段階での混乱」(警察が「容疑者」とした人が、実は「被害者」だった)に基づくもので、大まかに言えば、ネット、特に「リアルタイム」と信じられていることが多いソーシャルメディアで、既に古くなった情報が少し後まで人から人へ伝えられ続けるというケースだった(その背景には「人々の思い込み」とか「正常性バイアス」もあると思うが、そういったことについての分析は、たとえリソースがあっても、ある程度の時間はかかり、すぐには出てこないだろう。そもそも一介の一般人である私にはそんなことをするリソースはないのだが)。

そして、もう1種類はあまりに異様なもので、1つ前のエントリで扱うことを諦めざるを得ず、次のように簡単に書くに留めてある。

そして、容疑者の名前がわかった。(実はこれが判明する前にも薄気味の悪いデマが出回ってたんだけど……同じようなことがボストン・マラソン爆弾事件のあとにもあったよね。まあいいや、そっちまで書こうとすると書き終わらないから先に行くね。下記の名前が出たとたんに、このデマで騒いでた界隈は静かになったらしいんだけど、それもボストン・マラソン爆弾事件のときとそっくりだ。同じ連中が釣られてたら笑うけど、笑えないか)

http://nofrills.seesaa.net/article/quebec-mosque-shooting-white-nationalist-terror.html


本エントリでは、それについて書く。

まず、「同じようなことがボストン・マラソン爆弾事件のあとにもあった」という部分について説明しなければならないだろうが、そのパートから書き始めたら極めて読みづらいものになってしまったので、構成を変更し、先にケベック・シティ・モスク銃撃事件に関する「薄気味の悪いデマ」について書いて、ボストン・マラソン爆弾事件のときの「同じようなこと」は後に置くこととする。

■ケベック・シティ・モスク銃撃事件での「デマ」(「銃撃したのは難民だ」説←無根拠な虚偽情報)
1つ前のエントリに簡単にリンクだけ入れてあるが、「ネットメディア」のひとつであるPrntlyでは「ネット上では(※このサイト曰く『Twitter上では』となっているが不正確)、ケベックのモスクを銃撃したのは『バシール・T』と『ハサン・M』という名前の人物だ」という話になっていた(以下、虚偽・誤情報の中で出てきた名前については、当記事の地の文では一部をイニシャルとするようにする。キャプチャ画像など、検索にひっかからない形ではそのまま示す)。

その記事の一番上に掲示されているツイートは「ケベックのCBCが、銃撃犯はかくかくしかじかという名前のシリア人難民だと報じている」と書いているが、削除されている(このアカウントのツイート内容は政治的rantばかりの様相で、ツイート主の居場所も不明。「反イスラム」のほかはアメリカの話ばかりで、少なくとも、ネットでラジオでも聞いてるなら別だが、「ケベックのCBC」の報道を直接知ることができるような場所にいそうな雰囲気ではない)。

「CBCがこれらの名前を伝えていた」とするツイートは、Prntlyのこの記事を離れてウェブ検索でもう1件見つかったが(こちらはアメリカにいるアメリカ人のようだ)、それも削除済みで(Googleキャッシュは残っている)、そのツイッタラーのTLにはほかに1件だけ、ケベックの事件についてのフィードがあり、Googleキャッシュを参照するとその記事を根拠としているように見えるが、実際にはそう「見える」だけで発言のソースがそれだとは言っていない(し、当該記事に「容疑者2人の名前」も見当たらない)状態で、この人物が何をソースに「CBCで報道」と発言したのかは確認できない。なお、残っていたGoogleキャッシュで確認できた範囲では、「これらの名前は4chanでジョークとして投稿されたものだ」という指摘がリプライとしてつけられている(が、元のツイートの主がそれに反応した形跡はない)。4chanなど私には到底確認できないが(どの板なのか、といったこともわからない)、本当に「4chanのジョーク」だった場合、最初っから無根拠である。

なお、ここでリンクしたPrntly.comというのは、単に検索して知っただけのサイトだが、「小さい政府」だとか「リバタリアン」だとかいった傾きを持つ、「既存メディア」に対抗する姿勢でネット上の情報を「まとめ」ている自称「ニュース」サイトであるということは、注意しておく必要がある。リンクした記事の見出しで「Twitter上では」と打たれているが、それはこの自称「ニュース」サイトの運営者がこれらの名前を見たのがTwitter上だったという程度の話である(そのような記述になっている)。このサイトは、Twitterで取りざたされているその名前の出所を確認することすらしていない自称「ニュース」サイトで、実際この「ニュース」の記事は、「Twitter上で言われていることをメモった」ものでしかなく、「どんな名前が取りざたされていたか」を確認するためになら使えるという程度だ。ソーシャル・メディアを使う個人による情報のリアルタイムな発信と集積は、既存のメディアの取材と同等か、それ以上の意味・価値を持つのではないかということで「ネットの力」が注目されたのは2009年イラン大統領選挙後の不正追及運動や2010年12月から2011年のいわゆる「アラブの春」のときで、その流れは既存の大手メディアをより開放的にするという結果を生じさせたが、それと同時に、ネット上に「ネットの力」を妄信し、「既存メディアに反対」というだけの勢力に場を作らせることにもなった。そして、大手でキャリアを積んできたジャーナリストたちによって新たに開始された「ネットの力によるニュースサイト」がパトロンによる資金の引き上げという形で継続不能となる一方で、活動家や学生がネットに転がっている話を、最小限の事実確認も取ろうとせずに「ニュース」としてまとめるサイトは、それが元々小規模なプロジェクトであるがゆえに、これからも自称「ニュース」サイトとして存続する。これが現実の光景だ。ディストピア小説なんかより、現実はもっとずっとディストピア的である。

というわけで早速話が脱線しているが、閑話休題。このPrntly.comという「まとめサイト」にも出てくる名前で、Twitterを検索してみよう。その結果の画面のキャプチャが下記だ(キャプチャは2017年2月4日に取得。事件からほぼ5日後で、これらの名前が容疑者の名前とされる根拠などないとわかってから何日も経過している。以下同)。


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2017年02月02日

カナダ、ケベックのモスク銃撃事件(白人優越主義者によるテロ)と、ネット上のデマ、そしてFox News

1月29日(日)の夜(現地時間)、カナダのケベックにあるモスクが、銃を持った男に襲撃され、6人も撃ち殺された。
https://en.wikipedia.org/wiki/Quebec_City_mosque_shooting

この衝撃的で陰惨なテロ攻撃(カナダのトゥルードー首相は、「テロ」と言うべき場面で「テロ」という言葉を使える人物であることを世界に示した)が、日本語圏のメディアでどのくらい報道されていたかは私は把握していないが(たまたまタイミング的に、Yahoo! のトップページも見ていなかった)、英語圏でも、私の見た範囲ではさほど大きな報道には見えなかった(カナダの報道機関のサイトを見ていれば、もちろん違っていただろう)。その理由は、1月20日以降、毎日毎日キテレツな出し物が上演されるかのごとくの米ホワイトハウスが連日、報道機関のサイトの一番いいところを占有し続けているからだ(そういう状態の中でほとんど気づかれずに流れていったニュースはいろいろあるだろう。英ウォッチャーにとってはなつかしの、"bury the bad news" 的な状況が、もう2週間近く継続している)。この日は、前日から続いて、批判的な人々と多くの主流メディア(英デイリー・テレグラフなど「保守」系を含む)によって "Muslim ban" と称された「イスラム圏の特定7カ国」に関する米国への入国禁止措置(査証発給停止)がトップニュースだった(妥当なことだ)。

日本時間で1月30日(月)の18時ごろに見たときのガーディアンのトップページ(インターナショナル版)。クリックで原寸表示。

guardian30jan2017s-min.png


ケベックはフランス語圏で、北アフリカなどフランス語圏からの難民・政治亡命者が多く暮らしている。襲撃されたモスク(英語で「ケベック・シティ・モスク」)はそういった人々が通う礼拝の場だ。そこが襲われたのは、日曜日の夜の礼拝の時間だった。ホワイト・ナショナリズムを信奉し(つまり北米の文脈では「白人優越主義者」である)、「反イスラム」の理念を抱く27歳の大学生による無差別的な銃乱射によって命を奪われたのは、39歳から60歳の男性たちで、大学の農学部の教授、食料品店の店主、薬剤師、ケベック行政府職員。それぞれに子供たちがいて、6人全員がカナダ国籍を持ち、2人はギニア共和国との二重国籍、ほか、モロッコやアルジェリアとの二重国籍の人々だった(ソース)。


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2017年01月30日

北アイルランド紛争について、英国政府が「過去の書き換えは許さない」と語るとき

こういろいろあると、「せめて記録だけは」とかいうことすら、やる気がなくなってくる。ブログに書くべきだと考え、書こうとしたことがあっても、下書きにもならないうちに気持ちが薄まっていく。1週間もすればそういうのが自分の中で落ち着いて、沈殿物のようなものが残るから、それを書けばいいと思ってはいたが、1週間(いや、実際には1週間以上)まったく途切れなく次々と「すさまじいこと」が起こり続けているので、対応しきれない。結果、ときどきTwitterで断片的な発言だけする、ということになっている。特に英国のテリーザ・メイ首相という人がどういう政治家なのかは、日本語圏では全然踏まえられていないので、1箇所にまとまった文章を書いておくとよいだろうとは思っているのだが……(日本語圏はナントカの一つ覚えみたいに「過激派対穏健派」の図式に固執していて、メイについても「レファレンダム前にはEU残留派だったので、穏健派だろう」と思い込まれているようだ。まったくばかばかしい。内務大臣として彼女がどういうことをしてきたか、在英日本人、特に英国人と結婚して英国で暮らすことになったspouseの人たちに聞いてみるといい)。

さて、そんな中でも唯一、ある程度は書いているのが北アイルランド関連だ。といっても、マーティン・マクギネスの政界引退というドでかい話題があったから書いているのであり、それがなかったらどうだったか、わからないが。

そして本日(29日)のニュース。ガーディアン/オブザーヴァー(ガーディアンの日曜)のインターナショナル版のトップページで、久々にNorthern Irelandの文字を見たと思ったら、こんな話だ。

Troubles inquiry focusing too much on police and army, says James Brokenshire
https://www.theguardian.com/uk-news/2017/jan/29/troubles-inquiry-focusing-too-much-on-police-and-army-says-james-brokenshire


記事自体はPress Association(通信社)の配信記事で、これを「インターナショナル版のトップページ」に持ってくる編集判断は、なかなかすごいと思う。

guardian29jan2017b-min.png

※画像クリックで原寸表示。なお、キャプチャ取得時になぜかまたガーディアンのフォントが読み込まれない症状が再発しているのでフォントがおかしい。また、キャプチャ取得のソフトウェアの動作の具合によって、一部つぶれている部分がある(上段のトランプ政権に関するニュースの部分)。

この記事は、英国政府のジェイムズ・ブロークンシャーNI大臣がサンデー・テレグラフに寄稿したものを抜粋し、その背景を簡単に解説するもの。1〜2分もあれば読める分量だ。

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2017年01月27日

北ベルファストでの警官銃撃事件(2017年1月23日発生)

さて、「北部」のシン・フェインのリーダーがミシェル・オニールに決まったとアナウンスされる少し前、ベルファストから「テロリストによる銃乱射」のニュースが入っていた。

場所はCrumlin Road, 毎年夏の「水かけ祭り」の季節(最近は水かけをやらなくなったが)にニュースになる北ベルファストの地名に明るい人ならピンとくる地名だ。そしてあのあたりは、ここ2〜3年ほどは非常に静かになっているが(「暴れ」を抑制できている)、大変に緊張感の高いエリアである。といっても「カトリックとプロテスタントの対立」というよりも、「リパブリカン側での対立」があるためだ(これを「内部の対立」と呼ぶのは不正確だが、「北アイルランドはプロテスタント系住民とカトリック系住民が対立して」云々という古いナラティヴを今でも適用可能なものとして信じている人向けには「内部の対立」という言葉を使うのが伝わりやすいだろう)。

その詳しい状況については、2016年10月に「内輪もめ」について詳細を報じたベルファスト・テレグラフの記事を参照。この記事で言及されている「住民団体」(プロテスタントの行進に反対する住民グループのひとつ)の名称は、夏の「水かけ祭り」などに関連してよく出てくるので、「ああ!」とピンと来る方も多いだろう。アードインという地域では、この「住民団体」を含むディシデント・リパブリカン(非主流派のリパブリカン)と、シン・フェイン(リパブリカンの主流)の間の対立や、ディシデント・リパブリカンの別々の組織間の対立が、一般のニュースに出てくる程度に激しい。

そういう地域で、警察を標的とする銃撃事件が起きた。場所はクラムリン・ロードのガソリンスタンド……ってそこは基本的に住宅街だろうが! 「紛争」期のフィクションで多用されていた類型に、「IRA(プロヴィジョナルIRA)は軍隊的で統制が取れているが、IRAとは別のリパブリカン武装組織は狂犬の集団だ」というものがあるが(例えばトム・クランシーの『愛国者のゲーム』)、それらはまったくのフィクションというわけではなく、今もまだ武装闘争至上主義を掲げて活動を継続しているディシデント・リパブリカンの組織は、本当にいろいろと見境がない。子供たちが大勢通る通学路であることなどおかまいなしに、何を標的としているのかよくわからない爆弾を仕掛けたりもしている。そしてそういうディスデント・リパブリカンのことを、マーティン・マクギネスを筆頭に、シン・フェインの政治家たちは非常に強い言葉で非難してきた。そしてディシデンツは、そのことを「変節」と解釈している。ディシデンツは、地方にある拠点の町だけでなく北アイルランドの首都ベルファストの主流のシン・フェイン(つまりプロヴィジョナルIRA)の支配地域で活動し、そこで勢力を拡大することで、彼らなりの目標を彼らなりに達成しようとしている。

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2017年01月26日

北部(北アイルランド)のシン・フェイン、マーティン・マクギネスに代わる新たなリーダーは40歳の女性だ。

moneilltwt.png北アイルランド紛争(1969〜1998)を生きてきた元「IRA司令官」、マーティン・マクギネスの後任は、1977年生まれの若い政治家……シン・フェインはピンチをチャンスに変える技能のワールドカップがあったら優勝候補と呼ばれることは間違いないだろうと思われるような政党だが、今回もまた「これまでずっと頼ってきた屋台骨が第一線を退く」というピンチをチャンスに変えることができるのだろうか。

1月23日(火、現地時間)、北部のシン・フェイン(彼らは「北アイルランド」という言い方をしない)が、マーティン・マクギネスに代わるリーダー(「党首」ではない)として、現在の自治政府で保健大臣を務めるミシェル・オニールを選んだと告知した。詳細は下記。

Northern Ireland: Michelle O'Neill named Sinn Fein's new northern leader
https://chirpstory.com/li/344753


特に党内で選挙のようなものが行なわれたという話は見かけていないのだが、シン・フェインなりのやり方で選ばれたのだろう。前週後半にマクギネスが第一線を退くことを明かしてからの数日の間だったか、あるいはマクギネスが自治政府の副ファースト・ミニスターを辞してからの2週間の間だったかははっきり覚えていないが、その間にマクギネスやジェリー・アダムズと同世代でばりっばりの「元IRA」の大物政治家が「私はリーダーにはならない」とメディアで発言するなどしていたので、世代交代するんだろうなと思ってはいたが、それにしても現在40歳の人をトップに持ってくるとは、ずいぶん思い切ったものだと思う。

シン・フェイン全体のトップはジェリー・アダムズだが(実に30年以上、このポストにある)、2009年、アダムズの実の弟が実の娘に対し性虐待を加えていたということが虐待被害者本人によって明かされたあと、いろいろとしどろもどろな応対をしたりしたが、結果的には生まれてこの方ずっと拠点としてきた西ベルファストを離れることにし、2010年に「翌年(2011年)のアイルランド共和国総選挙に出馬する」と表明してそのときに保持していたウエストミンスター(英国下院)の議席(議席は持っていても、シン・フェインなので出席はしない。その点の詳細はこちら参照。「英国政府への抗議」云々とはちょっと違う)を返上、選挙区をボーダーの向こう側のラウスに移し、相変わらずなぜか余裕で当選した。そのあとのアイルランド共和国の総選挙でも議席を落としていないので、アダムズは現在「ジェリー・アダムズTD」(TDはアイルランド共和国下院の議員のこと)であり、シン・フェインの党首(プレジデント)である。そういうことができるのも、シン・フェインはアイルランド島全域の政党だからだ。

で、そのアダムズのもと、共和国のシン・フェインは何人かの副党首を置いている。そのひとりで最も重要な役を務めているのがメアリ・ルー・マクドナルド。1969年、ダブリンの生まれで、北アイルランドとは特に関係はない(元々はFFのメンバーだった)。現在ダブリン・セントラル選挙区選出の下院議員である彼女は、党大会はもとより、党主催のイベントの数々(「歴史を振り返る」系のとか、「政府の政策に抗議する」系のとかいろいろ)でスピーチなどを行なっており、共和国の報道で顔写真を見ることもとても多い。

というわけで、シン・フェインは南(共和国)も北も、「女性政治家」の存在感がぐっと増してきているのだが、視野を広げるとより壮観である。まず、今日解散した北アイルランド自治議会のエクゼクティヴ(自治政府)のトップ(ファースト・ミニスター)が女性(DUPのアーリーン・フォスター)。北アイルランド自治議会では閣僚を出す主要5政党のひとつであるアライアンス党もトップは女性だ(ナオミ・ロング)。かくして、北アイルランドは主要5政党のうち3政党が「トップが女性」ということになっている。(時間軸をさかのぼると、SDLPもマーガレット・リッチーが党首だったことがあり、主要5政党で女性をトップにしたことがないのはUUPだけとなる。)

さらに広い範囲を見ると、英国首相が女性(保守党、テリーザ・メイ)、スコットランド自治政府のファースト・ミニスターが女性(SNPのニコラ・スタージョン)となっており、仮に3月の選挙後も北アイルランドの2トップが現状のままだとすると、British-Irish Councilの主要メンバー(英国・英国内自治政府とアイルランド共和国政府)は女性の方が2:1の比率で多くなる。

……という話で盛り上がっているのをちょっと見かけたのだが、個人的にはもはや「女性だから」と珍しがっている時代でもあるまい、と思っている。それよりも、北アイルランドという文脈では、世代だ。

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2017年01月24日

エコー・チェンバー(タコツボ)として機能するFacebookについての論文を読む(ニュース記事で見かけた論文の探し方)

今日、たまたまこんな記事を見た。

フェイスブックなどSNS、視野狭め偽情報拡散の一因にも 研究論文
CNN.co.jp 1/23(月) 13:46配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170123-35095395-cnn-int
(CNN) フェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)はユーザーの世界を広げるどころかむしろ視野を狭めさせ、特定の先入観の形成を促し、それが誤った情報の拡散につながる――。イタリアや米国の研究チームがそんな論文を米科学アカデミー紀要に発表した。

研究チームはデータモデリングの手法を使って、陰謀説と科学情報の2種類のコンテンツが拡散する様子を描き出した。

その結果、「ユーザーは特定の論調に関連したコンテンツを選んで共有し、それ以外は無視する傾向があることが分かった。特に、社会的均一性が情報を拡散させる原動力になっていることが示されており、ありがちな結果として、均一的で偏向した集団が形成される」。論文はそう結論付けている。

……


itnews24jan2017.pngこの記事について知ったのは、Yahoo! Japanのニュースの「トピックス」のページを見たときだ。右の図のように、「SNSは偽情報拡散の一因 論文」という文字数を切り詰めたヘッドラインがあった。過去、SNSで間違った情報(日本語圏で一般に流通している表現では『デマ』とも)が拡散することについての論文をわざわざ探して読んでがっかりすることが何度かあったので(「間違った情報」に、被害者支援の募金を騙る詐欺など、ちょっとそれは性質が異なるのではというものが含められていたりした)、今回も「まあ、2016年11月の米大統領選以降、fake newsってのがバズワード化した状態だから、論文の1本や2本は書かれるよな……」程度の気持ちでそのヘッドラインをクリックしたのだが、今回のこれは、過去の「SNSでの誤情報拡散について」という系統の論文とはテーマそのものが違うようだ。記事を一読して、この論文はアブストラクト(論文の冒頭に置かれる要旨の説明)だけでも読みたいと思った。

というわけで、Yahoo! Japanのニュースに出ていたCNN.jpの日本語記事(誰でも読めるもの)から、誰でも使えるGoogleを使って、元の論文を探してみよう。

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2017年01月23日

英国の核兵器システム(トライデント)の誤射についての質問に答えることを拒んだテリーザ・メイ首相

yhn23jan2017.png英国の核抑止力(保有核戦力)、「トライデント」システムは、2016年夏に英国下院での採決を経て、更新された。あと50年くらいは英国は核抑止力を持ち続けるわけで、この「トライデント更新」は、そのほんの数週間前に日本の広島で初めて行なわれたG7外相会議で採択された「広島宣言」(覚えてる?)について、英国は「はあ、まあ、話だけはうかがいますた」的な態度であるということを意味した。英労働党のジェレミー・コービン党首は、2015年の総選挙後に「党内野党の代表」(労働党の左派はブレアの「ニューレイバー」以後、「党内野党」化している)として党首選に出たとき――このとき彼自身も、彼の支持者たちも、コービンが党首になるとは本気では思っていなかったのだが――、「党内野党」のいつもの主張である「トライデント廃止」を掲げていたが、結局、2016年夏の議会での採決に際しては、「労働党はトライデントについては廃止の方針でまとまる」という党議拘束をかけることはしなかった。CNDの幹部であるコービンが労働党の党首になっても、英国の「核抑止力」(カギカッコつけとく)については何をどうすることもできないのは、いわゆる「原子力ムラ」的な事情もむろんあるのだが、労働党の支持基盤である「労働者」が何を望んでいるか(あるいは何を望んでいないか)ということが大きかった。……ということは2016年夏に(ブログでは書いてないかもしれないが)Twitterでちょこちょことメモってたと思う(読む必要がある方は、私のTwilogを掘ってください)。なお、現在首相をつとめているテリーザ・メイ保守党党首は、2016年夏にはまだ「保守党党首候補」だったが、前政権(デイヴィッド・キャメロン政権)でずっと内務大臣をつとめてきた人なので、閣議にかかるような問題はよく知っている立場だ。

その「トライデント」システムに関連して、英国が大騒ぎになっていることを、1月22日(日)のTwitterのUKのTrendsを見ているときに気づいた(そのときのTrendsのキャプチャなどは、残念ながらとっていない)。日本語圏でまともに伝えられているかどうかは知らないが(右にキャプチャを添付したが――サムネイルをクリックで原寸表示――、Yahoo! Japanのニュースの「国際」のところには見出しは出てないようだ)、AFP BBでは記事が出ていた

英政府が核ミサイル試験失敗を隠ぺいか、計画更新の採決直前
2017年01月23日 18:13 発信地:ロンドン/英国
http://www.afpbb.com/articles/-/3115083
【1月23日 AFP】英国政府が昨年、米国沖で行った潜水艦発射型戦略核ミサイル「トライデント(Trident)」の発射試験の失敗を隠ぺいしていたと、英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)が22日に報じた。英下院ではこの試験の数週間後にトライデント・システムの更新計画が採決にかけられ、可決されていた。

 テリーザ・メイ(Theresa May)首相は、試験失敗について知っていたかどうか英BBCのインタビューで問われ、明言を避けた。


これ、ただ単に「明言を避けた」っていうレベルではなかった。BBCの日曜朝の政治系のインタビュー番組であるアンドルー・マーの番組で、今の政権のメンバーに対して特に厳しい態度をとるわけでもないアンドルー・マーが、めっちゃ堅い表情で4度も質問を行い、テリーザ・メイはそれを4度もはぐらかしていた。

そのことについてのツイートを一応記録しておこうと思う。

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ガンビアの政治が動いてアーセナルの試合があった日、世界はつながってることを実感。

西アフリカのガンビア (The Gambia) という国で大統領選挙が行なわれ、22年間も政権の座についてきた現職を野党の新人が破るというサプライズを起こしたのは、2016年11月、ドナルド・トランプが米大統領選挙を制した少しあとのことだった(そのとき私は「サプライズでない選挙はないのか」と思った)。

勝利した野党の新人のアダマ・バロウさんがTwitterで「人は政治的な面では変われても、好きなサッカーチームは絶対に変えられない」と発言し、特製の「1番、大統領」のアーセナルのユニを着てしまうような人であることを、先日、さるさん (@saru_gooner) のブログで知った

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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